エスタブールを震撼させた魔眼の持ち主・ティーアと共にシオン達の前から姿を消したライナ。ティーアに連れて行かれた隠れ家には、自分達と同じ「魔眼」を持った子どもたちが保護されており……一方、ライナを連れ戻すためにその行方を追うフェリスとシオンの命を果たすために動き出すルーク。勇者の遺物や魔眼を収拾するガスタークの刺客も行動を開始し……。
様々な思惑が動き出す、物語の転換点
失踪したライナを巡って、様々な思惑が動き出すお話。あそこで都合よく突然出てきたシオンの命令書どこから……と思ってたらそこだったか〜〜!(いい感じにアニメの内容が頭から抜けてる顔)前巻での活躍もどこへやら、一緒に旅しているのにライナの長考に突き合わされてけんもほろろに扱われるティーアさんは強く生きて欲しいけど、自分以外の魔眼保持者と出会い、これまで目を背けるだけだった「魔眼」について改めて向き合うことになるライナの姿が印象的でした。ガスタークからの刺客の言葉によってますます疑問点が増えた部分は多いけど、自分の持つ力に付いてある程度の理解と折り合いを付け、自分自身のやりたいことを見出していく展開がとても良かった。あれほど化物と言われることを怖れていたライナが自分のことを「化物」だと言ってしまうの、良いことなのか悪いことなのかはまだわからないけど、少なくても自分の在り方を少しだけでも受け入れられたのかなと思ってほっとした部分がある。
それにしても、6巻のルシル、7巻のリーレvsカルネ、今回のフロワード・ルークと頂上決戦みたいなバトル展開が多すぎて、たしかにティーアvsクラウみたいな番外編もあったんですけど、ローランドどんだけの魔境だよって思ってしまう。ルークを前にして「最強とは……」ってなってるライナ(ローランド最強の魔術師)にめちゃくちゃ笑ってしまった。
フェリスの感情の動きがめちゃくちゃよかった……
だんご屋の前での「一人はつまらない」から、クライマックスの「お前が死んだら寂しい」に繋がってくフェリスの心情の動きがめちゃくちゃ良かった……あれだけ本編でも短編でもだんごに執着していたフェリスが、「こんなに重い荷物を持っていたらライナを追いかけられない」とだんごの詰まったリュックを置いてライナを追いかけていくのがあまりにもエモいし、それはそれとしてだんごを完全には諦めきれずに2本だけ持っていくのが微笑ましい。あと「お前が死んだら〜」のところで、一貫して無表情で描かれてきた挿絵のフェリスがちょっとだけ微笑んでいてうあーー!!!!となる。時間の長さで言えばライナよりもずっと長い時間、エリス家での過酷な仕打ちに耐えてきたフェリスって実際旅の開始の時点で相当感情が死滅していたんじゃないかと思うんですよね。ライナは「フェリスの感情の機微が感じ取れるようになった」と言ってて、実際そういう部分もあるとおもうんだけど、それ以上にライナとの旅が彼女に感情を取り戻させてくれてたんじゃないかな、と思うと込み上げてくるものがありました。否定されるのが怖くてずっと言えなかった言葉をはじめて吐露するライナと、そこで初めて誰の目に見える形で感情を露にするフェリスのやりとり、良すぎる。
それにしてもプロローグとエピローグのシオンがめちゃくちゃ不穏。