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美少女揃いの英霊に育てられた俺が人類の切り札になった件

 

美少女揃いの英霊に鍛えられ、「最弱兵器」は最強へ進化する!
魔術学園を退学寸前のウィリアムは、千年前の戦争で活躍したという美少女英霊たちと出会う。「弟子となり最強を目指せ」と告げる彼女たちを疑うも、その指南により彼の秘められた才能が次々と開花する――!

ウィリアムは国内で唯一魔力を一切持たない人間として実家からは追放され、入学した魔導学園では『最弱兵器』とバカにされてきた。次の試験で結果が出せなければ退学……と言われ、悪友から唆されて学園内で封印されているという噂の「超越の指輪」を探しに行くが、そこで本物の指輪とその中で眠っていた美少女英霊達を呼び覚ましてしまい……!?

「最強」を自覚させないように美少女達が一生懸命頑張る無自覚系無双ファンタジー

面白かった〜!!タイトルだけ読むと美少女に囲まれてウハウハな俺が成り上がっていく系無双ファンタジーみたいな印象を受けてしまいがちなんですが、その実態は比類なき才能を持った主人公にその自覚を持たせないようにしながら美少女英霊たちがあの手この手で修行させようとするお話でした。

実は美少女英霊達は覚醒するきっかけを作ってあとは戦うためのお手本と修行する環境を与えただけであり、魔術に覚醒した後は師匠達の戦い方を見様見真似でどんどん自分の物にしていってしまう主人公のウィリアム。ただし、とにかく上昇志向が皆無な彼は「強くなった」と自覚してしまうとサボりはじめてしまうため、自分の成長をある程度は感じさせつつまだまだ平均以下だと誤解させて過酷な修行をさせるということに一生懸命な英霊達の姿に笑ってしまう。その流れでお色気攻撃も仕掛けてくるけど、絶妙に噛み合ってないのがシュールでした。そして彼女たちに騙されて自分が雑魚だと信じ込んで「他のやつらはもっと凄いんだろうな」と素で言ってしまう主人公(いくらなんでも学園で何も学んでなさすぎでは!?)と彼を取り巻く友人達(主人公が実は凄い実力を隠し持っていた!と持ち上げてくれる)のすれ違いで更に笑った。

そんな無自覚無双っぷりがひたすら楽しい前半ですが、後半は無自覚のまま現代の誰よりも最強になってしまったウィリアムでなければ倒せない強敵が現れて……自分の実力を無理矢理にでも認識させられ、改めて戦う覚悟を問われる羽目に。自分の実力にずっと無自覚でいられたのも、学園最強になった状況でも「雑魚」といわれて違和感を持てなかったのも、全ては幼い頃から魔力なしの最弱兵器としてバカにされ続ける境遇から自分を護るために無意識に構築した自己防衛だったんだなあ。人間そのものに恨みを抱いてもおかしくないような状況で、決して対等とはいかなかったけれど「友人」として接してくれた彼ら彼女らを護るため、彼らに恥じない自分になるため戦う覚悟を決めるウィリアムの姿が印象的でした。そして対処出来る人間が他にいないとしても決して無理矢理に戦わせるのではなく、自らの生命を掛けてウィリアム自身の意志を尊重してくれようとする英霊達と、幼馴染ヒロイン・セシリーの心遣いが胸に沁みる。

どんな辛い目にあっても捨てることができなかった「大事な人を護るために強くなる」という幼い日の約束。その約束の通り、セシリーの絶体絶命のピンチに颯爽と駆けつけるウィリアムの姿がめちゃくちゃアツかったです!

それにしても前半のキモだった「無自覚無双ファンタジー」的な要素は1巻で綺麗にカタがついちゃった感じだけど、2巻からどうするんだろう?1巻は割りと学園内で話の規模が収まっていた感じでしたが次巻は色々と状況が動いていくようなので、次巻も楽しみにしたいです。


2023年に読んで面白かったラノベ10+1選

今年は!書いたぞ!!年内になァ!!!
というわけで今年もあと2時間ほどですがいかがお過ごしでしょうか。私事ながら昨日コミックマーケット103に遊びに来てくださったかた、ありがとうございました。なんだかんだで珍しく年末が早めに収まったので久しぶりに旧年中に今年のまとめを書いております。

本年、概ね50冊程度とちょっと控えめな読了冊数に収まってたのですがその合間に小説家になろうでひたすらシャンフロを読んでたりしたので読書ペース自体は落ちていないハズ……(どちらかというとブログの更新頻度の低下が酷かった)とはいえ結構わかりやすく手を出せないまま終わった新刊・脱落したシリーズが多かったので来年はもう少したくさん読んでいけるといいなあ。過去作やなろうにも読みたいものがたくさんある……。

今年読んで面白かった新作・新シリーズ

かざなみ「私と陛下の後宮生存戦略 ‐不幸な妃は巻き戻れない‐」→感想
このイケメンの顔芸がすごい2023大賞
死ぬと1日前に巻き戻る能力を持つヒロインとそのループを唯一感知出来る皇帝陛下が運命の出会い!キレ散らかしながらヒロインのデスループを阻止するイケメン陛下のめくるめく顔芸!!!冷静に考えるとめちゃくちゃ重い設定なのにそれがひたすら笑いに代わっていくというとんでもないお話でした。イケメンの奇声と顔芸がみたい人は是非。コミカライズも最高でした。
夕鷺 かのう「かなりや異類婚姻譚 蛇神さまの花嫁御寮」→感想
ヤンデレヒーローの執着で夜も眠れないけど最後は暴力で解決する
婚約者に惨殺される未来を回避するため、未来視の能力を持つヒロインが奮闘する異類婚姻譚。好きになったら一途すぎてヤンでる旦那様を始めとして曲者揃いの登場人物達に頭を抱えながらも必死にフラグ管理する姿が最高に微笑まかわいかったです。やたらスッキリして終わるラストめっちゃ好き。
ゆいレギナ「100日後に死ぬ悪役令嬢は毎日がとても楽しい。」→感想
約束された「死」に向かって凛々しく歩む姿が美しい
100日後に約束された自らの終わりを受け入れて自らが愛した人々が少しでも笑って暮らせるよう奔走する令嬢の物語。気高く美しいその生き様が最高に良かったし、彼女の死を大きな心の傷としながらも彼女の遺志を受け継いで生きていく周囲の人々の姿が印象的でした。2冊で綺麗にまとまってるのもポイント高かった。
赤城 大空「【悲報】お嬢様系底辺ダンジョン配信者、配信切り忘れに気づかず同業者をボコってしまう〜けど相手が若手最強の迷惑系配信者だったらしくアホほどバズって伝説になってますわ!?〜」→感想
タイトルの圧が強すぎておハーブですわ
主人公視点だと「普通」に思えることが、コメント欄の視点を通すと冗談みたいな「規格外な無双プレイ」になっちゃってるギャップがシンプルに面白く、めちゃくちゃ笑えるお話でした!(タイトルが長すぎるのでコメント短め!!)
朝依 しると「VTuberのエンディング、買い取ります。」→感想
すべての「推し」で悩めるオタク達に捧ぐ物語
炎上によって「推し」という心の支えを失った主人公が炎上ブロガーとして様々な問題を抱えるVtuberに引導を渡していく物語。物語を通して見えてくるオタクの数だけある「推し」の形、それに引導を渡しながら自らの心に何かを問い続ける主人公の姿が印象的でした。1巻単体でも良かったけど2巻の続け方がまた好きで、続きが楽しみ。
下垣「自作3Dモデルを売るためにサキュバスメイドVtuberになってみた」→感想
クリエイターの難しさと世間の狭さを実感する物語
クリエイターとして成功したいのにVtuberとして大成功してしまい…という葛藤が大変良かったし、それはそれとして男子高校生がエッチな見た目のVtuberとしてえっちな目線を向けられるのはえっちで良かった。ネットとリアルが密接に絡み合う世間が狭い展開も楽しかったです。ところでカクヨム見たら2巻には女装ネタが入るそうなんですが続刊はまだですかね???

既存シリーズ

羊太郎「ロクでなし魔術講師と禁忌教典24」→感想
もう今年はこれの完結なくしてラノベを語れない
オールキャストで繰り広げられる魔王フェロード&天の智慧研究会との決着、グレンの本当の力が明かされる宿敵ジャティスとの決戦、そして……どんどんギアの上がっていく展開がひたすら凄かったし、そこからの絶望的な最後の戦いがヤバかったし、そこからのめちゃくちゃハッピーな大団円エンドが最高でした!!今年は本当にロクアカの完結を抜きにしては語れない。
紫 大悟「魔王2099 3.楽園監獄都市・横浜」→感想
2年ぶりの新刊、魔王と勇者の背中合わせの共闘が最高でした!!
めちゃくちゃ好きだったけど2巻打ち切り……になっていたとおもってたシリーズがまさかのアニメ化引っ提げて戻ってきた!!3巻は仲間達全員が大活躍するクライマックスもさることながら、これまで以上に魔王と勇者の関係性が濃厚で、大変に良かったです。かつての宿敵が背中合わせで戦う展開、もう好きしかない。
南野 海風「魔術師クノンは見えている 4」→感想
クノンとジオエリオンの関係性でご飯3杯行けるので
様々なしがらみなんか気にしないでひたすら魔術探求に精を出す主人公とその級友達がとにかく楽しいこのシリーズ。魔術談義まわりだけでも十分楽しいのに3巻からクノンにジオエリオンという親友にしてライバルが爆誕してしまったのでもう大変でした。4巻の直接対決最高すぎるからみんな読んで。これまで以上にクノンが台風の目になっていきそうな2年生編にも期待!!
二月 公「声優ラジオのウラオモテ #08 夕陽とやすみは負けられない?」→感想
声優ライブのこういう演出に弱すぎるオタク私
先に進むほどギアを上げていく「声優ラジオ」なんですけど8巻のオリオンvsアルフェッカライブの演出が本当に本当に好きで……もうアイドルコンテンツの声優ライブに行ったことあるオタクとしてあの世界のオタクに感情移入してしまったので私はもう駄目です。あんな演出されたら光る棒振れなくなっちゃうでしょ!!好き!!!
硬梨菜「シャングリラ・フロンティア〜クソゲーハンター、神ゲーに挑まんとす〜」→感想
今年後半ずっと読んでたなろう小説大賞
アニメ化もしたしすごい今更だし書籍化していないのでこのブログでは全然話題にしてないんですが、11月12月はずっとシャンフロを読んでました…いやもう何年もジワジワと読みすすめてるんですけどディプスロさんがめちゃくちゃ私の好きなタイプの主人公のライバル枠でして…「竜よ、竜よ!」の前半戦が好きすぎるんですがこれは…アニメもコミカライズもめちゃくちゃ最高なので未読の人は読んでみて欲しい。


ゆるコワ! 〜無敵のJKが心霊スポットに凸しまくる〜

 

最強女子高生、桜井梨沙と、腹黒残念美人、茅野循が贈るとびきりの怖い話!
「私たちも部活で青春をしてみるっていうのはどうかしら?」 最強女子高生の桜井梨沙は、悪魔的頭脳を持つ残念美人の茅野循に誘われ、 オカルト研究会を結成することに。 活動内容は心霊スポットを探索し、調査結果を会報にまとめること。 早速病院の廃墟に向かうが……。 呪いの神社、最凶事故物件、そして「カカショニ」。 ヒトコワ、呪い、都市伝説もどんとこい!  ゾクゾク怖くてスカッと爽快、最強女子高生ふたりの快進撃!

元柔道部の女子高生・桜井梨沙は悪魔的頭脳を持つ友人・茅野循に誘われてふたりきりのオカルト研究会を発足させる。校内に拠点が欲しいだけの研究会、真面目に活動する気など微塵もなかったがひょんなことから過去の研究会で発行された冊子を目にして興味を惹かれ、心霊スポットと名高いとある廃病院に向かう……。

最強女子高生コンビが無双する系ホラー!!(隠し味は百合の味)

軽い気持ちでオカルト研究会を立ち上げたふたりが気になる心霊スポットに突撃取材(概ね無許可)してオカルトやそこに救う人間の悪意と遭遇・対決。好奇心を満たしまくるお話。色々な意味で我が道を行く主役の女子高生コンビがサクサク事件を解決してしまうのであまり怖くなく、ホラーが苦手な人でも楽しめるお話でした。

人間怖い系の話かとおもえばオカルトだったり、オカルトかとおもえば人間怖い系の話だったり……というジャンルの幅の広さも良かった。頭の良い循が周囲を翻弄し、危険な状況は梨沙の体術で対抗する……という感じで基本的に対人間であればおおむね敵なしで安心して見ていられるのが色々な意味で強みだと思うんですが、何割かの確率で相手がオカルトなのでいい感じに安心しきれない感じになっているの良い。ただし、頭脳や体術だけでなくメンタルも普通に強いし頭が良いので多少呪われてても呪いそのものを解決してしまい案外なんとかなってしまう。第三話の「亡者の家」とか、最強だと思われていたふたりが本物の霊を引いてしまってガチで呪われる……というお話なんですが、様子がおかしくなりつつも家族やプロの霊能力者を巻き込みしぶとく立ち回る姿が強すぎて笑ってしまうし、最終的には状況を楽しみながら自分たちで霊障を解決してしまうという展開がめちゃくちゃ心強かったです。

なにより個人的に好きだったのが、女子高生ふたりの関係性が透けて見える第二話の「黒津神社」。丑の刻参りが流行していると噂の神社を調査していたら梨沙の名前が書かれた藁人形を発見してしまい……というお話なんだけど、藁人形を作った犯人を梨沙には気づかれないように探し出し、このへんだとアタリをつけてジワジワと悪魔のような冷酷さで追い詰めていく循の執念が凄い。隠しきれない循→梨沙へのクソデカ感情が最高に良かったし、絶妙に後味の悪い結末もいかにもなホラーで良かったです。なんていうか、少女漫画誌の夏休みの付録についてくるホラー小冊子のような後味の悪さだったなと……(アラサー以上元女児じゃないと伝わらなさそうな表現)(今の少女漫画雑誌って夏のホラー冊子の付録ってあります!?)

その一方で、エピローグで描かれる梨沙→循への感情も大変に良かった。色々な意味で好意がわかりにくい不器用な女・循の伝わりにくい気遣いをしっかり理解してそんな彼女を好ましく思いつつもそれとは全く別のところで彼女とともに過ごす時間そのものを「楽しんで」いる梨沙の姿が印象的でした。それはそれとして例の2話の顛末はもう藁人形が見つかった初手からずっと梨沙には内緒にされてるのでアレなんですが……いやでも梨沙なら余裕で循の肩を持つと思うので無問題かもしれない!?

各編が短めにまとまっていてホラー苦手民でも楽しく読めて、更に主人公2人の関係性でニヤニヤ出来てしまうとても楽しいお話でした。いくらでも続きを作れそうな部活物、というか実際Web連載版ではもっともっと先があるようなので続刊にも期待したいです。


【悲報】お嬢様系底辺ダンジョン配信者、配信切り忘れに気づかず同業者をボコってしまう〜けど相手が若手最強の迷惑系配信者だったらしくアホほどバズって伝説になってますわ!?〜

 

チンピラお嬢様、爆誕ですわ!
「はぁ、今日も視聴者0、登録者3……。向いてないのかしら、わたくし……」 ドレス姿でダンジョン攻略するお嬢様系配信者、山田カリン(16)。 しかし動画は伸びず、一年たっても底辺をさまよっている。 そんなある日、カリンはダンジョン下層で妙な男を発見する。 「そんじゃいまから爆破すっからな?」 その手には国が禁じる危険物質が―― 「なにやってんだてめぇオラアアアアアアア!」 「ぐはぁぁぁっ!?」 迷惑系配信者をボコったカリンは、チンピラお嬢様として人気に火が付いて……!?  おハーブすぎるダンジョン無双バズ、開幕ですわ!

世界中にダンジョンが出現し、ダンジョン探索者が「職業」として市民権を得た世界。16歳の山田カリンはとあるアニメのキャラクターに憧れてお嬢様言葉にドレス姿で優雅にダンジョン探索を行うというのをコンセプトにダンジョン探索配信を始める。だが動画再生数も登録者数も全く伸びず、たまに視聴者が来ればなぜかフェイク映像を疑われるばかり。ある日、ダンジョン探索の帰り道に違法なアイテムを使ってダンジョンの壁を爆破しようとしている探索者を発見してその場の勢いでボコってしまったのだが、それをきっかけにして彼女は「有名迷惑系配信者を成敗したチンピラお嬢様」としてネットに名を馳せていくことに……!!

現実は二次元より奇なり

序盤は「冴えない底辺配信者で探索者な山田カリン」としての視点から始まっていて、そこからボコった迷惑系配信者のリスナー達やネットの民・匿名掲示板のユーザー達の視点を通すことで「実はこの子とんでもない実力者じゃない……?」と見せていく構成がめちゃくちゃ丁寧で面白かった。ずっとソロプレイだったので比較対象がいなくて自分の能力を凄いと思っていなかったとか、迷宮内の素材を持ち帰ってないので繋がりが出来ず探索者達にも存在を認識されていなかったとか、あまりにもやってることが規格外すぎて配信を見た人もフェイク映像だと思ってスルーしていた……とかとか、トンデモな設定を成り立たせるための肉付けが全力で行われていて説得力が凄いしトンデモ設定だけど違和感がなくて、まさしく現実は二次元より奇なりな展開になっている。未成年が素材を持ち帰れない理由とかありそうすぎて唸ってしまった。

そんなこんなで自分の実力に対して完全無自覚なカリンお嬢様(中身は苦学生)が迷惑系探索者をボコったことで存在を一般認知され……バズで付いたリスナーを掴むために「いつも通りの配信」をやってみたらとんでもない規格外ぶりにみんな困惑&ダンジョン攻略動画の情報量としても規格外すぎて界隈が阿鼻叫喚、という展開がとにかく楽しい。基本的にはカリン側の視点とコメント欄(彼女の配信を見ている視聴者達)の視点で物語が綴られていくんだけど、カリンお嬢様のお嬢様言葉や元ネタに合わせてどんどんコメント欄にもお嬢様言葉が広まっていったりして会話が先鋭化していくのとかかつての2chやYoutubeのコメント欄あるあるすぎておハーブ生えちらかした。動画配信モノらしいテンポの良いコメント欄からのツッコミと、その中で繰り広げられるカリンお嬢様の規格外な無自覚無双プレイがめちゃくちゃ楽しかった!タイトルから感じる荒っぽさとは裏腹に、とにかく最初から最後まで楽しく安心して笑えるコメディになっているのめちゃくちゃ好き。

今回は結局カリンの持つスキルの正体などにはほぼ触れられず「いつもの迷宮探索配信」を見せただけの1巻だったので(でもそのただ配信をしただけの1巻がこんなに面白いのでズルい)、今後深堀りしたらどんな話が飛び出してくるのか気になりすぎる。おハーブ育てながら次巻をまとうと思います。


「好きラノ 2022年下期」投票します。

今回もまたギリギリになってしまった……投票します!

ブログやtwitterによるラノベ人気投票サイト。2022年下期の人気ライトノベルはこれだ!!

毎回できるだけ新規と既存のタイトルが一緒になるように調整してるんですけど今回はもういいかと諦めて7:3です。既存は上手く盛り上がりがこのタイミングで来ないと投票しにくいから……。下半期は新作をたくさん読んだぞ!!とおもってましたが半数が2022年上半期の新作だったのでだめだった。今更感ありますが近いうちに2022年読んだ本のまとめも作りたいです。

新規

とくめい「アラサーがVTuberになった話。」→感想
【22下ラノベ投票/9784047371972】
男だからという理由でVtuberデビュー早々炎上してしまった元社畜の主人公が、ブラック労働よりは全然イケると炎上をものともせずに配信を続ける展開が面白い。業界に興味のない主人公が「お仕事」として活動を始めるという展開が印象的で、シスコン気味の兄と口では何を言っても兄のことが大好きな妹という関係性も良かったです。
二丸 修一「君はこの「悪【ボク】」をどう裁くのだろうか?」→感想
【22下ラノベ投票/9784049142266】
優等生の仮面を被りその内に殺人衝動を秘めた誠司と、行き過ぎた正義感を持つ拓真。普通の枠からは少し外れた天才二人が異世界に召喚され、一国の未来を背負って殺し合いをする。親友でありながら殺すべき相手として互いに執着していく二人の関係性がたまらなかったですが、そんな彼らの周囲を彩る現代・異世界のキャラクターたちも魅力的な物語でした。
夏海 公司「はじまりの町がはじまらない」→感想
【22下ラノベ投票/9784150315306】
意志を持ったNPC達が自分たちが生きている世界の終わり(サービス終了)に抗うため、自力でゲームにテコ入れを行う……というお話。短命爆死のクソソシャゲな世界を舞台に例えて解釈し、強引にテコ入れしていくのが面白かった!そして主人公であるオトマルと彼の秘書であるパブリナの軽快なやりとりがめちゃくちゃ楽しい。
新 八角「チルドレン・オブ・リヴァイアサン 怪物が生まれた日」→感想
【22下ラノベ投票/9784049141412】
海獣の脅威にさらされた日本を舞台に、それぞれの理由から彼らの死骸から作られた人形兵器に乗る少年少女たちの物語。バトルものというよりは大災害を経験して欠落を抱えた彼らがそれとどう向き合っていくか…というお話なのですが、その一方でソレに魅入られたかのように人間から逸脱していく主人公の姿が印象的で、とても良かったです。
黒鍵 繭「Vのガワの裏ガワ」→感想
【22下ラノベ投票/9784046819420】
クリエイター視点からのVtuberモノというのが一味違った感じで面白い。明るい学園モノといった雰囲気のVTuber「雫凪ミオ」の成功まで、そこからヒロイン・海ヶ瀬果澪の本心に迫っていく後半の変転が凄まじく、彼女の心の闇・主人公の過去を掘り下げていく展開がとても良かったです。
吉野 憂「最強にウザい彼女の、明日から使えるマウント教室」→感想
【22下ラノベ投票/9784094530872】
全てがマウントで決まる学園を舞台に、マウント強者のヒロインらしき女と主人公が偽装彼氏契約を結び、クラス決めトーナメントで最上級のSクラスを目指す!!というお話。会話劇主体のコメディでマウントバトルはネタ要素…と思わせておいて頭脳バトルとして割と全うに面白……とみせかけておいてやっぱり最後にネタで落としてくるのめちゃくちゃ良かった。
佐遊樹「TS悪役令嬢神様転生善人追放配信RTA 嫌われ追放エンドを目指してるのに最強無双ロードから降りられない」→感想
【22下ラノベ投票/9784047368101】
最高のサードライフを送るためにセカンドライフで(タイトル略)をやる羽目になったがよくわかんないからとりあえず全員ぶっ飛ばせばいいよね!?というお話。主人公の真っ直ぐすぎる脳筋私TUEEっぷりがひたすら気持ちよく、爽快になれるお話でした。というか1巻の時点ではRTAどころか間違いなく逆走していたので続きがとても気になる。

既存

コイル「オタク同僚と偽装結婚した結果、毎日がメッチャ楽しいんだけど!3」→感想
【22下ラノベ投票/9784049145755】
完結。これまで興味がなかった事でもお互いに一緒にやったら楽しいよね!で、次々と新しいことに挑戦していく主人公夫婦の生活がタイトル通り本当に「メッチャ楽しい」だったので最高でした。仕事も趣味も子育ても両立させて、自分の距離感で続けていく姿がとても良かった。
南野 海風「魔術師クノンは見えている 2」→感想
【22下ラノベ投票/9784040745831】
前回の好きラノの結果を見て手を出したのですが、2巻3巻は学園に入ったクノンが周囲を巻き込んで実験を繰り返していくお話で楽しかった。アグレッシブなオタクがオタクと一緒に好きなことする話がつまらないわけないんですよね。あと3巻はマジでジオエリオンが出てからが最高だったのでよろしくお願いします。焦がれて待てはずるいって。
衣笠 彰梧「ようこそ実力至上主義の教室へ 2年生編8」→感想
【22下ラノベ投票/9784046818331】
試験のない息抜き的な巻でしたが、それ故のクラスの垣根を超えたはっちゃけぷりが楽しくてこれまでとは違う意味でニヤニヤしながら読んでしまった。その裏で、今後の展開へのターニングポイントになりそうなお話もしっかり盛り込まれていて、次巻がますます楽しみになってしまう1冊でした。


まだ間に合う!明日処刑される悪役令嬢ですけど、スチル回収だけはさせてください!

 

「処刑は明日の正午だ。ここで、これまでの人生を悔いるといい」
突然処刑を言い渡された私は気がついた。 自分がドハマリしていた乙女ゲーム『ゲーテンベルグの白百合と黒薔薇』の悪役令嬢フェルリナになっていることに! そして処刑を宣告したのは最推しキャラのアルフリートだということに! さらに思い出す。自分が全スチルを回収できていないことに……! 「私を裏庭に連れてって!! 今なら告白スチルを生で回収できるから!! お願い!! どうせ死ぬならスチルを生で拝ませてよぉぉ!!」 「裏庭にだけなら連れて行ってやる! わかったから少し黙れ!!」 イベントスチルの回収に執念を燃やすフェルリナの熱意は、処刑回避に繋がるのか!? もう遅くない、まだ間に合う!? ファンタジーラブ&コメディストーリー、スタート!

乙女ゲーム『ゲーテンベルグの白百合と黒薔薇』の真エンディングにたどり着くべく、徹夜でスチル回収をしていた主人公は階段で足を滑らせ──気がつけば、その乙女ゲームの世界に転生していた。しかも、明日処刑される悪役令嬢フェルリナとして。どうせ明日死ぬならせめて集めきれなかったスチルを拝んでから死にたい!!とゲームではお助けキャラだった騎士・アルフリートを巻き込んで「スチル回収」を始めて……?

タイトルの出オチ感とは裏腹に深まっていく謎は必見

処刑直前なのに乙女ゲーの未回収スチルをリアルで回収しようとする転生悪役令嬢のお話。タイトルから出落ち感がすごいしかなりコミカルな話ではあるのですが、話が進むごとに自分の記憶やゲーム知識と現実の展開にズレが生じてきて、謎が深まっていく……という展開がすごく良かった。

真エンディングを見れてない乙女ゲームという不完全な知識と、感情が伴わず重要なエピソードの記憶が抜け落ちてしまっている悪役令嬢フェルリナとしての記憶。そのどちらにも大きな欠落があり、(プレイ済の)乙女ゲーム転生モノでありながら先の読めない展開になっていくのが印象的でした。元々謎解き要素・ホラーというかミステリー的な要素のある世界観なのですが、そこにゲーム内では描かれていなかった異能力の存在や知らない事件の話が掘り出されてきて、更には一連の騒動の裏で蠢く陰謀、攻略対象達の本心も明かされていって、どんどん何が起きてもおかしくない雰囲気になっていくんですよね。もう誰を信じたら良いかわからなくて、そのせいで中盤のアルフリートと離れてフェルリナひとりで行動するシーンなんかはかなりハラハラしながら読んでしまってました。

暗くなりすぎない展開・大団円のハッピーエンドが嬉しい

そんな予想外に重たい展開の中、主人公であるフェルリナがスチル回収に必死になったり「推し」の活躍に悲鳴を上げたりする姿と、彼女の相棒役である騎士アルフリートが彼女に振り回されながらも繰り出す鋭いツッコミが一種の清涼剤となっていた気がします。いや、2人の掛け合いが唯一の清涼剤だからこそ、中盤の2人が別行動を取る展開でめちゃくちゃ手に汗握ってしまうわけですが。

フェルリナが「スチル回収」にこだわる姿はともすると滑稽だし現実が見えてないようにも思えるんですが、一方で色んなところで作品そのものに対する深い愛情を感じることができて、オタク主人公の推しコメディとしてもポイント高かった。ちょっといいシーンになると途端にスチル扱いして細かな描写で語り始めるのが微笑ましいし、中盤になるとだんだん好感度が上がってきたアルフリートがちょっと殺し文句を言ったりカッコいいムーブをする度に悲鳴を上げて不審者になってるのわかるすぎる。また、ただオタクの悲鳴を上げるだけではなくて、双子の妹でもありライバルでもありもう一人の「推し」でもあるゲームヒロイン・リリベールや攻略対象達について、どんなに彼らを疑いたくなるようなネガティブな情報や推察が出てきたとしてもゲームで触れた彼らの内面を信じ抜くフェルリナの姿がとても良かった。自身の命運に関してはやたらと達観している割に、自分を陥れたはずの彼らがバッドエンドを迎えないように奔走する姿はとても印象的で……だからこそアルフリートがフェルリナに「もっと自分を大事にしろ!」と言い続けるのも解るんだよなあ。

そんな彼女の真摯な想いが天に通じたのか、最終的にたどり着いたグランドフィナーレは誰も傷つくことのない完璧な大団円で、思わずニッコリしてしまいました。特に事件を通してすっかりラブラブになったアルフリートとの、事件を切っ掛けにすっかり仲良し家族になってしまったリリアーナとの仲睦まじい様子にはニヤニヤが止まりません。

悪役令嬢でも割りとよく見かける気がする復讐完遂でも「ざまぁ」でも逆ハーレムエンドでもなく、主人公含む登場人物全員がそれぞれの進むべき道を選んでそれぞれ幸せになっていくという大団円な終わり方、凄く良かったです。


このラノベの男男間の巨大/複雑感情が好きだ2022決定盤

タイトル通りの記事です。

このラノベの男同士のクソデカ感情いいよね!!というタイトルを独断と偏見で25タイトル紹介します。長年まとめ記事作るよ作るよって言い続けて気がついたら10年経ってたよ……関連記事の方に昔の同系統のまとめをリンクしておりますので良かったら併せてどうぞ。一応関係性で「親友・相棒」「ライバル・共闘」「因縁・敵対」の3つに分けてます。

関係性のみに焦点を絞っているので内容があまり女子読者向けじゃないものや未完のまま数年止まっているものも含まれます。予めご注意ください。

親友・相棒

楽山 「俺の召喚獣、死んでる」→感想
「友人を馬鹿にされて、僕が笑って許すようにみえるのか?」
苦学生でありとある事情から自分の召喚獣の正体を隠して戦わざるをえない主人公フェイルとそのチームメイトであり名家の子息でもあり一番の理解者でもあるシリル。フェイルが巻き起こす常識外の行動にダメ出しやお説教をしたりする反面その実力を誰よりも信頼していて、他人がフェイルを理不尽な理由でバカにするのは許せないシリルの姿にニヤニヤしてしまいました。
有象 利路「サキュバスとニート」→感想
「和友とオレの間に割り込むのは姐さんといえどもマジでキレますよ」
引きこもりの主人公・和友と彼の高校時代の親友でありコンビニ店長の琥太朗。高校時代の女房役(野球的な意味で)でもあった彼がとある事件によって夢を失って絶望した和友のことを影に日向に心配しつつ、本人の居ない所で彼に対して強い執着を見せる姿が大変良かったです。
大樹 連司「ボンクラーズ、ドントクライ」→感想
そんな彼を裏切る算段を僕は立てている。たかが、桐香なんて存在のために。
男二人だけの映画研究会にやってきた新入部員。友達同士の気軽なだけの部活動はその日から姿を変えていく。新入部員・桐香に恋心を抱いてしまった主人公の肇が彼女に振り向いてもらえないことに絶望し、その一方で親友・藤岡との楽しいだけだった関係性を「恋心」なんてものによって壊されてしまうことを恐れる、という葛藤が印象的でした。
壱月龍一「ラ・のべつまくなし」→感想
「……あいつが書いて、オレが編集やって……なんて。まあ、俺らの夢っつーかなんつーか、はは、超青臭いっすけど」
純文学からライトノベル作家に転向した主人公の矢文学と、彼の学生時代からの親友で編集者志望の北見圭介。ふたりの夢は、コンビを組んで最高の作品を送り出すこと。腐女子のヒロインがうっかり誤解しちゃうくらい仲の良い男二人の、熱い友情が美味しかったです!(あとブンガクくんの作風絶対わたしの好みだから現実に降臨してほしい〜〜)
井上 堅二「Lady!? Steady,GO!!」→感想
「お前にできないことは俺がやる。俺に出来ないことはお前がやる」「そうしたら、俺たちにできないことは何もないだろう?」
名家の分家に生まれて下男のような扱いを受ける圭と、本家の長男でありながら「出来損ない」と見捨てられた燐之介。完璧な人間でありながら大きな欠落を抱える燐之介と平凡だがその欠落を補って支えることが出来る圭という2人の関係性がとても良かったです。最大の問題は2巻が出なかったことだけど2人の関係性としては1巻で綺麗にまとまってるので……。
瘤久保 慎司「錆喰いビスコ」→感想
「俺が矢で、お前が弓だ。俺たちは弓矢だ!そういう、二人だった!」
お尋ね者の賞金首・赤星ビスコと心優しき町医者・猫柳ミロ。一見正反対のふたりが同じ目的のためにコンビを組んで旅を始め、やがてかけがえのない相棒となっていく。相棒ならではのお互いに気を使わない関係と、深い「愛」によって結ばれた関係性が良かった。アニメは原作1巻分だけなので、2巻以降も読んでほしい。
羊 太郎「ロクでなし魔術講師と禁忌教典」→感想
「……行こうか。頼りにしてるぜ、相棒」「抜かせ、誰が相棒だ。寝言は寝て言え」
かつて特務分室で汚れ仕事や裏仕事を行っていたグレンと、特務分室時代の相棒であったアルベルト。現在は別々の組織に身を置く彼らですが、それでも手を組めば最強という構図が最高。グレンの甘い理想とは相容れないと思う反面、かつての自分が切り捨てた理想を背負い続けるグレンに期待せずにいられない姿がよかったです。
鏡 貴也「伝説の勇者の伝説」→感想
「……引き戻すぞ。おまえがどこにいても、引き戻す」
『複写眼』という異能を持ち子供の頃から過酷な環境で生きてきたライナと、後ろ盾のない母から生まれて兄王達に命を狙われ続けてきたシオン。生まれも育ちも違うふたりは、やがて「悪魔」と「勇者」という世界の行く末を握る運命に翻弄されていく。仲の良い親友であるふたりが運命に引き裂かれながらも手を伸ばさずにはいられない姿が印象的でした。本編のシリアスな彼らも、短編でのコミカルな掛け合いも良。
井上 堅二「バカとテストと召喚獣」→感想
「確かに点数は低いが、秀吉やムッツリーニのように、お前にも秀でている部分がある。だから俺はお前を信頼している」
学園でも有名なバカの主人公・明久と、問題児ばかりのFクラスをあの手この手でまとめ上げる雄二。考え方も得意分野も正反対で普段は喧嘩してばかりの悪友ふたりが共通の目的のためとなれば最高のコンビネーションを発揮するのがたまりません。相手が落ち込んでいれば何も言わずに背中をぶん殴るような言葉で言わなくても通じ合う関係性が最高。

ライバル・共闘

紫 大悟「魔王2099」→感想
「君は……まだ僕を勇者と呼んでくれるんだな……」
魔術と科学が融合した近未来都市新宿で500年ぶりに目覚めた不老不死の魔王ベルトールと、望まぬ形で人としての枠を超えた不老の勇者グラム。すでに時代から忘れら去られたグラムの「勇者」としての役割を、宿敵であったはずの「魔王」ベルトールこそが求めるという関係性が良かった。あくまで不倶戴天の敵同士である彼らの一時共闘が美味しい!
九岡 望「地獄に祈れ。天に堕ちろ。」→感想
「……共同戦線だ。あーあ」「手ぇ組むぞ、畜生が!」
生き残った妹のために死者を狩る聖職者嫌いの死者ミソギと、死んだ姉に心を囚われたまま死んだように死者を狩る死者嫌いの聖職者アッシュ。絶対に相容れないふたりが亡者の街・東凶を舞台に共同戦線を張るというお話。何もかも相容れないふたりが自分の想いを貫くためにある時はぶつかり合い、ある時は共闘する展開が良かった!
望公太「最強喰いのダークヒーロー」→感想
ルイ=ミシェル・ヴィレット。(中略)いかなる者にも最悪の蔑称を授ける阿木双士郎をして、『王子』と呼ぶ他なかった男である。
ソードウォウ最弱の選手でありながら、強敵も味方も手のひらの上で転がす奇策な作戦で勝ち続ける双士郎と、そんな双士郎に救われて以来、その奇策を全部良い方に解釈して持ち上げていくルイ(強くて善人)という関係性がコミカルで良かった。双士郎が、ルイだけ微妙に転がしきれてない感じが楽しいんですよねえこれ…。
渡航(Speakeasy)「クオリディア・コード」→感想
昔も今もこの先も、きっと違う方向を向いて、違う道を選ぶのだろう。それでも、今は確かに、並び立っていた。
異形によって脅かされている世界を守るため、そして大切な少女達を守るために戦うふたり。性格も考えも正反対で本来ならば手を取り合うこともなかったであろう壱弥と霞が、自分にない部分に憧れ、誰よりも強く信頼し合っているという関係性が良かった。ノベライズ版はアニメと内容ほぼ同じなのですが、特に3巻の壱弥・霞の心象描写がとても濃厚で良いので副読本としても是非!(過去話も良いです)
師走 トオル「ファイフステル・サーガ」→感想
今でこそカレルは王家の味方だが、数十年後に余計な野心を抱かないという保証はどこにもないのだ。
来るべき魔王の襲来に立ち向かおうとする英雄達が時に手を組み、時には対立しながら人間たちをまとめようとしていく物語。アレンヘムの傭兵団の若き団長・カレルとフーデルス王国の摂政・ヴェッセルの関係が良かった!序盤から手を組んでいる彼らなのですが、それぞれお互いの国の思惑の下で動いていて、完全な味方ではないんですよね。稀に覗かせる剣呑な雰囲気がとても良かったです。
柳実 冬貴「Re:バカは世界を救えるか?」→感想
その闇の中で、心路は──(略)現実世界で唯一負の感情を抱くことのできる、好敵手の声をはっきりと聞いた。
他者の異能の「劣化コピー」を作る異能を持つ主人公・佐藤光一と、他人の異能を完全にコピーできる秋雨心路。最初は相容れない敵同士だった彼らが、少しずつ「好敵手」へと変化していく課程がたまらない。能力の代償として感情が薄れていく心路の心を唯一揺さぶることが出来るのが光一というのがまた。
賀東 招二「甘城ブリリアントパーク」→感想
(『汚いことをしなければならない』か。ならば、それをするのはぼくだよ)
ポンコツ遊園地の支配人代行となった主人公・可児江西也と遊園地のキャスト代表を務めるマスコット・モッフル。犬猿の仲だが遊園地の未来を誰よりも真剣に考えている彼らの目的が一致するがゆえの共闘が大変美味しいのですが、特に原作1巻終盤に起こったとある事件をきっかけにしたある種の「共犯関係」が、とても良かった。アニメ版とは全く違う展開ですが、どちらも良いので両方見てほしい。
渡航「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。」→感想
俺はもうとっくに気づいている。葉山隼人が、けしてただの善人ではないことを。
渡航が描く「お互いに相容れないからこそ誰よりも深く理解し合う」男男間複雑感情が大好きなので、例によって葉山隼人と比企谷八幡の関係性も大好きです。普段は優等生の仮面を被っている葉山隼人がそんな表の顔が通用しない比企谷八幡にだけは時折素顔で接しているのがたまらない。
田尾 典丈「ギャルゲヱの世界よ、ようこそ!」→感想
「これから何があっても、みんなを愛し続けてほしい。それが、俺の望みだ。任せたぜ、初めての、親友」
とあるギャルゲーのヒロインたちが現実世界に投影され、彼女達が抱える問題をゲームの1ファンである都築武紀が解決する物語。クリア後のハーレム展開を謳歌していた武紀が明確に「全員を幸せにする現実のハーレムエンド」を目指して行動し始めるのが4巻のゲーム主人公・正樹との対決でした。同じヒロインを愛する主人公同士として・親友として次元を超えた友情を築いていく展開が熱い。

因縁・敵対

落葉 沙夢「─異能─」→感想
あいつは俺を赤根凛空ではなく、友人のアカとして扱ってくれていた。その存在は俺にとって小さくなかった。
複数の人物の視点から事件が描かれる群像劇形式のサバイバル異能バトル。過酷な展開の中でうっすら語られる「主人公」の祐樹とその友人・赤根凛空の関係性が印象的でした。物語で起こった惨劇を考えるとお互いにさっぱりしすぎと感じる部分もあるんですが、描写が短くてもお互いにリスペクトしあっていたことが伝わるふたりの独白が良かったなあ。
水瀬葉月「ぼくと魔女式アポカリプス」
「宵本澪っていうクソッタレな友達は──どうやら、俺が思ってたよりも少しだけお人好しらしい。」
絶滅寸前の魔術種達が生き残りを掛けて行う生存競争に巻き込まれた「死者」達が繰り広げる異能系サバイバルバトル。『普通』に埋没したくなくて学園生活からはみ出していた主人公・澪と可愛いショタの皮をかぶった女に見境ないクズ・草太の友人関係が独特で面白かった。二人の出会い話がどっかに合ったと思うんだけど収録されてないんだよな……。
衣笠 彰梧「ようこそ実力至上主義の教室へ」→感想
ああ、それだ龍園。おまえにも見えたんだろう?恐怖という感情は、己の中に確かに存在する、ということを。
Dクラスの黒幕として暗躍する綾小路と黒幕の存在を追うCクラスのリーダー・龍園。1年生2学期をたっぷり使って水面下で行われる長いかくれんぼ、その末に待つ直接対決がとても良かった。この直接対決の後の微妙に共闘的な関係になっていく綾小路と龍園の関係性も美味しいけど、やっぱりとりあえずは原作4〜7巻をよろしくお願いします!!ってなりますね!
賀東 招二「フルメタル・パニック!」
「カシム、カシムと……。馴れ馴れしいんだ、クソ野郎」
主人公である相良宗介に強く執着する、序盤にして最悪の強敵ガウルン。自分が恋い焦がれてやまない「殺人聖者・カシム」に宗介を引き戻すために自身の命すらも厭わない様はめちゃくちゃなインパクトがありました。フルメタ、なんだかんだで彼以上にヤバい敵出てこなかった気がするの凄いよね……。
ツカサ「銃皇無尽のファフニール」→感想
切れ長の目が画面の向こうから俺を射る。それだけで感覚が引き戻される。彼の部下だった長く暗い日々へと。
男性で唯一ドラゴンの力を持った“D”の少年・物部悠。同じ異能を持つ少女達が集まる学園・ミッドガルに入学するが……ミッドガル入学する前、軍事組織ニブルでの元上司であるロキ少佐がミッドガルに入学した後も悠に対して強い執着を覗かせていく展開が大変美味しかったです。いやこれ、俗に言う「元彼」概念なんですよね……美味い……。
羊 太郎「ロクでなし魔術講師と追想日誌」→感想
「今は、曲がりなりにも母屋を同じくする同志だけど……いつか、必ず僕らは決別する。……互いの信じる正義ゆえに」
相棒概念の所でも取り上げたロクアカですが、どうしてもジャティスの話したかったなどと供述しており……アルベルトと同じく元特務分室での同僚であったジャティスが特務分室を離れて犯罪者となり、事ある毎にグレンと衝突していく本編での展開も大変美味しいのですが、そんなジャティスがグレンを初めて宿敵として認めた追想日誌5巻がとてもよかったです。あとほんと本編は次巻が楽しみ…!!
月夜涙「回復術士のやり直し 〜即死魔法とスキルコピーの超越ヒール〜」
変だな。一周目では、あいつに怯えて、逃げたい、怖いとばかり思っていたのに、二周目の今はあいつに会いたくて仕方ない。
人生をやり直しながら1周目の人生で自分を虐待した勇者達に復讐を行ってきた【癒】の勇者ケヤル。その復讐も残るは【砲】の勇者で少年性愛者ブレットを残すのみとなるが、その復讐は国を巻き込み人類の存亡を掛けた戦争へと発展していく。メインは凌辱メインのエッチな復讐劇なのですが、その合間でケヤルとブレッドが見せる互いへの執着と、裏の裏までを読み合う心理戦が大変良かったです。ブレットの行方を追う回が「想い人を探す」なのとか最高。


VTuberなんだが配信切り忘れたら伝説になってた5

 

三期生も一周年! 記念配信の準備が進む中、光の様子が…!?
まともなVTuberが遂にいなくなってしまった大手運営会社ライブオン。切り忘れから大人気となった三期生・心音淡雪は、シオンママと性(聖)様のカップル成立に末永く爆発しろと思いつつ、迫る『三期生1周年記念』に向けて準備を進めていた。しかし、オールスターコラボやデートなど楽しく活動する中で 「い゛、い゛ら゛っ゛じゃ゛い゛、あ゛わ゛ゆ゛ぎ゛ぢゃ゛ん゛……」元気で良い子な光ちゃんが頑張りすぎて喉を壊してしまい!? それでも休もうとしない光ちゃんだったが、淡雪から「リスナーの想い」を伝えられることで徐々に心境も変わっていき――。衝撃のVTuberコメディ、アニバーサリーな第5弾!

2期生の騒動も一段落し、デビュー1周年に向けて企画を練りはじめた淡雪たちライブオン3期生の面々。企画の一貫として全員で歌を披露することになったが、歌が苦手な光ちゃんが練習のしすぎで喉を壊してしまう。それでもなお、今まで通りの過密スケジュールでVtuber活動を行おうとする光ちゃんに、淡雪は……!?

また変態と百合カプ(と淡雪ハーレム要員)が増えた!!

ライブオン面々の中でやや存在感薄めだった光ちゃんを中心にした三期生当番回。ファンに見捨てられることが怖くて、忘れられることが恐ろしくて、ついつい「頑張りすぎて」しまう光ちゃんに同じVtuberの立場から、そしてひとりのファンの立場から彼女の勘違いを正して立ち直らせる淡雪と光ちゃんを親身になって心配してくれる三期生や周囲の面々……という、ファンや同期達との絆を感じる感動的な展開なのですがそこからどうしてそこにたどり着いてしまった!? 温度差がすごすぎて風邪引くわ!!!

いやでも確かに光ちゃん、個性の強すぎるライブオンの面々に押されて(少なくても作中では)存在感が薄くなりがちだったので良いテコ入れだったのだろうなと……いや他の面々が霞むほどの強烈な変態(しかも性知識がない分逆にブレーキがない)として戻ってきたのは……どうなのかな……??

その他にも今回は前巻の展開を受けてすっかりバカップルになってしまった聖様×シオン、エーライさんに劣情を抱くちゃみちゃん……とますます百合の花園が咲き乱れる展開だったしあわちゃんハーレムも増えた。いやでも、以前シュワちゃんによって「組長」という二面性を覚醒させられて以降その二面性を戦略的に使う事で自らの強みとして生かしていくエーライさんめちゃくちゃいいキャラですよね。組長モードのときも含めて素は割りと男前だし、これはちゃみちゃんも惚れますし、コラボASMR配信のときのさじ加減が絶妙すぎる。四期生お披露目回のときは一番興味ないキャラだったのに、今四期生の中だと一番この子が好きだなあ。

コラボ配信回も良かった&新展開に期待

いろいろな意味で今回はラストの「光ちゃん覚醒」がすべてを持っていった感じが強いのですが、ライブオンの全ライバーが集まる「監禁人狼」の回もめちゃくちゃ良かった。推理ゲームとしての局面もありつつ、鍵となっていくのが各ライバー自身の個性の強さと彼女たちに関する理解度の高さというのがすごく良い。11人という大人数を動かしながら誰もに何かしらスポットが当たる展開になっているの良かったし、出番の少なかった晴先輩が最後の最後で無双するのが晴先輩らしすぎる。

また、各章幕間に挟まれる3期生のカステラ(マシュマロ)返信の小話も良かったです。これ割と個性が出るし、淡雪の一人称視点じゃないからこそ見えてくるものもあって面白い。それにしてもこの手の動画は本当に見ないので感覚がわからないのですがましろのカステラに送られてきたましろ×淡雪の百合SSは御本人による音読なんですか?えっちすぎませんか?

そして中盤にこれまで一切触れられてこなかったライブオン以外のVtuberについての言及があったとおもったら、次巻は外部ライバーとのコラボと、前巻にちらっと匂わされていた淡雪自身の掘り下げ話になるようで…!?割とライブオンの身内のみの盛り上がりで進んできた物語が新キャラクターたちの登場をきっかけにしてどう変わっていくのか気になるし、Webでも人気のあったエピソードとのことで、次巻どうなっていくのか本当に楽しみです。


純白と黄金

 

ようこそ喧嘩都市へ。ここは思い出と約束の無法地帯。
《純白の悪魔》それは最強と称された少年の異名。 ヤンキーの聖地・東北で100人の敵を叩き潰した後でさえも彼のシャツには、返り血一つ存在しなかった。 数多の伝説と偉業によりその名は全国に轟き、遠くない未来に全てのヤンキーが彼の舎弟になるだろうと囁かれていたが…… ある日、彼は姿を消した。 時は流れ、ヤンキー全盛時代。 東京最大の喧嘩都市・猫丘区では第二の《純白の悪魔》を生み出すため、六つの高校が参戦する盛大な喧嘩が始まろうとしていた。 そんな狂騒の最中、一人のオタクの少年が猫丘区に降り立った。 名を安室レンジ。 かつて圧倒的な力で東北の頂点に君臨し、ヤンキーを引退した《純白の悪魔》だった――。

中学時代に修羅の国・東北で伝説のヤンキー「純白の悪魔」として伝説を築いた少年・安室レンジはオタクとして高校デビューするために東京の黒淵高校にやってくる。ところが、そこは東京のヤンキー達がしのぎを削る喧嘩都市であった。学園の筆頭ヤンキー・赤城ザクラを倒してしまったレンジは自分を助けようとしてくれた女ヤンキー・鬼津アオイの目指す「ヤンキーが差別されない世界」に共感し、彼女と共に猫丘区にある6つのヤンキー校の頂点を決めるテリトリーバトル「シマトリー」に挑むことに。

シリアスな笑いが炸裂する現代異能×ヤンキーバトル

表紙とあらすじから硬派な不良モノを想像していたのですが、ヤンキー概念と現代のSNS文化・スマホアプリを使ったテリトリーバトル要素を下敷きにした俺TUEE系無双系異能バトルもの(長)でした。

ヤンキーが混入した造語の数々でシリアスな笑いを引き起こしていちいち笑ってしまう。初っ端で強いヤンキーが出すオーラ的なやつを《邪気威(ヤンキー)》と呼び始めたところで既に笑ってしまった。あとなにげにSNS文化要素が色々混入していて、ヤンキー専用SNSとか自撮りの「カチコ映え」とかも地味にポイント高いんだけど個人的に一番笑ったのはSNSのイイネが「ヒャッハー」になっていたところです。他人のヒャッハーで承認欲求を満たすヤンキー、正直めちゃくちゃおもしろいな。あと東北への風評被害が凄い。

出てきたモブヤンキー(「汎用ヤンキー」って用語が登場人物間でも普通に使われてるのにも笑う)が主人公達の仕業で軽率に吹き飛んでいく派手なバトル展開と、その合間に割りと唐突に挟まれるヒロインとのイチャイチャも良かった。やや設定や文章に荒削りさを感じる部分もあったんですが、結構その場の勢いで楽しく読めたな。

男同士の複雑感情(を美味しく頂きたい主人公)が良かった

主人公・安室レンジがぶっちぎりに最強な設定で、俺は平和な東京(※平和ではない)でオタクデビューしてオタク友達作って目立たず生きたい……といいつつ、でも皆に気づかれる前に殴り倒せばいいよネって常人では見えない速さで雑魚を昏倒させていくのでこれは戦いになるのか!?と目を疑うレベルなんですが、オタクとしての自分とヤンキーとしての自分の両方を受け入れた結果「ヤンキー達がそれぞれの因縁を胸に激突する所を特等席で見守ろれるの実はオタクとして美味しくない!?(意訳)」ということに気づいてしまったので基本的に雑魚は倒してお膳立てをしつつ自分は基本的にボス戦に関わらないという最強の傍観者ポジションに目覚めてしまい無問題だった。彼らのすぐ横に居ながらも完全に上位レイヤーから彼らの因縁を俯瞰してるの、俺TUEE設定だからこそ出来る展開で色々と凄い。

黒淵高校の筆頭ヤンキー・赤城ザクラが実質もう一人の主人公みたいな立ち位置になっていて、彼がレンジとの出会いを機に自分を見つめ直し、道に迷い慢心していた己を鍛え直し、袂を分かったかつての仲間達と戦うためにふたたび立ち上がり、独りで戦うのではなく心を通わせた仲間を改めて手に入れる……という展開がとてもアツかった。というか彼が中学時代に組んでいた東京最強のヤンキーチーム・《天下逆上》のメンバーが現在のテリトリーバトルの中心となっている6つの学校でそれぞれ筆頭ヤンキーを張っている……という展開が完全にオタクが好きなやつなんですよね。男同士の複雑巨大感情じゃん。これはレンジも特等席で見たがるわ。

不良モノかとおもったら俺TUEE異能バトルモノ、男男間の複雑巨大感情かとおもったらそれを見守る強いオタク……といろいろな意味で予想を裏切られる設定で面白かったです。いや面白かったけど色んな意味でみんな表紙に騙されない!?いやでもこの内容を正確に読み取れる表紙って難しいよな……すでに2巻が出ているようなので、そちらも楽しみです。


声優ラジオのウラオモテ #06 夕陽とやすみは大きくなりたい?

 

問題児だらけの声優プロジェクト始動! 夕陽とやすみはリーダーできる!?
 アイドル声優プロジェクト『ティアラ☆スターズ』始動! アニメ・ゲームにラジオと展開盛りだくさんな企画の幕開けは、選抜ユニット同士の対抗ライブ。先輩声優も参加する中、リーダーはなんと――夕陽とやすみ!? 「なぜ、あなたがリーダーなんですかね」  やすみ率いるユニット“ミラク”に、芸歴8年目の先輩(?)小学生声優・双葉ミントは不満たらたら。 「勝ち負け、って考えは変じゃない??」  さらに年上の新人声優・飾莉とも心がすれ違って空気は最悪。夕陽率いる“アルタイル”との差も開くばかり。でも――。 「勝負しましょう、歌種やすみ」  傍にいなくても、夕陽への闘争心が力をくれる! 問題児揃いのチームをまとめ、やすみは一回り大きくなれるのか!?  新ウラオモテ声優も続々登場の、熱すぎる青春声優ストーリー・第6弾!

大型アイドル声優プロジェクト『ティアラ☆スターズ』に参加することになった夕陽とやすみ。このプロジェクトではライブ毎にユニットを組み換えてバトル形式でライブを行うということで、初回のライブではやすみは“ミラク”、夕陽は“アルタイル”というユニットに別れて対決することに。しかもコーコーセーラジオを聞いていたプロデューサーの采配で、ふたりは各ユニットのリーダーとして抜擢され……!?

年上の「後輩」と年下の「先輩」と

前巻は才能ある後輩に圧倒されてしまう二人と、そんな二人がそれでも「先輩」として彼女を支えるお話だったけど、今回は先輩後輩含めた問題児──というか扱いの難しいメンバーだらけの中でふたりが「リーダー」としてどう立ち回るか、というお話でした。今回の話、5巻の限界アニメ現場と同時に発生してたの普通にやることが多くないですか……やすみの崖っぷち声優描写が印象強かったので「お仕事増えてよかったねえ」という気持ちも結構あるんですが……。

やすみが率いるグループのメンバーになったのが先輩の柚日咲めくると、元子役で声優としても大先輩になる小学生の双葉ミントと上京してきて実家からの支援もなく生活が不安定な年上の新人声優・御花飾利。ライブに向けて自主練を組もうとしたやすみは、ミントと飾利が練習量について対立するのを上手く抑えることが出来ず、早速苦しむ羽目に。社会に出て10年もしたら年下の部下や年上の上司なんて腐るほど出てきますけど、業界ではよくあることとはいえまだ年功序列感の強い学生の立場で「年下の先輩」や「年上の後輩」って普通に付き合い方が難しいですよね……しかもそのふたりが正反対の方向で自分の立ち位置や今後について拗らせていたから余計に。

これまでの物語で様々な経験をしたやすみがかつての自分と同じような、不安定な立場の新人声優である飾利の口からかつて自分の行動と「夕暮夕陽との対決」に執着している現在の自分について非難され、夕暮夕陽裏営業疑惑の時の自分の行動について改めて向き合うという展開がとても良かった。これ事件の直後だったらこんなに冷静にかつての自分の行動を振り返ることは出来なかったと思うし、狭い視野のまま自らの行動を正当化していたかもしれないし、相談できずに抱え込んでいたかもしれないし、なんなら飾利からの強い言葉を受けて立ち直ることができなくなっていたかもしれない……と思うんですよね。厳しい言葉にショックを受けながらもそれを抱え込む事なく、あの時の行動が決して正しかったとは言えない、それでもかつての失敗を経たからこそ今の自分が居るのだと答える姿に「声優・歌種やすみ」の成長を感じて胸が熱くなりました。また、敢えて敵味方に別れて対決することで改めて夕暮夕陽という「相棒」のありがたさを感じてしまう展開が、とても良かったです。

ただ、今回は良くも悪くも「アイドルコンテンツ声優ライブ」の話なのにアイドル声優としての話に終始していて、序盤でこの手のコンテンツの「キャラクターと声優が融合するライブの特殊性」について語られたのにもかかわらず完全に元になっている作品側の設定が見えなかったのが少し残念だな……やっぱアイドルコンテンツの声優ライブって歌やダンスの良さも勿論なんですけど、どれだけ声優さんがコンテンツを理解してそこに寄せてくれるかが楽しみの一つだと思うんですよ。ただ声優の歌とダンスがうまけりゃ良いってもんじゃないんだよなあ…………次巻もこのコンテンツの話になるっぽいし、アニメも始まるのでそうするとまた少し掘り下げられるのかもしれないけど。

あいかわらずめくる先輩(改め一般女性の藤井杏奈ちゃん)が可愛い

もう本当に今回はユニット唯一の先輩枠であっためくる先輩の存在が頼もしくてたまらなかったんですが、そんな話の中でめくるがやすみに協力する見返りとして「ただの1ファンとして“歌種やすみ”に接したい」と願うエピソードがめちゃくちゃ好きでした。柚日咲めくる改め一般ファンの藤井杏奈ちゃんが憧れの歌種やすみを目の前に完全に早口オタクになってしまうの可愛いがすぎる。今回は素の彼女を知らない後輩声優が多かった関係もあり、クールでデキる先輩としての「柚日咲めくる先輩」としての印象が大きかっただけにそのギャップにニヤニヤしてしまいました。いやほんとめくる先輩可愛いよな!!!!

そして次回のライブはまさかの桜並木乙女を筆頭にした先輩コンビvs夕陽・やすみと後輩達のチーム対決。作劇としては面白いんだけど、ライブという声優自身の技量が問われるイベントでそこまでの力の差が出るユニットくんじゃうのって控えめに言ってヤバヤバでは!?アニメがある分キャラクター人気である程度その差を埋めることも可能かもしれないけど、新人チームの中でも随一の力量を持つ高橋まで相手チームに居るのマジで容赦ない。ライブバトルという設定なのに勝てそうな見込みがなさすぎる。

今回の時点でも危惧されていた、対戦形式にすることで「各ユニットの力量差がはっきり出てしまって片方が霞んでしまう」問題が現実のモノとして迫ってくることになるの必須の展開で、色々な意味で次巻がどうなるのか。楽しみだけど心配でたまらない。