[著]鷹野 祐希 [絵]水上 カオリ 諏訪に居る佐唯の元に現れたのは、あの日殺されたはずの廣沢秋人だった。彼が生きていた事に喜ぶ佐唯だが、同時に言いようの無い違和感・不快感に襲われる。一方、佐唯の事で託宣を受けた厳島の斎・弥彦は感応している市寸島比売の制止も聞かず、厳島を飛び出すが… |
序盤の秋人vs佐唯は、元々血みどろ&(精神的に)グログロ気味なこのシリーズ中でも最高級の盛り上がり&グロ描写が素敵でした。初めて対峙したときの薄気味悪さもさることながら、バトル描写が……うわあ。なんというか、最高に醜悪。そんな醜悪なバトルの中だからこそ、その後の展開が黄泉返ってしまった秋人だけでなく、今まで佐唯が持っていた“復讐”というわだかまりも持っていってしまったのが嬉しくてたまりませんでした。良くも悪くも、序盤の黄泉返った廣沢秋人vs佐唯の対決がシリーズ最大の山場だといってもいいのではないかと。
少しずつ大物主命の斎としての自分を認め、恋人の死を乗り越え、人間的にも成長していく対する佐唯に対し、彼女を亡き者にして“天孫”の世の中を作ろうとする祥姫は次々に目論見を崩され、追い詰められる事に…っていうかこの子あれだよね。黒いっていうか物凄いヤンデレですよね。弥彦と戦ったときに覗かせた、佐唯への歪んだ愛憎がとってもヤンデレ的。ラストは是非“お姉様”と和解して元通り(とはいかないまでも、それに近いくらいの)関係を築いて欲しかったです。というか、ここまでヤンデレっぷりを見せ付けておいてラストがあっけなさ過ぎる……色々無理してたみたいだからラストであっさり陥落してしまったということでしょうか。
それにしても、本編となる血みどろストーリーもさることながら、今回も色々と大暴走な大物主命が素敵過ぎます。ちょっとラストが駆け足気味な終わり方だったこともあるし、あと1冊くらい続けてもうちょっと濃厚に大物主命と佐唯の夫婦漫才…もとい魂の触れ合いが見たかったです。ちょっと3巻で終わらせてしまうのが残念なシリーズでした。