「葬儀屋」コンビの元で起きたトラブルが少しずつ大きくなり、やがて「童話」の泡禍に……というシリーズ第十二巻。
例によって上下巻構成なので現時点ではあまり触れる事がないですが、やはり一番大きかったのは蒼衣の「断章」に関するあれこれ。序盤にそれを「断章」として自らの力にしてからは殆ど忘れられたかのように思われた彼が抱え込んだ幼なじみに関する「泡禍」がとある事件をきっかけにして浮かび上がり、非常に不安定な状態に。もちろん、彼の抱える人格の歪みなんかは泡禍の所為なんだけど、それが事態を更に酷いほうへ持っていく気がして、不安で仕方が無い。「しあわせの王子」の泡禍以上にこちらのほうが心配……
とか思ってたら最後が!!!
ある意味でこのシリーズらしい、凶悪な引きにすっかり現実(?)に引き戻される思いでした。亮介の思いにはどこか異常なものを感じていたけど、それがこんな形で出てくるとは……とりあえず次巻を読んでからじゃないとなんともいえませんが、次巻が楽しみです。
断章のグリム12 しあわせな王子(上)
大きな黒い霊柩車のような不審な車。かつてこの車を見た翌日、隣の家族は忽然と姿を消した。その同じ黒い車が、密かに想いを抱く浅井安奈の家の前に停まっている。安奈はあまり幸福とは言えない学校生活を送っている可憐な少女で、趣味を通して最近少しだけ仲良くなってきたところだった。膨れあがる不安感に押され家の中に忍びこんだ多代亮介は、傷ついた安奈を連れ出して逃亡した。蒼衣が深い傷を抱えた一週間後。処分しそこなった“泡禍”被害者を探すため、瀧修司と可南子の工房を訪れた蒼衣たち。だが、可南子に対して雪乃は恐怖を感じずにはいられない。雪乃は“生き返り”という概念に疑問が隠せず、そして―。悪夢の幻想新奇譚、第十二幕。(「BOOK」データベースより)