勇者の遺物探しでやってきたはずのイエット共和国で惰眠を貪っていたライナ。ところがある日の夜、寝込みを異形の化け物に襲われる。それはイエットの地を5年ごとに襲う「呪い」であった。対処魔術が開発されたため現在はほぼ無害化しているそれだが、調べていくととんでもないことが発覚して…!?
最後までシリアスになりきれない、イエット共和国編クライマックス
雑誌掲載分5編のうち4編が続き物という、実質長編スタイルのイエット共和国「崩壊編」がめちゃくちゃ面白かった。いつになくシリアスな雰囲気で始まり、ライナもフェリスも苦戦するような敵が現れ、イエットどころか世界の危機が示唆されていく……という緊迫した展開からフューレル姉弟やシルが登場したあたりで風向きがおかしくなってきて、世界の危機に反してなぜかどんどん下がっていくシリアス度……という展開が最高に頭おかしかった。目前に世界の危機があるのに誰もライナの言うこと聞かないし、話の腰折るし、説明しても脳に届かないし……で、戦いが始まる前から全力で疲弊してるライナさんほんと強く生きて欲しい。そして最後にほとんど何もしてないのにしっかり美味しいところをかっさらっていくヴォイスくんに笑った。それにしても本編を読んでいたのでふたりが何らかの事情でローランドに帰還することは知ってましたが、イエット共和国とライナ・フェリスの相性が良すぎて一向に出ていく気配なかったし遺跡の調査もまともにしてなかったし彼らどうやってこの国の外に出るんだろうな?と思っていたらまさか国の方を崩壊させて強引に帰還させるとは思いもしなかったですその発想はなかった。天才かな??
小悪魔美少女に成長したピアが可愛すぎる
書き下ろしの過去編「天才の限界」は2巻に収録された短編と同じ時間軸、『隠成師』の少年ゾーラがローランド帝国からの指示で中央大陸に居る『忌破り』の少年少女を暗殺しに行く、というお話。忌破りの少年少女、というかジュルメ訓練所でライナの同期だったふたり・ペリアとピアなわけですが、二人を殺しに来たはずのゾーラが軽くあしらわれて追い返されてしまう姿が爽快だし、ワガママな少女としての一面は以前よりおとなしめになって小悪魔系美少女になったピアに手のひらの上で踊らされてしっかり惚れさせられて帰ってきちゃうゾーラの姿にニヤニヤが止まらない。国に都合の良い暗殺者になるために自尊心を歪まされたゾーラが、報われない恋に身を焦がしてすっかり改心してしまうのめちゃくちゃ微笑ましくて楽しいお話だった。最後がいい感じに死亡フラグっぽいんですけどあとがきで「ドラマガ短編でも出る」っていわれてるってことはまあ死なないだろうし、次巻書き下ろしのライナとの絡みが普通に楽しみだな。