[著]土橋 真二郎 [絵]白身魚
2年4組の生徒たちが目を醒ますと、おかしな場所に閉じ込められていた。“ソフィア”を名乗る人物は、地球は核戦争により滅亡して彼らは優秀な人類なので宇宙船に保護されている…と説明する。上から物を言っているソフィアの言葉に反感を覚えた紀之は彼女の庇護を拒絶し、逃げるように一度出たら戻れない“扉の外”へと飛び出すが…
※この感想には、作品に対する否定的な表現・攻撃的な文章が多数含まれております。2年4組の生徒たちが目を醒ますと、おかしな場所に閉じ込められていた。“ソフィア”を名乗る人物は、地球は核戦争により滅亡して彼らは優秀な人類なので宇宙船に保護されている…と説明する。上から物を言っているソフィアの言葉に反感を覚えた紀之は彼女の庇護を拒絶し、逃げるように一度出たら戻れない“扉の外”へと飛び出すが…
申し訳ありませんが、苦手な方は御注意ください。
2008/05/19 … コメント欄よりご指摘を受けて、注意書きを追加しました。
えーっと……これ、なんて劣化バトロワですか?
修学旅行に行く筈がクラスごと拉致され、おかしなルールを押し付けられて生活をしていくうちに最終的にはクラス対抗の生存競争をする羽目になる…という、粗筋だけを取ればまさにSF仕立てのバトロワ。考えればまさに“生存競争”と思しき事をしているのだけど、そのルールがまんまテレビゲームの領域で、お互いが生きた生徒であることを知らされないままゲームが進行する為まるで現実感が無い。しかし、同時に過酷な生存競争があるわけでもないのに、異常な状況に置かれて少しずつおかしくなっていく生徒たちの描写は空恐ろしいものがありました。
ただ正直な所、下手をすれば自らの生存問題にも関わるだろうに、反抗期の子供のように「見下されている」という言葉を免罪符に、自らの周囲に起こった全ての事象を拒絶しようとした主人公にまるで共感がもてません。
きっと作者さんの中では存在したであろう紀之がソフィアの言葉を衝動的に拒否させるような「何か」が、それっぽい伏線は見て取れるものの読者にはちっとも伝わってきません。作中の話を総合すると「きっと過保護で痛い親に育てられた、反抗期真っ只中のお子様なんだなあ」という程度。(蒼井さんの話から総合すると、正直反抗期の少年少女達に良くある悩みみたいな感じで、そんなに深刻な家庭環境の不和があるとは思えません)。
特に紀之が4組を出奔するまでが本気でキツイです。自分の無思慮な行動をまるで棚に上げてクラスメイトにばかり責任をおしつけ、ソフィアの保護に入らない自分は偉いんだと言わんばかりの紀之の甘さと傲慢さにまず嫌悪感。(自分で拒絶したのに、食べ物は結局殆どクラスメイトの配給を分けてもらってて、それを当たり前の事だと考えているとか、甘すぎ)そしてそれ以上に幼馴染の亜美の行動に生理的嫌悪感を感じてしまうのが、どうしても抑えられなかった。
そしてこの作品で一番(私的に)駄目だったのが、結局特に事態が良い方向に向かうわけでもなく、結局ぐだぐだのまま終了する所。読み終わった直後
「落ちてない、ちっとも落ちてないヨー!!」
と呟いたのは言うまでもありません。まるでジャンプの10週打ち切り漫画のようなラストに呆然としたまま、作者の電波な後書きを読む羽目になって非常に鬱でした。
クラスメイト達が少しずつ狂気に感染していく過程は非常に良かったと思うのですが、やはりこういう作品だったらきちんと全てを解明して黒幕を倒すなりなんな利して欲しい。甘ちゃんだった主人公が段々成長して…という展開だったら大絶賛だったんですが。あと和泉と蒼井のキャラは凄く良かったですね。この2人以外共感できるキャラがてんでいないのもどうかと思うですけど…。
事態が何も解決しないまま主人公とその周囲の一部のみが幸せになって、それでも私達はこの世界にいるんだ!!と、どっかのネットゲーオチRPGのエンディングみたいなまとめかたされても正直困ります。ソフィアの設定にしろ、黒幕の話にしろ、平凡な高校生を学年ごと誘拐して(?)ゲームを行わせた目的にしろ、作者の脳内で完結している設定が多すぎます。正直何も明らかにしないまま終るので、猛烈に後味が悪い。
こういうのを好む方もいらっしゃるのだとは思いますが…とりあえず私には合わない作品でした。私はもっと色々な謎とかが解き明かされたり、成長した主人公が前向きになって皆を救うために頑張る話とかが読みたかったんだ!!!鬱エンドにするにしてももっとやり方ってもんがあるだろう!!!
粗筋を読んだ限り、今回の新人作品の中では一番期待してただけに、物凄く残念です。
もうツッコミはじめると永遠に文句をつけまくってしまいそうなのでこの辺で終了しますが、とりあえず1・4・6組以外のクラスのみんなの安否がとても、気になり、ます。
追記。
ライトノベル名言図書館さんの感想を読んで知ったのですが、この作品の応募時のタイトルは「もしも人工知能が世界を支配していた場合のシミュレーションケース1」というのですね。
なんかこのタイトルだったらこういう終わり方でも酷く納得がいったような気がします。あくまで「シミュレーションケース」であり、現実ではないわけだから、人工知能の正体はなんだとか、黒幕を打倒して元の世界に戻るなんていうのはそもそも些細な事なわけで…このタイトル1つで最も腑に落ちなかった「なぜ最後が謎が謎のままで、色々な方向でオチてないのか」という理由がいともあっさりと解決してしまいます。
なんていうか、タイトルって大事だなあと思った今日この頃でした。
なんで表題変えちゃったんでしょうね。副題にするだけでも大分印象は違ったと思うのですが…
コメント
[書評][土橋真ニ郎][扉の外][分野不明][シリアス][★★★★★]扉の外
扉の外 作者: 土橋真二郎 出版社/メーカー: メディアワークス メディア: 文庫 電撃小説大賞<金賞>だそうですが、さもありなん、という感じです。というかここまで書いても金賞までしか取れないか、って気分ですね。敷居が今やもの凄く高いです電撃文庫。 というか<大賞>
>えーっと……これ、なんて劣化バトロワですか?
私は海外産の有名なホラー(サスペンス?)作品である「CUBE」という作品を思い出しました。
ご存知ですか? 全く違う作品なので、もしご覧になられた事が無ければ一度どうでしょうか?
なんとなく「CUBE」という作品を参考にした様に思っていました。
「CUBE」というのは読んだことが無いですねー。というか、海外作品自体が殆ど知識が無く^^;
映画版のレビューを検索してみたのですが確かにバトロワよりもこちらに似てる感じですね。ちょっと興味がわきました。
ただ、この作品で一番受け入れられなかった部分はやはり明確な謎が定義されているのにその辺が完全に手付かずで終了してしまったことのように思えるのでやはりイライラしてしまいそうです…orz
そしていつもトラックバックありがとうございます!うちとは正反対の感想で、興味深く読ませていただきました?。
書評/扉の外
☆☆☆+ 扉の外 著者/土橋真二郎 イラスト/白身魚 電撃文庫/メディアワークス
タイトル変更理由の考察。「扉の外」というタイトルだと前向きさと青春小説っぽさを感じられますが、原題だとどう考えても狭いごく一部の層にしか売れそうにないからじゃないでしょうか(苦笑)
初めましてー。
私も極楽トンボさんと同意見ですね。
個人的には「もしも人工知能が?」の方がしっくりくるんですが、それじゃ絶対売れなさそうです(笑)
扉の外
扉の外posted with 簡単リンクくん at 2007. 2.14土橋 真二郎〔著〕メディアワークス (2007.2)通常24時間以内に発送します。オンライン書店ビーケーワンで詳細を見る 開始数ページで主人公にどうしようもない嫌悪感を抱きました。 で、それが最後まで解消されること無く、差..
どもども?。
原題が表紙に書かれていたら文字のレイアウト、どうなったんでしょうね(w)それはそれで見たかったような気もしますが。
「扉の外」以外にタイトルが無いもんか? とか考えてみましたが、うーん、うーん、うーん・・・なかなか思いつきませんねえ。きっと編集者も作者も新タイトルで悩んだと思いますよ。
「若者の飼育箱」とか「箱庭での戦争」とか、うーん、違う気がしますねえ。
コメントありがとうございますー。
あー、変更前のタイトルのままだと私も手に取ったかどうかは微妙かもしれません。
個人的にはタイトルはそのまま、応募時のタイトルを副題かなにかの形で残せばよかったのでは…と思います。タイトルとしての魅力は確かに弱いのですが、作品の性質を理解させるのにはすごく的確な言葉だったと思うんですよね。あと確かにその文字数だと表紙のレイアウトが難しそうな…
それにしても本当にこの作品、評価が真っ二つみたいですね(笑)
扉の外 感想
扉の外土橋 真二郎 メディアワークス
修学旅行に行くはずだった高校生・千葉紀之が目を覚ましたとき、そこは密室で、しかもクラス全員が同じ場所に閉じこめられていた。訳もわからず呆然とする一行の前に、“人工知能ソダ
扉の外
扉の外土橋 真二郎 (2007/02)メディアワークスこの商品の詳細を見る
修学旅行に行くはずだった高校生・千葉紀之が目を覚ましたとき、そこは密室で、しかもクラス全員が同じ場所に閉じこめられていた。
ソフィアに示される
[感想]扉の外
修学旅行の途中でいつの間にか気を失ってしまい、覚醒した時にはクラスメイト全員が密室に拉致監禁されていた——。
驚愕の事態に皆が混乱しかける中、人工知能ソフィアと名乗る者の音声が流れます。
ソフィアはまるで生
扉の外/土橋 真二郎
土橋 真二郎
扉の外
“重く、暗い”部分の思春期、或いは青春を満喫しているなぁと思いました。
読んでてイラついたのは文章の所為ではなく、絶対に主人公の所為です(笑)
冒頭の引き込み方も世界の破滅もとりあえずおいといて、
結構なページを使って、ヒトの感情で
そこまで言わなくてもいいんじゃないかな?
たとえ感じ方が人それぞれだろうと
言いすぎだ。
言動に注意しろカス
>のののさん、落ちさん
いらっしゃいませ、コメントありがとうございます。
ご指摘を受けて自分の感想を読み直してみたのですが、確かにちょっと自分でもあまり物を知らずに書いたらしき感想、作品に対する攻撃的な表現を多く感じました。私の未熟な文章の所為でお二人には大変不快な思いをさせてしまいましたようで、申し訳ありません。
1年半も前の感想なので現在はこのシリーズや作者に対してかなり考えが変わってきており、文章の改稿を行うと全く違う内容となってしまいます関係上、今回の記事の書きなおしなどを行うことはちょっと出来ないのですが、このたび戴いたご指摘を重く受け止め、今後の感想に生かしていきたいと思います。この度は貴重なご指摘ありがとうございました。
確かにあとがきは電波だった。
私はむしろ、自分がこの本を読んで感じたことを的確に表現してもらった気がして、この文章を読んで爽快な気分になりました。
そんな人もいる、ということを伝えたくてコメントさせてもらいます。
>さむさん
いらっしゃいませ、コメントありがとうございます。
あとがき、本編が最初から最後までシリアスだった事もあって相乗効果でギャップが激しく感じましたね。いろいろとすごかったです。
>Wizeさん
いらっしゃいませ、コメントありがとうございます。
この感想は読み終わった直後に、感情に任せて書いたのでちょっと自分でも言葉を選べてない部分があるなあとは自省しているのですが…そういって戴けると励みになります。
否定的な感想はどうしても作品を気に入った人から見ると不快に感じられる事が多くなってしまうので、書き方が難しいですね。