アルバート家の令嬢メアリはある日突然前世の記憶を思い出した。しかもここは乙女ゲームの世界で、悪役令嬢である自分の失敗によって実家は没落し、メアリは僻地に追放されることになるということも。「それなら派手に没落してやるわ!」とゲームのヒロイン・アリシアにつっかかりはじめるが、いつも失敗してしまい…。
破天荒だが思慮深くて気高い主人公がめちゃくちゃかっこいい!
主人公のメアリが思い出した「前世の記憶」を元に乙女ゲームの展開をなぞりながら実家を没落させようとするけど、ヒロインから嫌われるどころかどんどん好感度が上がっていってしまうのがあまりにも楽しいラブコメ。とにかく他人が不幸になるようなことを望まないメアリの行動は原作通りの悪……どころか完全にただのいい人だし、悪役になれないことを自覚しながらもひたすら没落道を突っ走ろうとする姿が微笑ましい。一見破天荒な残念キャラのように見える彼女だけど、実際は貴族としての本当の気高さと大局を見極めることが出来る視点を持っている。貴族らしくないといわれる行動も家族や友人を慮った結果であることが多いし、没落したいという願いも彼女なりに実家のことを考えた上でそれが家のためになると判断しての行動であったりする。マイペースでありながらも自己の信念に基づいて行動する彼女の芯の強さが印象的でとにかくかっこいよかった。ノブレス・オブリージュの化身か。
二重に展開される、身分違いの恋に胸キュン。
主人であるメアリに不遜な態度を取りながらも影に日向に支える従者アディとの関係性も良かった!お互いに遠慮のないテンポの良い主従の掛け合いを見ているだけでもニヤニヤしちゃうんだけど、そんなアディが誰よりもメアリのことを大切に思い、身分違いの報われぬ恋心を抱いているというのがたまらない。そんな彼が庶民出のアリシアと生徒会長のパトリックの身分違いの恋にやたらと入れ込んでしまうのには甘酸っぱいものを感じてしまう。アディのいない未来を想像した途端、いつもの自信満々な態度はどこへやら不安にかられてしまうメアリの姿が最高に可愛いし、本当の思いを伝えることが出来ないアディが「どんなことがあっても一緒にいる」と言い続ける姿に胸が熱くなりました。
「ゲーム」の記憶と現実世界との関係は…
ゲームでの「イベント」をなぞりつつ、しかして微妙に全く同じというわけではない展開が印象的。何度真っ直ぐにしようとしても戻ってしまうメアリの縦ロール、経緯が多少違っていても絶対に発生するゲームと同じシチュエーションのイベントなど、世界に強制力が働いているような気がして。それでいて本来のゲームとは違う部分もかなり多いというか、まずメアリの人格が全くの別人なわけですが……(前世の記憶は一切元の人格に影響を及ぼしていないため)。
このへんは1巻では明かされなかったけど、今後明かされていくのかな。楽しみです。