クラフト要素目当てでVRMMO『きまくら。』をはじめたビビア。プレイヤーとの交流は殆どしないで、仕立て屋として洋服を作ったりNPCと交流する日々を続けていたがどうも周囲の様子がおかしい。どうやら彼女が偶然発生させてしまったイベントがゲーム世界前提を揺るがす重要イベントだったらしい。しかもこのMMORPG、ただのほのぼのクラフトゲーではないみたいで……!?
サバサバ女子、殺伐ネトゲで炎上しながら淡々と生きる
1巻読み終わるまでずっと動画配信モノだと勘違いしてました。この主人公がどんな流れで動画配信の道に!?ってずっと不思議に思ってたんだけど普通にそんな展開なかった。主人公がクラフト系のVRMMOしてる様子を淡々と(小説の地の文で)実況しているお話、といえばまぁ確かにそうなんだけど、配信モノの作品が増えてきた今このタイトルすこし紛らわしいなぁ……と思いつつ、「実況=動画配信ジャンル」という認識が自分の中で結構出来上がってしまっていることにも驚愕した。クラフトゲーやホラゲーの実況とか割と好きです。
ほのぼのクラフトゲーとは名ばかり、晒し上げ上等身内ノリ上等プライバシー皆無プレイヤー同士の競争要素ありという殺伐MMO『きまくら。』で淡々とクラフト要素を楽しんでいたところ、クラフト特化のプレイスタイルが福を呼び込んだのか様々な新要素を発見してしまう主人公のビビア。光速で特定されて炎上するも、全く気にせずにアンチとなんかうるせーやつは全員ブラックリストにぶちこんで淡々とクラフト&NPCとの交流を楽しむ……というサバサバっぷりが大変に良かった。NPC交流・クラフト要素に対する熱の入れように対してリアルプレイヤーに対する対応が塩すぎるの面白い。
主人公が新要素を発見しまくり、クラフトしたアイテムにスキル付けまくり……とゲーム内で無双してる要素にちゃんと理由があるのも良かった。服飾をやりたくてゲームを始めた彼女がゲームならではのショートカット系スキルを基本的に使わず、ひとつひとつ手作りで仕上げていったところそこにスキル付与の隠し要素が潜んでいたと。そりゃあ確かにゲーム慣れててゲームとしてクラフトを楽しむ層はやらないし見つけられないよなあ。おそらく、プレイヤー自身のデザインセンスの高さも関わってきている感じがするので誰でも出来るわけではないというのがまたエグい。彼女が発生させたシエルシャンタの親密度ストーリーだって完全にキャラクターへの愛情じゃなくてユーザーのデザインセンス次第じゃないですか。シエルシャンタ廃のゾエベルさんは強く生きて欲しい……。
しかし面白かったんだけど、色々と噛み合うまでが長かった。序盤はビビアが本当に淡々とクラフトゲーをやっているだけで、章間に挟まるユーザーチャットでのやりとりもある程度本編と繋がりが無いわけではないけどそんなに噛み合っておらず……中盤でビビアが「革命」イベントを発生させて炎上するまでは全体的に起伏の少ない状態が続くのでだいぶ掴みが弱い感じ。その代わりに、革命イベント発生後は一気にこれまで積み上げてきたユーザーチャットでの設定や会話が本編に生きてきて面白い。この辺の全体的な立ち上がりの遅さは良くも悪くもWeb小説ならではだなあ。
この手の、書籍化すると1巻の時点でストーリーの方向性が見えないまま終わる作品が多い感じなのもやや難で、というか1巻なのに地味に気になる終わり方するじゃないですか。リアルプレイヤーとの交流をサバサバとぶった切りすぎて、同じクラフトガチ勢であるキムチさんに怯えられてるの笑ったけど。発生させてしまったメインストーリーの展開は今後どうなっていくのか。色々不穏な要素も見え隠れするNPC交流の行方は、主人公はこのまま基本交流なしでサバサバやっていくのかそれともなんだかんだで交流が増えていくのか。「結社」とは一体………とりあえず、2巻でどうなっていくのか楽しみにしたいと思います。
それにしても、「治安の悪いネットコミュニティ」の描写がリアルすぎて地味に生々しいな。妹ちゃんの所属していたギルドの内輪もめの話も結構ネットあるある……だし、バレッタさんの初対面の相手にクレーム9:絶賛1のメッセージ投げて許されると思ってる感じとか、竹中さんの空気読めないオタクっぷりとか、『きまくら。』に「。」を付けないで発言すると自称警察が沸く流れとか。というか、この往年の匿名掲示板のようなノリのMMORPGにソシャゲもびっくりのランキング要素入れて札束でNPCの本妻争いさせるのエグいよ……。