[著]新井 素子 真美と祥子はどんなことでもツーカーでわかってしまう、特別な仲。しかし、ある日一人の女性・藤原綾子とであった祥子は何かに怯えるようになり、ついに真美の前から姿を消してしまう。真美は綾子の主治医であるという男性・宇野と共に祥子を追いかけるが… |
超能力モノなんですが、女の子たちが超能力を持って華麗に戦う、的ストーリーでは勿論ありません。主人公・真美の親友の祥子は念動力で自分の家を燃やしてしまった過去を持つ、恐ろしいほどの人見知りで世間知らず。相対する綾子は人が30人も居るところに出れば気絶してしまうテレパシスト。「ブラックキャット」もそうでしたが、新井さん独特の弾けたキャラ設定がなんとも素敵。
中学時代に初めてこの本を読んだ時、印象に残ったのは何よりもこの本でのテレパスの描写です。今までSF漫画とか読んで「便利だな」とか「私もテレパシストになりたい」なんて思う人、結構居るんじゃないでしょうか。
この本を読むと「テレパシストってなんて可哀想なんだろう、怖いんだろう」って思えると思います。同じ空間に人が30人も居れば30人の思考が勝手に頭に入ってきて、気絶してしまう。口に出せないような汚い気持ちも、全て読めてしまう。考えてみればこんなに怖いことってないですよね。
私のSF小説とか超能力漫画を読むときの考え方を根本から変えてしまった本と言ってもいい。
そして現在読み返してみると印象に残るのは、こっちよりも真美と祥子の親友としての関係でした。今まで喧嘩もせず、ピッタリ息があってる関係って、仲の良いときはそれでいいんだけど一歩歯車が狂うと同属嫌悪陥って修復不可能になる事が多いんでうよね。
それを乗り越えたらきっと最高の親友になれるはず。二人の詳しい関係を話すと完全なEDネタバレになるので伏せますがラストで二人がまた親友として会話するシーンには目頭が熱くなりました。
ストーリーの軸になる言葉、「あなたにここにいて欲しい」。
これが一度だけ「あなたにここにいて欲しかった」になる場面があって
凄く心に響いたシーンでした。痛いというかなんというか…。
中学時代に読んだっきりの話なのに、この一行が一番心に残ってた。
愛って、憎しみって、友情ってなんだろう?って考えさせる作品。
でもちゃんとエンディングではハッピーエンドで、嬉しかったなあ。多少ご都合主義なところあるけども。
最後に。巧さんがかなり好み(笑)