[著]赤井 紅介 [絵]椋本 夏夜 両親が借金を背負って蒸発し、更に自らはトラブル巻き込まれ体質…という、とことんついてない少年・春川祐樹はその日、魔術を悪用した銀行強盗の人質になっていた。対魔法士犯罪機関の介入があり、漸く解放されたものの、目の前の見知らぬ少女を庇って瀕死の重症を負ってしまう。次に目を覚ますと、目の前にはどこかで見たような少女が居て… |
主人公がいきなり見ず知らずの少女を庇って…という行動からして、主人公の性格上、実際行動させるに足る心理描写がなかったように思えたのですが、更にその後「魔法士が嫌い」と公言している主人公が、助けてもらった当日だかその翌日くらいに至極あっさりその「魔法士」である透華という人間そのものに惹かれているみたいなことを言い出したのには興ざめ。とにかく「魔法士嫌い」という設定自体が余計なように思えてならなかった。せめて「魔法が怖い」くらいにしておいてくれればそこまでの違和感を感じなかったと思うのですが…。彼が実は魔法を使えるという設定も、もっと後半まで隠しておいても良かったんじゃないかと。
そんなこんなでキャラクター達(特に主人公)に感情移入できなかったのが致命的に痛かったのですが、キャラクターたちは本当に魅力的で、彼らの行動を見ているのは凄く楽しかった。特にメイドでツンデレで魔法使いなクラスメイト・透華が素敵過ぎ。祐樹に見せるツンデレっぷり、雪子に見せるお姉さんっぽい一面、「魔法士」として戦う“炎の魔女”としての不敵で凛々しい姿…変幻自在に変わっていく彼女の姿は本当に魅力的で、彼女に魅せられるようにどんどんページをめくってしまいました。また、二人のクラス担任で実は……な正体をお持ちの菫先生もとってもツボ。主人公である祐樹もちょっと「??」な部分はあったものの不幸症でヘタレで熱血一図で二重人格気味という設定はかなりツボなので、ストーリー的に微妙だった部分はキャラクターの魅力でかなりの部分を補ってしまえるくらいの魅力はあったかと思います。
個人的には、彼らの動く姿がもうちょっと読みたいというのもあるので、続刊が出たら買う予定。ただ、今回主人公の心の動きがあまりにも駆け足過ぎたのがどうしても気になるので、そのへんは何とかしてほしいかなあ…。