“左” の検索結果 | ページ 4 | 今日もだらだら、読書日記。

キーワード:左 (66 件 / 7 ページ)

読了記録まとめ[2010年8?9月分]

今月も時間がない!!
10日に開催される「COMICCITY SPARK5」合わせの原稿中で今回もギリギリ綱渡りな今日この頃いかがお過ごしですか。今回は薄いコピー本を作っていく予定なのでイベント参加される方は是非覗きにきてやってください。多分今回もギリギリまで睡眠時間を削って力尽きている姿がみられるのではないかと思われます。

さてさて、毎年恒例の「このライトノベルがすごい!2011」Webアンケートは本日が締め切りです。私も滑り込みで今朝投票してまいりました。まだ投票間に合いますので、我こそはラノベ好き!!と言う人は是非投票してくると良いのではないかと思います。

ライトノベルBESTランキングウェブアンケート


個人的な見どころは
3年連続トップ死守なるか!?第三の性別:木下秀吉(バカテス)
          VS
トップ奪還なるか!?ムッツリ傭兵:相良宗介(フルメタ)


であると言ってみます。
相変わらず男子部門以外見えてません。

以下は8?9月の読書メーターログ+α。

続きを読む


多摩湖さんと黄鶏くん

 

 Q:年上のおねえさんは好きですか?  A:はい、俺は大好きです。
二ヶ月前から付き合いはじめた多摩湖さんは、年上だけど下級生という大人な女性だ。 そんな素敵なおねえさんと、エロいゲームを密室でプレイする、二人っきりのカードゲーム研究会の魅惑の日々を描いたのが本作である!(でも本当にそれだけなんだよなあ) おっと。いちおう断っておくけど、多摩湖さんと俺は、決してキャッキャウフフなバカップルじゃない。二人だけのゲームにいそしむ変態カップルだから。……いいのかそれでー。

個人的お気に入り度数

「初めてのキスの相手が目玉でしたって、私なんか誤解されそう」
「初めてにしては情熱的なキッスでございました……」
精神的ボロボロによって床にへばりついている俺を眺めて、多摩湖さんが破顔する。
「なんか私、試合に負けて勝負に勝った?」

  ?変態だーーー!!!/

留年を繰り返して現在19歳な「後輩」の多摩湖さんと彼女の幼なじみで「彼氏」の黄鶏くん。キスも手繋ぎもまだな初々しいカップルの二人が色々な恋愛の「いろは」を10段階くらいぶっとばしてひたすらカードゲームという名目で変態プレイに興じるお話。本当にそれだけっていうのが余りにも潔すぎる!!!

多摩湖さんが徹夜テンションで作り上げるオリジナルカードゲームに黄鶏くんの妄想能力が加わって毎回とても大変な事に。どのゲームも色々と酷かったですが、一番凄かったのがババ抜きのババで引き当てた身体の部位(ただし唇以外)にキスをするという「キスババ抜き」でした。黄鶏くんの眼球にキスする多摩湖さんが……エロい!!!それでも意地でも唇にキスしないところがもうわけわからない!!(でもそこがいい!!)

入間さんの文章は正直みーまーの頃からあまり得意ではないのだけど、ゲームの合間合間で繰り広げられる変態度の高いバカップル(ただし本人達はあくまで否定)会話の糖度も半端なく、始終ニヤニヤしながら楽しめました。本当にただバカップルが変態プレイをしてるだけだけど、そういうのが好きな人にはとてもオススメ。

ところで……「キスババ抜き」は誰かが是非とも二次創作同人誌でやるべきだとおもう。
密かに萌えてるカップリングで置き換えて妄想してニヤニヤしてたのは内緒だ!!


GENESISシリーズ 境界線上のホライゾン3(上)

 

英国のアルマダ海戦で西班牙(スペイン)・無敵艦隊との戦闘により中破した航空都市艦・武蔵。その修復のため、トーリ達は仏蘭西領の浮上島にあるIZUMOへと向かう。だが、そこで待っていたのは、世界征服の方針を左右する出来事だった!  AHEADシリーズ『終わりのクロニクル』と都市シリーズの間の時代を描く壮大な物語“GENESIS”シリーズ。中世の日本と世界各国が同居する学園ファンタジー世界“極東”を舞台に繰り広げる、川上稔ワールド満載の第3話、遂にスタート!(公式サイトより)

個人的お気に入り度数

この本を手にとって「あ、今回薄いな」って呟いた貴方は境ホラ中毒に侵されています(挨拶)
十分分厚いよ!!700Pとか普通のちょっと厚めのラノベの2冊分あるからね!?
確かに2下と比べたら厚くないですが、まだまだ十分おかしい……
(あ、今回は左手1本でページめくれるから薄いな

そんなわけでもうおかしいレベルで分厚いのが一種の芸風になりつつある境ホラシリーズ第三弾。今回は中立地帯・IZUMOを舞台に新たな敵・新たな味方が入り乱れます。今回は六護式仏蘭西、M.H.R.R.、清武田、印度諸国連合、里見教導院、P.A.ODAあたりのメンバーが一気に参戦してキャラ数のインフレはどこまでも止まらない!!とりあえず本を開いて真っ先に「これまでのあらすじ」のページで感動したのは私だけじゃないはず。2巻を読んだときは物凄く苦労したので本気で脱落しようかなあ、と考えたのですが今回はメインで下敷きになるのが戦国時代の話だったせいか、割とすらすら読み進められました。単に自分が日本史のほうが得意なので時代背景がわかりやすい…というのはあるのですが。

生徒会室の整理をしていた正純達が、トーリの私物であるエロゲーを発見して泣きゲーでトーリが死んでしまうと困るから?、みたいなやりとりしてる場面で地味に心折れそうになった。イマイチこれまで実感の持てなかった、トーリが代償として喪った物の大きさを改めて感じて。しかし、トーリは1巻で「最後のエロゲー」とかいってなかったか……普通にエロゲ卒業できなかったんですか?

メインキャラたちの崩壊も順調に進行中で、とりあえずすっかりすべり役として皆に認識されつつある正純ににやりとしつつ、個人的に一番ツボに入ったのは2巻で大活躍したネシンバラさん。オタ全開のところを存分に見せ付けつつ、何気にちょくちょく混神して入ってくる某眼鏡さんからのツッコミが愛情の裏返しすぎます!!あと新キャラの中では清武田の生徒会長・源義経が可愛すぎて困る。あの子とトーリのやりとりが本当に可愛すぎて、ニヤニヤがとまらなかった!!

とかのんきに言ってたらルイ・エクシヴやべええエエエエエエエエ!!!!!!!
まさかの、トーリに最大のライバル出現だった(主に全裸的な意味で)彼とトーリの全裸対決のおかげで、私の腹筋がマジやばい。ほんと、3巻のどのシーンもぶっ飛ばしていく驚愕の場面といわざるをえません。

物凄く気になる所で続いてしまっているので、早く続きが読みたいなあ。ミトツダイラの家族の因縁とか、いろいろな意味でトーリ&ホライゾンと似ているルイ&輝元カップルの活躍も拝めるのかな…?来月が楽しみ。



彩雲国物語 黄粱の夢

 

劉輝の父、覇王・戩(せん)華の時代。愛憎渦巻く朝廷で、必死に生き抜く第二公子・清苑を搦め捕った陰謀とは!?(「鈴蘭の咲く頃に」)秀麗を支える天下無敵の二人組、燕青と静蘭。交わるはずのなかった彼らの運命が交錯した夏を描く鮮烈な中編(「空の青、風の呼ぶ声」)ほか、秀麗の父・邵可と母・薔君の宿命の出会いと命がけの求婚を描く、著者渾身の書き下ろしを収録!!すべての物語が現在につながる、究極&珠玉の外伝集。(「BOOK」データベースより)

個人的お気に入り度数

読み飛ばしていたので順番左右しますが最新刊から1冊戻り。静蘭と燕青が「殺刃賊」を潰した時のお話をメインに邵可&薔薇姫の出会いを収録した番外編集。

静蘭と燕青に暗い過去があるのはなんとなくこれまでも幾度となく示唆されてましたが、予想以上に重たい展開にびっくりしました。特に静蘭の「小旋風」という渾名の由来がそんなことに起因するものだったとは……。

孤高の皇子時代に唯一の心のよりどころだった劉輝との心温まるやりとりにも、母・鈴蘭との悲しいすれ違いも印象的でしたが一番印象に残ったのは前王・戩華の意外な「父親としての」素顔ではないでしょうか。ただの「父と息子」に戻った彼と静蘭が一瞬見せた気の置けないやり取りが微笑ましいのと共に、彼等のそういう関係を許さなかった当時の状況が物悲しくもあり。

しがみついていた「皇子」としての立場を奪われ母を殺され「殺刃賊」に囚われ、まさにどん底状態の静蘭を引きずり出した燕青の方も、彼に負けず劣らずな深い闇を抱えていて……そんな二人が1000人の敵を前に背中を合わせた一瞬は思わず燃えた!!ツンツンした態度をとりながらも時々どこか自分よりも危うげな一面を覗かせる燕青を放ってはおけない静蘭の立ち回りにニヤニヤする。

二人にとってはあまりにも重い「過去」のお話でしたが、二人の一瞬ともいえる出会いが『その先』の人生を顧みようとしなかった彼等の生き様を変えた。そして再び別々の新しい人生を歩み、再びめぐり合うその様子はそれこそ「運命の出会い」だったといえるのではないでしょうか。別に静蘭×燕青の悪友関係萌えなんて思ってません、ちっとも思ってませんとも!!!

書きおろしの邵可と薔薇姫の出会い話も素敵。飄々とした邵可のフリーダム具合に翻弄され、だんだん彼のペースに引き込まれてしまう薔薇姫の姿と、ピントのちょびっとズレたやりとりにニヤニヤが止まりませんでした。いろいろな意味で最後に持っていかれた!!


今月のまとめと読了記録[2009年9月分]

9月に読んだ本は感想書いてないもの含め15冊でした。
っていうか、9月の新刊4冊しか読んでない! ?やべえ/

欲を言えば、この期間にもうちょっとまとめて本を読んでおきたかったなあ。
やっぱ、イベント後1ヶ月で次のイベントってコンボはキツすぎるぜ…

2009年9月に読んで面白かった本

なんか見直すと、今月はとても少女小説月間だった……

384,403km
あなたを月にさらったら
⇒感想

アンゲルゼ
ひびわれた世界と少年の恋
⇒感想

生徒会の月末
碧陽学園生徒会黙示録2
⇒感想

 
身代わり伯爵の冒険
⇒感想


商業誌のエロものでここまで萌えたのは初めてだったかもしれない!くらいの勢いでテンション上がったのがティアラの9月の百合こと「384,403km あなたを月にさらったら」でした。自称・策士なのに色々とバレバレなうっかり百合娘・美由紀が天然だけど天然襲受けな理世に振り回され、翻弄される姿が本当に可愛い。百合+エロなので苦手な人にはオススメできませんが、その辺が大丈夫な人になら全力でオススメしたい作品でした。

少女小説好きの人達から「これは読むべき!」といわれ続けて漸く読んだ「アンゲルゼ」も凄かったです。少女小説とは思えないハードな展開とは裏腹に、ツンデレな主人公の幼馴染・もーちゃんとの恋の行方にゴロゴロゴロゴロ転がる日々。まだ感想書いてませんが4巻と補完同人誌「AAST」も素晴らしかったです。これは少女小説読まない人も全力で読むべき!!

もうひとつ長らくオススメされてて漸く読めた「身代わり伯爵の冒険」も面白かったー!ミレーヌとリヒャルドの関係もたまらないのですが、それ以上に兄貴のフレッドが素敵過ぎて一人でゴロゴロ転がる羽目に。フレッドの親衛隊になりたい……

アニメもはじまった「生徒会の月末」は「六花」で物足りなかった杉崎成分全開で、個人的にニヤニヤ止まらなかった。「下心」で魅せた杉崎の男らしさに、中目黒じゃなくてもうっかり惚れるよ!とか思ったり。

2009年9月にアクセス多かった感想


 
バカとテストと召喚獣7
⇒感想

 
“文学少女”と恋する挿話集2
⇒感想

えでぃっと!
ライトノベルの本当の作り方?!
⇒感想

黄昏色の詠使い10
夜明色の詠使い
⇒感想


新刊を読まないとその前の月に書いた人気作品の感想がそのまま頑張っちゃう法則で「バカとテストと召喚獣6.5」「“文学少女”と恋する挿話集2」のファミ通文庫二大人気作品とシリーズ完結編だった「黄昏色の詠使い」がアクセス集めまくりだった9月でした。

4冊読んだ今月の新刊系で唯一反応高かったのがラノベ業界系ラブコメ「えでぃっと!」。個人的にはラノベ業界コメディというより思春期の少年少女達が皆で一緒にひとつの作品を作っていくお話、という方向で面白かった。作った人間の好き勝手できる同人と違う、制限があるからこその商業誌作品を作ることの面白さが伝わってくる作品でした。

2009年9月の読了記録

漫画を含めても読了冊数33冊でした。しかも半分弱再読・新装版。

面白かったのは友達から借りた「アイツの大本命」。ブサイクなのに可愛い吉田にキュンキュンがたまらないよ!今月はBLも百合も当たり月だったようです。あと、学生時代に大ハマリしていた作品のスピンオフ外伝となる「緋桜白拍子外伝 冬緋桜」も。以前から連載の話は聞いていたのでコミックスにまとまるのを楽しみにしていたのですが、予想以上に冬尋がよいツンデレでした。

続きを読む


運命のタロット12 《女帝》1995

[著]皆川 ゆか [絵]乱魔 猫吉

《月》の“体験”によって《魔法使い》や《女帝》の過去を知り、《女帝》に対して嫉妬している自分を自覚して動揺するライコ。ところがそんな彼女の元に「会堂」から抜け出してきた坂崎と彼を回廊に戻そうとする《世界》が現れ、その力の余波で時の縦軸に弾き出されて13年後の世界に飛ばされてしまった!右も左もわからないライコの前に現れたのは……
  個人的お気に入り度数
『女帝』1995—運命のタロット〈12〉 (講談社X文庫—ティーンズハート)
素直になれない《魔法使い》の行動にニヤニヤしたり、少しずつ自分の気持ちに気が付いて《女帝》への嫉妬で葛藤するライコにニヤニヤ……とかしてたらいきなり急転直下の展開だよ!!!なシリーズ第12巻。《魔法使い》はツンデレさんですねわかります!

ライコ、《女帝》、《女教皇》、《魔法使い》、《皇帝》ときて大混乱する《魔法使い》の過去関係に、今度はさらに男性の協力者がいたことが明らかに!?これ以上この周辺のキャラは増えないと思ってたのでびっくり。

1995年というとちょうど自分がリアル学生時代だったので、ギャップに戸惑うライコの姿だけじゃなくて身に覚えのある懐かしさににやりとしてしまう。「SD(=SDガンダム)?CD?LD?この時代のものには何でも“D”がつくのね!」ってコメントには爆笑してしまった。しかし平成世代はそもそもLDの存在を知らないのか…考えると、作品の舞台からは更に14年の月日が流れているのですよね。

大人になった唯と再会し、大きくなって夢を叶えた彼女との(唯にとっては)13年ぶりの語り合いの場面ではそれまでの急展開を考えると心が和むけど、なんだか歯に物が詰まったような物言いの彼女の姿を見ていると、色々不安が押し寄せてくる。というか、この唯の反応ってひょっとしてそういうことじゃないのかなあ、と思ったり大河兄はやっぱりどう考えても……とか。ラストの唯の涙とか、もう不吉な予感しか思い起こせない。ここからどうなってしまうんだ……!!!

以下、次で最終巻なので真相推理。
ぶっちゃけライコ→《女教皇》→《女帝》という流れがあるんじゃないかと思ってるんだけどどうなんだろう?前巻の「未来のラスプーチンと戦った」という記述を見る限り、少なくても2つ目までは間違いないと思ってはいるんだけど。《魔法使い》←→《皇帝》という流れがアリなら、ライコが人間から三段変化するのもアリな気がする。

あと、《魔法使い》かつての協力者って誰?予想が当たっていて前巻のような状況がありうるなら、意表をついて《魔法使い》と《皇帝》が協力者関係というのもアリな気がしてきたけど、それはさすがに飛躍しすぎかな。ああいう伏線を張るからには、今まで出てきたキャラクターのだれかな予感がするんだけどなあ。

というかそういう予想が脳裏を渦巻いているせいか、13巻の表紙がどうかんがえてもネタバレやってるようにしかみえなくて困ります。…いや、これだけ露骨に示唆されるとミスリードの危険性もありそうですが。

それにしても《女帝》と《女教皇》の表紙はどっちもツボにハマりすぎで困るー。


セイバーマリオネットJ 8.愛と悩みと乙女の旅立ち

[著]あかほりさとる [絵]ことぶきつかさ

ゲルマニア総統ファウストが、ニューテキサスに向けて侵略を開始する。その話を聞いた家安は、小樽にひとつの任務を与えるが、それは思っても見なかった、そしてテラツーの運命を大きく左右するもので…!?小樽はそれぞれ思い悩むマリオネット達と共に、ニューテキサスに向けて出発するが…
  個人的お気に入り度数
ニューテキサス編、序章。ニューテキサスに向かおうとしたライムたちと小樽が、海辺の町マカオでファウストによって初期に侵略された国・ロマーナの人々と出会うというお話。

ロマーナ侵略の際に心に大きく傷を負い、マリオネットを目の敵にするようになったペスカトーレのかたくなな心を、ライムの純粋無垢な気持ちが少しずつ変えていくというメインのストーリーもよかったですが、小樽たちとの関係で悩むライムたちや小樽とファウストの間で揺れ動くティーゲルたちの心の動きとか、一方でただライムたちを心配しながらも、彼女たちを「信頼」していこうとする小樽の心の動きが面白かった。チェリー&ルクス、ブラッドベリー&パンターという普段折り合いの悪いコンビがいざとなると名コンビ振りを発揮するというのも美味しいです。しかしブラッドベリーは前巻から連続していい所もってきまくりだ…ジャポネスでの小樽とのやりとりとか、深海での孤軍奮闘とか、今回美味しいところ多すぎる。

最初は敵だったロマーナの潜水艦「バルフィッシュ」の面々とティーゲル・ブラッドベリー・パンターがだんだん打ち解けていく場面には思わずニヤリとします。そしてさりげなくクルーの面々が小樽に嫉妬心むき出しなのには笑った。

しかし、ニューテキサスに行くとなると、遂に終わりが見えてくるなあ。なんだか感慨深い。


この世をば(下)

[著]永井 路子

疫病の流行により政界の上層部が次々と斃れていく中、姉である東三条院詮子の強力な後押しを受けて遂に政界トップである左大臣の座に就いた藤原道長。唯一残ったライバルは長兄・道隆の子である伊周・隆家兄弟だったが両者との対立が深まる中思いもよらぬ事件から二人の名前が浮かび上がって……
再読。下巻は遂に政界トップに躍り出た道長が浮いたり沈んだり(気分的な意味で)を繰り返しつつも平凡児らしい平衡感覚で遂には栄華を極める、というお話。

道長というと天皇の外戚として好き勝手に権力を握り、政界を動かしたようなイメージがありましたが、この物語では最高権力者である左大臣になったあとも甥っ子の伊周に悩まされたり、中宮定子の懐妊の度に男か女かで気をもんだり、一条天皇の死後は折り合いの悪い三条天皇とお互いに神経を削りながら対決を繰り広げたり…とまさに波乱万丈。特に伊周の配流の場面なんかは悲劇が一回転して喜劇になってしまっている状態で、思わず笑いがこみ上げてきてしまう。

ちょっと良いことがあると調子に乗ってつけあがり、思わぬ不意打ちを喰らって凹んでは「もう辞める!」とか言い出す浮き沈みの激しさは健在…というか思わぬかたちで権力を掴んでしまった分、様々な形で負い目を持っていてむしろ上巻よりヒドくなってるかも。でも何かと次兄やら伊周やら中宮定子やらが出てきてしまうのは、わからなくもないような。

「望月の歌」を詠んだ時のエピソードは今の私たちが受ける歌の雰囲気とはうってかわってどこか微笑ましいもので、思わずニヤリとしてしまうけど、その後にこれまでの幸運の元を取るような不幸の連続がやってくるのにはなんだか切ない。こうやって見ると、例の歌の通り「望月の欠けたることもなしと思えば」と言えるような状態がどれだけ短い間の出来事だったのか。最期まで「子供たちに見守られて、幸せに逝きました」とはいかないのがフィクションとは違うところだなあ。


この世をば(上)

 

関白・藤原兼家の三男坊である藤原道長は姉・詮子の助力を得て左大臣の娘・倫子と結婚にこぎつける。平凡な彼は明るくカリスマ溢れる長兄道隆・野心家で策謀家の次兄道兼の影に隠れ、どうにも冴えない出世街道を歩んでいたが…

個人的お気に入り度数

ついったーで話題にしてるうちに自分で読みたくなったので再読。藤原道長が数奇な運命から時流を掴み、栄華を極めていくというお話。

藤原摂関政治の頂点を極めた人で「この世をばわが世とぞ思ふ望月の?」の歌で知られる人ということで、イメージ的には権謀の人というか結構ずる賢いっぽいイメージが自分の中であったのですが、この作品に登場する主人公の道長は「ああ、何たること、何たること…」が口癖でどこかおっとりした三男坊。感情豊かですぐに顔に出てしまったり、長兄・道隆の息子である伊周に出世で追い抜かれそうになってヤキモキしたり、調子に乗って気の利いた発言をしたつもりが大失敗で後から青くなったり……ととても人間味溢れる性格。というか、今読み直すとものすごいヘタレですよね。

政治の場でもヘタレですが、二人の妻である倫子・明子の間で右往左往する姿はまさしく正しくヘタレ。正妻である倫子が身ごもっている間にうっかり詮子の元に身を寄せていた明子と関係を持ってしまい、倫子にも詮子にも申し訳ない、と頭を抱える姿が本当に微笑ましいです。

しかし、終盤で長兄・次兄が次々に命を落とすあたりの急展開っぷりはなかなか凄かった。特に道隆の死に際のエピソードは、それまでに散々優雅でカリスマ溢れるすがたを見せ付けられてきているだけにインパクトが強かった。

上巻の物語は、まさしく道長が天下を掴むことになる直前までの物語。下巻では遂にライバルであった甥の藤原伊周を追い落として栄華を築く事になるのですが…こちらも近いうちに再読したいところです。