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ヴィクトリア・ウィナー・オーストウェン王妃は世界で一番偉そうである

 

ヴィクトリア・ウィナー・グローリア公爵令嬢。 フレデリック・オーストウェン王子の婚約者である彼女は ある日婚約破棄を申し渡される。 だが、それを「我は婚約破棄を許可しない」の一言で 切って捨てたヴィクトリアが取った行動は―― 「フレッド。……そなたはさっき、我に婚約破棄を申し出たな?」 「ひゃ、ひゃい……」 「では我から言おう。――もう一度、婚約をしよう。我と結婚しろ」 「はいぃ……」 かくしてグローリア公爵令嬢からオーストウェン王妃となったヴィクトリアは その輝かんばかりの魅力で人々を魅了し続ける――!

フレデリック・オーストウェン王子は男爵令嬢であるマリアと恋に落ち、婚約者である公爵令嬢ヴィクトリアに婚約破棄を言い渡した。ところが、当の婚約者・ヴィクトリアはそれを聞き入れない──どころか、どこまでも偉そうに愛を囁いてきて…。

えっこの王妃イケメンすぎ…!?

とにかく偉そうで覇王のような物言いのイケメン王妃様がその偉そうな態度と物言いに相応しい才能を持ってライバル令嬢達を蹴散らし、自分に言い寄る間男も物ともせず、国家を揺るがすトラブルを解決していくお話。

とにかくイケメンすぎる王妃がひたすら偉そうに最初は自分の身の回りから、そのうちに国に関わるような事件までも解決していってしまう姿が爽快。おおむね偉そうな態度とその場の勢いで周囲を圧倒しつつ、その反面しっかりと相手の求めるものをリサーチ・提示して納得させて味方に引き込んでいく手腕がまた見事でとにかく気持ちよかった。常にWin-Winで解決するので誰も損してない。こんなん王子じゃなくても惚れてしまう。

王妃のキャラが強烈で、しかも彼女の行動に誰も彼もが巻き込まれていってしまうため常に本編は慢性的なツッコミ不足ではあるのだけど、そんなツッコミ不在の物語に対してかなり軽めのノリでツッコミを入れてくる地文のテンポがとても良くて、そこもなかなか新鮮でした。いや、その他の登場人物も金のために王にすりよる令嬢やら農家に引力を引かれすぎてる前王の愛人やら猫とふかふかお肉が大好きなライバル令嬢やらなかなかの濃さなんですけど…!!登場人物の中ではヴィクトリアの間男を目指す術士のミカエルだけがツッコミを頑張ってた。

強い王妃×かよわい王、意外なまでにいちゃラブだった

王子フレドリックの婚約破棄騒動から始まる本作ですが、王子が「ざまあ」される展開とかヴィクトリアが王をほっぽってひとりで無双するような展開は一切なく(幾度となく「愛の暴走特急」になってる時はあった)、むしろ最初に婚約破棄を切り出した後はひたすら王と王妃(序盤で結婚した)のいちゃラブになります。ヴィクトリア、世界で一番偉そうだし覇王のような女帝だけど、そんな彼女がなんだかんだと伴侶であるフレドリックの意志を尊重するし、彼の治世をもりたてるために尽力するし、そして夜となれば可愛らしい一面を見せ……見せ…………なんかもう色んな意味で夜の描写も襲い攻めって感じでしたがフレドリック的には可愛い女に映っているのではないかと…はい!!!

そんなヴィクトリア、一見何の弱点もないような「強い女」であると同時に正確に自分の弱点や欠点も把握していて、そこを補うためにフレドリックや周囲の人の力を借りることを厭わない。囚われのフレドリックを取り戻すため、ヴィクトリアがこれまで培ってきた人脈すべてを駆使して奮闘するクライマックスがとても良かったです。

どこまでも破天荒な物語でありながら、その実その破天荒さがきめ細やかなリサーチや正確な自己分析によって補強されているので気持ちよく読めるんですよね。あと誰も不幸にならないので安心して読める。楽しかった!小説家になろうのほうで続編も予定されているようなので、続きをとても楽しみにしています。


ギルドの受付嬢ですが、残業は嫌なのでボスをソロ討伐しようと思います

 

強くてカワイイ受付嬢が(自分の)平穏のため全てのボスと残業を駆逐する!
デスクワークだから超安全、公務だから超安定! 理想の職業「ギルドの受付嬢」となったアリナを待っていたのは、理想とは程遠い残業三昧の日々だった。すべてはダンジョンの攻略が滞っているせい! 限界を迎えたアリナは隠し持つ一級冒険者ライセンスと銀に輝く大槌(ウォーハンマー)を手に、自らボス討伐に向かう――そう、何を隠そう彼女こそ、行き詰ったダンジョンに現れ、単身ボスを倒していくと巷で噂される正体不明の凄腕冒険者「処刑人」なのだ……! でもそれは絶対にヒミツ。なぜなら受付嬢は「副業禁止」だからだ!!!! それなのに、ボス討伐の際に居合わせたギルド最強の盾役に正体がバレてしまい――?? 残業回避・定時死守、圧倒的な力で(自分の)平穏を守る最強受付嬢の痛快異世界コメディ!

残業は嫌だとキレ散らかしながら超絶スキルでボスを討つ主人公の姿が爽快。そんな彼女が頑なに「平穏」を望む理由に胸が熱くなったし、コミカルな展開も楽しいけど終盤のシリアスで熱い展開が最高に良かったです。それにしても帯の「魔王アノス様応援コメント」が色々な意味で的確で、読み終わってから唸ってしまうな。

圧倒的なスキルを持つ主人公が残業を駆逐する社畜讃歌

安定した生活を望むギルドの受付嬢・アリナが残業を減らすため、業務終了後に正体を隠してダンジョンに潜り、一線級の冒険者たちをも圧倒する超絶スキルでボスモンスターを討つ!!!というお話。

とにかく残業したくない、定時で上がって安定した生活を送りたいという主人公の嘆きがGW進行中で残業続きだった私の心に深く深く突き刺さりました。超絶スキルを持った主人公の私TUEEモノであるにもかかわらずその無双状態が彼女本来のお仕事には一切関知せず──むしろギルドの受付嬢としての書類仕事はちょっぴりポンコツ気味ですらあって─社畜讃歌として共感できてしまうのが面白かったです。そしてそんな彼女がキレ散らかしながら圧倒的な火力を持ってボスモンスターをワンパンで倒していく姿がとにかく爽快。ところでちょうど最近ソシャゲの方に追加されたこともあってこれ読んでると脳内でめちゃくちゃ独歩くん(ヒプマイ)のキャラソンが流れる。

アリナがギルドの最強パーティをも凌駕するスキルを持つに至った理由にも笑ってしまいました。願いが叶うと言われる夜に神から授かった超絶スキル──確かに願いは叶ったけどそうじゃねえ!!感が凄い。いや、ほんと、そっちじゃなくて、仕事の効率上げてくれればよかったのにね……。

後半の熱い展開も良かった…!!

前半は残業にキレて超絶スキルで無双しつつ「副業禁止」に引っかからないよう必死に正体を隠そうとするアリナとそんな彼女につきまとう最強ギルド《白銀の剣》のリーダー・ジェイドのやりとりでテンポ良くコミカルに進みますが、中盤以降の展開は割合シリアス。突如として現れた「隠しダンジョン」をめぐるジェイド達の戦いと、アリナの過去、彼女が「ギルドの受付嬢」を目指すようになったきっかけが明かされていきます。

職場の待遇改善のために《白銀の剣》の前衛として仕方なく踏み込むことになった隠しダンジョンで、誰かの「死」に誰よりも動揺するアリナのどこにでもいる少女としての姿が印象的でした。そんな彼女が平穏を──知っている人の誰もが喪われることのない「自分の世界の平穏」を守るために必死になって槌を振るう姿が最高に良かった。ただ「楽して安定した生活を送りたい」だけじゃなくて、その裏に秘められた「自分の周囲にいる人々の誰にも死んでほしくない」という強い心に胸を打たれました。

続巻への余地を残しつつも1冊で綺麗に終わる新人賞受賞作品らしい物語で、そういう意味でも本当に楽しかった。割とギルドの偉い人たち的には公然の秘密になってしまったのでは?みたいな部分はあれど、押しの強いジェイドとそれをあしらうアリナのやりとりが最高に楽しかったので、二人の関係がどういうふうに進展していくのかも楽しみです。

それにしてもこの作品、帯の裏側に魔王アノス様(魔王学院の不適合者)の推薦コメントがあるんですけどこれが大変に作品にしっくりきていて、読み終わってから改めて唸ってしまった。『お前ほど冒険している者は他におらぬ』本当にこれに尽きるんだよな……。


ようこそ実力至上主義の教室へ 2年生編4

 

全学年、全生徒、総力戦のサバイバル試験、超絶怒濤の壮絶決着!
2週間のサバイバル試験も後半戦。1年生、2年生、3年生、月城理事長代理、様々な人の意志が常夏の無人島で交錯する。 「私は退学を恐れません。綾小路先輩を守るためであれば、何でもするつもりです」 「だから、あたしの許可なく勝手に潰されてないで下さいね」 「もしもの時はそうだな……力づくで乗り切ることにしよう」 「高円寺を封じ込める指揮は俺が取る」 「やれやれ、騒がしいねぇ。それじゃあ、少しだけペースを上げさせてもらおうかな」 「わ、私、どうしても綾小路くんに伝えなきゃいけないことがあって!」 全学年、全生徒、総力戦の無人島サバイバル試験、ついに決着!

波乱だらけの全学年対抗無人島サバイバル、完結編。めちゃくちゃ面白かった!ホワイトルーム生の正体も発覚して月城学園長代理との対決は一段落…という流れなんだけど、ただ1年生組に関してはよくも悪くもますます謎が深まったと言うか、最高にアツい展開ではあるんだけども若干スッキリしない終わり方だったな。2年生編になってから敵が強くなってきてて、綾小路ひとりの力だけでは無双しづらくなってきてるのを改めて感じた1冊だった。

いつもと違う人間関係が印象的だった無人島サバイバル完結編

七瀬との対決・和解、そしてホワイトルーム生との遭遇を経て再び単独行動に戻ることを決意した綾小路。ところが、雨による特別試験の一時中断やそれによる補填など綾小路にとって予想外の事態が次々と発生していく。更に、綾小路の首にかかる賞金を狙った一年生の混成軍が動き始めて……。

ホワイトルーム生の正体が速攻でバラされて「アレだけ引っ張ってたのはなんだったの!?」状態だったんですけど、一年生周りの話はホワイトルーム生の正体が明かされてもなお謎のままというか、正体が明らかになったことでますます謎が深まったと言っても良いまである。なにより、以前出てきた“ホワイトルーム生の独白”の主が、どう考えても今回正体が明かされた人とは別人な気がするんだよなあ。今回のやりとりを見るとちょっと現在明かされてる情報をそのまま素直に受け取ってはいけないような気もしてきて結局の所一年生に関する真相はほとんど闇の中に。果たして今回明かされた人とは別のホワイトルーム生が別口でいるのか、それとも今回正体を出してきた生徒自体がフェイクなのか、もしくは月城以外の別口なのかそれとも(でも月城が把握してないホワイトルームからの刺客が出てきちゃうともう同学年ですら信用できなくなるな……)。綾小路先輩と和解して番犬みたいなムーブする七瀬ちゃんかわいい(現実逃避)。

一年生の誰も彼もが胡散臭い状況の中、これまでの試験で敵対しあってきた2学年の生徒たちと手を取り合い完全に協力することはできないけどお互いを信頼して戦う姿が新鮮で楽しかった。特に「いつか綾小路と本気の勝負をしたい」板柳&「あいつを倒すのは俺だ」龍園との共闘には本当にニヤニヤしちゃう。こういった運動関係の種目がハンデとなる板柳が動けないのを逆手に取って司令塔として活躍する姿はめちゃくちゃ心強かったし、龍園がかつて綾小路と対峙した際に語った自らの“勝負への価値観”がふんだんに発揮される宝泉との戦いなんかもう本当にめちゃくちゃおもしろかったですね。龍園のやってることめちゃくちゃ卑怯なのに、バトルがこんなにアツくなるのはズルいよな。あと最後の最後で詰め込まれた伊吹&堀北の仲悪コンビがめちゃくちゃ好きなんですが、この二人の薄い本はいつ出ますか???(気が早い)

今回は綾小路が結果的に一本取った形になったけど南雲生徒会長との因縁はむしろここから始まった感じがあるし、ヒロインレース的な意味で見せ場をかっさらっていく一之瀬など、今後につながるであろう新しい人間関係の構築が面白い巻でもありました。というか本格的な一之瀬参戦でヒロインレースどうなる?綾小路は鬼龍先輩やひよりとの絆も深めてる感でマジ軽井沢さん無人島サバイバルしてる場合じゃない。

最高に面白かったけど謎はますます深まってしまった…!!

長く続いた無人島サバイバル編の決着巻ということで、熱い展開で最高に面白かった!!……んですけど、その一方でむしろ一年生周りの謎はますます深まってしまったし、なかなか全貌が見えてこないのが若干もどかしい。3冊(一年生との対決という意味では4冊)も引っ張ったにしては、すっきりしない終わり方だったなぁ。また、敵がホワイトルーム生になったことで1年生編のように綾小路が水面下で無双してサクッと裏から勝つみたいな展開がなくなってしまったのは若干寂しさを感じる……学園の生徒側の支配者として描かれる南雲会長を眼力で押し返す場面には挿絵含めてたいへんに興奮したけど。

ただ、1年生編と比べて綾小路一人で対処しきれない事態が増えてくる=周囲の同級生たちを巻き込まざるをえなくなっている現在の展開は1年生編にはなかった要素で本当に楽しいし、並み居る強敵相手に今後どういうふうに綾小路が「成長」していくのか(というかある意味でホワイトルーム製の「完成品」である彼が果たして成長することができるのか?)はすごく楽しみ。あと色んな意味でどうなる一之瀬。最後はスッキリと気持ちよく勝ってくれるといいなあ。


パワー・アントワネット

 

SNSで12万人が驚愕した超話題のWeb小説、待望の書籍化!!
「言ったでしょう、パンが無いなら己を鍛えなさいと!」 パリの革命広場に王妃の咆哮が響く。 宮殿を追われ、処刑台に送られたマリー・アントワネットは革命の陶酔に浸る国民に怒りを爆発させた。自分が愛すべき民はもういない。 バキバキのバルクを誇る筋肉(フランス)へと変貌したマリーは、処刑台を破壊し、奪ったギロチンを振るって革命軍に立ち向かう! 「私はフランス。たった一人のフランス」 これは再生の物語。筋肉は壊してからこそ作り直すもの。 その身一つでフランス革命を逆転させる、最強の王妃の物語がいま始まる――!! 大人気Web小説が早くも書籍化!

マリー・アントワネットが処刑台から筋肉で無双してフランス革命をひっくり返す、史実if。細かい部分の粗は筋肉(パワー)でゴリ押ししていく感じが一発ネタ小説として大変楽しかったし、それはそれとして割としっかり史実ネタも盛り込んでくる(多分)のが大変良かったです。

マリー・アントワネット、ギロチン台からの大逆転劇

処刑台に送られたマリー・アントワネットは民衆からのとある言葉をきっかけに覚醒する。たったひとりの「筋肉(フランス)」として、そして一人の母として。心優しき処刑人、親友の仕立て屋、彼女を護る麗しの騎士──仲間たちと共に、立ち上がる。

とりあえず麗しきフランス女王マリー・アントワネットが筋肉むきむきの狂戦士となりフランスの王政復古を目指して大活躍するお話、と言って気になるか気にならないかで買うかどうかを判断していいくらいに気持ちよくそういうお話でした。元はと言えばTwitterの一発ネタがバズってそのまま長編小説化したものということでいろいろな意味で細かい整合性が気になり始めると色々とアレなんですけど、読んでる時はそれを気にさせないだけのパワーがある物語だったと思う。考えるな感じるんだ。

ネタだけでは終わらせない、魅力的なキャラクター達が印象的

一度は処刑を受け入れたはずのマリーが、断頭台すらも跳ね除けて立ち上がったのはひとえに残された子どもたちのためでした。物語では彼女と子どもたちの絆も描かれていきます。普通の人間は断頭台を跳ね除けられないとかルイ17世のキャラが濃すぎるとかそういうことを考えちゃだめだ。

オドオドとした女性のような外見とは裏腹に処刑人としての高い矜持とこだわりを持つデオン、陽気なパリピとしてのキャラを貫きながらマリーの処遇とそれに対して何もできない自分に誰よりも憤る仕立て屋ローズ・ベルタン、誇り高き女騎士デオンなど魅力的なキャラクターが多数登場するのも楽しかったです。この時代あまり詳しくないのですけど、中盤は割としっかり歴史の掘り下げが行われていくのが印象的なんですよね。というかこの手の一発ネタ小説で巻末に参考文献出てくるのいろいろな意味でインパクトあるよな(騙されやすい顔で)。

何より、マリーの最大のライバルであり彼女と互角の格闘術を持つデュ・バリー夫人との対決はいろいろな意味で本作最大の見せ場と言っても過言ではなかった。生まれながらのお姫様と市井からの成り上がった烈女、フランスを揺るがした気高く美しい女ふたりが己の筋肉全てを掛けて戦う姿に燃えない訳がないですよね(?)。まあ正直筋肉用語がわからないので何が起こってるのかよくわからないところは多かったんですけど!!

やはり筋肉は全てを解決する

こどもたちを取り戻したマリーだったが、力を使い果たした直後を革命軍に狙われ、大ピンチに陥る。ところが、そこに「筋肉(フランス)」を臨む市民たちの声が響き渡り──革命を主導して漁夫の利で権力を狙う革命軍のトップと劣勢ながらも正しき筋肉(フランス)のため、ノブレスオブリージュを掲げてギロチンを振り回して可憐に舞うマリーのアツい最終決戦!!……のはずなんですけど始終飛び交う「パワーワード」の応酬で腹筋がつらい。筋肉を鍛えてないので笑いすぎて腹筋がとてもつらい。

中盤はマリーを取り巻く人間達の関係性や史実の掘り下げを交えつつ筋肉を押しつつもわりと堅実な物語が描かれていた印象なんですけど最後になってまた一気にめちゃくちゃ筋肉で押してきました。いやでも読みたかったのはコレという気がしなくもないのでいいんですけど最後の最後で力押しがすごい!!

良くも悪くも勢い重視というか、Twitter小説ならではのライブ感というか、微妙なスタンスのブレみたいなのが気になったりはしたのですがそれ以上に圧倒的なパワー(筋肉)と勢い(筋肉)で強引に押し流される物語を見ていくのは大変楽しかったです。Twitter連載ではアンケートで続きを決定するみたいなお遊びもあったみたいで、それはリアタイで追いかけてたら楽しかっただろうなあ。

やはり筋肉は全てを解決するんだよ(洗脳)


ボクは再生数、ボクは死

 

現実を凌駕するVRエロス&バイオレンス!
世界一の美少女になるため、俺は紙おむつを穿く‐‐。 しがない会社員の狩野忍は世界最大のVR空間サブライム・スフィアで世界最高の美少女シノちゃんとなった。 VR世界で恋をした高級娼婦ツユソラに会うため、多額の金銭を必要とするシノは会社の先輩である斉木みやびと共に過激で残酷な動画配信を行うことで再生数と金を稼ぐことを画策する。 炎上を繰り返すことで再生数を増やし、まとまった金銭を手にしたシノはツユソラとの距離を縮めていくのだが、彼女を取り巻く陰謀に巻き込まれていき‐‐!?

Vtuberや動画配信文化にはとんと縁がないんだけど、視聴者のテンポ良いツッコミやアカウント名にニヤニヤしながら楽しく読めました。エロス&バイオレンスが吹き荒れる展開の果てに待つ、それまでの展開とはうってかわってセンチメンタルなラストが印象的。

「紙おむつ」からはじまるエロス&バイオレンスなVR配信もの

バーチャル美少女な会社員おじさんが、百合ハーレムを築きながら本命の風俗嬢をモノにするため、同じVR空間で零細動画配信者をしていた会社の先輩(※VR中に使っていた紙おむつを会社のゴミ箱に捨てようとしてオタバレした)と共に過激な動画配信をする話。

最初からVR空間で百合の濡れ場がはじまってビビったし、職場の先輩・斎木みやび(イツキ)との出会いのきっかけが「紙おむつ」なのが強烈すぎる。そういえばMMORPG全盛期にありましたねゲームに熱中するあまりに紙おむつとか尿瓶とかそういう話……。

濃厚な肉体関係を築きながらもどこか人工的でプラトニックな「ツユソラ」との逢瀬、互いのすべてを曝け出しながらもキスひとつしていない斎木みやびとの気のおけない関係性。VR空間サプライムスフィアと現実。ふたりの「ヒロイン」とも言える女性達との対称的な関係性が面白かった。ともすれば仮想空間にふわっと飛んでいったまま戻らなくなりそうな物語でありながら、時折挟まれる現実での斎木とのやりとりで現実に引き戻されるさじ加減も上手いなあ。

仮想現実だからこその倫理観ド無視な展開が痛快

最初は自分の美少女アバターを愛でることと百合風俗に通うことにしか興味がなく、斎木の動画配信もお付き合いで手伝っていた忍が、ツユソラが移籍したエスコートサービスの指名料を捻出するため、彼女の配信を本気で後押しし始める。そんな折、ひょんなことから「人を殺す映像はウケる」と気づいてしまった忍のアバター「シノ」は、ちょっと問題ありなストリーマー達を「殺す」という過激な配信を行っていく。

サプライムスフィア内での「死」はキャラを操作している本人には基本的に影響ないが、アカウントが完全に削除されてしまう。これまでの名声や配信で得たリターンを失う──というそこそこ重たいリスクがある反面、主人公が「狩った」悪者たちが雑に転生(=新垢作成)してはまた主人公に狩られてるの、昭和アニメで毎週主人公たちにぶちのめされる三流悪役っぽくてわらってしまう。たとえ仮想現実だとはいえ娯楽としての殺人動画配信という展開にはギョっとしてしまうんだけど、敵が割と雑に転生して戻ってくるのでそこまでの重さは感じなかったというか、一種のギャグ漫画時空的ですらありましたよねこれ……。

性格に問題はあるが何気にゲームや戦闘面でのスペックが激高い「シノ」が、人気デザイナーが手掛けた一点ものの美少女アバターで配信者的にも性的にも無双していく展開がクレイジーでとにかく面白い。そしてかっこいい!作中の女性キャラであれば見境なくほぼ全員寝たまであったし、シノに抱かれた女達が「オンパコフレンズ」と呼ばれて親衛隊みたいになっていくのわらってしまうんだけど、それに説得力があるほど「シノ」がかっこいい女だから困るんだよな。

でもそれだからこそ、動画配信仲間のイツキ&キャッシュマネーをはじめとした作中でも数少ない「寝てない女性達」との関係が深堀りされていくのが印象的でした。

うってかわってセンチメンタルなラストが印象的

ある時、突然ツユソラが行方を晦ませてしまう。そこにはツユソラのリアル元カノを名乗る女性・マリカワの影が──。ツユソラを巡ってマリカワと対立した「シノ」は、最近リリースされたばかりのゲームで対決をする事に。しかしそれは、ゲーム内の死がアカウント削除に直結するデスマッチだった……。

マリカワとシノ達の対決、とにかく視聴者からのツッコミの使い方が痛快。いやほんとちゃんと見たこと無いんですけどVtuberの配信ってこういう感じなんだろうな〜これは面白いよな〜という再現度の高さが凄かったです。そして本垢で参加しているシノ達とは対称的に、捨て垢で参加するファン達のアバター達が雑に死んでいくのがめちゃくちゃ面白い。捨て垢の人たちのHNでいちいちわらってしまう。最近のソシャゲでたまにみる、残念な名前の人達だ!!

激戦の末に明かされた「ツユソラ」の正体。儚く消えていく彼女と、そんなセンチメンタルな気持ちをぶち壊すかのようなその後の展開が凄い。世界中に拡散していく「ツユソラ」にショックを受けながらもいつか「シノ」も彼女の後を追おう、拡散された中で今度こそ結ばれよう──という展開が、なんともロマンチックじゃないですか。

この物語って主人公・忍の一人称でありながら、思えばVR空間内の行動はどこまでも第三者「シノ」のものとして描かれてるんですよね。忍にとって「シノ」は自分であり、それでいて自分ではない、常に自分とは別のところで動く存在。そして自分を超えていく存在──それを印象づけるようなラストがすごく印象的でした。

それにしても、「中の人」が男の女性キャラと実はオンパコ未遂して、リアルで会う羽目になり気まずい雰囲気になってるのわらってしまった。これオンパコしてたらどうなってたんでしょうね。いや、シノだって男なわけだし中の人的に男×男になってる可能性を一度でも想像したことがないとは言えないですけど、その相手とリアルで会うことは全く考えてなかっただろうからな……百合無双してた弊害がこんなところに。


ようこそ実力至上主義の教室へ 2年生編3

 

大人気学園黙示録が2年生編に突入! 第3弾!
常夏の無人島を舞台に、全学年で得点を競い合うサバイバル試験がついに開始された。得点を得る方法は2つ。毎日一定時間ごとに指示される指定エリアを訪れることと、無人島内に設置された課題を条件通りにこなすこと。グループ人数が多いほど有利かつ、退学の可能性も減る試験内容。2週間という長丁場かつ、水や食料の補給も考える必要のある過酷な試験。さらに月城理事長代理は学生同士の小競り合いを試験中は容認するらしい。そんな中単独行動で状況を窺う綾小路だが、1年Dクラスの七瀬翼が同行を申し出る。メリットのない奇怪な行動だが七瀬の出方を知るため綾小路はそれを受諾。2人組での無人島走破が始まる!

下位チームには「退学」が言い渡される、人死にはないけどこの物語においての生死が掛かった生存戦争が熱かった!敵同士でありながら奇妙な連帯感で結ばれていく綾小路と七瀬の関係がめちゃくちゃ面白いんだけど、肝心の謎はさらに混迷の様相を見せてきて一刻も早く次巻が読みたい。ところでピンナップに全エリアが記載された無人島の地図ついてて「バトルロワイヤル」を思い出したアラフォーは挙手してほしいです。

再びの無人島を舞台に全校生徒が繰り広げる「生存戦争」

いよいよはじまった無人島でのサバイバル特別試験。正体のわからないホワイトルーム生を警戒する部分もあり、グループを組まずに個人での高得点を目指す綾小路。一日四回指定される指定ポイントへの移動ミッションをこなしながら、周辺で出題される「課題」に挑戦していくが、思わぬところで苦戦を強いられて…!?

綾小路が単独で試験に挑む、という展開からして初っ端からめちゃくちゃ人間捨てたムーブが見られるのでは!?と密かに期待していたのですが、試験の序盤はどうしても数の暴力には勝てなかったり、予想外の課題に直面したりと珍しく綾小路が苦戦している姿が見られるのが面白かったです。何よりアニメクイズで苦戦する綾小路が面白すぎる。確かにそういうの苦手だろうなっていうの解りますけどここまでポンコツになってる綾小路の姿を見れるのってこのシリーズでも金輪際ないのでは!?クイズ聞いて完全に思考停止してるの爆笑してしまった。

課題への挑戦権が早いもの勝ちだったりあらゆる方向の知識が試される内容になっているのは実にこの学校らしい展開だなあと思うし、綾小路のような単体ハイスペック人間が無双しづらい構造になっている試験が凄く考えられてるなあ。いやそれでも単体で無双してる高円寺は一体何者なんだって話なんですが。というか今回改めて高円寺の本気が描写されたわけなんですけど、普通にこいつ性能的には綾小路の上位互換では…!?七瀬が付いてきてなかったら綾小路ももうすこし良い勝負をしたと思うけど、高円寺の点数に迫れたとはちょっと思えないし、なにより直接対決で普通に負けてるんですよね今回。綾小路が(自らがホワイトルームで磨いてきたであろう分野において)負けるのって初めてじゃない!?いや綾小路のことなので普通に実は手加減してたとか言い出しそうですけど!!

何者かが故意に起こした事故で生徒がリタイアという展開があったりして不穏な空気が立ち込めてはいるのですけど、これまでずっと匂わされていた池と篠原の恋愛事情に踏み込んだり、軽井沢との短いけれども甘〜いやりとりがあったりで高校生男女の甘酸っぱい展開が多いのも実に夏休みの無人島という感じで楽しかったです。素直になれない池が初対面の七瀬に叱咤され、須藤をはじめとした友人たちに支えられながらも不器用ながらも一人前の「男」になろうとする展開が大変アツいし、友達の気配りも出来るようになってきた須藤がいい男過ぎて惚れる。あと、物凄い軽いノリで唇を奪っていく綾小路マジで悪い男だなとおもうんですけどそれはそれとして軽井沢さんと綾小路の挿絵何この……何!?こんな柔らかい表情した綾小路見たことない!!!!!

綾小路と七瀬、敵同士のふたりに生まれた奇妙な関係性が面白い

綾小路と行動を共にすることになった七瀬が、敵意を抱きつつも綾小路の才能に触れるたびに「やはり先輩はすごい」と敬意を表し、一方で「足手まといになるのは悔しい」と対抗心を燃やし、負けるまいと足掻いていく姿が印象的でした。宝泉寺と組んで綾小路を退学に追いやろうと暗躍したこともありましたが、本来の彼女はどこまでも真正面から綾小路を排斥することを望んでいるんですよね。一方、そんな彼女をぶっちゃけ足手まといに思いながらも切り捨てようとはしない綾小路どうしたの……優しいじゃん………どんな企みが!?(蘇る一年生編3巻のアレ)

綾小路清隆という存在によって人生を歪ませられた七瀬翼。彼女がずっと持ち続けてきた鬱憤と愛憎を綾小路が真正面から受け止めるクライマックスがマジ熱いしかっこいんですけど、その受け止め方がスペック高すぎて正直ジワジワ来る。いやもう今回もイヤになるくらいハイスペックでしたねこの男は!!アニメクイズはポンコツだったけどな!!

ますます混迷を深める「ホワイトルーム生」探し

一方、肝心のホワイトルーム生探しについて結局この巻では七瀬の正体くらいしか進展がなくてむしろ更に混迷としてきた印象すらある。個人的にあやしいなあと思っていたのは椿で実際に一年生グループを率いているのは椿っぽいけど、他の奴らも胡散臭すぎるんだよなあ。ホワイトルーム生とは違う気がするんだけど八神が俄然キナ臭く思えてきたし、天沢の不気味な言動もヤバかったし、今回一切姿が見えなかった宝泉の動向も気になる。一年生の動向と、ここのところほとんど動きをみせなかった櫛田の動きが繋がるみたいなのは楽しかったけど、一年生編である意味ずっと不気味な裏ボスでありつづけていた彼女が完全に噛ませ犬になってるのインフレ感あるなあ。これ一周回って共通の敵が出てきてヒロイン返り咲きみたいな展開あるんでしょうか。

全く試験中の動向が伺えなかった堀北、いろいろな意味で危険が危ない一之瀬、不気味な伏線だけ貼っていった南雲会長などまだまだ明かされてないエピソードが多すぎて、多分この話一冊で終わらないだろうな〜とはおもってたけどやっぱり次巻に進むだった!!早く続きが読みたい……!!

それにしても龍園と葛城の息が合いすぎてて石崎の心配をしてしまう。なんなんですか…利害関係の一致からうまれたビジネス主従は…完璧すぎる……薄い本出ちゃう……。


魔王学院の不適合者 〜史上最強の魔王の始祖、転生して子孫たちの学校へ通う〜

 

偽りの魔王から世界を解き放つ--。「小説家になろう」の大人気作登場! 二千年の時を経て蘇った暴虐の魔王――だが、 魔王候補を育てる学院の適性――《不適合》!?
人を、精霊を、神々すらも滅ぼしながら、延々と続く闘争に飽き、平和な世の中を夢見て転生した暴虐の魔王アノス。しかし二千年後、転生した彼を待っていたのは平和に慣れて弱くなりすぎた子孫たちと、衰退を極めた魔法の数々だった。 魔王の生まれ変わりと目される者を集めた“魔王学院”に入学したアノスだが、学院は彼の力を見抜けず不適合者の烙印を押す始末。誰からも格下と侮られる中、ただひとり親身になってくれる少女ミーシャを配下に加え、不適合者(魔王)が魔族のヒエラルキーを駆け上がる!! 「小説家になろう」にて一年足らずで脅威の37,000,000PVを叩き出した話題作が登場!

前から気になってる一冊だったんですがアニメ化を機に手に取りました。凄い綺麗にまとまっててしかも2巻が読みたいと思わせてくるシリーズ第一巻ですごくよかった。暴君のように見えて、どこかマイペースで仲間想い・家族思いな内面が見えてくるアノスのキャラ、好きだな〜。

2000年後に転生した魔王が繰り広げる人情味あふれる俺TUEEもの

戦いばかりの毎日を憂いて二千年後に転生した魔王アノス。ところが、二千年後の世界で魔法は大きく衰退し、実力よりも血統が尊ばれ、極めつけに「魔王」の名は別人のものにすげ替えられてしまっていた。魔王の生まれ変わりと目される魔族達を集めた学院に招かれたものの、アノスはただひとり「不適合者」の烙印を押され、学園の中で疎んじられる存在となってしまう。

圧倒的な力を持つ二千年前の魔王(の転生体)が、不適合者の烙印を押されながらも魔族たちの集まる学院の中で無双するお話。生まれた途端に自分で魔法を使って成長してしまったり、入学試験で対戦相手になった魔族をゾンビ化して兄弟で殺し合わせたり…と、“強い”展開の目白押しで俺様魔王の理不尽俺TUEEか!?と思ったのですが、読み進めてみるとどこかマイペースで情に厚い魔王アノスの行動倫理、本当の人物像が見えてくるのが印象的でした。

自分が舞台から消えることで人間と魔族の戦いを収めようとした魔王アノス。これに限らず暴虐の魔王という暴力的な二つ名に似合わず、かなり理性的に「魔族達の王」をしていたことが感じられるんだけど、その一方で「寝ぼけて都市を消し飛ばした話」を筆頭に魔王時代のエピソードの数々が一定確率で残念というか物凄く等身大の人間像らしさを感じて親しみが湧くというかいやウッカリで消し飛ばされた都市マジで笑えねえだろというか…。自分の後釜に遺した魔族達も名前付けないで放置したとか割と手口が雑じゃない?大丈夫??

あと「逆らうやつは皆殺し」「3秒以内に蘇生させれば大丈夫の3秒ルール」などの一連の魔王ジョークは前世でもジョークとして受け取られてない気がするんですけどこの人ひょっとして説明が下手で一部の部下に真意を理解されなくていらん恨みを買うタイプでは!?

ヒロインが主人公に惚れるのに説得力があるラノベは良作

入学試験で意気投合し、アノスが学園内で浮いた立ち位置になっても変わらず仲良くしてくれるミーシャ。そしてミーシャのことを「人形」と呼び何かと敵意を向けてくる、ミーシャの姉・サーシャ。物語のヒロインであるふたりがアノスに救われるまでの経緯がものすごく丁寧に描かれていて、そりゃふたりともアノスに惚れるよなって思えるのがとても良かったです。避けることの出来ない過酷な運命を背負ったふたりを救うため、アノスが奮闘するクライマックスの展開は本当に胸熱だし、出会っていくらも経たないふたりにそこまでアノスが親身になってあげられるのは彼自身が物凄く「家族の絆」を大切にしているからだとおもうんですよね。子供は親に愛情を注がれて育ってほしい、兄弟姉妹には強い絆があってほしい──という願いのような信念のようなものが彼の根底にあって、それを疎かにする者は許せないし、その絆が理不尽にも壊されようとしているなら手を差し伸べよう、みたいな。

というか、頻繁に挿入される実家でのアノスの様子がほんとに微笑ましい。魔王然として年相応以上の立ち振る舞いすら見せるアノスが実家では「まだ生まれて1ヶ月の可愛い坊や」として扱われているのが、正直かなり面白いんですけど、そんな両親をうっとおしく思うどころかミーシャやサーシャと仲良くなればいそいそと実家に呼んで母に手料理を振る舞わせるアノス、めっちゃ両親のこと好きだよね。最初に一人で学院にいこうとしたのも両親を気遣ってのことのようだし、息子のためであれば人間の世界から魔族の国まで付いてきてくれる両親も相当な親ばかだけどアノスくんも両親大好きすぎじゃない????(2回目)

学園内でのカーストやらなにやら割とシビアな展開も多かった中、ひたすら実家パートが癒やしでした。

きれいにまとまってる上に次巻への引きも忘れないシリーズ第一巻

ミーシャとサーシャの姉妹の問題を解決し、タイトルである「魔王学院の不適合者」という言葉への伏線まで最後の最後でしっかり回収していく、一冊ですごく綺麗にまとまってる1巻だった。その一方で魔王の名をすげ替えてかつてのアノスの部下を意のままに操っていた「敵」の存在も示唆されて、続きへの引きもわすれない展開がすごい。次巻も楽しみです。


スキルが強すぎてヒロインになれません

 

クラスメイトの高遠くんに片思いをしている女子高生のアリアは、今日もいつも通り部活で活躍する彼を遠くから見守るはずだった。ところが、彼女は目撃してしまった――彼が勇者として異世界に召喚されそうになっているところを!? とっさに追いかけたアリアは、神様の恩情で勇者のおまけとしてついていけることになったけれど……。神様がくれた「人類にできることは何でもできる力」が強すぎて、可愛さもモテる要素もないんですけど!? 恋する乙女なのにヒロイン感0な少女のスキル無双異世界召喚ラブファンタジー!

片思い中のクラスメイト・高遠くんが「勇者」として異世界に転移するところを偶然目撃したアリア。半ば強引に勇者(高遠)のおまけとして同じ世界に飛ばしてもらえることになった彼女は、その際に神様から自分の『愛読書』をモチーフにしたスキルを授かる。だが、本なんか読まないアリアの愛読書として選ばれたのは、偶然自室にあった某「世界記録を集めた本」で……。

恋する女子高生(じんるいさいきょう)vs異世界ファンタジー

ギ○スブックに記載されている記録ならばなんでも再現できるというチートスキルを授かってしまった女子高生が、憧れのクラスメイト男子と共に魔王を倒して異世界を平和にしようと頑張るお話。相手は剣も魔法もある異世界ファンタジーの世界なのでギ○スがそこまで強いのか!?と疑問に思ったのもつかの間、そこには世界記録を全て自分のものとした女子高生(ルビ:じんるいさいきょう)が爆誕していたのであった。普通にドチャクソ強かった。

「魔法に対する防御手段がない」という弱点こそあれど、トンデモ身体能力のオンパレードで普通に一人で無双できそうな私TUEEっぷりと、それとは裏腹に「こんなゴリラになってしまった私を憧れの彼に見せたくない!!!」と思う乙女心が錯綜していくのがめちゃくちゃ面白かった。正統派な異能スキルを手に入れた憧れの彼を前に、必死に自分の脳力を隠しながらバトルとなれば高遠くんをも圧倒してしまいまた頭を抱える姿が可愛い以上に面白すぎました。

不器用でポジティブな恋愛模様がたまらない

高遠君が好きすぎて異世界にまで飛び込んでいってしまったアリアが、高遠君とちょっとした接触をするたびに貪欲に喜んでしまう姿がめちゃくちゃに可愛い。一方、一緒に旅をしていく間に少しずつアリアの素直で善良な人間性に惹かれていく高遠君が徐々に独占欲をこじらせていく姿がこれまた微笑ましい。そんな心配しなくてもアリアは最初から高遠君ひとすじだから…!!とアドバイスしてあげたくなるけど、アリアがまた無自覚で次々と旅の最中に出会った男性達と仲良くなってしまうので高遠君の悩みはどこまでも尽きないのであった。

旅を続けるうちに高遠君が完璧な王子様なんかじゃないってことがわかってきて(というか中盤以降はアリアの一人称を持ってしても隠しきれない高遠君の残念さが大変微笑ましい)、それでもありのままの彼が好き、新たな一面が見えて嬉しい、仲良くなれて嬉しい!と、どこまでも自分の恋に対してポジティブなアリアの姿がポイント高かったです。船酔いしてる高遠君とアリアのやりとりとか可愛くて好き。あと、操られたアリアを高遠君が正気に戻す所、高遠君が微妙にわかってなくて無自覚ああいうことやっちゃってるの本当にニヤニヤが止まらないんですけど!?アリアの第一声がわかりすぎる。

私達の冒険はまだまだこれからだ

高校生男女の恋の甘酸っぱさ、俺TUEE的な爽快感を損なわず、でもしっかりと歯ごたえのある魔族達とのバトル、何よりもそこかしこに散りばめられたラブコメ要素がひたすらに楽しいお話でした。普通に単巻完結かな?と思っていたら思い切り続いたので個人的には是非2巻も出してほしいです。アリアのスキルもまだまだ底が知れないので、さらなるトンデモ成長を期待しちゃう。

まだなろう小説の書籍化で1年位のブランクなら慌てる時間じゃないはず……。


アルバート家の令嬢は没落をご所望です2

さき
 

表向きは才色兼備の大貴族の令嬢、本性はコロッケ好きで変わり者のメアリ・アルバート。従者のアディは唯一の理解者で、いつも一緒だった。実はアディはメアリにずっと片想いしているけれど、メアリはまったく気づかない。そんな中、メアリがアディを置いて留学することになって!?「どうか俺だけを、一人の男として隣に置いてください」長年のアディの想いは実るか否か!?爆笑胸キュンラブコメ、見逃し厳禁の第二巻!!

ゲームの通りに没落を目指していたはずなのに、なぜか没落フラグを回避してしまったメアリ。それでもいつか北の大地で渡り鳥丼屋を開く日を夢見て、経営学を学ぶため隣国に留学することに。従者・アディと離れ、一人でやってきた大学で彼女を待っていたのは乙女ゲーム続編のヒロイン・悪役令嬢「達」で…!?

主人公無関係の所で繰り広げられる転生令嬢達の闘い

乙女ゲーム続編のヒロイン・リリアンヌと彼女のライバルにして没落予定の悪役令嬢・カリーナ。そして記憶を持たぬその他のライバル令嬢達。前世の記憶を持つ二人がメアリの横で繰り広げる闘いが地味に熱い。なぜリリアンヌは無理をしてまで難易度の高い「逆ハーレムエンド」を目指すのか。そして彼女と対立するような姿勢を見せながらどこか攻めが甘いカリーナの思惑は…。割と正統派に悪役令嬢転生モノやってるし、終盤はなかなか痛快などんでん返しが待ってるし……で楽しかったです。まあこの辺全くメインじゃないんですけどね!!

本編的にはメアリになつくライバル令嬢のひとり・気の弱い少女パルフェットとメアリの友情の萌芽がメイン。アリシアとは真逆の、メアリが「苦手なタイプ」である彼女が少しずつ精神的に成長していく姿と、次第に彼女をかけがえのない友人と思うようになるメアリの心の動きが印象的でした。悪役令嬢達の戦いは本当にメアリの関知しない、ストーリーの裏で話が進んでいて笑ってしまった。潔いな!!

急転直下なイチャイチャ展開にニヤニヤが止まらない!

アディ不在&乙女ゲーム続編のヒロイン達に囲まれた大学生活。そこかしこで無意識にアディの姿を探してしまうメアリの姿にニヤニヤしていたら…軽い口約束を発端に言質を取った周囲が一気に外堀を埋めていって、結婚までの展開が早いマジ早い。すったもんだでアディからの気持ちを聞かされ、自らの気持ちをようやく自覚したメアリがこれまでとはうってかわってお花畑状態でノロケ出すのが可愛いすぎるし、これまで何を言っても暖簾に腕押しだったアディが色ボケ状態のメアリに振り回されるのはなんかもう一周回って面白すぎる。アディは今回本当に強く生きてほしい。

アルバート家ほどの貴族のご令嬢が一介の従者に過ぎないアディと何の障害もなくくっつくのには正直ちょっぴり違和感があるんですけど、よく考えれば現在のアルバート家はこれ以上を望むまでもなく大安泰、完全なパワーバランス取れてしまってるわけで。ある意味「没落を目指していた」頃のメアリがここに辿り着くための種を蒔いていたとも言えるんですよね。「メアリがパトリックと結婚しなかったからこそ生まれた益があった」という考え方は実に貴族的で良いなあと思う。

パトリックがいい仕事した…(全方位に)

1巻からメアリとパトリックの「恋愛には至らなかったけど良い関係」、というのがとても好きだったんですけど、今回の二人の関係が本当に好きで好きで……。おそらく同じ視点で、同じ考えを共有できる随一の存在。でもお互いに選んだのは別々の人で、それを後悔するつもりはない。笑顔で「アリシアとアディがいなければ結婚していたと思う」と言い合う場面が、もうひたすらに好きすぎて……。

更に今回は、前巻ではあまり絡みのなかった気がするアディとパトリックの関係がとても美味しかったです。自称「アディ応援団長」を名乗り出したときには噴いてしまったけど、それに違わぬ活躍ぶりが眩しすぎる。この人実はアディの事大好きすぎない?そして式当日はすっかりアディを弄って楽しむポジション代表になってるの面白すぎました。

それにしても、結果論だけど今回は殆どの事件がパトリックを発端にして発生してたわけで、結構な人数が破滅してることを踏まえると色んな意味でこの次期王子が魔性すぎるな……。


─異能─

 

この世界には確実に主人公側の特別な人間がいる。でも、それは僕じゃない。 自分の凡庸さを自覚している大迫祐樹には成績優秀で野球部エースの赤根凜空と学校一可愛い月摘知海という友人がいる。――自分は二人の間を取り持つモブキャラなのだ。しかしある日大迫は知海と二人で映画に行くことになってしまう。「デートだね」とはにかむ彼女に戸惑いながら帰宅した大迫の前に、見知らぬ少年が現れて問う。「君の願いは、なにかな?」それは異能を秘めたモノたちへのバトルロワイヤルへの招待だった。「僕……の中にも異能があるのか?」だがそれすらも完全な思い違いだったのかもしれない――!! 予想を覆す怒濤の展開。審査員評が完全に割れた事件的怪作、刊行。

自分には不釣り合いと思うほどの美男美女の友人二人に囲まれつつも、平凡な学園生活を送っていた祐樹。ところがある日、異能を持つ者達が殺し合うデスゲームに招待されてしまった。異能など持つはずもない彼の前に現れた『対戦相手』は、意外な人物で……ひとつの街を舞台に繰り広げられる異能系デスゲーム。

先が見えそうで先の読めない展開が面白い!

週に一度、くじ引きで選ばれた異能者ふたりが殺し合いをする。最後に残った一人にはなんでも願いの叶う「賢者の石」が与えられる──という、異能を使ったデスゲーム。そして同じように週1回ペースで発見される、奇妙な死体。誰が「異能者」か、誰が殺人者なのか……謎に明確な答えが与えられないまま、様々な人物の視点から物語は進行する。

割と序盤から先の展開に対する様々な『匂わせ』が行われていて、読んでいくと「このキャラが異能者なのでは?」「このキャラの能力って○○では…」「あっこいつ黒幕っぽいな!」とかわかるようになっている。うっすら思い描いていた展開を裏切らずしかしそれ以上の展開で裏切っていく物語が楽しかった。なんというかこの物語、情報の出し方がめちゃくちゃ上手いんですよね。先の展開がわかるけど同時に読めなくて、先の展開に惹きつけられてしまう。

続々と消えていく異能者達の、多種多様な関係性

章毎に移り変わる「視点」と、そのたびに別の角度から照らされて立体感を帯びていく物語。恋愛、友情、執着…と、ゲームの内外で現在進行系で形作られていく因縁が少しずつ彼らを結んでいく姿が印象的。そして、それは複数視点での群像劇のようでありながらどこまでも「大迫祐樹の物語」であるんですよね。全ての登場人物の“想い”が、これまでの関係性が集約されてラスボスに立ち向かうための“力”となる。そんなクライマックスが最高にアツかった。

物語とはあまり関係がないのですが主人公・祐樹と彼を○○した親友・凜空の関係はもう少し掘り下げが見たかったというか物語開始時点での絶妙に気持ちが双方に向いてるけど噛み合ってない二人の関係、もう少し読みたかった気がします。いやあでも×んでから両想い(違)になる関係性、イイヨネ!!

微妙にスッキリしない終わり方にもだもだ(それが良い)

ゲームを主催していた超越的な存在“和抄造”を倒して、一件落着──と思ったのですが、エピローグでまた謎をぶちこんでくる!!例によって予想はできるけど確信は持てない、すっきりしない終わり方がまた実にこの物語らしいなあと。このまま終わっても全然気にならない(それが良い)感じはありますけど、売れ行きが良かった時に続巻出すのための伏線…だったりするのでしょうか。そういえば、最後に匂わせされた“彼女”だけは、メインキャラの中で唯一物語の語り部になっていないんですよねぇ。電子書籍版の特典短編がまたその疑惑を補強するような内容で気になる。

1巻で綺麗に纏まってるような、次巻を出してこの謎に答えを与えてほしいような。いや、本当に楽しかったです!