とある目的から、男装して女人禁制の試験である「科挙」を受験しようとする少女・雷雪蓮。男性としての振る舞いも完璧に身につけた彼女が受験会場で遭遇したのは、男装もせずに自分は男だと言い張るどうみても女の少女・耿梨玉だった。なしくずしに彼女と共に試験に挑むことになってしまうが……!?
手段も目的も対称的な少女達が繰り広げる、叛逆の物語
最初から最後まで試験のお話だったし、なんなら1冊まるまる使って「私達の試験はまだ始まったばかりだ」エンドだった。あまりにもサブタイの「試験地獄」という名前の通りで強さが凄い。自国への復讐を果たすために科挙を受験し、合格のためなら汚いやり口含めて手段を選ばない男装の麗人・雪蓮。腐敗しきった自国の在り方を変えたいという願いを胸に、女性の装いのまま男だと言い張って試験に臨む耿梨玉。出発点は同じだが目指すところは微妙に違う、似ているようで性格もやりかたも正反対な少女二人が周囲を欺き、世界最難関を飛ばれる試験で生き残っていく展開が面白かった!!メインは主人公二人の関係性だけど、途中から腹に一物持ってそうな青年・李青龍や中性的な雰囲気を持つ少年・欧陽冉も加わって凸凹しながらも少しずつ連帯感が生まれていく展開も美味しかった。
打算ありきで梨玉と仲良くしていた雪蓮が、徐々に自分にはない梨玉の真っ直ぐな言葉に少しずつ魅かれていって……それでもなお、彼女が果たそうとしている「国家への復讐」という目的はあまりにも大きくて……。謎めいていた彼女の正体が明かされ、梨玉に絆されかけていた雪蓮が自らの本来の目的を再び思い知らされるクライマックスが衝撃的で、同時に彼女独りで突っ走ることへの危うさも感じてしまった。今回も結果として上手くトラブルを乗り越えられたとはいえ、梨玉に絆されちゃって目撃者を見逃してしまうあたりは微妙に年頃の少女らしさが抜けないと言うか、彼女の影響を半端に受けてしまったのが逆に危なっかしいんだよなあ。雪蓮の言葉の裏にまだなにかあると薄々気づいている梨玉が上手く彼女の支えになってくれればいいなあと、色々な意味で次巻どういう方向に進んでいくのかが気になる物語でありました。
言葉や手段は違えど彼女達が目指しているところあながち遠くズレてもいないのでなんだかんだで理解し合えば同じ道を歩めると思うんですけど、そのまますれ違って敵対する展開もなくはなさそうで……。