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「好きラノ 2022年下期」投票します。

今回もまたギリギリになってしまった……投票します!

ブログやtwitterによるラノベ人気投票サイト。2022年下期の人気ライトノベルはこれだ!!

毎回できるだけ新規と既存のタイトルが一緒になるように調整してるんですけど今回はもういいかと諦めて7:3です。既存は上手く盛り上がりがこのタイミングで来ないと投票しにくいから……。下半期は新作をたくさん読んだぞ!!とおもってましたが半数が2022年上半期の新作だったのでだめだった。今更感ありますが近いうちに2022年読んだ本のまとめも作りたいです。

新規

とくめい「アラサーがVTuberになった話。」→感想
【22下ラノベ投票/9784047371972】
男だからという理由でVtuberデビュー早々炎上してしまった元社畜の主人公が、ブラック労働よりは全然イケると炎上をものともせずに配信を続ける展開が面白い。業界に興味のない主人公が「お仕事」として活動を始めるという展開が印象的で、シスコン気味の兄と口では何を言っても兄のことが大好きな妹という関係性も良かったです。
二丸 修一「君はこの「悪【ボク】」をどう裁くのだろうか?」→感想
【22下ラノベ投票/9784049142266】
優等生の仮面を被りその内に殺人衝動を秘めた誠司と、行き過ぎた正義感を持つ拓真。普通の枠からは少し外れた天才二人が異世界に召喚され、一国の未来を背負って殺し合いをする。親友でありながら殺すべき相手として互いに執着していく二人の関係性がたまらなかったですが、そんな彼らの周囲を彩る現代・異世界のキャラクターたちも魅力的な物語でした。
夏海 公司「はじまりの町がはじまらない」→感想
【22下ラノベ投票/9784150315306】
意志を持ったNPC達が自分たちが生きている世界の終わり(サービス終了)に抗うため、自力でゲームにテコ入れを行う……というお話。短命爆死のクソソシャゲな世界を舞台に例えて解釈し、強引にテコ入れしていくのが面白かった!そして主人公であるオトマルと彼の秘書であるパブリナの軽快なやりとりがめちゃくちゃ楽しい。
新 八角「チルドレン・オブ・リヴァイアサン 怪物が生まれた日」→感想
【22下ラノベ投票/9784049141412】
海獣の脅威にさらされた日本を舞台に、それぞれの理由から彼らの死骸から作られた人形兵器に乗る少年少女たちの物語。バトルものというよりは大災害を経験して欠落を抱えた彼らがそれとどう向き合っていくか…というお話なのですが、その一方でソレに魅入られたかのように人間から逸脱していく主人公の姿が印象的で、とても良かったです。
黒鍵 繭「Vのガワの裏ガワ」→感想
【22下ラノベ投票/9784046819420】
クリエイター視点からのVtuberモノというのが一味違った感じで面白い。明るい学園モノといった雰囲気のVTuber「雫凪ミオ」の成功まで、そこからヒロイン・海ヶ瀬果澪の本心に迫っていく後半の変転が凄まじく、彼女の心の闇・主人公の過去を掘り下げていく展開がとても良かったです。
吉野 憂「最強にウザい彼女の、明日から使えるマウント教室」→感想
【22下ラノベ投票/9784094530872】
全てがマウントで決まる学園を舞台に、マウント強者のヒロインらしき女と主人公が偽装彼氏契約を結び、クラス決めトーナメントで最上級のSクラスを目指す!!というお話。会話劇主体のコメディでマウントバトルはネタ要素…と思わせておいて頭脳バトルとして割と全うに面白……とみせかけておいてやっぱり最後にネタで落としてくるのめちゃくちゃ良かった。
佐遊樹「TS悪役令嬢神様転生善人追放配信RTA 嫌われ追放エンドを目指してるのに最強無双ロードから降りられない」→感想
【22下ラノベ投票/9784047368101】
最高のサードライフを送るためにセカンドライフで(タイトル略)をやる羽目になったがよくわかんないからとりあえず全員ぶっ飛ばせばいいよね!?というお話。主人公の真っ直ぐすぎる脳筋私TUEEっぷりがひたすら気持ちよく、爽快になれるお話でした。というか1巻の時点ではRTAどころか間違いなく逆走していたので続きがとても気になる。

既存

コイル「オタク同僚と偽装結婚した結果、毎日がメッチャ楽しいんだけど!3」→感想
【22下ラノベ投票/9784049145755】
完結。これまで興味がなかった事でもお互いに一緒にやったら楽しいよね!で、次々と新しいことに挑戦していく主人公夫婦の生活がタイトル通り本当に「メッチャ楽しい」だったので最高でした。仕事も趣味も子育ても両立させて、自分の距離感で続けていく姿がとても良かった。
南野 海風「魔術師クノンは見えている 2」→感想
【22下ラノベ投票/9784040745831】
前回の好きラノの結果を見て手を出したのですが、2巻3巻は学園に入ったクノンが周囲を巻き込んで実験を繰り返していくお話で楽しかった。アグレッシブなオタクがオタクと一緒に好きなことする話がつまらないわけないんですよね。あと3巻はマジでジオエリオンが出てからが最高だったのでよろしくお願いします。焦がれて待てはずるいって。
衣笠 彰梧「ようこそ実力至上主義の教室へ 2年生編8」→感想
【22下ラノベ投票/9784046818331】
試験のない息抜き的な巻でしたが、それ故のクラスの垣根を超えたはっちゃけぷりが楽しくてこれまでとは違う意味でニヤニヤしながら読んでしまった。その裏で、今後の展開へのターニングポイントになりそうなお話もしっかり盛り込まれていて、次巻がますます楽しみになってしまう1冊でした。


まだ間に合う!明日処刑される悪役令嬢ですけど、スチル回収だけはさせてください!

 

「処刑は明日の正午だ。ここで、これまでの人生を悔いるといい」
突然処刑を言い渡された私は気がついた。 自分がドハマリしていた乙女ゲーム『ゲーテンベルグの白百合と黒薔薇』の悪役令嬢フェルリナになっていることに! そして処刑を宣告したのは最推しキャラのアルフリートだということに! さらに思い出す。自分が全スチルを回収できていないことに……! 「私を裏庭に連れてって!! 今なら告白スチルを生で回収できるから!! お願い!! どうせ死ぬならスチルを生で拝ませてよぉぉ!!」 「裏庭にだけなら連れて行ってやる! わかったから少し黙れ!!」 イベントスチルの回収に執念を燃やすフェルリナの熱意は、処刑回避に繋がるのか!? もう遅くない、まだ間に合う!? ファンタジーラブ&コメディストーリー、スタート!

乙女ゲーム『ゲーテンベルグの白百合と黒薔薇』の真エンディングにたどり着くべく、徹夜でスチル回収をしていた主人公は階段で足を滑らせ──気がつけば、その乙女ゲームの世界に転生していた。しかも、明日処刑される悪役令嬢フェルリナとして。どうせ明日死ぬならせめて集めきれなかったスチルを拝んでから死にたい!!とゲームではお助けキャラだった騎士・アルフリートを巻き込んで「スチル回収」を始めて……?

タイトルの出オチ感とは裏腹に深まっていく謎は必見

処刑直前なのに乙女ゲーの未回収スチルをリアルで回収しようとする転生悪役令嬢のお話。タイトルから出落ち感がすごいしかなりコミカルな話ではあるのですが、話が進むごとに自分の記憶やゲーム知識と現実の展開にズレが生じてきて、謎が深まっていく……という展開がすごく良かった。

真エンディングを見れてない乙女ゲームという不完全な知識と、感情が伴わず重要なエピソードの記憶が抜け落ちてしまっている悪役令嬢フェルリナとしての記憶。そのどちらにも大きな欠落があり、(プレイ済の)乙女ゲーム転生モノでありながら先の読めない展開になっていくのが印象的でした。元々謎解き要素・ホラーというかミステリー的な要素のある世界観なのですが、そこにゲーム内では描かれていなかった異能力の存在や知らない事件の話が掘り出されてきて、更には一連の騒動の裏で蠢く陰謀、攻略対象達の本心も明かされていって、どんどん何が起きてもおかしくない雰囲気になっていくんですよね。もう誰を信じたら良いかわからなくて、そのせいで中盤のアルフリートと離れてフェルリナひとりで行動するシーンなんかはかなりハラハラしながら読んでしまってました。

暗くなりすぎない展開・大団円のハッピーエンドが嬉しい

そんな予想外に重たい展開の中、主人公であるフェルリナがスチル回収に必死になったり「推し」の活躍に悲鳴を上げたりする姿と、彼女の相棒役である騎士アルフリートが彼女に振り回されながらも繰り出す鋭いツッコミが一種の清涼剤となっていた気がします。いや、2人の掛け合いが唯一の清涼剤だからこそ、中盤の2人が別行動を取る展開でめちゃくちゃ手に汗握ってしまうわけですが。

フェルリナが「スチル回収」にこだわる姿はともすると滑稽だし現実が見えてないようにも思えるんですが、一方で色んなところで作品そのものに対する深い愛情を感じることができて、オタク主人公の推しコメディとしてもポイント高かった。ちょっといいシーンになると途端にスチル扱いして細かな描写で語り始めるのが微笑ましいし、中盤になるとだんだん好感度が上がってきたアルフリートがちょっと殺し文句を言ったりカッコいいムーブをする度に悲鳴を上げて不審者になってるのわかるすぎる。また、ただオタクの悲鳴を上げるだけではなくて、双子の妹でもありライバルでもありもう一人の「推し」でもあるゲームヒロイン・リリベールや攻略対象達について、どんなに彼らを疑いたくなるようなネガティブな情報や推察が出てきたとしてもゲームで触れた彼らの内面を信じ抜くフェルリナの姿がとても良かった。自身の命運に関してはやたらと達観している割に、自分を陥れたはずの彼らがバッドエンドを迎えないように奔走する姿はとても印象的で……だからこそアルフリートがフェルリナに「もっと自分を大事にしろ!」と言い続けるのも解るんだよなあ。

そんな彼女の真摯な想いが天に通じたのか、最終的にたどり着いたグランドフィナーレは誰も傷つくことのない完璧な大団円で、思わずニッコリしてしまいました。特に事件を通してすっかりラブラブになったアルフリートとの、事件を切っ掛けにすっかり仲良し家族になってしまったリリアーナとの仲睦まじい様子にはニヤニヤが止まりません。

悪役令嬢でも割りとよく見かける気がする復讐完遂でも「ざまぁ」でも逆ハーレムエンドでもなく、主人公含む登場人物全員がそれぞれの進むべき道を選んでそれぞれ幸せになっていくという大団円な終わり方、凄く良かったです。


このラノベの男男間の巨大/複雑感情が好きだ2022決定盤

タイトル通りの記事です。

このラノベの男同士のクソデカ感情いいよね!!というタイトルを独断と偏見で25タイトル紹介します。長年まとめ記事作るよ作るよって言い続けて気がついたら10年経ってたよ……関連記事の方に昔の同系統のまとめをリンクしておりますので良かったら併せてどうぞ。一応関係性で「親友・相棒」「ライバル・共闘」「因縁・敵対」の3つに分けてます。

関係性のみに焦点を絞っているので内容があまり女子読者向けじゃないものや未完のまま数年止まっているものも含まれます。予めご注意ください。

親友・相棒

楽山 「俺の召喚獣、死んでる」→感想
「友人を馬鹿にされて、僕が笑って許すようにみえるのか?」
苦学生でありとある事情から自分の召喚獣の正体を隠して戦わざるをえない主人公フェイルとそのチームメイトであり名家の子息でもあり一番の理解者でもあるシリル。フェイルが巻き起こす常識外の行動にダメ出しやお説教をしたりする反面その実力を誰よりも信頼していて、他人がフェイルを理不尽な理由でバカにするのは許せないシリルの姿にニヤニヤしてしまいました。
有象 利路「サキュバスとニート」→感想
「和友とオレの間に割り込むのは姐さんといえどもマジでキレますよ」
引きこもりの主人公・和友と彼の高校時代の親友でありコンビニ店長の琥太朗。高校時代の女房役(野球的な意味で)でもあった彼がとある事件によって夢を失って絶望した和友のことを影に日向に心配しつつ、本人の居ない所で彼に対して強い執着を見せる姿が大変良かったです。
大樹 連司「ボンクラーズ、ドントクライ」→感想
そんな彼を裏切る算段を僕は立てている。たかが、桐香なんて存在のために。
男二人だけの映画研究会にやってきた新入部員。友達同士の気軽なだけの部活動はその日から姿を変えていく。新入部員・桐香に恋心を抱いてしまった主人公の肇が彼女に振り向いてもらえないことに絶望し、その一方で親友・藤岡との楽しいだけだった関係性を「恋心」なんてものによって壊されてしまうことを恐れる、という葛藤が印象的でした。
壱月龍一「ラ・のべつまくなし」→感想
「……あいつが書いて、オレが編集やって……なんて。まあ、俺らの夢っつーかなんつーか、はは、超青臭いっすけど」
純文学からライトノベル作家に転向した主人公の矢文学と、彼の学生時代からの親友で編集者志望の北見圭介。ふたりの夢は、コンビを組んで最高の作品を送り出すこと。腐女子のヒロインがうっかり誤解しちゃうくらい仲の良い男二人の、熱い友情が美味しかったです!(あとブンガクくんの作風絶対わたしの好みだから現実に降臨してほしい〜〜)
井上 堅二「Lady!? Steady,GO!!」→感想
「お前にできないことは俺がやる。俺に出来ないことはお前がやる」「そうしたら、俺たちにできないことは何もないだろう?」
名家の分家に生まれて下男のような扱いを受ける圭と、本家の長男でありながら「出来損ない」と見捨てられた燐之介。完璧な人間でありながら大きな欠落を抱える燐之介と平凡だがその欠落を補って支えることが出来る圭という2人の関係性がとても良かったです。最大の問題は2巻が出なかったことだけど2人の関係性としては1巻で綺麗にまとまってるので……。
瘤久保 慎司「錆喰いビスコ」→感想
「俺が矢で、お前が弓だ。俺たちは弓矢だ!そういう、二人だった!」
お尋ね者の賞金首・赤星ビスコと心優しき町医者・猫柳ミロ。一見正反対のふたりが同じ目的のためにコンビを組んで旅を始め、やがてかけがえのない相棒となっていく。相棒ならではのお互いに気を使わない関係と、深い「愛」によって結ばれた関係性が良かった。アニメは原作1巻分だけなので、2巻以降も読んでほしい。
羊 太郎「ロクでなし魔術講師と禁忌教典」→感想
「……行こうか。頼りにしてるぜ、相棒」「抜かせ、誰が相棒だ。寝言は寝て言え」
かつて特務分室で汚れ仕事や裏仕事を行っていたグレンと、特務分室時代の相棒であったアルベルト。現在は別々の組織に身を置く彼らですが、それでも手を組めば最強という構図が最高。グレンの甘い理想とは相容れないと思う反面、かつての自分が切り捨てた理想を背負い続けるグレンに期待せずにいられない姿がよかったです。
鏡 貴也「伝説の勇者の伝説」→感想
「……引き戻すぞ。おまえがどこにいても、引き戻す」
『複写眼』という異能を持ち子供の頃から過酷な環境で生きてきたライナと、後ろ盾のない母から生まれて兄王達に命を狙われ続けてきたシオン。生まれも育ちも違うふたりは、やがて「悪魔」と「勇者」という世界の行く末を握る運命に翻弄されていく。仲の良い親友であるふたりが運命に引き裂かれながらも手を伸ばさずにはいられない姿が印象的でした。本編のシリアスな彼らも、短編でのコミカルな掛け合いも良。
井上 堅二「バカとテストと召喚獣」→感想
「確かに点数は低いが、秀吉やムッツリーニのように、お前にも秀でている部分がある。だから俺はお前を信頼している」
学園でも有名なバカの主人公・明久と、問題児ばかりのFクラスをあの手この手でまとめ上げる雄二。考え方も得意分野も正反対で普段は喧嘩してばかりの悪友ふたりが共通の目的のためとなれば最高のコンビネーションを発揮するのがたまりません。相手が落ち込んでいれば何も言わずに背中をぶん殴るような言葉で言わなくても通じ合う関係性が最高。

ライバル・共闘

紫 大悟「魔王2099」→感想
「君は……まだ僕を勇者と呼んでくれるんだな……」
魔術と科学が融合した近未来都市新宿で500年ぶりに目覚めた不老不死の魔王ベルトールと、望まぬ形で人としての枠を超えた不老の勇者グラム。すでに時代から忘れら去られたグラムの「勇者」としての役割を、宿敵であったはずの「魔王」ベルトールこそが求めるという関係性が良かった。あくまで不倶戴天の敵同士である彼らの一時共闘が美味しい!
九岡 望「地獄に祈れ。天に堕ちろ。」→感想
「……共同戦線だ。あーあ」「手ぇ組むぞ、畜生が!」
生き残った妹のために死者を狩る聖職者嫌いの死者ミソギと、死んだ姉に心を囚われたまま死んだように死者を狩る死者嫌いの聖職者アッシュ。絶対に相容れないふたりが亡者の街・東凶を舞台に共同戦線を張るというお話。何もかも相容れないふたりが自分の想いを貫くためにある時はぶつかり合い、ある時は共闘する展開が良かった!
望公太「最強喰いのダークヒーロー」→感想
ルイ=ミシェル・ヴィレット。(中略)いかなる者にも最悪の蔑称を授ける阿木双士郎をして、『王子』と呼ぶ他なかった男である。
ソードウォウ最弱の選手でありながら、強敵も味方も手のひらの上で転がす奇策な作戦で勝ち続ける双士郎と、そんな双士郎に救われて以来、その奇策を全部良い方に解釈して持ち上げていくルイ(強くて善人)という関係性がコミカルで良かった。双士郎が、ルイだけ微妙に転がしきれてない感じが楽しいんですよねえこれ…。
渡航(Speakeasy)「クオリディア・コード」→感想
昔も今もこの先も、きっと違う方向を向いて、違う道を選ぶのだろう。それでも、今は確かに、並び立っていた。
異形によって脅かされている世界を守るため、そして大切な少女達を守るために戦うふたり。性格も考えも正反対で本来ならば手を取り合うこともなかったであろう壱弥と霞が、自分にない部分に憧れ、誰よりも強く信頼し合っているという関係性が良かった。ノベライズ版はアニメと内容ほぼ同じなのですが、特に3巻の壱弥・霞の心象描写がとても濃厚で良いので副読本としても是非!(過去話も良いです)
師走 トオル「ファイフステル・サーガ」→感想
今でこそカレルは王家の味方だが、数十年後に余計な野心を抱かないという保証はどこにもないのだ。
来るべき魔王の襲来に立ち向かおうとする英雄達が時に手を組み、時には対立しながら人間たちをまとめようとしていく物語。アレンヘムの傭兵団の若き団長・カレルとフーデルス王国の摂政・ヴェッセルの関係が良かった!序盤から手を組んでいる彼らなのですが、それぞれお互いの国の思惑の下で動いていて、完全な味方ではないんですよね。稀に覗かせる剣呑な雰囲気がとても良かったです。
柳実 冬貴「Re:バカは世界を救えるか?」→感想
その闇の中で、心路は──(略)現実世界で唯一負の感情を抱くことのできる、好敵手の声をはっきりと聞いた。
他者の異能の「劣化コピー」を作る異能を持つ主人公・佐藤光一と、他人の異能を完全にコピーできる秋雨心路。最初は相容れない敵同士だった彼らが、少しずつ「好敵手」へと変化していく課程がたまらない。能力の代償として感情が薄れていく心路の心を唯一揺さぶることが出来るのが光一というのがまた。
賀東 招二「甘城ブリリアントパーク」→感想
(『汚いことをしなければならない』か。ならば、それをするのはぼくだよ)
ポンコツ遊園地の支配人代行となった主人公・可児江西也と遊園地のキャスト代表を務めるマスコット・モッフル。犬猿の仲だが遊園地の未来を誰よりも真剣に考えている彼らの目的が一致するがゆえの共闘が大変美味しいのですが、特に原作1巻終盤に起こったとある事件をきっかけにしたある種の「共犯関係」が、とても良かった。アニメ版とは全く違う展開ですが、どちらも良いので両方見てほしい。
渡航「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。」→感想
俺はもうとっくに気づいている。葉山隼人が、けしてただの善人ではないことを。
渡航が描く「お互いに相容れないからこそ誰よりも深く理解し合う」男男間複雑感情が大好きなので、例によって葉山隼人と比企谷八幡の関係性も大好きです。普段は優等生の仮面を被っている葉山隼人がそんな表の顔が通用しない比企谷八幡にだけは時折素顔で接しているのがたまらない。
田尾 典丈「ギャルゲヱの世界よ、ようこそ!」→感想
「これから何があっても、みんなを愛し続けてほしい。それが、俺の望みだ。任せたぜ、初めての、親友」
とあるギャルゲーのヒロインたちが現実世界に投影され、彼女達が抱える問題をゲームの1ファンである都築武紀が解決する物語。クリア後のハーレム展開を謳歌していた武紀が明確に「全員を幸せにする現実のハーレムエンド」を目指して行動し始めるのが4巻のゲーム主人公・正樹との対決でした。同じヒロインを愛する主人公同士として・親友として次元を超えた友情を築いていく展開が熱い。

因縁・敵対

落葉 沙夢「─異能─」→感想
あいつは俺を赤根凛空ではなく、友人のアカとして扱ってくれていた。その存在は俺にとって小さくなかった。
複数の人物の視点から事件が描かれる群像劇形式のサバイバル異能バトル。過酷な展開の中でうっすら語られる「主人公」の祐樹とその友人・赤根凛空の関係性が印象的でした。物語で起こった惨劇を考えるとお互いにさっぱりしすぎと感じる部分もあるんですが、描写が短くてもお互いにリスペクトしあっていたことが伝わるふたりの独白が良かったなあ。
水瀬葉月「ぼくと魔女式アポカリプス」
「宵本澪っていうクソッタレな友達は──どうやら、俺が思ってたよりも少しだけお人好しらしい。」
絶滅寸前の魔術種達が生き残りを掛けて行う生存競争に巻き込まれた「死者」達が繰り広げる異能系サバイバルバトル。『普通』に埋没したくなくて学園生活からはみ出していた主人公・澪と可愛いショタの皮をかぶった女に見境ないクズ・草太の友人関係が独特で面白かった。二人の出会い話がどっかに合ったと思うんだけど収録されてないんだよな……。
衣笠 彰梧「ようこそ実力至上主義の教室へ」→感想
ああ、それだ龍園。おまえにも見えたんだろう?恐怖という感情は、己の中に確かに存在する、ということを。
Dクラスの黒幕として暗躍する綾小路と黒幕の存在を追うCクラスのリーダー・龍園。1年生2学期をたっぷり使って水面下で行われる長いかくれんぼ、その末に待つ直接対決がとても良かった。この直接対決の後の微妙に共闘的な関係になっていく綾小路と龍園の関係性も美味しいけど、やっぱりとりあえずは原作4〜7巻をよろしくお願いします!!ってなりますね!
賀東 招二「フルメタル・パニック!」
「カシム、カシムと……。馴れ馴れしいんだ、クソ野郎」
主人公である相良宗介に強く執着する、序盤にして最悪の強敵ガウルン。自分が恋い焦がれてやまない「殺人聖者・カシム」に宗介を引き戻すために自身の命すらも厭わない様はめちゃくちゃなインパクトがありました。フルメタ、なんだかんだで彼以上にヤバい敵出てこなかった気がするの凄いよね……。
ツカサ「銃皇無尽のファフニール」→感想
切れ長の目が画面の向こうから俺を射る。それだけで感覚が引き戻される。彼の部下だった長く暗い日々へと。
男性で唯一ドラゴンの力を持った“D”の少年・物部悠。同じ異能を持つ少女達が集まる学園・ミッドガルに入学するが……ミッドガル入学する前、軍事組織ニブルでの元上司であるロキ少佐がミッドガルに入学した後も悠に対して強い執着を覗かせていく展開が大変美味しかったです。いやこれ、俗に言う「元彼」概念なんですよね……美味い……。
羊 太郎「ロクでなし魔術講師と追想日誌」→感想
「今は、曲がりなりにも母屋を同じくする同志だけど……いつか、必ず僕らは決別する。……互いの信じる正義ゆえに」
相棒概念の所でも取り上げたロクアカですが、どうしてもジャティスの話したかったなどと供述しており……アルベルトと同じく元特務分室での同僚であったジャティスが特務分室を離れて犯罪者となり、事ある毎にグレンと衝突していく本編での展開も大変美味しいのですが、そんなジャティスがグレンを初めて宿敵として認めた追想日誌5巻がとてもよかったです。あとほんと本編は次巻が楽しみ…!!
月夜涙「回復術士のやり直し 〜即死魔法とスキルコピーの超越ヒール〜」
変だな。一周目では、あいつに怯えて、逃げたい、怖いとばかり思っていたのに、二周目の今はあいつに会いたくて仕方ない。
人生をやり直しながら1周目の人生で自分を虐待した勇者達に復讐を行ってきた【癒】の勇者ケヤル。その復讐も残るは【砲】の勇者で少年性愛者ブレットを残すのみとなるが、その復讐は国を巻き込み人類の存亡を掛けた戦争へと発展していく。メインは凌辱メインのエッチな復讐劇なのですが、その合間でケヤルとブレッドが見せる互いへの執着と、裏の裏までを読み合う心理戦が大変良かったです。ブレットの行方を追う回が「想い人を探す」なのとか最高。


VTuberなんだが配信切り忘れたら伝説になってた5

 

三期生も一周年! 記念配信の準備が進む中、光の様子が…!?
まともなVTuberが遂にいなくなってしまった大手運営会社ライブオン。切り忘れから大人気となった三期生・心音淡雪は、シオンママと性(聖)様のカップル成立に末永く爆発しろと思いつつ、迫る『三期生1周年記念』に向けて準備を進めていた。しかし、オールスターコラボやデートなど楽しく活動する中で 「い゛、い゛ら゛っ゛じゃ゛い゛、あ゛わ゛ゆ゛ぎ゛ぢゃ゛ん゛……」元気で良い子な光ちゃんが頑張りすぎて喉を壊してしまい!? それでも休もうとしない光ちゃんだったが、淡雪から「リスナーの想い」を伝えられることで徐々に心境も変わっていき――。衝撃のVTuberコメディ、アニバーサリーな第5弾!

2期生の騒動も一段落し、デビュー1周年に向けて企画を練りはじめた淡雪たちライブオン3期生の面々。企画の一貫として全員で歌を披露することになったが、歌が苦手な光ちゃんが練習のしすぎで喉を壊してしまう。それでもなお、今まで通りの過密スケジュールでVtuber活動を行おうとする光ちゃんに、淡雪は……!?

また変態と百合カプ(と淡雪ハーレム要員)が増えた!!

ライブオン面々の中でやや存在感薄めだった光ちゃんを中心にした三期生当番回。ファンに見捨てられることが怖くて、忘れられることが恐ろしくて、ついつい「頑張りすぎて」しまう光ちゃんに同じVtuberの立場から、そしてひとりのファンの立場から彼女の勘違いを正して立ち直らせる淡雪と光ちゃんを親身になって心配してくれる三期生や周囲の面々……という、ファンや同期達との絆を感じる感動的な展開なのですがそこからどうしてそこにたどり着いてしまった!? 温度差がすごすぎて風邪引くわ!!!

いやでも確かに光ちゃん、個性の強すぎるライブオンの面々に押されて(少なくても作中では)存在感が薄くなりがちだったので良いテコ入れだったのだろうなと……いや他の面々が霞むほどの強烈な変態(しかも性知識がない分逆にブレーキがない)として戻ってきたのは……どうなのかな……??

その他にも今回は前巻の展開を受けてすっかりバカップルになってしまった聖様×シオン、エーライさんに劣情を抱くちゃみちゃん……とますます百合の花園が咲き乱れる展開だったしあわちゃんハーレムも増えた。いやでも、以前シュワちゃんによって「組長」という二面性を覚醒させられて以降その二面性を戦略的に使う事で自らの強みとして生かしていくエーライさんめちゃくちゃいいキャラですよね。組長モードのときも含めて素は割りと男前だし、これはちゃみちゃんも惚れますし、コラボASMR配信のときのさじ加減が絶妙すぎる。四期生お披露目回のときは一番興味ないキャラだったのに、今四期生の中だと一番この子が好きだなあ。

コラボ配信回も良かった&新展開に期待

いろいろな意味で今回はラストの「光ちゃん覚醒」がすべてを持っていった感じが強いのですが、ライブオンの全ライバーが集まる「監禁人狼」の回もめちゃくちゃ良かった。推理ゲームとしての局面もありつつ、鍵となっていくのが各ライバー自身の個性の強さと彼女たちに関する理解度の高さというのがすごく良い。11人という大人数を動かしながら誰もに何かしらスポットが当たる展開になっているの良かったし、出番の少なかった晴先輩が最後の最後で無双するのが晴先輩らしすぎる。

また、各章幕間に挟まれる3期生のカステラ(マシュマロ)返信の小話も良かったです。これ割と個性が出るし、淡雪の一人称視点じゃないからこそ見えてくるものもあって面白い。それにしてもこの手の動画は本当に見ないので感覚がわからないのですがましろのカステラに送られてきたましろ×淡雪の百合SSは御本人による音読なんですか?えっちすぎませんか?

そして中盤にこれまで一切触れられてこなかったライブオン以外のVtuberについての言及があったとおもったら、次巻は外部ライバーとのコラボと、前巻にちらっと匂わされていた淡雪自身の掘り下げ話になるようで…!?割とライブオンの身内のみの盛り上がりで進んできた物語が新キャラクターたちの登場をきっかけにしてどう変わっていくのか気になるし、Webでも人気のあったエピソードとのことで、次巻どうなっていくのか本当に楽しみです。


純白と黄金

 

ようこそ喧嘩都市へ。ここは思い出と約束の無法地帯。
《純白の悪魔》それは最強と称された少年の異名。 ヤンキーの聖地・東北で100人の敵を叩き潰した後でさえも彼のシャツには、返り血一つ存在しなかった。 数多の伝説と偉業によりその名は全国に轟き、遠くない未来に全てのヤンキーが彼の舎弟になるだろうと囁かれていたが…… ある日、彼は姿を消した。 時は流れ、ヤンキー全盛時代。 東京最大の喧嘩都市・猫丘区では第二の《純白の悪魔》を生み出すため、六つの高校が参戦する盛大な喧嘩が始まろうとしていた。 そんな狂騒の最中、一人のオタクの少年が猫丘区に降り立った。 名を安室レンジ。 かつて圧倒的な力で東北の頂点に君臨し、ヤンキーを引退した《純白の悪魔》だった――。

中学時代に修羅の国・東北で伝説のヤンキー「純白の悪魔」として伝説を築いた少年・安室レンジはオタクとして高校デビューするために東京の黒淵高校にやってくる。ところが、そこは東京のヤンキー達がしのぎを削る喧嘩都市であった。学園の筆頭ヤンキー・赤城ザクラを倒してしまったレンジは自分を助けようとしてくれた女ヤンキー・鬼津アオイの目指す「ヤンキーが差別されない世界」に共感し、彼女と共に猫丘区にある6つのヤンキー校の頂点を決めるテリトリーバトル「シマトリー」に挑むことに。

シリアスな笑いが炸裂する現代異能×ヤンキーバトル

表紙とあらすじから硬派な不良モノを想像していたのですが、ヤンキー概念と現代のSNS文化・スマホアプリを使ったテリトリーバトル要素を下敷きにした俺TUEE系無双系異能バトルもの(長)でした。

ヤンキーが混入した造語の数々でシリアスな笑いを引き起こしていちいち笑ってしまう。初っ端で強いヤンキーが出すオーラ的なやつを《邪気威(ヤンキー)》と呼び始めたところで既に笑ってしまった。あとなにげにSNS文化要素が色々混入していて、ヤンキー専用SNSとか自撮りの「カチコ映え」とかも地味にポイント高いんだけど個人的に一番笑ったのはSNSのイイネが「ヒャッハー」になっていたところです。他人のヒャッハーで承認欲求を満たすヤンキー、正直めちゃくちゃおもしろいな。あと東北への風評被害が凄い。

出てきたモブヤンキー(「汎用ヤンキー」って用語が登場人物間でも普通に使われてるのにも笑う)が主人公達の仕業で軽率に吹き飛んでいく派手なバトル展開と、その合間に割りと唐突に挟まれるヒロインとのイチャイチャも良かった。やや設定や文章に荒削りさを感じる部分もあったんですが、結構その場の勢いで楽しく読めたな。

男同士の複雑感情(を美味しく頂きたい主人公)が良かった

主人公・安室レンジがぶっちぎりに最強な設定で、俺は平和な東京(※平和ではない)でオタクデビューしてオタク友達作って目立たず生きたい……といいつつ、でも皆に気づかれる前に殴り倒せばいいよネって常人では見えない速さで雑魚を昏倒させていくのでこれは戦いになるのか!?と目を疑うレベルなんですが、オタクとしての自分とヤンキーとしての自分の両方を受け入れた結果「ヤンキー達がそれぞれの因縁を胸に激突する所を特等席で見守ろれるの実はオタクとして美味しくない!?(意訳)」ということに気づいてしまったので基本的に雑魚は倒してお膳立てをしつつ自分は基本的にボス戦に関わらないという最強の傍観者ポジションに目覚めてしまい無問題だった。彼らのすぐ横に居ながらも完全に上位レイヤーから彼らの因縁を俯瞰してるの、俺TUEE設定だからこそ出来る展開で色々と凄い。

黒淵高校の筆頭ヤンキー・赤城ザクラが実質もう一人の主人公みたいな立ち位置になっていて、彼がレンジとの出会いを機に自分を見つめ直し、道に迷い慢心していた己を鍛え直し、袂を分かったかつての仲間達と戦うためにふたたび立ち上がり、独りで戦うのではなく心を通わせた仲間を改めて手に入れる……という展開がとてもアツかった。というか彼が中学時代に組んでいた東京最強のヤンキーチーム・《天下逆上》のメンバーが現在のテリトリーバトルの中心となっている6つの学校でそれぞれ筆頭ヤンキーを張っている……という展開が完全にオタクが好きなやつなんですよね。男同士の複雑巨大感情じゃん。これはレンジも特等席で見たがるわ。

不良モノかとおもったら俺TUEE異能バトルモノ、男男間の複雑巨大感情かとおもったらそれを見守る強いオタク……といろいろな意味で予想を裏切られる設定で面白かったです。いや面白かったけど色んな意味でみんな表紙に騙されない!?いやでもこの内容を正確に読み取れる表紙って難しいよな……すでに2巻が出ているようなので、そちらも楽しみです。


声優ラジオのウラオモテ #06 夕陽とやすみは大きくなりたい?

 

問題児だらけの声優プロジェクト始動! 夕陽とやすみはリーダーできる!?
 アイドル声優プロジェクト『ティアラ☆スターズ』始動! アニメ・ゲームにラジオと展開盛りだくさんな企画の幕開けは、選抜ユニット同士の対抗ライブ。先輩声優も参加する中、リーダーはなんと――夕陽とやすみ!? 「なぜ、あなたがリーダーなんですかね」  やすみ率いるユニット“ミラク”に、芸歴8年目の先輩(?)小学生声優・双葉ミントは不満たらたら。 「勝ち負け、って考えは変じゃない??」  さらに年上の新人声優・飾莉とも心がすれ違って空気は最悪。夕陽率いる“アルタイル”との差も開くばかり。でも――。 「勝負しましょう、歌種やすみ」  傍にいなくても、夕陽への闘争心が力をくれる! 問題児揃いのチームをまとめ、やすみは一回り大きくなれるのか!?  新ウラオモテ声優も続々登場の、熱すぎる青春声優ストーリー・第6弾!

大型アイドル声優プロジェクト『ティアラ☆スターズ』に参加することになった夕陽とやすみ。このプロジェクトではライブ毎にユニットを組み換えてバトル形式でライブを行うということで、初回のライブではやすみは“ミラク”、夕陽は“アルタイル”というユニットに別れて対決することに。しかもコーコーセーラジオを聞いていたプロデューサーの采配で、ふたりは各ユニットのリーダーとして抜擢され……!?

年上の「後輩」と年下の「先輩」と

前巻は才能ある後輩に圧倒されてしまう二人と、そんな二人がそれでも「先輩」として彼女を支えるお話だったけど、今回は先輩後輩含めた問題児──というか扱いの難しいメンバーだらけの中でふたりが「リーダー」としてどう立ち回るか、というお話でした。今回の話、5巻の限界アニメ現場と同時に発生してたの普通にやることが多くないですか……やすみの崖っぷち声優描写が印象強かったので「お仕事増えてよかったねえ」という気持ちも結構あるんですが……。

やすみが率いるグループのメンバーになったのが先輩の柚日咲めくると、元子役で声優としても大先輩になる小学生の双葉ミントと上京してきて実家からの支援もなく生活が不安定な年上の新人声優・御花飾利。ライブに向けて自主練を組もうとしたやすみは、ミントと飾利が練習量について対立するのを上手く抑えることが出来ず、早速苦しむ羽目に。社会に出て10年もしたら年下の部下や年上の上司なんて腐るほど出てきますけど、業界ではよくあることとはいえまだ年功序列感の強い学生の立場で「年下の先輩」や「年上の後輩」って普通に付き合い方が難しいですよね……しかもそのふたりが正反対の方向で自分の立ち位置や今後について拗らせていたから余計に。

これまでの物語で様々な経験をしたやすみがかつての自分と同じような、不安定な立場の新人声優である飾利の口からかつて自分の行動と「夕暮夕陽との対決」に執着している現在の自分について非難され、夕暮夕陽裏営業疑惑の時の自分の行動について改めて向き合うという展開がとても良かった。これ事件の直後だったらこんなに冷静にかつての自分の行動を振り返ることは出来なかったと思うし、狭い視野のまま自らの行動を正当化していたかもしれないし、相談できずに抱え込んでいたかもしれないし、なんなら飾利からの強い言葉を受けて立ち直ることができなくなっていたかもしれない……と思うんですよね。厳しい言葉にショックを受けながらもそれを抱え込む事なく、あの時の行動が決して正しかったとは言えない、それでもかつての失敗を経たからこそ今の自分が居るのだと答える姿に「声優・歌種やすみ」の成長を感じて胸が熱くなりました。また、敢えて敵味方に別れて対決することで改めて夕暮夕陽という「相棒」のありがたさを感じてしまう展開が、とても良かったです。

ただ、今回は良くも悪くも「アイドルコンテンツ声優ライブ」の話なのにアイドル声優としての話に終始していて、序盤でこの手のコンテンツの「キャラクターと声優が融合するライブの特殊性」について語られたのにもかかわらず完全に元になっている作品側の設定が見えなかったのが少し残念だな……やっぱアイドルコンテンツの声優ライブって歌やダンスの良さも勿論なんですけど、どれだけ声優さんがコンテンツを理解してそこに寄せてくれるかが楽しみの一つだと思うんですよ。ただ声優の歌とダンスがうまけりゃ良いってもんじゃないんだよなあ…………次巻もこのコンテンツの話になるっぽいし、アニメも始まるのでそうするとまた少し掘り下げられるのかもしれないけど。

あいかわらずめくる先輩(改め一般女性の藤井杏奈ちゃん)が可愛い

もう本当に今回はユニット唯一の先輩枠であっためくる先輩の存在が頼もしくてたまらなかったんですが、そんな話の中でめくるがやすみに協力する見返りとして「ただの1ファンとして“歌種やすみ”に接したい」と願うエピソードがめちゃくちゃ好きでした。柚日咲めくる改め一般ファンの藤井杏奈ちゃんが憧れの歌種やすみを目の前に完全に早口オタクになってしまうの可愛いがすぎる。今回は素の彼女を知らない後輩声優が多かった関係もあり、クールでデキる先輩としての「柚日咲めくる先輩」としての印象が大きかっただけにそのギャップにニヤニヤしてしまいました。いやほんとめくる先輩可愛いよな!!!!

そして次回のライブはまさかの桜並木乙女を筆頭にした先輩コンビvs夕陽・やすみと後輩達のチーム対決。作劇としては面白いんだけど、ライブという声優自身の技量が問われるイベントでそこまでの力の差が出るユニットくんじゃうのって控えめに言ってヤバヤバでは!?アニメがある分キャラクター人気である程度その差を埋めることも可能かもしれないけど、新人チームの中でも随一の力量を持つ高橋まで相手チームに居るのマジで容赦ない。ライブバトルという設定なのに勝てそうな見込みがなさすぎる。

今回の時点でも危惧されていた、対戦形式にすることで「各ユニットの力量差がはっきり出てしまって片方が霞んでしまう」問題が現実のモノとして迫ってくることになるの必須の展開で、色々な意味で次巻がどうなるのか。楽しみだけど心配でたまらない。



ヴィクトリア・ウィナー・オーストウェン王妃は世界で一番偉そうである

 

ヴィクトリア・ウィナー・グローリア公爵令嬢。 フレデリック・オーストウェン王子の婚約者である彼女は ある日婚約破棄を申し渡される。 だが、それを「我は婚約破棄を許可しない」の一言で 切って捨てたヴィクトリアが取った行動は―― 「フレッド。……そなたはさっき、我に婚約破棄を申し出たな?」 「ひゃ、ひゃい……」 「では我から言おう。――もう一度、婚約をしよう。我と結婚しろ」 「はいぃ……」 かくしてグローリア公爵令嬢からオーストウェン王妃となったヴィクトリアは その輝かんばかりの魅力で人々を魅了し続ける――!

フレデリック・オーストウェン王子は男爵令嬢であるマリアと恋に落ち、婚約者である公爵令嬢ヴィクトリアに婚約破棄を言い渡した。ところが、当の婚約者・ヴィクトリアはそれを聞き入れない──どころか、どこまでも偉そうに愛を囁いてきて…。

えっこの王妃イケメンすぎ…!?

とにかく偉そうで覇王のような物言いのイケメン王妃様がその偉そうな態度と物言いに相応しい才能を持ってライバル令嬢達を蹴散らし、自分に言い寄る間男も物ともせず、国家を揺るがすトラブルを解決していくお話。

とにかくイケメンすぎる王妃がひたすら偉そうに最初は自分の身の回りから、そのうちに国に関わるような事件までも解決していってしまう姿が爽快。おおむね偉そうな態度とその場の勢いで周囲を圧倒しつつ、その反面しっかりと相手の求めるものをリサーチ・提示して納得させて味方に引き込んでいく手腕がまた見事でとにかく気持ちよかった。常にWin-Winで解決するので誰も損してない。こんなん王子じゃなくても惚れてしまう。

王妃のキャラが強烈で、しかも彼女の行動に誰も彼もが巻き込まれていってしまうため常に本編は慢性的なツッコミ不足ではあるのだけど、そんなツッコミ不在の物語に対してかなり軽めのノリでツッコミを入れてくる地文のテンポがとても良くて、そこもなかなか新鮮でした。いや、その他の登場人物も金のために王にすりよる令嬢やら農家に引力を引かれすぎてる前王の愛人やら猫とふかふかお肉が大好きなライバル令嬢やらなかなかの濃さなんですけど…!!登場人物の中ではヴィクトリアの間男を目指す術士のミカエルだけがツッコミを頑張ってた。

強い王妃×かよわい王、意外なまでにいちゃラブだった

王子フレドリックの婚約破棄騒動から始まる本作ですが、王子が「ざまあ」される展開とかヴィクトリアが王をほっぽってひとりで無双するような展開は一切なく(幾度となく「愛の暴走特急」になってる時はあった)、むしろ最初に婚約破棄を切り出した後はひたすら王と王妃(序盤で結婚した)のいちゃラブになります。ヴィクトリア、世界で一番偉そうだし覇王のような女帝だけど、そんな彼女がなんだかんだと伴侶であるフレドリックの意志を尊重するし、彼の治世をもりたてるために尽力するし、そして夜となれば可愛らしい一面を見せ……見せ…………なんかもう色んな意味で夜の描写も襲い攻めって感じでしたがフレドリック的には可愛い女に映っているのではないかと…はい!!!

そんなヴィクトリア、一見何の弱点もないような「強い女」であると同時に正確に自分の弱点や欠点も把握していて、そこを補うためにフレドリックや周囲の人の力を借りることを厭わない。囚われのフレドリックを取り戻すため、ヴィクトリアがこれまで培ってきた人脈すべてを駆使して奮闘するクライマックスがとても良かったです。

どこまでも破天荒な物語でありながら、その実その破天荒さがきめ細やかなリサーチや正確な自己分析によって補強されているので気持ちよく読めるんですよね。あと誰も不幸にならないので安心して読める。楽しかった!小説家になろうのほうで続編も予定されているようなので、続きをとても楽しみにしています。


ギルドの受付嬢ですが、残業は嫌なのでボスをソロ討伐しようと思います

 

強くてカワイイ受付嬢が(自分の)平穏のため全てのボスと残業を駆逐する!
デスクワークだから超安全、公務だから超安定! 理想の職業「ギルドの受付嬢」となったアリナを待っていたのは、理想とは程遠い残業三昧の日々だった。すべてはダンジョンの攻略が滞っているせい! 限界を迎えたアリナは隠し持つ一級冒険者ライセンスと銀に輝く大槌(ウォーハンマー)を手に、自らボス討伐に向かう――そう、何を隠そう彼女こそ、行き詰ったダンジョンに現れ、単身ボスを倒していくと巷で噂される正体不明の凄腕冒険者「処刑人」なのだ……! でもそれは絶対にヒミツ。なぜなら受付嬢は「副業禁止」だからだ!!!! それなのに、ボス討伐の際に居合わせたギルド最強の盾役に正体がバレてしまい――?? 残業回避・定時死守、圧倒的な力で(自分の)平穏を守る最強受付嬢の痛快異世界コメディ!

残業は嫌だとキレ散らかしながら超絶スキルでボスを討つ主人公の姿が爽快。そんな彼女が頑なに「平穏」を望む理由に胸が熱くなったし、コミカルな展開も楽しいけど終盤のシリアスで熱い展開が最高に良かったです。それにしても帯の「魔王アノス様応援コメント」が色々な意味で的確で、読み終わってから唸ってしまうな。

圧倒的なスキルを持つ主人公が残業を駆逐する社畜讃歌

安定した生活を望むギルドの受付嬢・アリナが残業を減らすため、業務終了後に正体を隠してダンジョンに潜り、一線級の冒険者たちをも圧倒する超絶スキルでボスモンスターを討つ!!!というお話。

とにかく残業したくない、定時で上がって安定した生活を送りたいという主人公の嘆きがGW進行中で残業続きだった私の心に深く深く突き刺さりました。超絶スキルを持った主人公の私TUEEモノであるにもかかわらずその無双状態が彼女本来のお仕事には一切関知せず──むしろギルドの受付嬢としての書類仕事はちょっぴりポンコツ気味ですらあって─社畜讃歌として共感できてしまうのが面白かったです。そしてそんな彼女がキレ散らかしながら圧倒的な火力を持ってボスモンスターをワンパンで倒していく姿がとにかく爽快。ところでちょうど最近ソシャゲの方に追加されたこともあってこれ読んでると脳内でめちゃくちゃ独歩くん(ヒプマイ)のキャラソンが流れる。

アリナがギルドの最強パーティをも凌駕するスキルを持つに至った理由にも笑ってしまいました。願いが叶うと言われる夜に神から授かった超絶スキル──確かに願いは叶ったけどそうじゃねえ!!感が凄い。いや、ほんと、そっちじゃなくて、仕事の効率上げてくれればよかったのにね……。

後半の熱い展開も良かった…!!

前半は残業にキレて超絶スキルで無双しつつ「副業禁止」に引っかからないよう必死に正体を隠そうとするアリナとそんな彼女につきまとう最強ギルド《白銀の剣》のリーダー・ジェイドのやりとりでテンポ良くコミカルに進みますが、中盤以降の展開は割合シリアス。突如として現れた「隠しダンジョン」をめぐるジェイド達の戦いと、アリナの過去、彼女が「ギルドの受付嬢」を目指すようになったきっかけが明かされていきます。

職場の待遇改善のために《白銀の剣》の前衛として仕方なく踏み込むことになった隠しダンジョンで、誰かの「死」に誰よりも動揺するアリナのどこにでもいる少女としての姿が印象的でした。そんな彼女が平穏を──知っている人の誰もが喪われることのない「自分の世界の平穏」を守るために必死になって槌を振るう姿が最高に良かった。ただ「楽して安定した生活を送りたい」だけじゃなくて、その裏に秘められた「自分の周囲にいる人々の誰にも死んでほしくない」という強い心に胸を打たれました。

続巻への余地を残しつつも1冊で綺麗に終わる新人賞受賞作品らしい物語で、そういう意味でも本当に楽しかった。割とギルドの偉い人たち的には公然の秘密になってしまったのでは?みたいな部分はあれど、押しの強いジェイドとそれをあしらうアリナのやりとりが最高に楽しかったので、二人の関係がどういうふうに進展していくのかも楽しみです。

それにしてもこの作品、帯の裏側に魔王アノス様(魔王学院の不適合者)の推薦コメントがあるんですけどこれが大変に作品にしっくりきていて、読み終わってから改めて唸ってしまった。『お前ほど冒険している者は他におらぬ』本当にこれに尽きるんだよな……。


ようこそ実力至上主義の教室へ 2年生編4

 

全学年、全生徒、総力戦のサバイバル試験、超絶怒濤の壮絶決着!
2週間のサバイバル試験も後半戦。1年生、2年生、3年生、月城理事長代理、様々な人の意志が常夏の無人島で交錯する。 「私は退学を恐れません。綾小路先輩を守るためであれば、何でもするつもりです」 「だから、あたしの許可なく勝手に潰されてないで下さいね」 「もしもの時はそうだな……力づくで乗り切ることにしよう」 「高円寺を封じ込める指揮は俺が取る」 「やれやれ、騒がしいねぇ。それじゃあ、少しだけペースを上げさせてもらおうかな」 「わ、私、どうしても綾小路くんに伝えなきゃいけないことがあって!」 全学年、全生徒、総力戦の無人島サバイバル試験、ついに決着!

波乱だらけの全学年対抗無人島サバイバル、完結編。めちゃくちゃ面白かった!ホワイトルーム生の正体も発覚して月城学園長代理との対決は一段落…という流れなんだけど、ただ1年生組に関してはよくも悪くもますます謎が深まったと言うか、最高にアツい展開ではあるんだけども若干スッキリしない終わり方だったな。2年生編になってから敵が強くなってきてて、綾小路ひとりの力だけでは無双しづらくなってきてるのを改めて感じた1冊だった。

いつもと違う人間関係が印象的だった無人島サバイバル完結編

七瀬との対決・和解、そしてホワイトルーム生との遭遇を経て再び単独行動に戻ることを決意した綾小路。ところが、雨による特別試験の一時中断やそれによる補填など綾小路にとって予想外の事態が次々と発生していく。更に、綾小路の首にかかる賞金を狙った一年生の混成軍が動き始めて……。

ホワイトルーム生の正体が速攻でバラされて「アレだけ引っ張ってたのはなんだったの!?」状態だったんですけど、一年生周りの話はホワイトルーム生の正体が明かされてもなお謎のままというか、正体が明らかになったことでますます謎が深まったと言っても良いまである。なにより、以前出てきた“ホワイトルーム生の独白”の主が、どう考えても今回正体が明かされた人とは別人な気がするんだよなあ。今回のやりとりを見るとちょっと現在明かされてる情報をそのまま素直に受け取ってはいけないような気もしてきて結局の所一年生に関する真相はほとんど闇の中に。果たして今回明かされた人とは別のホワイトルーム生が別口でいるのか、それとも今回正体を出してきた生徒自体がフェイクなのか、もしくは月城以外の別口なのかそれとも(でも月城が把握してないホワイトルームからの刺客が出てきちゃうともう同学年ですら信用できなくなるな……)。綾小路先輩と和解して番犬みたいなムーブする七瀬ちゃんかわいい(現実逃避)。

一年生の誰も彼もが胡散臭い状況の中、これまでの試験で敵対しあってきた2学年の生徒たちと手を取り合い完全に協力することはできないけどお互いを信頼して戦う姿が新鮮で楽しかった。特に「いつか綾小路と本気の勝負をしたい」板柳&「あいつを倒すのは俺だ」龍園との共闘には本当にニヤニヤしちゃう。こういった運動関係の種目がハンデとなる板柳が動けないのを逆手に取って司令塔として活躍する姿はめちゃくちゃ心強かったし、龍園がかつて綾小路と対峙した際に語った自らの“勝負への価値観”がふんだんに発揮される宝泉との戦いなんかもう本当にめちゃくちゃおもしろかったですね。龍園のやってることめちゃくちゃ卑怯なのに、バトルがこんなにアツくなるのはズルいよな。あと最後の最後で詰め込まれた伊吹&堀北の仲悪コンビがめちゃくちゃ好きなんですが、この二人の薄い本はいつ出ますか???(気が早い)

今回は綾小路が結果的に一本取った形になったけど南雲生徒会長との因縁はむしろここから始まった感じがあるし、ヒロインレース的な意味で見せ場をかっさらっていく一之瀬など、今後につながるであろう新しい人間関係の構築が面白い巻でもありました。というか本格的な一之瀬参戦でヒロインレースどうなる?綾小路は鬼龍先輩やひよりとの絆も深めてる感でマジ軽井沢さん無人島サバイバルしてる場合じゃない。

最高に面白かったけど謎はますます深まってしまった…!!

長く続いた無人島サバイバル編の決着巻ということで、熱い展開で最高に面白かった!!……んですけど、その一方でむしろ一年生周りの謎はますます深まってしまったし、なかなか全貌が見えてこないのが若干もどかしい。3冊(一年生との対決という意味では4冊)も引っ張ったにしては、すっきりしない終わり方だったなぁ。また、敵がホワイトルーム生になったことで1年生編のように綾小路が水面下で無双してサクッと裏から勝つみたいな展開がなくなってしまったのは若干寂しさを感じる……学園の生徒側の支配者として描かれる南雲会長を眼力で押し返す場面には挿絵含めてたいへんに興奮したけど。

ただ、1年生編と比べて綾小路一人で対処しきれない事態が増えてくる=周囲の同級生たちを巻き込まざるをえなくなっている現在の展開は1年生編にはなかった要素で本当に楽しいし、並み居る強敵相手に今後どういうふうに綾小路が「成長」していくのか(というかある意味でホワイトルーム製の「完成品」である彼が果たして成長することができるのか?)はすごく楽しみ。あと色んな意味でどうなる一之瀬。最後はスッキリと気持ちよく勝ってくれるといいなあ。


パワー・アントワネット

 

SNSで12万人が驚愕した超話題のWeb小説、待望の書籍化!!
「言ったでしょう、パンが無いなら己を鍛えなさいと!」 パリの革命広場に王妃の咆哮が響く。 宮殿を追われ、処刑台に送られたマリー・アントワネットは革命の陶酔に浸る国民に怒りを爆発させた。自分が愛すべき民はもういない。 バキバキのバルクを誇る筋肉(フランス)へと変貌したマリーは、処刑台を破壊し、奪ったギロチンを振るって革命軍に立ち向かう! 「私はフランス。たった一人のフランス」 これは再生の物語。筋肉は壊してからこそ作り直すもの。 その身一つでフランス革命を逆転させる、最強の王妃の物語がいま始まる――!! 大人気Web小説が早くも書籍化!

マリー・アントワネットが処刑台から筋肉で無双してフランス革命をひっくり返す、史実if。細かい部分の粗は筋肉(パワー)でゴリ押ししていく感じが一発ネタ小説として大変楽しかったし、それはそれとして割としっかり史実ネタも盛り込んでくる(多分)のが大変良かったです。

マリー・アントワネット、ギロチン台からの大逆転劇

処刑台に送られたマリー・アントワネットは民衆からのとある言葉をきっかけに覚醒する。たったひとりの「筋肉(フランス)」として、そして一人の母として。心優しき処刑人、親友の仕立て屋、彼女を護る麗しの騎士──仲間たちと共に、立ち上がる。

とりあえず麗しきフランス女王マリー・アントワネットが筋肉むきむきの狂戦士となりフランスの王政復古を目指して大活躍するお話、と言って気になるか気にならないかで買うかどうかを判断していいくらいに気持ちよくそういうお話でした。元はと言えばTwitterの一発ネタがバズってそのまま長編小説化したものということでいろいろな意味で細かい整合性が気になり始めると色々とアレなんですけど、読んでる時はそれを気にさせないだけのパワーがある物語だったと思う。考えるな感じるんだ。

ネタだけでは終わらせない、魅力的なキャラクター達が印象的

一度は処刑を受け入れたはずのマリーが、断頭台すらも跳ね除けて立ち上がったのはひとえに残された子どもたちのためでした。物語では彼女と子どもたちの絆も描かれていきます。普通の人間は断頭台を跳ね除けられないとかルイ17世のキャラが濃すぎるとかそういうことを考えちゃだめだ。

オドオドとした女性のような外見とは裏腹に処刑人としての高い矜持とこだわりを持つデオン、陽気なパリピとしてのキャラを貫きながらマリーの処遇とそれに対して何もできない自分に誰よりも憤る仕立て屋ローズ・ベルタン、誇り高き女騎士デオンなど魅力的なキャラクターが多数登場するのも楽しかったです。この時代あまり詳しくないのですけど、中盤は割としっかり歴史の掘り下げが行われていくのが印象的なんですよね。というかこの手の一発ネタ小説で巻末に参考文献出てくるのいろいろな意味でインパクトあるよな(騙されやすい顔で)。

何より、マリーの最大のライバルであり彼女と互角の格闘術を持つデュ・バリー夫人との対決はいろいろな意味で本作最大の見せ場と言っても過言ではなかった。生まれながらのお姫様と市井からの成り上がった烈女、フランスを揺るがした気高く美しい女ふたりが己の筋肉全てを掛けて戦う姿に燃えない訳がないですよね(?)。まあ正直筋肉用語がわからないので何が起こってるのかよくわからないところは多かったんですけど!!

やはり筋肉は全てを解決する

こどもたちを取り戻したマリーだったが、力を使い果たした直後を革命軍に狙われ、大ピンチに陥る。ところが、そこに「筋肉(フランス)」を臨む市民たちの声が響き渡り──革命を主導して漁夫の利で権力を狙う革命軍のトップと劣勢ながらも正しき筋肉(フランス)のため、ノブレスオブリージュを掲げてギロチンを振り回して可憐に舞うマリーのアツい最終決戦!!……のはずなんですけど始終飛び交う「パワーワード」の応酬で腹筋がつらい。筋肉を鍛えてないので笑いすぎて腹筋がとてもつらい。

中盤はマリーを取り巻く人間達の関係性や史実の掘り下げを交えつつ筋肉を押しつつもわりと堅実な物語が描かれていた印象なんですけど最後になってまた一気にめちゃくちゃ筋肉で押してきました。いやでも読みたかったのはコレという気がしなくもないのでいいんですけど最後の最後で力押しがすごい!!

良くも悪くも勢い重視というか、Twitter小説ならではのライブ感というか、微妙なスタンスのブレみたいなのが気になったりはしたのですがそれ以上に圧倒的なパワー(筋肉)と勢い(筋肉)で強引に押し流される物語を見ていくのは大変楽しかったです。Twitter連載ではアンケートで続きを決定するみたいなお遊びもあったみたいで、それはリアタイで追いかけてたら楽しかっただろうなあ。

やはり筋肉は全てを解決するんだよ(洗脳)