[著]あかほりさとる [絵]ことぶきつかさ メソポタミア号の位置情報を手に入れ、ニューテキサスを出発した一行。しかし、気がつくと小樽はなにもわからないまま一人灼熱の砂漠を彷徨っていた。行方の知れないライム達を探そうとする小樽だが、そんな彼の前に次々と現れるセイバーマリオネット達は少し様子がおかしくて… |
彼女達と『人間の女の子』の違いをまざまざと見せつけられ「それでもお前はライム達を選ぶのか」という、小樽本人も無意識に回答を保留していた疑問に対する迷いを突き付けられていく。試練の中で彼女達は紛れもない「人間」であり、その中で繰り返される甘い夢は、すべて彼女達が人間であれば実現できるもので、決して今のままでは手に入らないもの。ローレライが突き付けているのは「これら全てを生涯放棄しても、マリオネット達への愛に殉じる事ができるか」ということ。
結末を知ってから改めて再読すると、小樽はこの時点で次の巻での「あの選択」を決断していたんだなあ、としみじみ。ただ、この決断のさせ方には正直疑問が残ります。夢の中の彼女達はどこか本物よりも利己的で、本来の彼女たちの姿とは少し違うように思えるから。ただ、それは「人間とマリオネット達の違い」として意図的に描かれていているのかもしれない。人間になった彼女達はある意味『違う生き物』になってしまうのだ、という暗喩なのかも。
しかし、この巻はシリーズの中でも最大級に重い。“試練”の中で幾度となく痛めつけられ、悲惨な目に遭う彼女達の姿は、本物ではないとわかっても痛々しいものがある。花形とチェリーが一服の清涼剤すぎて出てくるたびに噴いたけど。花形はともかく、チェリーはどこまで堕ちて行くんだ……