「Steins;Gate」シリーズの外伝作品『線形拘束のフェノグラム』のノベライズ作品。キャラクターそれぞれの視点から描かれる短編集的な側面を持つ原作ゲームを一つにまとめあげて練り直された「別の世界線」の物語です。
最終的に全く別の物語として収束するのにもかかわらず、原作ゲームの様々な要素を盛り込んできていて、読んでみると確かに「線形拘束のフェノグラム』のノベライズ」だと納得できてしまうのがズルい。ただ、原作ゲームを土台にして物語が組み上げられているため、ゲームをやっていないと分かりづらい、というか説明不足に感じる部分が多いかも。
解りやすいところだと分裂する鈴羽の話や、紅莉栖が『父親からマイフォークを貰える世界線』なんかは完全にゲーム側の各ルートを意識している話で、他にも元が分かるとニヤリとできる話がかなりあるんだけど、わからないと「そういう世界線もあったのだ」と説明もなく置いてきぼりにされる感じは結構あると思います。その辺同じ作者の描いたロボティクス・ノーツのノベライズ(感想)と通じる読後感があります。
「本編と矛盾がある」と後置きしながら、Steins;Gate世界の謎にこの物語独自の切り口展開される仮説が楽しい。岡部が物語時点でのα世界線において死なない方向に世界が収束する理由やまゆりが死ぬ理由、萌郁のメール依存の話などはまじめに検証を重ねると矛盾が出る話なのかもしれないけど、「そうかも」と思ってしまった時点で読者の負けという感じがありました。岡部が死なずまゆりが死ぬ理由が最終的に「運命石の選択」という言葉に繋がるのがまずズルいんですよ!!
たったひとつのトゥルーエンドであるはずのシュタインズゲート世界線でない時点で、彼らを待ち受けているのはハッピーエンドではないのかもしれないけど、絶望の淵から這い上がり、血反吐を吐きながらも誰もが幸せになれる世界線を求めて奮闘する姿は間違いなくこれも「シュタインズ・ゲート」の物語なんだなと感じさせるものがありました。面白かった。
しかし、個人的には最後の萌郁とFBのやり取りも好きなんですけど、終盤の岡部と4℃のやりとりが大好きでもうなんかこれ見れただけでも満足!!!って感じあります。ラボメン全員の救済だけならいざしらずよんどしーさんまで救ってしまうとかずるいわ…。
STEINS;GATE 線形拘束のモザイシズム
著
海法 紀光原作
5pb.×ニトロプラス物語の序盤、岡部のもとに大量のDメールが届く。内容には一貫性がなく、文面も稚拙というおかしなものだった。はじめは、そうした蝶の羽ばたき程度の小さなことだったが、その連鎖はどんどん進み、状況を大きく混迷させていく。『STEINS;GATE』という器のなかに10話もの異なるDNAを内包した『線形拘束のフェノグラム』。そのすべてをひとつにまとめ、再構築された物語はラボメンたちをどんな未来へ導くのか!?すべては「運命石の扉」の選択のはずなのだが…。