八王子姫 | 今日もだらだら、読書日記。

八王子姫

[著]海野 幸  [絵]ユキムラ

バリバリのキャリアウーマンで女性らしさのカケラも無い幸彦の姉はロリータ服を縫製して弟に着せるという趣味の持ち主。姉に頭の上がらない幸彦は嫌々ながらそれに付き合わされていたのだが、その格好で姉と外出した際に偶然バイト先で苦手に思っている社員・樋崎と遭遇してしまう。しかも彼は、幸彦が真実を明かせないうちに女姿の樋崎に告白してくる。情にほだされ、口の利けない少女“ユキ”として樋崎と付き合うことになってしまうが…
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なんか色々複雑な成り行きで読むことになってしまったよ!数年ぶりに手を出しました商業BL小説……ていうかぶっちゃけると今まで少年受関連しか読んだことありませんマジすいません。姉の趣味で女装させられた主人公が正体を隠したままバイト先のカタブツ男社員と付き合ううちに相手の知られざる面が色々見えてきて……というお話と、二人が相思相愛になってから夏祭りに繰り出すお話の2本立て。なんかこう、樋崎のクサイ台詞にもいちいち噴出していたのですが、なによりBLBLした挿絵が猛烈に恥ずかしくて……なんか色々とムズ痒いです!いらっしゃいませ未知の世界!!(ガクブル)

野暮ったくていつも不機嫌そうな樋崎がユキ(女装した幸彦)と出会ってどんどんあかぬけて行き、そんな姿にどんどんほだされていってしまう幸彦。幸彦の正体がバレる前のハラハラ感とどんどん間違った方向に成長していく樋崎の関係も楽しかったですが、正体がバレた後に樋崎が変態行為をカミングアウトしはじめた場面では爆笑してしまった。あんた普通にストーカーで訴えられても文句言えないよ!!

主人公が女装するきっかけとかは上手く本編の中で理由付けがされていて、BL小説にありがちな「ンな無茶なw」な設定にはなってなかったと思う。あえて言うと、樋崎氏の行動&台詞がいちいち「ンな無茶なwwww」でしたが。いやもうこのヒト、寒すぎて笑える。ちなみに一部で話題になったタイトルの由来は彼の口説き文句からですね。女装した主人公を喩えて曰く「八王子の姫」で「八王子姫」と。

本番シーンも物語に必要な分量だけ用意されているという感じで良かった。今まで私がぶちあたったBL小説って、ひょっとして人並みはずれて回数多かったのかなあ……としみじみ。(3冊くらいしか読んだこと無いけど…私が今まで読んだBL小説って、未遂含め平均でそういうシーンが1冊4?5回はあった気がする…)。BL小説はあまり読まないのですが、また面白そうなのがあったら読んでみたいなあ、と思える1冊でした。ていうかこの本の続きが出るなら、ちょっと買うかもw

…というわけで、普通にBL小説として読んでも面白かったのですが、何より地元民としては作者さんの屈折した八王子愛を讃えずに居られない。特に地元だからこそ要所要所で実際の場所を思い浮かべてにんまり出来る…というのはあるけど、表現ではけなしてるのにこの街への愛が伝わってくるのがほんと凄かった。

無理をして開発したハリボテの都会という印象が強烈過ぎる。微妙な拓け方をしている土地だから、ヘタな地方よりよほどロリータ服が痛々しく見えるのである。

デパートの前にある、駅前の地下駐輪場へ続く階段の下。薄暗くじめじめしたその場所は、雨が降っているわけでもないのに側溝にいつも水が溜まっている。

正直ハリボテすぎて泣けてきます!市長はこの本読んで反省すべき!
そして駅前地下通路は雨避け以外の価値が見出せないと、地元民からは超有名。
個人的には是非南口のハイーキョっぷりもネタにしてほしかったです

清も濁もすべて飲み込むように貪欲に拓けていった駅前は、その奥にある片田舎の風情を隠して華やかさを装おうと必死だ。雑多で嘘つきな混沌とした町。

個人的に、ここの表現が一番すごいと思った。良い事は何も書いてないのに、作者さんの八王子への屈折した愛が感じられるのは何故だろう。正体を隠して樋崎と付き合わざるをえなかった主人公の素直になれない性格と街を重ねる表現には一文には鳥肌立ちました。

BLが大丈夫で八王子の地元民な人は是非読んでほしい1冊です。