樹海に引きこもって暮らす魔女・ラスはひょんなことから凶暴化した魔獣に襲われていた王太子アレンを自らの魔法で助け、そのお礼にと王宮に招かれる。すぐに帰るつもりだったのに、「王子の大切な人」として専用の部屋を与えられて侍女を付けられ、帰りますと言ってものらりくらりと躱されてしまう始末。初対面のはずなのにやたらとラスに好意的なアレンの様子を見て、よもや彼は自分のご先祖様が王家にかけた「溺愛の呪い」にかかってしまったのでは…!?と不安になってきて……。
引っ込み思案な魔女と外堀埋めるの早すぎる王子の恋愛攻防戦
アレンがめちゃくちゃ先回りしてラスの逃げ道をふさいでくるこの感じ、いい感じに重てえなあ!!!態度自体はフラットなんだけどあまりにも外堀の埋め方が性急すぎてご先祖様の呪いを信じているラスがそれを疑うのもわかる。これでまだラスへの好意が無自覚な状態での行動だったというのがまた強すぎて、好意を自覚したアレンがなによりも先に父王に結婚の許可を内密に取りに行ってるの笑った。本人全く気づかないままお妃教育まで受けさせられてるのとか本当に外堀の埋め方ァ!!!何もしていないのに王宮に逗まり続けることに不安を感じるラスに、アレンは自分が所長を務める王立魔法研究所で研究員として働くことを薦める。笑顔が眩しい完璧王子からの囲い込みに怯えていたラスが以前から希望していた王立魔法研究所で働けることになり、自分の研究に打ち込む中でアレンの人となり──年頃の青年らしい一面やちょっとヤンチャな一面も見えてきて、少しずつ打ち解けていくのが微笑ましかった。もう周囲の人から見たらバレバレな両思い状態なんですけど、速攻で外堀を埋め立てられた後はお互いの距離を測りながらゆっくり自然に内堀も埋めていく感じが凄く良いね。個人的にはアレン王子が最後の最後で見せた元ヤン(違)っぷりにめちゃくちゃニコニコしてしまったんですけど!!
その一方でお互いの距離が縮まっていくにつれて、ラスは改めてご先祖様がアレンの先祖に掛けたという伝説の「溺愛の呪い」を意識するようになっていく。アレンのことを求めれば求めるほど彼から愛されることを恐れていくラスと、最初は幼い頃の罪滅ぼしのつもりで彼女と接していたのにどんどんラスのことが好きになっていってしまうアレンの姿が印象的でした。そしてそこに「魔女」の台頭をよく思わない王宮内の勢力が絡んでくる。
かの呪いについては、序盤はともかく読者側に引っ掛けする意図がないレベルだなとおもったんですが(囲い込み方が性急すぎるといってもアレンの態度がフラットすぎるので)最後の最後で最高に雑なオチがついて爆笑してしまった。いやでも、たしかにその確かめ方だとラスは下手したら永遠に気づけなかった可能性もあるわけで……姉様達そういうことはちゃんと教えてあげてよぉ!!
1巻で綺麗にまとまってるのも良かった
誤解も溶けて最後は両思いのハッピーエンド、メルヘンちっくな世界観で綺麗に1冊でまとまっているのがとても良かったです。タイトル・あらすじの伏線が綺麗に回収されすぎちゃってて、続編前提のシリーズではなさそう。ただ、血によって能力を受け継ぐ「魔女」と魔石によって力を行使する「魔導士」の間に確執がある世界観とか凄く面白かったし、続編を出せる余地がないわけではない感じの終わらせ方でもあって、うまいこと続編が出てくれないかなあ〜とも期待してしまう。あとなにげにラスの使い魔・ロロについて「子猫のなりは真の姿ではない」という言及があるんですけどこの辺の伏線って未回収ですよねたぶん。続編があったらロロがアレンにちょっかいかけてくるみたいな展開で1冊書くつもりで伏線残されてるんじゃないかなあと思ったんだけど……そういう展開めちゃくちゃ好みなので、あるなら読みたいなぁ。