薄幸な公爵令嬢(病弱)に、残りの人生を託されまして 前世が筋肉喪女なので、皇子さまの求愛には気づけません!? | 今日もだらだら、読書日記。

薄幸な公爵令嬢(病弱)に、残りの人生を託されまして 前世が筋肉喪女なので、皇子さまの求愛には気づけません!?

 

回し蹴りを皇子に見(初め)られた!? スカッと爽快!悪は拳で解決します
武闘派OL呉葉は溺れていた子どもを助けて死亡。 すると『その強靭な魂わたくしにください』と虚弱な公爵令嬢クレハに転生――するも、寝たきり生活がツラくて町に下り、ごろつき相手に大立ち回りする現場を隣国の皇子イザークに見られてしまう。 その姿を気に入られた(?)呉葉は彼と秘密を共有し、本物クレハの命を奪った犯人を追い詰めることに!?

男子顔負けの運動能力とメンタルの強さが自慢のOL・呉葉は子供を助けようとして川に落ち、意識を失ってしまう。死んだ──と思ったその時、不思議な少女と出会い──次に目を覚ましたときには夢(?)の中で出会った令嬢・クレハの身体に入ってしまっていた!?慣れない環境、過保護すぎる兄に翻弄されつつも兄の親友で隣国の皇子・イザークを巻き込み、この身体の本来の持ち主を殺した犯人を追うことになるが……。

やはり筋肉は裏切らないんだよ!!(迫真)

他人の人生を途中から引き受けることになり「引き継ぎが足りない!!」と悲鳴を上げながらも兄妹のより良い未来のために奔走する主人公の行動がいちいち気持ちよく、とても楽しいお話でした。魂の強さが肉体の強靭さに直結する=筋肉に裏切られる世界観という認識で笑ってしまったけど最終的には(前世から引き継いだ)筋肉でなんとかした感があるような気がしてしかたない。あとがきでもめちゃくちゃ筋肉トークしていて、こんなに筋肉の圧が強い少女小説読んだこと無い。やはり筋肉は裏切らないんだなあ(洗脳)

基本的にはパワフルな脳筋系OLが儚げで魔力の強い令嬢の肉体に入って彼女の生命を奪った犯人を追い詰めるというお話なのですが、その一方で他人のためでも軽率に命すら張れてしまうクレハの危なっかしさが内外から描かれていくのが良かったです。クレハを毒殺した犯人を追うのも「この身体の持ち主(クレハ)」とその兄のためであって、決して呉葉自身のためではないんですよね。でも、呉葉自身も生命を落とす前に職場の後輩から言われた「先輩自身は空っぽ」という言葉が小骨のように引っかかっている。決して強いだけではない、女性らしい繊細な心と不安定さが透けて見えるのが印象的でした。

過保護兄が最後に美味しいところを持って行き過ぎた

少女小説的にはクレハの秘密をいち早く知ってしまいって彼女の破天荒な行動に巻き込まれていくイザークとの、共犯というか背中を預けられる関係というかとにかく色気のないところから始まって、だんだん距離が縮まっていって互いに好意を持っていく関係性がとても良かった。色恋沙汰に無縁すぎた二人がお互いに抱いているその感情の名前をみつけるまでまだまだかかりそうだけど、そのもどかしさがとても美味しい。

……とか思いながら読んでたのですが、最後の最後でクレハの兄・テオバルトが美味しいところを全部持っていった感が凄くてですねええ!!妹のことを心配しすぎてちょっと引くくらいの過保護ぶりであるテオバルトがその裏で冷静に状況を分析し、妹への深い愛情故に起こったことを受け入れ、その上でこれまでと同じように接してくれるのあまりにも良い。本当にエピローグで大逆転ホームラン打たれた感がすごいんですが、同時に微妙に不吉な伏線も張られていて、続きが気になる所。

いやいろいろな意味で主人公カップルの関係性も「恋」に至る前の所で終わってしまったということもありますし、ちゃんと続きが出るといいなあ。楽しみにしてます。

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