2学期の学期末試験を前にしたある日、生徒会長の南雲に呼び出された綾小路は次の生徒会選挙について聞かされる。現生徒会役員の堀北と一之瀬、どちらが生徒会長になるかを巡って勝負を持ちかけられるがその勝負は一之瀬の生徒会からの引退という予想外の展開によってドローになる。そこに、南雲によって万引き犯に仕立て上げられそうになったという3年の鬼龍院が飛び込んできて……。
生徒会長交代劇に一つの時代の終わりを感じる
新生徒会長・新役員決めに鬼龍院の万引き冤罪事件……と、特別試験よりもその外部が忙しかった、2学期編の最後を飾るシリーズ第9巻。本人も言ってますが在任期間が長かったので、南雲生徒会長の退任というのは一つの大きな時代の終焉を感じました。しかも形だけの退任ではなく、これまでのような好き放題出来る暴君のような行動は取れなくなりそうな退き方。綾小路との対決もつかないまま終わってしまうのか……と少し残念に思う反面、彼との決着は無人島サバイバルのあの瞬間についてしまっていたような気もします。最後まで独裁者にはなれてもほんとうの意味で「一番」にはなれなかった男の悲哀を感じる。
堀北鈴音の成長、一之瀬帆波の覚醒。そして……
南雲が退き、その後を継ぐことになったのが一之瀬の辞退によって新生徒会長に就任した堀北鈴音。今回はいろいろな意味で一之瀬帆波の物語だったと思うのですが、それに負けず劣らず彼女の成長がいろいろな所で見て取れるのが良かった。自らの右腕として宿敵・櫛田桔梗を引きずり込んだ手腕も見事だったし、綾小路のお膳立てがあったとはいえ与えられた情報を即座に整理して鬼龍院の冤罪事件の謎を暴き、同時に南雲の牙をも折り、それと並行して学年末試験でもしっかり戦略を立ててAクラスから勝利をもぎ取っていく手腕は去年の彼女からは想像も出来ないほど。堀北学の愛弟子であった元副会長・桐生からの称賛の言葉がいろいろな意味で今回の全てだったと思うのですけど、本当に良い女になったな鈴音。そしてそんな彼女の手のひらで転がされがちな櫛田ちゃん本当に最近残念可愛い。手のひらで転がされつつもしっかり堀北にも一矢報いてくるところはそう簡単には転がされないぞという強い意志を感じてニヤニヤが止まりませんでしたが。9.5巻で堀北・櫛田(・伊吹・天沢)がキャットファイトしてるだけのイチャイチャ短編読みてぇ〜〜。その一方、生徒会を自ら辞めた一之瀬帆波もどこかこれまでの彼女とは違った、不敵な笑みを浮かべていて。2年生編に入って以来その真っ直ぐすぎる性質が足枷となって他クラスとの点数争いに上手く加われなかった彼女のクラスでしたが、まだまだ勝負は終わっていないぞといわんばかりの覚醒ぶりにニヤリとしてしまいました。元々彼女、1年生編4巻の船上特別試験では綾小路ですら舌を巻くような活躍をしているわけで。色々吹っ切れたらとんでもない強敵に化ける可能性を秘めているんですよね。これまでの心優しい一之瀬の姿を知っているとどこか不安になる、でも今後が楽しみになってしまう一之瀬穂波覚醒回でした。
逆に今回の試験を見ていてつくづく思ったのですがここで一之瀬クラスが盛り返すと今回みたいな正統派な学力がモノをいう試験の時って龍園クラスだけが頭一つ下になってしまうことが浮き彫りになったわけで、彼らがどう盛り返すのかも気になる。お得意の外野で攻める戦略が通じなくなりつつあり、そうなると去年の一之瀬クラスと同じくらいには詰んでる気がする。1年の学年末で龍園がリーダー復帰した際に大敗を喫したのが一之瀬のクラスであったことを考えると、今回の一之瀬と龍園のやりとりにはどこか因縁を感じてしまいましたね。
それにしても今回色々と不憫すぎた上にタイミングもひたすら悪かった軽井沢さん、今回の綾小路のアレコレといい、最大のライバルとして覚醒した一之瀬の発言といい本当にどうなるか心配。綾小路が完全に彼女を振る体制に入り始めてるのも相当アレなんですが、今回の一之瀬の最後の発言、裏を返すとクラスの利にする形で軽井沢脱落させるぞっていってますよね……下手したら去年の龍園より性質悪いやつだこれ〜!!!