[著]スズキ ヒサシ [絵]あずみ 冬留 貧民層が住むスラム街で仲間の子供達と共に盗みで生計を立てていた少年・ジグリット。仕事に失敗した仲間を庇って立ちふさがった彼の顔を見た騎士の一人は彼をタザリア王国の皇子・ジューヌと瓜二つである事に目をつけ、彼を皇子の影武者として育てる事を決意する。我儘で残酷な皇女・リネアから嫌がらせを受けながらも少しずつ才能を開花させていくジグリットだったが… |
噂の「リネア様」が気になっていたところに「作者はあの“ダビデの心臓”の人だよ!」と言われてうっかり買っちゃいました。「ダビデの心臓」というと、私のラノベ読書暦の中でも屈指の後味の悪さを味わった欝グロシリーズということで(いやまあ、オトナの事情らしいんですけど…)、いやがおうにもそういう方向の展開を期待して本を手に取ったのですが、予想以上に猛烈でした。
とりあえずリネア様のサドデレっぷりが予想以上に凄い。
前作を知ってる分、姉姫様の容赦ない仕打ちはある意味想定の範囲内なのですが、恐ろしいのはこれだけ残虐な仕打ちをしながらも、僅かにしかしきちんと「デレ」要素が見受けられる所。本人の自覚すらない、0.1%にも満たないデレですが間違いなくちゃんと「デレ」があります。特にクライマックスでジグリットが……という報告を聞いたときのリネア様の反応は必見。99.9%以上のサド分と0.1%以下のデレ分で成り立つ、最凶のサドデレ・リネア様。ただし素人にはオススメできない。この絶妙なバランスに感動した!
物語は本当にリネア様のサドデレっぷりとジグリットの綱渡りっぷりが絶妙すぎて、常に神経をすり減らせてハラハラしてしまいます。確かにジグリットは年齢の割には聡明な子供なんだけど、どうしてもその場の勢いで自らを窮地に陥れてるみたいな部分が拭えず、彼の行動を見てるだけでハラハラ。そしてその彼の背後で悪巧み(違)をするリネア様の姿に「ジグリット!うしろうしろーー!」とハラハラ。
もうこの本、読むだけでエナジードレイン効果があるに違いない。
なんか色々吸い取られた気がする。主にリネア様に。
とても面白かったし最後で自分の掘った最大の落とし穴にハマった感が拭えないジグリットの行方がとても気になるけど、間違っても既刊の一気読みとかはできねーなー、とおもったシリーズ第一作なのでした。