「ロクでなし魔術講師と禁忌経典」シリーズの日常主体、授業シーンあり、ラブコメあり、ドタバタありの短編集第4弾。しばらく読めてなかったのと次巻がイヴの過去編前提の話っぽいので本編の続きを読む前に短編集ちゃんと読もう…と思ったら…数字が余裕で倍…どころかもうすぐ3倍になることにびっくりしましたよね…(※現在最新8巻)
セリカちゃんマジ面倒くさい女
短編4つのうち2つが概ね仕事が忙しくてかまってくれないグレンにかまってほしいセリカちゃんなの、最近の本編の危なげな影を背負った謎の女からのギャップがありすぎる。いやセリカちゃんが親ばかなのは知ってましたがこれ加速してませんかというか、保護者というよりも扱いが難しい面倒くさい彼女に見えてきた。そんなわけでグレンにかまってほしいセリカが幼女になってグレンに密着する『嵐の幼天使』と仕事が忙しいグレンに構ってもらおうとしたセリカがグレン達のクラスが実習で訪れる迷宮にちょっとした細工をする『狂王の試練』のはしゃぎっぷりがすごかった。最初はセリカ案件とわからず、グレンの行動に怒ったりヤキモチを焼いたりしていたシスティーナすら、犯人がセリカだとわかると「なんで先生構ってあげなかったんですか」みたいなことを真顔でいいだすのに笑ってしまう。
短編はあとはリィエルの日常生活に迫る『とある少女の素行調査』と病弱保険医・セシリアの体調を心配した母親がアルザーノにやってくる『病弱天使セシリアさん』だけどどちらも良かった。リィエルは確かにああいう下町とかちょっと治安の悪い裏路地とかで人気者になるタイプだよねわかる……。セシリアさんの話は冷静に考えると全然笑い事じゃないんだけど、体調の悪いセシリアを気遣って必死に授業で怪我人を出さないように奔走するグレンの姿に笑ってしまうし、予想通りはりきって仕事して吐血するセシリアさんに笑ってしまった(いや笑えない)。いい話っぽく終わったけどそれでいいのか感はありますね。
今明かされる、「偽りの英雄」の伝説
最後の書き下ろし『偽りの英雄』はなんか色々な意味でネタバレなしで感想書こうとすると難しいですね…とある人物の過去とかつて実在した英雄「アルベルト=フレイザー」にまつわる物語でした。だいたいこの人物の名前が出たあたりで誰の過去かは明白という感じなのですが、序盤は一見誰の話なのかわからないようになっていて、物語を読みすすめる毎に徐々に誰の過去かおぼろげに浮き上がってくる物語がとても良かったです。幼いアベル少年が嫌っていたかつての英雄の名前を背負うに至るまで何が起こったのか、もうなんか序盤からどういう展開になるのかうすうす読めてくる話ではあるんだけど、それだからこそ何も知らなかった頃の彼がひとときの幸せを享受しながら暮らしている描写がとてもしんどい。
でもそんな過酷な展開だからこそ、最後に描かれたグレンとのやりとりには救いを感じるんだよなあ。かつての思想を捨て、「9を救うために1を切る」覚悟をしたアルベルトと、自分が捨てたかつての理想を捨てられずに別の道を歩んだグレン。独りで茨の道を歩むアルベルトの業を「一緒に背負ってやる」といってくれるグレンの姿に胸が熱くなりました。いやしかし最後の1ページ不穏すぎない!?その書き方、死別とかガチ目に殺し合いする未来しか想像できないんですけど!?
ところで直前がセリカちゃん大暴れの『狂王の試練』だったので温度差がひどい。