魔王を倒したが仲間に裏切られ、難攻不落の迷宮に追放された聖女アリス。迷宮の中で不思議な鏡をみつけるが、なんとその鏡が見知らぬ風景を映し出して……!?一方、死んだ両親から受け継いだレストランがコロナ禍の煽りを受けて経営難に陥っていた誠は配信している料理動画が伸びないことに悩んでいた。新作動画の撮影中にレストランの中にある鏡を見ると、半裸の美少女が映し出されていて……!?
異世界聖女(パワー系)のアリスさんがとても可愛い
面白かった〜!!配信閲覧数やいいねやチャンネル登録者数が強さになる設定や人間を除くほぼ全ての物品をやりとりすることができる鏡の設定も面白いけど、それ以上に仲間に裏切られて故郷を追放されたせいでちょっぴりやさぐれ気味な物理で殴る系庶民派聖女・アリスのキャラが大変よかった。普通に考えたらめちゃくちゃに重たい彼女のバックグラウンドが、最終的に居酒屋で友人の会社の愚痴を聞かされてるような軽いノリにまで昇華されてるのが色々な意味で凄いし、変に「ざまあ」的な展開には発展しないのも良かった。戦闘中に繰り出される彼女の悪態が「ファッ◯ンエヴァーンしぐさ」とかいわれてるの、実際にありそうで笑ってしまったし、視聴者達からパワー系の扱いを受けてることに不満そうなアリスがまたかわいい。アリスの出自が重いからこそ、他の登場人物たちの暖かさが身にしみるというのも多分あった気がする。動画としての撮れ高重視でアリスに無茶ぶりをしつつカメラの回っていないところではアフターケアやフォローを欠かさない主人公の誠のキャラが大変良いし、大人の財力と高いテンションでふたりを支援してくれる誠の姉貴分・翔子さんの影からのサポートも忘れてはならないし、さらには迷宮で出会った守護精霊たちが普通に彼女の境遇に共感してくれるのに笑ってしまった。異世界の住民である誠や翔子はともかく、フ◯ッキンエヴァーンの偉い人たちよりも敵であるはずの魔物達のほうが暖かいの、昨今のなろう小説だとよくある事例だけど冷静に考えるとだいぶおかしいんだよな。
そんな彼らが力を併せてアリスを「人気動画配信者」として押し上げていき、その動画配信によって得られた応援(いいね)や祈り(スパチャ)が現実世界での資金とアリスの潜在能力両方の糧になる。一挙両得の設定にニッコリしてしまうし、すっかり現代のネット文化に染まって迷宮の一室を拠点としてそこに現実世界から送られてきた家具を運び込み、自分の色に染め上げていくアリスのふてぶてしさに笑うし、迷宮に(鏡経由ではあるけど)Wi-Fiまで通ってるの準備が良すぎてもう一回笑ってしまう。
とにかく物語の全体を通して、気軽なノリで楽しく読める物語になっているのがとても良かったです!なろうの原作を見ると次巻くらいで完結しそうなボリュームだし、次巻は彼女を追放したエヴァーン周りの話も入ってきそうなのでどうなっていくのか気になる。
コロナ禍の使い方が印象的で面白かった
物語に早くも「コロナ禍」という概念がでてきて、おぉ…となったんけど、レストラン経営者でもある主人公がアリスの動画配信の対応に一日中かかりきりになれる(飲食業なので仕事があるが仕事がない)という設定に上手く利用されていてそういう意味でも興味深かった。料理が上手い設定なのに配信にかかりきりになれるくらい一日中暇なの、普通に考えたら違和感あるもんな。後半の生放送後の打ち上げシーンで、会食の人数や飛沫感染を気にする描写もコロナ禍ならではで面白い。コロナ禍の緊急事態制限下での生活描写については良い意味でも悪い意味でも2023年の今を生きる我々だからこそ実感出来る描写かもしれなくて、でもこの「ライブ感」こそがなろう原作小説の強みだなあとおもいました。プロローグを読むともうアリスのスパチャだけで全然生活できそうな雰囲気だけど、最終的には主人公の料理配信やレストランの売上の方にも繋がっていくといいよね……。旦那(違)の存在はバレてるわけだし、もう全面的にバックアップしてますの顔でついでにレストランの宣伝してもらえば……それもちょっとアレか……オタクはそういう宣伝に対して厳しいからな……。