面白かった〜〜!!絶望的なまでに追い詰められた彼らが一発逆転の道を模索していく展開が楽しいし、さらにその一発逆転をひっくり返してくる、どこまでもゲスな敵との対峙が熱い。周囲の人々の力を借りて少しずつ自らの感情を理解していく水無月、そして新たな「白檀式」として生を受けた桜花の成長と闘いが印象的でした。
すれ違い、引き裂かれる仲間たち
ハウエルズの策略により吸血鬼の排斥運動が激化してリタが学園を離れざるをえなくなり、カノンにはハウエルズとの婚約話が持ち込まれる。更に「結婚」の意味を理解できない水無月がカノンとすれ違ってしまう。ハウエルズとの婚約を破棄して実家の庇護から独立するために改めて「オートマタコンテスト」での優勝を狙うカノンだが、そのオートマタコンテストも戦争が近いからという名目の下でオートマタの戦闘能力だけを問われるバトルトーナメントへと変更されてしまい……。それまで奇跡的なバランスで共存していた人間と吸血鬼が互いに憎み合う姿にやりきれない気持ちになるし、それでなくても戦争が始まりそうでシリーズ最大のピンチとも言える状況なのに全員がバラバラになってしまい、色々と不安しかない始まりだった。特に、いろいろな意味で癒やしだったカノンのテンションの高いオートマタ語り節が聞けないのがなんとも寂しい。前巻ラストから一貫してツンを貫くユーリが癒やしまである。
水無月と桜花、それぞれの「心」の成長
恋愛感情周りの機微が理解できず、ただハウエルズの懐に潜り込むための手段としてカノンに結婚を薦めてしまう水無月。その水無月の言葉を恋愛の機微がわからないオートマタの戯言として受け流すことができず、皮肉にもそれによって自分の本心を自覚してしまうカノン。二人のすれ違いがなんとも切ないけど、リタやユーリの助言を受けながらも自らの気持ちを自覚し、やがて彼女への本当の気持ちを自覚していく水無月の姿に胸が熱くなりました。それどころじゃないんだけどふたりがやっと両思いになったあとの展開は微笑ましすぎてニヤニヤしてしまいますね!そして過酷な運命を打開するためにカノンが創り上げた新たなる《白檀式改》、桜花。周囲を“模倣”しその情報の蓄積によって人間のように成長していくオートマタ。一貫して感情のようなものを見せなかった、本来であるならばまだまだ成長途中であったはずの彼女が最後に見せた運命への抵抗と感情の発露が、なんとも切ない。
凄いところで終わった!!!
ハウエルズの生み出した《HW式》の真実を暴き、カノンと寄り添って生きていくために吸血鬼に『戻る』道を選択した水無月。絶望的な状況の中でも自らの信条を曲げずに愛のあるオートマタを作ろうとするカノン。ハウエルズの思惑を人間の、吸血鬼の“感情”が超えていく展開は最高に熱いんだけど、同時にそれ以上の災厄を生み出してしまったのも人間と吸血鬼の感情で、それを食い止めたのがオートマタとしての信念、だなんてそんな悲しいことあるかよ……。いろいろな意味で続きが気になりすぎる終わり方で次巻が気になりすぎる。
というか次巻のカラー口絵そういうことなんですかねやっぱり……。