ルーナ王国で『複写眼』を持つ少年・アルアを助け出したライナとフェリス。ところが今度は彼の幼馴染の少女・ククが拘束されてしまう。一方、着々と領土を広げるガスターク帝国の存在を驚異に感じるシオンは、同盟国であるルーナ王国に腹心・フロワードを向かわせて……。
ガスタークの登場で物語が加速するシリーズ第5巻
消息不明だったキファの視点から彼女とガスタークの王・レファルの出会いが描かれて、物語が加速してきた感じ。シオンと同じく「誰もが笑って暮らせる世界」を目指しながらもシオンが通りたくない血塗られた道を真っ向から歩き、その一方で理想の実現のためには自分が傷つくことを厭わないレファルの姿が衝撃的でした。ていうか汚れきったローランドのシオン反対派貴族達の後ろにいたのがなんていうか、こんな理想に殉じることができる男だっていうのが皮肉すぎるというか……。絶大なカリスマとそれを実現するだけの力を持つレファルを目の当たりにしながらも「世界よりもライナが大事」と言い切るキファの姿がかっこいい。本編第一巻で、そして今回の過去回想で、様々な人間たちの思惑に翻弄され葛藤し続けてきた彼女の姿を知っているだけに特に。
ライナとシオン、両者の視点から描かれる物語が(改めて)しんどい…
『複写眼』を持つ少年・アロアの処遇と幼馴染の少女ククの奪還を巡ってスイ・クゥの兄妹と再び対峙するライナとフェリス。ガスタークの間者であることを明かした二人からガスタークの王のことや彼の持つ理想を聞かされて、それでもシオンの事を信じる、帰る国はそこにある……というライナ、正直めちゃくちゃアツい展開なんですけど、このシリーズってライナとシオンのW視点から描かれていてシオンの王としての葛藤を散々目の当たりにしてきているので素直に燃えられないというか……ライナの信頼、重てえ〜〜〜〜!!!!!ってなってしまうのあまりにも原作の構成が巧妙すぎて頭を抱える。ていうかほんとライナは今すぐローランドに戻ってシオンを3発くらい殴ったほうが良い。今なら多分?ギリ…?まだ……?間に合う??から???!!ほんとこの話、いやもういいからライナはシオンの傍に居て見張ってろよ!!!ってなるシーン多すぎるんですけどライナを諸国周遊させてるのもシオンだからどうにもならない。シオン→ライナへの巨大感情もなかなかだなと思ってたんですけどライナもなかなかどうしてシオンにクソデカ感情抱えてたんだな。無事にククを救出してフェリスとともに光の中にいるライナと、道に迷い心折れそうになりながらも暗闇の中で独り明かりを探してさまようシオン、対比するにしてもしんどすぎるししんどいにしても情景が美しすぎてキレてる。フェリスとの背中合わせの相棒関係はいよいよツーカー感が増してきてよかったです。良かったですけど!!!
なんか割とコミカルな序盤、いつもどおりに貴族きたねえ中盤からの、もう終盤で一気にしんどい話が詰め込まれて読み終わって発狂!!て感じに情緒の撹拌が凄い一冊でしたがそんな中でククを奪還するためにアルアに魔術を教えるライナのシーンが唯一の癒やし。『複写眼』を持つが故に天才肌というか常人には理解しがたい解説をするライナと、そのライナの言葉を同じ『複写眼』持ちのおかげで直感的に理解しちゃうアルアという、はたから見ると何もわからない授業シーンが微笑ましい。ライナ絶対教師向いてないタイプだよな〜!!!いやもっと時間があって普通のこどもに教えるんならもっとまともな授業するのかもしれないけども……。