愛さえあればどんな「禁断の愛」でも認めてもらえるという教会で、それぞれの愛の「存在証明」と「不在証明」を目指す二組4人の男女の視点から語られるちょっと不思議な島の成り立ちのお話。これまで読んだ杉井光作品のどれとも違う、しっとりとした背徳と愛の物語でした。とりあえず、杉井光というと「高いツッコミ技能を持つ主人公の一人称」みたいなイメージがあった(「火目の巫女」などは除く)ので、まず少女の一人称で始まった事にびっくり。こんなお話も書ける人なんだなあ。守備範囲広い。
「すべての愛がゆるされる島」と教会、そしてそれを取り巻く人々の過去や謎が明らかになっていくのとともに、一見全く関係がないように思える2組のカップルに少しずつ共通点が見えてきて、最後に思いがけない真実が明かされる……という展開が非常に面白かったです。終盤のどんでん返しは特に、全然思い当たっていなかったのでゾクっとなる。
ただ、個人的にはあまり好きな作風じゃなかったというか、正直いつもの杉井さんの作風のほうが好きだなあ…。
「うらら」一覧
冬コミ情報更新しました。
冬コミで発行する予定の新刊の情報を更新しました。無事入稿できました!
表紙画像とサンプルを掲載しましたので興味のあるひとは↓からどうぞー。
https://urara.tank.jp/log/eid1251.html
彩雲国物語 黄粱の夢
読み飛ばしていたので順番左右しますが最新刊から1冊戻り。静蘭と燕青が「殺刃賊」を潰した時のお話をメインに邵可&薔薇姫の出会いを収録した番外編集。
静蘭と燕青に暗い過去があるのはなんとなくこれまでも幾度となく示唆されてましたが、予想以上に重たい展開にびっくりしました。特に静蘭の「小旋風」という渾名の由来がそんなことに起因するものだったとは……。
孤高の皇子時代に唯一の心のよりどころだった劉輝との心温まるやりとりにも、母・鈴蘭との悲しいすれ違いも印象的でしたが一番印象に残ったのは前王・戩華の意外な「父親としての」素顔ではないでしょうか。ただの「父と息子」に戻った彼と静蘭が一瞬見せた気の置けないやり取りが微笑ましいのと共に、彼等のそういう関係を許さなかった当時の状況が物悲しくもあり。
しがみついていた「皇子」としての立場を奪われ母を殺され「殺刃賊」に囚われ、まさにどん底状態の静蘭を引きずり出した燕青の方も、彼に負けず劣らずな深い闇を抱えていて……そんな二人が1000人の敵を前に背中を合わせた一瞬は思わず燃えた!!ツンツンした態度をとりながらも時々どこか自分よりも危うげな一面を覗かせる燕青を放ってはおけない静蘭の立ち回りにニヤニヤする。
二人にとってはあまりにも重い「過去」のお話でしたが、二人の一瞬ともいえる出会いが『その先』の人生を顧みようとしなかった彼等の生き様を変えた。そして再び別々の新しい人生を歩み、再びめぐり合うその様子はそれこそ「運命の出会い」だったといえるのではないでしょうか。別に静蘭×燕青の悪友関係萌えなんて思ってません、ちっとも思ってませんとも!!!
書きおろしの邵可と薔薇姫の出会い話も素敵。飄々とした邵可のフリーダム具合に翻弄され、だんだん彼のペースに引き込まれてしまう薔薇姫の姿と、ピントのちょびっとズレたやりとりにニヤニヤが止まりませんでした。いろいろな意味で最後に持っていかれた!!
【告知】コミックマーケット77参加します。
無事コミケのスペースをいただけました!12月30日(2日目) 西ホール「み」18aになります。
ちょっとラインナップが増えてしまったので、目次を作ってみました。読みたいところに飛んでください。
■ 新刊その1)「バカのおと バカとテストの再録本」
■ 新刊その2)「とある性別への戯れ歌」
■ 新刊その3)バカテス原作未読者向け(?)布教本 New!
■ 既刊案内
■ オマケ New!
詳細・本文サンプルは続きを読むからどうぞー。
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彩雲国物語 暗き黄昏の宮
劉輝株大暴落(ストップ安/最安値絶賛更新中)の巻き
すでに読了済の人たちから噂には聞いてましたが、もうなんというか、秀麗や他の人の頑張りを片っ端から台無しにしていく劉輝がマジヘタレすぎる……もちろん、敵となる人たちがあまりにも一枚上手で…というのはあるのだけど、もう少ししっかりできないものなのか。これまではまだ「わかってないから仕方ない」みたいな部分があったけど、自らの言動が事態をさらに悪化させるであろう事を予感しながらもその場の流れに流されてしまう劉輝は、本当にヘタレとしかいいようが……
序盤に普通に乙女ゲーしてた頃の秀麗贔屓が今になってこんなにも大きく、取り返しのつかない過ちとして浮かび上がってくるとは……そしてその後もどんどん自ら再起の目を潰して行っていたという事実が、胸に痛い。彼らの行動が間違っていたとは思わないけど、もう少しうまく立ちまわっていれば…みたいなのはあるよなあ。気がつけば周囲は四面楚歌、こちらには切れる手札もなく、なすすべもなく翻弄されていく劉輝達が本気で哀れ。物語は最終章に突入ということですが、なんかもうバッドエンドしか道がないんじゃないかと思われてしょうがない。この道は本当にあの、1巻で示されたような輝かしい未来へとつながっているのだろうか。
普通の人間でも過労死しておかしくないような激務を続けてきた秀麗が、回復のために担ぎ込まれた縹家で僅かな静養の時間を得て、様々な選択肢を持ちながらも最後まで王の為の官吏であろうとする姿がかっこいいのですが、その努力をブチ壊しにしようとしているのが、その王本人というのがなんだかなあ…味方のはずの人たちにどんどん足元をすくわれていくのがなんともやるせないです。
次こそ、次こそはいい加減劉輝には本気出して踏ん張って欲しい……。
魔王様げ〜む!
魔王に敗れた勇者が魔法で女の子の身体にされてしまって、魔王城のメイドとして働くことに……というお話。メガミ文庫の新人さん。
女の子に目が無いという女好きの魔王・ディンゴ様が変態という名の紳士でした。女好きが嵩じて魔界の統一を目指し、副官から召使まで全部女の子で統一し、倒した敵を魔法で女にしては傍に召し仕えさせ、女の子とイチャつくためなら普段はほったらかしの仕事も片付ける、とにかく原動力が「女」という一文字で出来ているであろうその生きざまが、あまりにも歪みない。
一方、そんな魔王のとばっちりで女の子にされちゃった主人公のレイモンド改めレモンちゃん。元・男としてのプライドやら感情やらでせめぎ合い、ディンゴの所業に理不尽なものを感じながらも、なんだかんだといって魔王城の一員として順応していく姿にニヤニヤしました。自分の身体がなかなか直視できなくて悶々としたり、元男だと知っているはずなのにあまりにも開放的な同僚のメイドさん達の態度に逆に慌ててしまったり…とTSお約束なネタも満載。そしてなんとか順応して来たと思ったらスパイ容疑を掛けられて……勇者として正々堂々と魔王を討ちたいというプライドや「好きでこんなことしてるわけじゃないのに」という理不尽さに苛まれているレモンの姿が印象的でした。
しかし、どんなにシリアスなシーンでも、やっぱりディンゴの行動原理には何かしらで女が絡んでくるので、イマイチシリアスになりきれない勢いが素敵。正しく頭の悪いラブコメで疲れた頭に大変美味しかったです。個人的に唯一残念だったのは、メイドさんたち同士でのやりとりや女の子になったレモンの心の葛藤が結構多くて魔王様との掛け合いが思ったよりも少なかったことでしょうか。次巻が出るならぜひとももっとディンゴ様にはレモンにセクハラしまくってほしいです。
SH@PPLE?しゃっぷる? 7
巡りめぐって季節は秋。読書、スポーツ、…食欲の秋!最近元気のない一駿河さんのため、僕、淡谷雪国はせっせと総菜パンをデリバリー。そんな日々の中で、青美女学院は生徒会選挙の時期に。「会長」で無くなれば、舞ちゃんは安心して青美に帰ってこられ、入れ替わり生活は…おしまい!?「しかし、雪国さまはよろしいのですか?」と、さゆねさんは僕に問う。僕は…それで―いいわけないじゃないか!この想いを伝えるラストチャンスは、選挙後のダンスパーティーだけ。舞ちゃんは何だか怪しいし、古葉さんは家に押しかけてくるし、ドタバタ続きだけど、今度こそ。…オトコ雪国、キメます―。 (「BOOK」データベースより)
「入れ替わり」終了を前に、風雲急を告げるシリーズ第7巻。
前巻くらいから少しずつ不穏な匂いを漂わせていた様々な事項が一気に表面化して、とにかく翻弄される。舞姫が、雪国が、皆が「良かれ」と思ってやったことが次々と裏目に出て、悪い方向に転がっていく様子には本当にはらはらした。双子を叱咤する胡蝶の宮のかっこよさには思わずキュンとなったけど、まさか彼女の提案があんな結果を生んでしまうなんて……。
前半の舞姫とのやりとりをみるかぎり蜜の心に映っているのは雪国ただ一人だと思うのに、入れ替わりの事を知って自らの気持ちが判らず戸惑う彼女の姿が心に痛い。実際、蜜だって「女の先輩を好きになってしまった」という事実と向き合って、漸く心を決めた所でこのどんでん返しはないよね…。一度同性の先輩を好きになったんだ、と受け入れてしまった以上、そして雪国と舞姫の入れ替わりが頻繁に行われていた以上、「本当の舞姫」に惹かれてしまったかもしれない自分を否定する要素が無いわけで……ああ、もっと早い時期にこの誤解が解けていたら、と本当にやきもきする。
双子の入れ替わりの終わり、蜜の転校。蜜の想い、雪国の想い……と様々なものが絡み合って身動きが取れなくなった所でのこの引きは強烈すぎます!早く続きを!!
土属性はダテじゃない!
ときは21世紀。精霊魔法が日常に存在する現代日本において、埴本麒一郎(はにもと・きいちろう)は精霊魔法界のエリートだった……ただし、土属性の。
●一位:風属性 気楽に付きあえるモテモテクン! 飄々とした態度に翻弄されちゃう!
●二位:火属性 恋も生き様も情熱的なカレ! 火傷するぐらいアツアツのメイクラブしちゃおう!
●三位:水属性 クールな横顔にメロメロ! 奥手すぎるのがタマにキズ?
●四位:土属性 デカい、ダサい、ヂミの3D揃った非モテクン!土いじりでもしてれば?
とからかわれることNO.1の土属性の家系に生まれた麒一郎は実家の援助を打ち切られバイト生活に励む日々。そんなある日、火属性の美少女と赤井雪乃と出会い、良きライバル関係になるのだが……。ドタバタ青春精霊コメディ!(一迅社文庫公式サイトより)
精霊魔法を学ぶ学園でも地味で目立たないと人気のない「土属性」の少年が、ひょんなことから学年でも有名な火属性の美少女と知り合いになり、「異種精霊障害乱走」なる競技での優勝を目指す、というお話。
数あるファンタジーでもめったに主役属性として採用されない地味属性・「土属性」を逆手に取った自虐系コメディ……かとおもっていたら意外に王道な異能スポ根ラブコメでした。全体的にちょっと展開が駆け足かなあと思う部分もあったけど、各属性の特色を生かした戦い方と弱点を補うための「大乱走符」のシステムがなかなか面白かったです。火属性(=熱血娘)なヒロインとのやりとりも微笑ましくて素敵。
ただ、個人的に主人公が乱走で活躍できたのって、のづぢが偶然土属性にしては動きの機敏な能力を持つ朋霊だったから…みたいな気がして、そこが微妙にひっかかってしまいました。鈍重な朋霊と組む羽目になって、底辺から知恵と根性で他属性を出しぬいて行く、みたいなのをタイトルから想像して勝手に期待していたからかもしれない。
しかし、何よりも素敵だったのはクライマックスのやりとり。
彼に対する間違った憧れで凝り固まろうとしていた雪乃に対して、麒一郎が放った言葉には思わず噴き出してしまいつつも、ニヤリとする。「土属性」らしい彼の口下手さが愛おしくなる一幕でした。
「このラノ2010」を見て「性別秀吉部門」を再びねつ造してみた
今年も「このライトノベルがすごい!」で性別を間違えて投票されているキャラクターを集計して「このラノキャラクター人気ランキング:秀吉部門」を勝手にねつ造してみました。
得票数が一部除きとても少ないので普通に男女欄間違って投票してしまった人の票が混ざってるんじゃないかという予感がしますがまあその辺は冗談企画なのでお許しください。「こいつが入っている/入ってないのはおかしい!」という意見は受け付けません。
「このラノ」編集部の皆様ごめんなさい。
昨年度のランキングはこちら。
■ 参考文献:このライトノベルがすごい! 2010宝島社 2009-11-19
by G-Tools
■集計対象:「このラノ2010」でキャラクター部門にランクインした上位50人
■ランキング方法:今回から誤性投票率の高い順でランキングしています。
■得票数集計:総合結果から男女別部門に書かれている得票数を引いて計算しました。
■誤性投票率:「異性部門で獲得した票数÷総得票数」で算出してます。
「性別:秀吉部門」ランキング
NEW! 第3位 : シューフェン (蒼海ガールズ!) [性別 : 男] [得票数 : 3pt / 1票] [誤性投票率:5.00%] 「おと×まほ」を擁するGA文庫の期待のニューホープ(男の娘的な意味で)。 男子禁制の軍艦・ビシャスホースに正体を隠して乗り込むことになった皇子・シューフェンがランクイン。ちょうど今月最新刊が発売されたのですが聞こえてくる感想を見る限り、色々と凄かったご様子です(※リンク先ネタバレ注意)。 …実はまだ読んでないので近いうちに手を出してきます! |
NEW! 第4位 : 八九時真宵 (化物語) [性別 : 女] [得票数 : 3pt / 2票] [誤性投票率:4.65%] 今年バカテスに次いで大健闘だった「化物語」の毒舌小学生がランクイン。 ……特に性別不詳的エピソードはなかったので、投票欄の書き間違えっぽい気がします。 2票だし。 |
6位以下
基本的には書き間違いだと判断してよいかと思われる人々のあたり。
キャラクター名(作品名) | 性別 | 票数 | コメント |
川村ヒデオ 戦闘城砦マスラヲ | 男 | 5pt / 2票 (誤性投票率:3.07%) | ヘタレニートだけど、最後に「男」を見せてくれました。 |
藤和エリオ 電波女と青春男 | 女 | 3pt / 1票 (誤性投票率:2.32%) | 実は読んでないのでノーコメントで… |
阿良々木暦 化物語 | 男 | 8pt / 3票 (誤性投票率:2.14%) | 「設定画のない主人公を実は女かもしれないと思いたくなる」の妙。 しかしアニメではグラフィック出てたのに… |
戦場ヶ原ひたぎ 化物語 | 女 | 2pt / 1票 (誤性投票率:1.36%) | 彼女はどんな男性よりもオトコマエだと思います。 |
琴吹ななせ 文学少女シリーズ | 女 | 3pt / 1票 (誤性投票率:1.21%) | きっと投票間違いだ、そうに違いない…… |
井上心葉 文学少女シリーズ | 男 | 3pt / 1票 (誤性投票率:1.2%) | コノハちゃんだから仕方ないね!!! |
みーくん 嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん | 男 | 1pt / 1票 (誤性投票率:0.88%) | 「設定画のない主人公を実は女かもしれないと思いたくなる」のry 票は少ないけど、2年連続ランクインと言う…… |
15×24 link three 裏切者!
ネット心中をしようとしている少年・徳永準と様々な理由から彼を追う15人の少年少女達が東京を駆け抜ける24時間の群像劇、シリーズ第3巻。
これまでの2冊と比べるとぐっとページ数も少なく、全6巻シリーズと言う前提を考えても折り返し地点的な印象を受けたのですが、見た目の薄さからは想像もできないほど激動の一冊でした。まず、しょっぱなから起こった出来事でいきなり衝撃を受け、その後明かされた物語の一端に息をのみ……そしてラストの引きでまた衝撃!特に、序盤の「アレ」には軽い気持ちで足を突っ込んだ彼らが、遂に決定的に取り返しのつかない場所に踏み込んでしまった印象を受けて、物凄く胸がドキドキする。少なくても、彼らのうちの一人は永久に「取り返しのつかない」所に行ってしまったわけで……
不気味な暗躍を続けるファブリや迷走するミツハシ、今回殆ど動きのなかったメンバーの動向も気になりますが、何よりも気になるのは笹浦・西・伊隅の3人。ラストの引き方からするとどうみても…!?なのですが、特に笹浦と伊隅は15人の中でも重要ポジションに位置するキャラクターだと思われるので、そのままあっさり……なんてことにはならない、と信じたい。<17>を巡っての温井川・徳永・伊隅の3人の動きも気になる。とりあえず、早い所続きが読みたい……!
…それにしても、遂に今回恋するツンデレ乙女として覚醒した西が可愛すぎます。(あれは間違いなく……惚れてる、よね?)思わぬカップル誕生の予感なのか!?