ウィルおじいさんの目をえぐってロアナ村に追放したり、祖父達を国外追放した張本人である王太后ジュリー。全ての元凶であると思われていた彼女の存在だが、亡くなったウィルおじいさんの日記を読んだアリシアは彼女の行動にとある疑念を抱く。彼女の真意を知るため、王宮に乗り込もうとするが……。
バトルに恋愛に、とにかく激動の一冊だった
まさかの王宮爆破計画、最大の「敵」になりそうな王太后ジュリーとの対決、デュークとの対話、そして……と、とにかくいろいろな意味で激動すぎる1冊でした。王宮爆破計画、なんだかんだで被害ゼロだったしデュークの溺愛パワーやらなにやらでノーカンになると思ってたんですけど予想以上に後の影響が大きかった。いやまぁ、そのへんの処分に関しては本人ノーダメみたいな顔してるのが実にアリシアらしいんですけど……。最愛の子供たちを護るために敢えて「巨悪」として振る舞うジュリー様の姿、その不器用な優しさはアリシアの目指す「悪女」と重なる部分も多いように感じて、でも決して同じものではなくて。ずっと謎だった彼女の真意を唯一アリシアだけが感じ取ることが出来たのもさもありなんでした。このふたりの対話、とても良かったなあ。
全てを捨てる覚悟で挑んだジュリーとの対決の直前、アリシアがデュークに対して初めて見せたほのかな恋心が大変に愛しい。前巻の恋愛トーク思った以上に効果あったんだな。今回の処分の件もあって本人達の思いとは裏腹に一前途多難感が出てきた感もあるけれど、実質父親公認みたいな状態ではあるし、この2人ならなんとかしてしまうのでしょうという安心感が凄かった。
あと今回、ことのほかウィリアムズ家の三人の兄達にスポットがあたってたのがとても良かったです。いやなんというかわちゃわちゃしてて可愛いなこの兄妹……。リズの無意識下での影響がなければこんなに仲が良かったんだな……。
吹っ切れたキャザー・リズがやっぱ最高〜!!!
王宮爆破事件の処罰もなんのその、ウィリアムズ家に戻って家族との対話を済ませ、改めてラヴァール国へ向かおうとしていたアリシア。ところが、翌朝唐突に彼女の姿が消えてしまう。ジルやデューク一派やヘンリ達は彼女の痕跡を捜して奔走することに。突如姿を消したアリシアを追う中で改めてそれぞれのやりたいことを自覚する面々の姿が印象的だったのですが、なにより彼らに助けを請われたキャザー・リズの反応が良かった!色々と吹っ切れてから彼女がただの「良い子ちゃん」じゃない顔を見せるようになったのが凄く好きだし、アリシアの見ていない所でバリバリに彼女をライバルとして意識しまくっているのがとても良き。今回は特に改めて「聖女」としてリズが背負っているものの大きさの一端に触れる展開もあって良かった。いやほんと、ここ何冊かでどんどんキャラクターとして深みが出てくるな彼女……。
そんなわけで次巻は改めてウィルおじいさんのアレコレで中断されたままだったラヴァール国編再開?これまでとは少し勝手の違う状況でアリシアがどう動くのか。別行動で動くであろうジルの動向も気になるし、次巻も楽しみです。