[著]野村 美月 [絵]竹岡 美穂
クリスマス以来なんだか良い雰囲気のななせと初詣にやってきた心葉。二人の距離感が着実に縮まっているのを感じながら次は映画に行こうと約束をするが約束の日の直前になり、ななせは階段から落ちて入院してしまう。彼女のお見舞いに行った心葉の前に現れたのは、あの朝倉美羽だった…!ななせと芥川は「美羽が嘘をついている」と言う。でも心葉は、その言葉を信じることが出来なくて…
これまでの話で少しずつ過去の出来事から立ち直って来ていた心葉が、幼馴染でトラウマの元凶(笑)朝倉美羽と向き合うことになる物語。読者側から見ると明らかにいろいろと魂胆ミエミエの嫌な女・美羽と、そんな明らかに怪しい彼女の言動と、ななせや芥川の言動を秤にかけ、しかも美羽の言葉を「信じられない事が出来ない」心葉の姿に前半では散々イライラ(そしてハラハラ)させられましたが、今まで積み重ねてきたストーリーが思わぬ伏線になり、思わぬ形で物凄く綺麗に落ち着きました。もうなんていうか、「お見事!」としか言いようがありません。ほんとに最高傑作っ。クリスマス以来なんだか良い雰囲気のななせと初詣にやってきた心葉。二人の距離感が着実に縮まっているのを感じながら次は映画に行こうと約束をするが約束の日の直前になり、ななせは階段から落ちて入院してしまう。彼女のお見舞いに行った心葉の前に現れたのは、あの朝倉美羽だった…!ななせと芥川は「美羽が嘘をついている」と言う。でも心葉は、その言葉を信じることが出来なくて…
自分以外の心葉に近づく人を排除しようとする美羽の行動は凄くヤンデレ的なんだけど、同じくらいに、本性を露にした美羽にあそこまでされて、親友と心を許した女の子から警告を受けてもなお美羽を疑えない心葉も違う意味合いでかなりヤンでたとおもう。お互いに歪な形で依存しあっていたからこそ、その関係が崩壊したときのショックは大きかったし、その崩壊を必死で食い止めようとする美羽の姿が無性に哀しかった。そんな中、心葉を救おうとして、どんなに傷つけられても美羽に真っ向からたち向かうななせと、3人の間で板ばさみになって壊れそうな心葉を温かく支えてくれる遠子先輩という、二人の対照的な姿が印象的でした。流人くんや竹田さんの思わぬ活躍も良かったなあ。
そして今回のキモとなるのは宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」と、"井上ミウ"の投稿作「青空(ソラ)に似ている」。ひそかに読んでみたいと思っていた"井上ミウ"の処女作品は、心葉がなぜ美羽と同じ新人賞に小説を投稿したかの理由、そして削られてしまった初稿のラスト部分まで含めて物凄く綺麗な話でした。普通に泣けた…。
そして最後は遠子先輩の綺麗な笑顔と、遂にこの物語の最大の謎である「文学少女」の謎を示唆して幕引き。彼女が語る"なりたい人"の姿とあまりにも重なってしまう笑顔が印象的でした。っていうか、そ、そそそそんな言葉で終わられると次が気になってしょうがないじゃないっ!!
大好きなシリーズだけに次で完結というのは本当に寂しいですが、続きが本当に楽しみです。
コメント
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