“さき” の検索結果 | 今日もだらだら、読書日記。

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ティアムーン帝国物語4〜断頭台から始まる、姫の転生逆転ストーリー〜

 
Gilse

「姫殿下、その叡智で我が師を説得していただきたい」
孫娘ベルと、未来改変の一歩を踏み出した元わがまま姫のミーア。帰国した彼女を待ち受けていたのは、忠臣の無茶振りーー偏屈頑固な超変人賢者の説得だった! 理由を聞けば、ある公爵令嬢の妨害工作で、開校目前だった聖ミーア学園の学園長候補が全員逃走。唯一の頼みの綱はその師匠らしく......?  目指すは、来たる大飢饉に備えた「未来の天才児たちによる新種小麦の開発」。優秀な長を手に入れ、帝国に学問の門戸を開くべく、叡智・ミーアが動き出す! 「こうなったら、わたくしが教鞭を取って差し上げますわ!……あらアンヌ、なぜ止めますの?」 保身上等! 自己中最強! 小心者の自称敏腕教師が、孫娘と運命に徹底抗戦する、歴史改変ファンタジー第4巻!

ルードヴィッヒからの呼び出しを受けてティアムーン帝国に戻ったミーア。四大公爵家のひとつ・グリーンムーン公爵家の妨害によって建設中の聖ミーア学園の学園長や講師候補が獲得できなくなっているという。代わりの学園長候補として、ルードヴィッヒの師匠である放浪の賢者ガルヴを説得してほしいと言われるが……。

「自分の幸せ」のためならいつでも全力!!(良い意味で)

賢者ガルウ獲得を巡るお話がとても良かった。「帝国の叡智」の人となりをを計るため「三顧の礼」を求めて扉を閉ざすガルヴと、そんなガルヴの家の前でわざと待ちぼうけを喰らうことによって相手の非を指摘し、断りづらくしてやる!!と意気込むミーア。例によって思惑がすれ違ったままガルヴがミーアの行動を良い方に解釈して先に折れる……といういつものパターンなんだけど、その一方で「ガルヴに反撃の余地を与えないため」にミーアも全力で礼節を尽くして相手を待つ…という展開がとても良かった。

ミーア、とにかく自分が良い思いをするためならなんでもする人間ではあることは一貫しているんだけど、その一方で一貫して「自分の行動のせいで他人が嫌な目をしたら自分も気持ちよくなれない」「他人に悪い思いをさせたらいつかそれは自分に返ってくる」ということを知っている人間なんですよね。だからこそ、自分が気持ちよく生きるために他人を思いやり、全力を尽くすことが出来る。だからこそ、(様々な誤解はあれど)人々が彼女の二度目の生に惹きつけられる。

その一方で、そういうミーアの気質は決して二度目の生だけで育まれたものではなくて……一度目の生でルードヴィッヒが最期までミーアに尽くした本当の理由。そして、師との問答によって「帝国の叡智」ではなく「ただの人間のミーア姫」に仕えることを改めて決意するルードヴィッヒの想いに胸を打たれます。

ティアムーン帝国没落を巡る謎のひとつが、ついに明らかに…!?

学園に戻ったミーアはグリーンムーン家の令嬢・エメラルダから夏の舟あそびに誘われる。護衛としてシオン、キースウッド、アベルの三人を引き連れてグリーンムーン家とつながりの深いガヌドス港湾国に向かうことに。一方、一度目の生での飢饉の際のガヌドス港湾国の動きに違和感を感じていたミーアは、ルードヴィッヒに相手のことを調べさせようとするが……。

一度目の生でミーアを真っ先に裏切ったとされるエメラルダと、その際に食料支援を断ったガヌドス港湾国。楽しいバケーションの裏でルードヴィッヒ達が動き、ティアムーン帝国没落を目論む恐ろしい陰謀の存在が見えてくる!!という展開がアツい。四大公爵家のどこかに潜むといわれている「敵」の影も少しずつ鮮明になってきた。

それはそれとしてアベルとミーアのイチャイチャっぷりがすごくてお前ら早く婚約しろ!!すぎる。そして、良くも悪くもミーアの親戚筋としかいいようがない、人がよくてポンコツで何故か最近距離を置かれがちなミーアにかまってほしくて仕方がないエメラルダの行動にニヤニヤしてしまった。彼女もなんだかんだでお貴族の習わしや家の事情に縛られているだけなんですよね。いやだって自分のメイドのこと、あれだけ下げる発言をしておきつつ名前ちゃんと覚えてるじゃん……毎度名前を呼びかけては言い直すところとか、可愛すぎるじゃん……これこのままだと絶対に近いうちに破裂する爆弾だなとおもうけど!!

実質前後編の前編みたいな終わり方なんだけど物語はここから第三部に突入。波乱の予感しかない終わり方で、続きがどうなるのかとても気になる。楽しかった!!

今回も書き下ろしがよかった

書籍版書き下ろしはミーアがまっさきに手を入れた新月地区の人々を巡る「現在」と、ミーアベルの回想によって描かれる「未来」のお話。ミーアの善行が巡り巡って孫娘のミーアベルが窮地に陥った際に心強い味方として返ってくるの、本当に胸が熱くなるし、それによって救われたミーアベルがおばあさまの教えに従って「現在」の新月地区の人々に少しでも気持ちを返したい、と思う展開がとても良かった。それにしてもルードヴィッヒの晩年、丸くなり過ぎでは?

電子書籍版特典SSはミーアの家の料理人・ムスタの一度目の生でのささやかな後悔と、現在の輝かしい栄光のお話。黄月トマトのシチューに纏わるエピソードは第一巻の一番最初でも印象的に描かれるだけに、彼の中にどんな葛藤があったのか、そしてその彼がどう変わっていったのかを知ることが出来たのはとても良かった。それにしてもこの話のムスタといい今回の本編でのエメラルダやルードヴィッヒといい、一度目の生での記憶を自覚はしていないないものの継承しているっぽい描写がとても気になる。ミーアが幼少期に「時を戻して」やり直していると思っていたけど、ひょっとして世界そのものがどこかの段階でやり直しているのか?


「ラノベの定義」について14年ぶりに考えたよ

昨晩Twitterで「ラノベの定議論スペース」というものがあり、そこでラノベの定義論について色々話されているのを聞いているうちに自分の考えをまとめたくなったのでつらつらと書きます。議論の内容はこちらの動画から聞くことができますので興味のある方は聞いてみると良いと思います。あくまで個人の認識の話をしているので、異論反論あると思いますがスルーしてほしいです。

最初に前置きしておくのですがラノベ定議論スペース自体は楽しく聞いておりましたし人の話を聞いて自分の考えをまとめ直すという意味ですごく有意義な時間だったと思います。私のラノベ定義論スペースに対する感想の総括は一言でいうとコレですよろしくお願いします。


私が考える「ラノベの定義」はこれです

個人的には定義って万人がぱっとみて共通の認識を共有出来るものじゃないと行けないと思っているので私はずっと基本的に「ライトノベルの定義はレーベル毎でやるべき」っていう考えです。こういう話をするとおおむねレーベル論者は思考停止している!!とかいわれるんですけど思考停止した状態でもラノベかそうじゃないか判断できるのが究極のゴールだと思っているので……フィーリングで十人十色の回答が出てきちゃうような定義は論外だと思っているので……。

まあそういう意味では究極的には「BOOK☆WALKERのラノベ・新文芸ジャンル基準でいいんじゃないの?」と思ってますし、今回この図を作る上でもめちゃくちゃ参考にしました。電子書籍サイトの区分はおそらく概ね出版社側の意向が強めに反映されてるであろうという目算もあります。



※便宜上「少年向け」「少女向け」というラベルを採用していますが、これは読者の性別を示すものではありません。ラベルだと思ってください。

少年向けラノベ

おそらく「ライトノベル」と言われて万人がまっさきに浮かべるの、電撃や富士見ファンタジア文庫、スニーカー文庫あたりの少年向けレーベルだとおもうので赤枠で囲いました。TRPGリプレイが大半を占めるの富士見ドラゴンブックのみ赤枠からは外しました。

黄緑色の所

ビズログ文庫アリスとオーバーラップはWEB小説に力を入れてるみたいなことを創刊時にいってませんでしたっけと思ったけどオーバーラップはソースが見当たらなかったから勘違いかもしれない。ビズログアリスは確か言ってたけどそのうちビズログ本家の方にWEB小説原作モノが大量に流れ込んでしまった。

定議論スペースでも言及されてたけど、やっぱ一番狭い「ライトノベル」の定義は文庫サイズじゃないかなと個人的に思っているので新文芸とラノベの間に分けました。

新文芸

ラノベを読んでる人からすると「ラノベの判型でかいやつ」、ラノベという枠に特にとらわれてない人だと「特にラノベだとは思ってない」みたいな印象。私事なんですが去年ラノベの二次創作系WEBオンリーを主催した時に転スラや盾の勇者はラノベですか?みたいな質問が結構多かったの興味深かった。私の中ではラノベだったので言うまでもないと思ってた……。

ひょっとして新文芸をめちゃくちゃ遡ると「ケータイ小説」文明にたどり着くのだろうか…と考えるのですがケータイ小説文化には無知なので詳しくはわからない。

少女小説・少女向けラノベ

私は少なくてもビーンズとビズログとアイリスはラノベだと思うんですけどコバルトとホワイトハートは人によって判定が違うなって印象。あとスペースでも言われてたけど「少女小説」という単語でのラノベとの差別化も若干感じますよね。うちのブログの感想記事のカテゴリは、できるだけ広めの言葉を使いたいという意味で「少女小説」を採用しています。感覚的には「少年漫画」「少女漫画」に近い。

よく話題にされるコバルト文庫はなんか良くも悪くもかつての「ヤングアダルト」って言われてた頃の生き方のまま存在しているみたいな……ホワイトハートは現在概ねBLレーベルって感じなんですけど昔はティーンズハートの少し大人向けの内容みたいな感じの少女小説も出ていたので完全なBLレーベルとは言えなくてこういう感じ。

ジャンルは初出レーベルに依存するよ派なので「赤川次郎・氷室冴子・新井素子・小野不由美あたりがラノベっぽくないからコバルトとホワイトハートはラノベじゃないみたい」なのは個人的には支持してないです。ただ、「昔のコバルト文庫」がラノベかどうかっていわれるとラノベではないかもなあ……って思う。昔のスニーカー文庫はだいたいラノベだと思ってる。

ライト文芸

殆ど読まないので言及できないんだけど多分こんな感じかなと思っている。表紙がイラスト主体で文庫サイズで挿絵がほぼないラノベと一般小説の間くらいにいそうなジャンル。

余談ですが定議論スペースで「ミミズクと夜の王」が売れなくてこっち(メディアワークス文庫)に切り離されたみたいな話に対して「ミミズク〜」は普通に売れてたと思うって話はスペース内で指摘されてましたが、なんなら直接の続編である「毒吐姫と星の石」、キャラは繋がってないけど流れを同じくする「MAMA」「雪蟷螂」という実質的な続編もありますって言う話も言及しておきたいです。

ノベルズ

西尾維新とか私は個人的にめちゃくちゃラノベだとおもってるんですが「講談社ノベルス」がラノベかといわれるとそれは絶対に違うよねと思うのでレーベル論の限界を感じた。

BL・TL・男性向けエロノベル(ジュブナイルポルノ)

BLはラノベじゃないと思うんだけどX文庫・コバルト文庫がBLを出してる関係でレーベル論者としては判定が悩ましくなる。TLはTLだとおもうんですがたまにマカロン文庫とか電子書籍ショップによってはラノベの所に並んでるときがあるような記憶。(eロマンスは記憶違いでした)

エロラノベ、オシリス文庫は一応自称は「官能小説」なんですけどレーベル公認のカレー沢薫先生のレビュー連載ではアダルトライトノベルって言ってるのでちょっとラノベにまざりたいみたいな色目を感じており。余談ですが私は「ちょっとエッチなライトノベル」っていいながら二次元ドリームノベルズばりの濃厚なエロ小説を出してたキルタイムさんの「あとみっく文庫」さんのこといまだに忘れられません。

美少女文庫さんはなんていうか「ジャンル:美少女文庫」さんだと思うんですが、最近はめちゃくちゃラノベ読者を引っ張りたいという強い意思を感じる。近辺のラインナップを見ると「さかきいちろう」先生をはじめ見たことあるお名前がいっぱいならんでるけど、どのくらいラノベ読みが手を出したのかは正直きになりなる。

ノベライズについて

ラノベスペースの中でノベライズの定義論がありましたが私はレーベル帰属派なので各作品自体は各レーベルの居住地で判断したい。ただ、コミケジャンルコードに魂を惹かれた人間でもあるので作品そのものは原作本体に依存するとも思っています。たとえば「閃光のハサウェイ」だと、「宇宙世紀ガンダムの1作品としての閃光のハサウェイはアニメジャンル」「それはそれとして閃光のハサウェイ単体はスニーカー文庫だからライトノベル」みたいな……。

あと、コミケジャンルコード論でいくと「京アニエスマ文庫のアニメ化作品」なんかはアニメと認識してる人が多い印象。エスマ文庫割と特殊な立ち位置だと思うので詳しい人の見解をいつかきいてみたい。

ノベライズ主体のレーベル、集英社少女漫画作品のノベライズをやってた「コバルト文庫ピンキー」とか乙女ゲーム・女子受けの良いボカロ曲のノベライズが多めの「ビーズログ文庫アリス」とかオリジナル作品と並行してなのはさんのノベライズとかをやってた「メガミ文庫」とか全年齢向け美少女ゲームノベライズをやってた「なごみ文庫」とかいろいろありましたが概ね今息してないので難しいんだろうなあと思っている。

14年前に書いた定議論の記事↓
https://urara.tank.jp/log/2007/08/240141650


アルバート家の令嬢は没落をご所望です2

さき
 

表向きは才色兼備の大貴族の令嬢、本性はコロッケ好きで変わり者のメアリ・アルバート。従者のアディは唯一の理解者で、いつも一緒だった。実はアディはメアリにずっと片想いしているけれど、メアリはまったく気づかない。そんな中、メアリがアディを置いて留学することになって!?「どうか俺だけを、一人の男として隣に置いてください」長年のアディの想いは実るか否か!?爆笑胸キュンラブコメ、見逃し厳禁の第二巻!!

ゲームの通りに没落を目指していたはずなのに、なぜか没落フラグを回避してしまったメアリ。それでもいつか北の大地で渡り鳥丼屋を開く日を夢見て、経営学を学ぶため隣国に留学することに。従者・アディと離れ、一人でやってきた大学で彼女を待っていたのは乙女ゲーム続編のヒロイン・悪役令嬢「達」で…!?

主人公無関係の所で繰り広げられる転生令嬢達の闘い

乙女ゲーム続編のヒロイン・リリアンヌと彼女のライバルにして没落予定の悪役令嬢・カリーナ。そして記憶を持たぬその他のライバル令嬢達。前世の記憶を持つ二人がメアリの横で繰り広げる闘いが地味に熱い。なぜリリアンヌは無理をしてまで難易度の高い「逆ハーレムエンド」を目指すのか。そして彼女と対立するような姿勢を見せながらどこか攻めが甘いカリーナの思惑は…。割と正統派に悪役令嬢転生モノやってるし、終盤はなかなか痛快などんでん返しが待ってるし……で楽しかったです。まあこの辺全くメインじゃないんですけどね!!

本編的にはメアリになつくライバル令嬢のひとり・気の弱い少女パルフェットとメアリの友情の萌芽がメイン。アリシアとは真逆の、メアリが「苦手なタイプ」である彼女が少しずつ精神的に成長していく姿と、次第に彼女をかけがえのない友人と思うようになるメアリの心の動きが印象的でした。悪役令嬢達の戦いは本当にメアリの関知しない、ストーリーの裏で話が進んでいて笑ってしまった。潔いな!!

急転直下なイチャイチャ展開にニヤニヤが止まらない!

アディ不在&乙女ゲーム続編のヒロイン達に囲まれた大学生活。そこかしこで無意識にアディの姿を探してしまうメアリの姿にニヤニヤしていたら…軽い口約束を発端に言質を取った周囲が一気に外堀を埋めていって、結婚までの展開が早いマジ早い。すったもんだでアディからの気持ちを聞かされ、自らの気持ちをようやく自覚したメアリがこれまでとはうってかわってお花畑状態でノロケ出すのが可愛いすぎるし、これまで何を言っても暖簾に腕押しだったアディが色ボケ状態のメアリに振り回されるのはなんかもう一周回って面白すぎる。アディは今回本当に強く生きてほしい。

アルバート家ほどの貴族のご令嬢が一介の従者に過ぎないアディと何の障害もなくくっつくのには正直ちょっぴり違和感があるんですけど、よく考えれば現在のアルバート家はこれ以上を望むまでもなく大安泰、完全なパワーバランス取れてしまってるわけで。ある意味「没落を目指していた」頃のメアリがここに辿り着くための種を蒔いていたとも言えるんですよね。「メアリがパトリックと結婚しなかったからこそ生まれた益があった」という考え方は実に貴族的で良いなあと思う。

パトリックがいい仕事した…(全方位に)

1巻からメアリとパトリックの「恋愛には至らなかったけど良い関係」、というのがとても好きだったんですけど、今回の二人の関係が本当に好きで好きで……。おそらく同じ視点で、同じ考えを共有できる随一の存在。でもお互いに選んだのは別々の人で、それを後悔するつもりはない。笑顔で「アリシアとアディがいなければ結婚していたと思う」と言い合う場面が、もうひたすらに好きすぎて……。

更に今回は、前巻ではあまり絡みのなかった気がするアディとパトリックの関係がとても美味しかったです。自称「アディ応援団長」を名乗り出したときには噴いてしまったけど、それに違わぬ活躍ぶりが眩しすぎる。この人実はアディの事大好きすぎない?そして式当日はすっかりアディを弄って楽しむポジション代表になってるの面白すぎました。

それにしても、結果論だけど今回は殆どの事件がパトリックを発端にして発生してたわけで、結構な人数が破滅してることを踏まえると色んな意味でこの次期王子が魔性すぎるな……。


アルバート家の令嬢は没落をご所望です

さき
 

大貴族の令嬢メアリは思い出す。ここが前世でプレイしていた乙女ゲームの世界で、自分はヒロインの恋を邪魔する悪役令嬢だということを……だったら目指せ没落!とはりきるけれど、なぜかヒロインになつかれて!?

アルバート家の令嬢メアリはある日突然前世の記憶を思い出した。しかもここは乙女ゲームの世界で、悪役令嬢である自分の失敗によって実家は没落し、メアリは僻地に追放されることになるということも。「それなら派手に没落してやるわ!」とゲームのヒロイン・アリシアにつっかかりはじめるが、いつも失敗してしまい…。

破天荒だが思慮深くて気高い主人公がめちゃくちゃかっこいい!
主人公のメアリが思い出した「前世の記憶」を元に乙女ゲームの展開をなぞりながら実家を没落させようとするけど、ヒロインから嫌われるどころかどんどん好感度が上がっていってしまうのがあまりにも楽しいラブコメ。とにかく他人が不幸になるようなことを望まないメアリの行動は原作通りの悪……どころか完全にただのいい人だし、悪役になれないことを自覚しながらもひたすら没落道を突っ走ろうとする姿が微笑ましい。

一見破天荒な残念キャラのように見える彼女だけど、実際は貴族としての本当の気高さと大局を見極めることが出来る視点を持っている。貴族らしくないといわれる行動も家族や友人を慮った結果であることが多いし、没落したいという願いも彼女なりに実家のことを考えた上でそれが家のためになると判断しての行動であったりする。マイペースでありながらも自己の信念に基づいて行動する彼女の芯の強さが印象的でとにかくかっこいよかった。ノブレス・オブリージュの化身か。

二重に展開される、身分違いの恋に胸キュン。
主人であるメアリに不遜な態度を取りながらも影に日向に支える従者アディとの関係性も良かった!お互いに遠慮のないテンポの良い主従の掛け合いを見ているだけでもニヤニヤしちゃうんだけど、そんなアディが誰よりもメアリのことを大切に思い、身分違いの報われぬ恋心を抱いているというのがたまらない。そんな彼が庶民出のアリシアと生徒会長のパトリックの身分違いの恋にやたらと入れ込んでしまうのには甘酸っぱいものを感じてしまう。

アディのいない未来を想像した途端、いつもの自信満々な態度はどこへやら不安にかられてしまうメアリの姿が最高に可愛いし、本当の思いを伝えることが出来ないアディが「どんなことがあっても一緒にいる」と言い続ける姿に胸が熱くなりました。

「ゲーム」の記憶と現実世界との関係は…
ゲームでの「イベント」をなぞりつつ、しかして微妙に全く同じというわけではない展開が印象的。

何度真っ直ぐにしようとしても戻ってしまうメアリの縦ロール、経緯が多少違っていても絶対に発生するゲームと同じシチュエーションのイベントなど、世界に強制力が働いているような気がして。それでいて本来のゲームとは違う部分もかなり多いというか、まずメアリの人格が全くの別人なわけですが……(前世の記憶は一切元の人格に影響を及ぼしていないため)。

このへんは1巻では明かされなかったけど、今後明かされていくのかな。楽しみです。


Chaos;Child -Children’s Revive-

   
原作
MAGES./Chiyo st.inc 

2015年秋。東京・渋谷を震撼させていた連続猟奇殺人事件「ニュージェネレーションの狂気の再来」は、宮代拓留という少年の逮捕をもって収束したが、様々な後遺症を孕みつつ渋谷の街と人々に色濃い影を落とすこととなった。山添うき。香月華。有村雛絵。久野里澪。南沢泉理。尾上世莉架。事件の最中を拓留と共に過ごした彼女たちは、事件から半年が過ぎた今、何を思い、そして何を見出したのか―。衝撃の展開と結末で話題をよんだ名作ゲーム『Chaos;Child』の「その後」を、原作シナリオライター・梅原英司が描きだす完全新作がここに登場! (「BOOK」データベースより)

 夏に公開される劇場版アニメ「SILENT SKY」で明かされる真実を踏まえた物語となっているため、アニメ版のみを視聴したかたはご注意ください(いくつか重大なネタバレを踏みます)

 シナリオライター本人が描く「カオスチャイルド」の後日談。ゲーム版の最終エンディングである「SILENT SKY」は宮代拓留と尾上世莉架ふたりの物語として描かれていて、他の事に関しては簡潔にしか語られないのですが、これは取り残された彼女たちが新しい一歩を踏み出すまでの物語です。

 これまで在った日常は過去のものとなり、彼女たちは事件の真相を胸の内に秘めたまま、世間との軋轢や、様々なことに直面していかなくてはならない。周囲に理解してもらえなかったり、ひとりあるきする事件や犯人に関する誤解、真相を伝えられないもどかしさが時にしんどくもあるんだけど、それでも自分で一生懸命考えて、自分の足で歩き出そうとする姿が胸に熱い。

 特に有村雛絵の立ち位置がめちゃくちゃ好きだったんですが、今まで否応なしに相手の本心を読んでしまっていた彼女がその能力を失い、戸惑いながらも体当たりで少しずつ人間関係を再構築していく姿や、拓留へ感じていた名前のつけられない感情に戸惑う場面とか、何もかもの憂さを吹き飛ばすような最後の演説とか、本当に可愛かった。親友の華が新聞部以外の友達を作る事にヤキモチを焼きながらも影に日向に応援したり、自らが思考の迷路にはまり込んだその時に、自分が助けた華を通して自分自身の言葉に助けられるの、本当に良い。

 というか、その際に雛絵が“偉人の言葉”として呟いた自分自身の言葉こそが、この物語の全てを貫くテーマだったのかなあと。これまで以上にお互いを大切に想い合いながら、だからこそ離れていく彼女たちの姿が印象的でした。

「良かったに決まってるじゃん。かの偉人は言いました」
 切り出したのは雛絵だった。いつもの飄々とした口調だった。
「『大切だからこそ、しかし我々は離れなければならない。大切なものに甘えて、その大切さをまさに自分たちの手で貶めてしまう前に』。私たちを誰だと思っていやがる。私たちが共有している経験の強さを舐めるなよ」


CHAOS;CHILD とある情弱の記録

   
原作
5pb.×ニトロプラス

「ニュージェネレーションの狂気」と呼ばれた、連続猟奇殺人事件から6年。その事件をなぞるように、6年前と同じ日に連続して人が死にはじめた。1人は自分の腕を食べ、1人は自分の腹を裂き、1人は自分の首をねじ切って…。高校の新聞部に所属する宮代拓留は当初、興味半分で事件を追いはじめる。しかし、取材を進めるうち、いつのまにか自分に危険が迫っていることに気づくが…。大人気ADVゲーム「CHAOS;CHILD」初の公式ノベライズがついに登場!! (「BOOK」データベースより)

 興味本位から渋谷で起きている連続猟奇殺人事件の捜査をしていた碧朋学園新聞部の面々。部長の宮代拓留はこれまでの事件が、6年前に渋谷で発生した「ニュージェネレーションの狂気」と呼ばれる連続猟奇殺人事件の日付と一致することに気づく。第三の事件も予想通りの日時で発生し、偶然ながら殺人現場に潜入することに成功するが、それ以来、事件は彼らの周囲で起きるようになっていって……。

 ヒロインのひとり・来栖乃々の視点から語られるカオスチャイルドの物語。主人公である拓留の知らないところで事件に深く関係する人物であった「乃々」と、第一の事件からの「被害者」たちの視点から描かれる事件の真相はゲーム内でも明かされていない情報がたくさんあって面白い。死んでしまう人間からの視点も含まれるので色々としんどいところはあるんですが。

 第六の事件の当事者の話はもう無条件でえぐられるんですけど、第三の事件「回転DEAD」の被害者・柿田と有村の馴れ初め話もかなりしんどい。兄の死、家族の裏切り、周囲の人間の「嘘」を突きつけられる日常に参っていた彼女が兄の友人であり、腹を割って話せる柿田との出会いにどれだけ救われたのかと思うと……あと、第四の事件の顛末なんかはトゥルーエンドを読んだ後に読み直すとなんとも言えない気持ちになる。

 ゲームのトゥルーエンドルートでの展開を、乃々の視点から読めるのは正直とても嬉しかった。最終的には蚊帳の外になってしまう彼女たちが、物語の裏で彼らを支えた人々が、「彼」の帰りを待ちわびている姿を見れただけでも胸が熱くなるし。それにしてもシリーズの垣根超えて色々な事情を知ってそうなゲンさん、この人一体何者なんだよ……。

 ただ、ゲーム本編で語られる部分(=主人公である宮代拓留の視点)については事のあらまししか語られない上、その割には事件の真犯人まで含めてがっつり核心部分をネタバレされる(というか知っていること前提で物語が進む)ので原作ゲームをプレイしていない方はそちらを先にやったほうが良いかも。

 良くも悪くも、ゲーム本編と「対」となる物語でした。



読了記録まとめ[2011年2月分]

2月のラノベ読了冊数は10冊でした。久しぶりに2ケタ乗せたよ!積読もちょっと崩したよ!やったねたえちゃん!
(でもファミ通文庫とガガガ文庫が残ってるよ!)

マンガは再読祭をしたり何故か突然BLマンガ祭をしたりと様々な意味でバラエティ豊かでした。
商業BLは年に1回くらいの不定期で「読もうかな周期」が来ます。
そういう時期がほんとにあります。不思議です。

オススメされたもの2つ+表紙絵見て気になったものの3作品を読んだのですがどれも物凄く面白かったです!もどかしい関係はよいもの。
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生徒会の水際 碧陽学園生徒会黙示録4

 

私立碧陽学園生徒会―そこは、美少女四人が集う楽園だが、世界はここだけではなかった!個性的な面々が揃う椎名真冬の1年C組。そして生徒会メンバー唯一の男性である杉崎鍵が、楽園のチケット「優良枠」を手にする前の1年F組。ここにきてまさかの新ヒロインも登場。 (「BOOK」データベースより)

本編完結目前にきて新キャラ大量追加!な短編シリーズ4作目。杉崎のライバルな女子が登場したり、おっとり系後輩女子が登場したり、杉崎にちょっとヤバいくらい心酔するクール系後輩男子が満を持して杉崎戦線に加わったりします(多少誇張表現)秋峰君が理想の生意気系年下攻めで困ります。

とりあえず適当にめくって最初の挿絵で噴き出したわけですが、まさか、某他社ラノベ作品の有名二次創作ネタ(涼宮ハル●コの憂鬱←ネタバレ)が普通に出てくるとは思わなかった……。

本編のぐだぐだな面白さもさることながら、杉崎の高校1年時代を描いた短編「すぎさきメモリアル」の破壊力がやばい。入学早々挫折を味わい、どん底まで落ち込んだ杉崎鍵が桜野くりむと出会ってギャルゲーを勧められるところから始まり、少しずつ成長して「優良枠」を得るまでに至るお話なんだけど、生徒会の4人だけでなく、ライバルやクラスメイト達にある時は突き放され、そしてある時は支え、支えられたからこそ現在の「杉崎鍵」があると思うと胸が熱くなりました。前のめりで不安定で危なっかしい姿も、これが現在の杉崎の礎となったのだと思うとなんだか感慨深かったです。

そしてさりげなく深夏と同じクラスになる前の杉崎と宇宙守の関係がヤバいんです。本編の二人の関係は仲は良いけどいがみ合いが基本な「悪友」ポジションだけど、1年時代は割と「親友」的というか、かなりストレートに好意的な感情をのぞかせるのがとてもオイシイ。この辺は真冬ちゃんと小1日話し合いたいです。あとがきが!あとがきが!!真冬ちゃんのカップリング嗜好が自分すぎてほんとこまる……。

あと、「盗聴知弦四変化」の知弦さんがデレすぎでどうしようかわいすぎる。普段ドSでクールな知弦さんが杉崎の挙動挙動にどぎまぎしてワタワタする姿にニヤニヤが止まりませんでした。これはひどいギャップ萌え攻撃!!

「あとがき」で杉崎が生徒会の18禁エロゲ化を希望しながらジンキの名前を挙げてるのに盛大に吹きだした。でもこれ、オリジナル主人公に全ヒロイン持ってかれるんだけど杉崎はそれでいいの…?


B0040EIQEYJINKI EXTEND Re:VISION 初回版ギガ 2010-11-26

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読書遍歴を振り返る流れに便乗する その1(小学時代編)

あこやさんちの「読書遍歴を振り返ってみる」エントリを読んで、色々ホイホイされたので便乗してみます。
ラノベ関係の読書遍歴は以前書いた「懐かしのラノベを語ってみる」エントリで殆ど書いてしまったので、今回は基本的に「ラノベ以外」で。

うちは小さい頃から割りと、親が両方とも本を読ませよう本を読ませようと必死になってる人達だったので何かと本が家にある家庭でした。幼稚園時代からとりあえず本棚だけは完備されてたような記憶が……

小学生時代その1:絵本関係

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おおむら ゆりこ
福音館書店 1967-01-20

ぐりとぐらが作る巨大カステラ私も食べたいです(正座)
それはいいけど、読み直してみるとこのネズミたち、結構腹黒……ゲフンゲフン

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岩崎 ちひろ
岩崎書店 1972-01

「本を読んで泣いた」の初体験だった気がする絵本。
自分の事を話さない女の子が、人を助けて死んでいくお話。
うちは家族そろっていわさきちひろが好きだったようで、結構いわさきさん挿絵の絵本が多かった。そして現在手元に残ってる絵本もいわさき率激高だった。

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Dick Bruna
福音館書店 2000

「ミッフィーちゃん」は私も邪道だと思いますが、長いことうさこちゃんの名前を「ブルーナ」だと勘違いしていた私には何も言えない。それ作者の名前だから!

小学生時代その2:日本の児童文学編

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杉浦 範茂
講談社 1987-05

まだ自宅にある児童文学その1。
岐阜から東京に迷い込んでしまった飼い猫が野良猫の「イッパイアッテナ」と出会う話。

これもよかったけど続編の「ルドルフたびだちひとりだち」も好きでした。
正直仲間になったブッチーが可愛すぎると思うんだぜ…

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ヒロナガ シンイチ
講談社 1999-11-15

斉藤洋というとこっちもはずせません。しかし内容覚えてません。
はつかねずみな宇宙人と小学生の男の子が色々するお話。

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理論社 1980-03

珍しい白猿の子供たちが、中国から両親の待つインドに向けて旅するお話。
なんか全体的に「●●に向けて旅するお話」が好きだった。ルドルフとかもそうだし…

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瀬川 康男
理論社 2000-04

ホッキョクグマの子供たちが北極の動物たちと仲良くなったり遭難したりする話。セイウチの子供と仲良くなったら、母親がセイウチを……なシーンが超衝撃的だった。大自然の摂理な感じ。
脳内類似品として「ながいながいペンギンの話」なんかも。

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ひらい たかこ
講談社 1999-04-15

柏葉葉子作品は色々好きな作品があるけど、一番印象に残ってるのはこれ。
日常世界から異世界に迷い込んじゃう系の話も大好きでしたねー。「霧の向こうの不思議な町」「地下室からの不思議な旅」とか。子供の頃は、電車に乗るといつ電車が異世界に繋がってしまうのかとワクワクしてました。
中学生以降は、電車に乗るたびいつ電車が止まらなくなって惨劇の幕があけてしまうのかガクガクしてました(※最終電車的な意味で)

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前川 かずお
ポプラ社 1978-02

小学生の読む児童文学の定番だと信じている。

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三木 由記子
講談社 1980-11-10

小学生の読む児童文学の定番だと信じているその2。特に印象に残ってるのは「十二ヶ月」シリーズ、「月のたまご」シリーズ、「黒の銀行」に「水色の魔界」あたり。基本ほのぼのした作風なんだけど、十二ヶ月とか水色の魔界とか月のたまごとか、時々めっちゃくちゃダークだよね…。

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永井 郁子
あかね書房 1987-12

作りもしないのに料理関係の本を見てにこにこする子供でした。
わかったさんのおかげで長らくクッキーつくりにハマったけど我が家にはオーブンがなかったのでそもそも全く上手く焼けなかったという罠が……


小学生時代その3:海外の児童文学編

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E.H.シェパード
岩波書店 2000-06

ディズニー映画の「プーさん」が好きすぎて、原作も手を出して死ぬほど読み返した。
今では「●ィズニーとか邪道です、シェパードの挿絵最高です」と叫ぶような原作信者になりました。

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Tove Jansson
講談社 1979-08

ムーミンシリーズは殆ど読みましたが、一番読み返したのはこれだったような…
洪水で離れ離れになったムーミンファミリーを呼び戻すため、ムーミンパパ達がなぜか「演劇」をする話。

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井伏 鱒二
岩波書店 2000-06

amazonに書影あるのは井伏鱒二版だけど、手元にあるのは前田三恵子さん翻訳版。
動物語を喋れるドリトル先生と、ドリトル先生の家の動物たちのお話。

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久米 元一
あかね書房 1990-04

確か小学生向けアニメ上映会で見て、そこの売店で原作もゲットしたという思い出。
白いオオカミと、その飼い主(?)の少年が狼の保護地域を目指して逃避行するお話。なんか全体的に食べ物の描写がおいしそうだった記憶が。

映画版のグラフィックは、どう見ても主人公がウッソ(Vガンダム)

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Michael Ende
岩波書店 1976-09

大人になってから、時間どろぼうさんは本当にいるんだ!!って悟った。


長くなったので、中学校以降の読書遍歴は別エントリに……