ある日突然前世の記憶を取り戻した男爵令嬢アンヘラ。自分は乙女ゲームのヒロインで、明日には逆ハーレムエンドがほぼ確定してしまうのだが、どう考えてもその生活が幸せなまま維持出来るとは思えない。ならば確定する前にみんなに辞退してもらおう!と従者エドガーを巻き込み、フラグを折るため動き出すが…!?
乙女ゲーヒロイン本人による、逆ハーレムエンドフラグ破壊RTA
前巻は権力も資金力もある悪役令嬢な主人公がフラグをぶち壊していく様が痛快なお話でしたが、今回は権力も資金力もなく実家の後ろ盾も薄い男爵令嬢の主人公がゲームの攻略知識を使って事態をひっくり返していく展開で、前巻とは違った縛りの多い展開を楽しめました。エンディング到達後の自身の進退もあるので、権力者である攻略対象達に恨まれないようにフラグを折らないといけない(出来れば向こうからラブコールを取り下げて貰いたい)のが難易度を上げている。できる限り穏便に事態を処理しようとしているところに、同じくアンヘラの逆ハーレムエンドを阻止しようとする悪役令嬢コンスタンサが介入してくる。更に前作ヒロイン・悪役令嬢の影まで見え隠れしはじめて……!?徐々にこんがらがっていく人物相関図が楽しかったです。
面白かった!けど説明が足りてない……
穏便な解決を望むアンヘラ、攻略対象たちを排除できればそれで良いスタンスのコンスタンサ、そして彼らの裏で蠢く前作キャラクターたち。別々の思惑を持った複数の人間がフラグ破壊を巡って絡み合う展開はとても楽しかった……のですが、重要な設定がいくつも触れられないまま終わってしまい、終盤は完全な消化不良になってしまった。特に、意味ありげに絡んでくる前作キャラたちの思惑が一切語られず、わけもわからないまま彼女達の手のひらの上で踊らされただけという印象が強くなってしまったのが本当に残念でした。あまりにも消化不良で原作のWEB小説を探しに行ったのですが、この辺の説明が足りてない部分ってほぼぜんぶ書籍化されていない「Interlude1 アレクサンドラのその後」で語られている部分なんですよね。結構文字数が多いのと、外伝として別話立てされているので収録しづらかったんだとはおもうんですが、流石に説明が足りてなさすぎるというか、2巻を書籍化するならば誰の視点かをぼやかしてでも必要な回だけでも章間に無理やり入れるとか出来なかったのかな……いやこれは流石に編集仕事しようよ案件でしょ……。
特に前作ヒロイン・ルシアの挫折から再起、真実の愛を得て舞台に舞い戻るまでの物語はストーリー単体でもめちゃくちゃ面白かったんですが、同時にこれを読んでないと2巻に登場するルシアにつながらないので流石にここを省いて書籍化するのは駄目だとおもうんでうが……アレクサンドラが事態に介入してくる流れも最低限説明がほしい(こっちはコンスタンサが誰の娘なのか説明するだけでも大分違ったと思う)。というか「Interlude1」を読むと2巻の話ってアンヘラ視点で進むもののアレクサンドラとルシアの物語の延長戦として存在しているのでやっぱりアレクサンドラとルシアの視点を省くのはないよなあ。
他にも戦争に行った前作攻略対象達の末路とか、セナイダの結婚話とか、最後の最後の最後でアレクサンドラがルシアに一杯食わされる展開とか、ちょっと長いんですけどすごく面白かったです。2巻のメインヒーローであるエドガーの正体バレが出てくるので2巻を読む前にこちらを読めともいいづらいんですが、その辺含めて上手く書籍に盛り込んでくれたらめちゃくちゃ面白かったと思うので、本当に編集が……メディアの違いを理解してくれればこんなことには……。
個人的に、全ヒロインが揃い踏みで乙女ゲーと自分の前世のネタバレトークするInterludeの最終話めちゃくちゃ面白かった。ルシアとコンスタンサの前世が予想外に大物すぎるし、アンヘラもなかなか波乱万丈な人生贈ってるし、そこに張り合えるアレクサンドラの前世(一般庶民・同人作家)がまさしくオタクならではの序列という感じで笑ってしまった。