うららの記事一覧 | ページ 111 | 今日もだらだら、読書日記。

うらら一覧

本日の騎士ミロク2

[著]田口 仙年堂 [絵]高階 聖人

赤目隊の作戦が功を奏し、なんとかホラキア軍を退けたジルサニア王国。捕虜となったジュジュの幼なじみにしてホラキア国王子・ベンヤミンの口からもたらされたのは、ミロクの生まれ故郷でもあるオウガンの魔導士がホラキアを陰から操っていたという情報だった。講和条約と姫の講演を行うため、急遽ホラキアに向かう赤目隊の面々だが…
   個人的お気に入り度数
変わり者揃いの王国騎士団「赤目隊」に入隊したミロクが、破天荒な王女様・ジュジュに振り回され、こきつかわれつつも難敵に立ち向かっていくファンタジー第二弾。今回は前巻でも不穏な影を覗かせていたミロクの故郷・オウガンが本格的に「ジルサニアの敵」として登場し、自らの立ち位置にミロクが葛藤するお話。

ジルサニアの王女ジュジュ、ホラキアの王子ベンヤミン、オウガンの皇子であるミロクとシェンラン。肩書きは同じでもそれぞれ違う立ち位置にいる4人が様々な思いをもって自らの国を思い、憂い、互いの護りたい者ため相対していく姿が印象的。たとえそれが未熟な想いでも誤った道であっても、誰も彼もが自分の国やそこにいきる人々のために一生懸命で、その姿が清々しく映る。特に、ヘタレヘタレと思っていたベンヤミンの成長っぷりには驚かされました。ラストのベンヤミンの演説はマジかっこよすぎる。

なし崩しに祖国と対立することになってからはじめて祖国とジルサニアのどちらを取るかで葛藤するミロクは残り3人の王子・王女達の姿と比較するとあまりにも考えなしだなあ、と思うわけですが(もちろんオウガンがジルサニアを攻める可能性自体が元々低かったというのもあるんだろうけど)、迷いを振り切って『どちらも救う』という第三の選択を選び、かつての友と相対する姿の凛々しさといったらない。っていうか名乗り合いのシーンがかっこよすぎなんですけど!!!うわあああミロクかっこいいよミロク!!!(ゴロゴロゴロ)

しかし、シェンランはカラー絵からしてふつうに女の子にしか見えないなあ…どうせならもうちょっと性別不詳系美形キャラっぽく描いてほしかった気が……挿し絵だとふつうにかわいい女の子なので、文章から受けるキャライメージとのギャップに時々戸惑いました。むしろふつうにシェンランでもいいじゃない……確かに「お兄ちゃん」の破壊力は妹萌え属性ない私ですらグラっとくるほどやばかったですが!いやでも、シェンラン×ミロクでもいいじゃない……(いろいろだいなし)

まだまだいろいろな部分で未熟なミロクと、とにかく肝心な所で言葉の足りないジュジュを暖かく見守る赤目隊とジルサニア王家の人々のアットホームな雰囲気も前巻から引き続き最高です。というかフェリサ最高です。あの外見のクールさと、口の悪さ及び中身のえげつなさが醸し出す壮絶なギャップが最高すぎます!!もっとフェリサ目立てばいい…むしろ彼女主役のスピンオフ短編とか超みたい……フェリサかわいいよフェリサ…!!

次巻はいよいよオウガンとジルサニアとの対立が本格化しそうな感じ。というか●●…だと…。物語がどの方向に転がっていくのか、とても楽しみです。


ラノベ部3

[著]平坂 読 [絵]よう太

留学生のリアを加え、それでもいつもどおりまったりとした日々を過ごすラノベ部の面々。ある日、漸く自室の片付けがひと段落したリアが文香達に教えてもらった書店に向かったところ、意外な人物と出会って……
   個人的お気に入り度数
ライトノベル部こと「軽小説部」の面々が部室で他愛もないことを語り合ったりする学園小説シリーズ、完結編。今回はラノベ部内を駆け巡る恋愛戦線に大きな動きが!?

小ネタ一杯で軽いノリで楽しめる文章の数々には相変わらずニヤニヤが止まらないのですが、やはりリレー小説の破壊力の高さが異常。人が変わるごとにどんどん勝手な方向に変わってしまう物語も凄いんですが、今回は何より文香パートが酷い。漢字の少ない、子供のような文体とはうってかわったグログロな展開に噴出しました。っていうか今回の文香は隠し切れない黒オーラ出てた気がするんですがきのせいですか!リアの気持ちに気付いた途端告白したり…と、この作品で一番黒いのは実は彼女なんじゃないかという気がしてきた……

竹田を巡る恋愛戦線は駆け足で終わってしまっていてなんだか物足りない部分も多かったですが、ずっと文香に自らの正体を隠していた暦が…とか、いろいろな部分にきちんと決着がついていってスッキリした終わり方ではありました。(しかし、文香と暦の見開きカットは正直必要だったのか…?ここは普通の1P挿絵でよかったと思うんだけど)それにしても、暦は様々な意味で将来が心配です。文香の妹と共に変な方向に足を踏み外さないようにしていただきたい…

そして堂島かこいいよ堂島。彼の“日常系”作品に対する考察は自分の趣味嗜好とも繋がるものがあって面白かった。個人的には、このシリーズではやっぱり堂島が好きだったので、彼の出番が結局最後まであんまりなかったのはちょっと残念です。

元々小ネタの集合体みたいなラノベなので、マンネリと言われる前にまとめてしまう方が綺麗な終わり方なのかもしれないけど、盛り上がってきた恋愛戦線とか暦の小説家としての・少女としての成長はもうちょっと長い時間をかけて眺めていたかったかも。あと1?2冊くらい読みたかった気がするなあ。特に女性陣3人に振り回されるヘタレ竹田、という構図がもうちょっと見たかったなぁ!!あとラストで出てきた暦の母親が素敵すぎなんですが彼女の出番は!

最後までニヤニヤほわほわ、楽しく読ませていただきました。
次回作もこんなノリの日常系ラノベになるそうなので、そちらもちょっと気になる。楽しみです。

最後に、自分の見つけたもので、元ネタ作品が明記されていなかった系のネタ一覧。
今のところネタまとめやってる感想記事がなかったようなので……ほぼ自分用まとめメモ。
続きを読む


H+P(4) —ひめぱら—

[著]風見 周 [絵]ひなた 睦月

未だお姫様に手を出そうともしない恭太郎に業を煮やしたピコルは情に厚い彼の性格を利用し、一計を企てる。それは「お姫様達5人の寝室に忍び込み、理由を明かさず下着の中に仕込んだ“あるモノ”を取ってこい」というものだった!ピコルの計画通り5姉妹の寝室に忍び込んだ恭太郎だが…
   個人的お気に入り度数
富士見ファンタジア文庫で異彩を放つエロコメ第4弾は短編集。とはいえ敵国絡みのネタがないだけでいつも通りという説が。しょっぱなから「ちちおん」で噴いた。あと、ピコル&アレスタの「出番ない組」に加わりつつあるアルト姫哀れすぎる…

3巻で「次はこれ以上エロくなる」みたいなことが書いてあったのでどんな大惨事になっているか戦々恐々でしたが、意外にエロは控えめだったように思えます。というか、個人的にはエロエロなお話よりもお姫様達とのほの甘い日常を描いた短編の方が印象に残っているかも?あ、あと夜這いの話でヒロインはアレスタだとおもった私は多分間違ってない。

特にレイシアと城下に買物に行くお話と、エリスが恭太郎にキスをねだる話が可愛かった。特に後者。エリス様可愛いよエリス様!!!「恭太郎のことなんてなんともおもってませんのよ!」って言いながら恭太郎の一挙動一発言に胸を踊らされ、心の中でキュンキュンしちゃってるエリス様が可愛いのなんの。こういう、糖分高めのツンデレもいいよなー!私が恭太郎なら全力でエリスルートを選ぶね!!

しかし、恐らくメインヒロインポジションな気がするユフィナの影が薄いなあ…レイシアとエリスの猛攻に押されてどんどん影が薄くなってる印象があるんだけど。正直キャラの魅力としても今のところレイシア&エリスの方が上なので、今後の彼女の(ラブコメ的な)活躍に期待したいところ。…いえ、エリスルートだったらそれはそれで私はうれしいけどね!!

次巻では一気に話が動きそうな気配なので、次巻も楽しみです。あー、でもエロはやっぱりもうちょっと控えめにしてほしい………とはいえ、エロが薄めの今回は正直物足りなかったんだけどもう自分どうしたらいいのか…orz


生徒会の六花 碧陽学園生徒会議事録6

[著]葵 せきな [絵]狗神 煌

学園祭という大仕事を終え、今日もゆるゆると生徒会室に集った面々……だが今日は妙にやる気がない?!学園祭で使用された大量の物品が『忘れ物』として生徒会室に届けられていたのだ。仕方なく片づけに精を出す事になったが…
   個人的お気に入り度数
なん……だと……<「卒業編」

毎回本編以上に「企業編」での杉崎のイケメンっぷりを楽しみにこの本を読んでいた身としては、「卒業編」の杉崎失踪という現実に絶望した!物凄い私情挟みまくりだけど絶望した!!確かに本編はいつも通りの面白さで大いなるマンネリ万歳ではあるんだけど、今回はとにかく、鍵のイケメン分が足りないよ!!!五彩のかっこいい鍵はどこいったんだ!!

これまでは本編の方でもどこかしらかっこいいところを見せてくれてた気がするのになあ。唯一「夢見る生徒会」ではちょっぴりだけ鍵が男を見せるのですが、この話での鍵の空回りっぷりが酷く、その後のヒロイン達の反応がまた酷く…。気持ちはわからなくはないけど!それでもあれは能力的にどうしようもないじゃん!!物語自体も、マンネリ化防止のためにちょっと毛色を変えたのかもしれないけどあんまり面白くなかった。これを入れるならいつも通りのおきらく極楽な短編を2編収録してくれた方がよほど嬉しい。

…と、私情入りまくりのぼやきはとにかく、それ以外はいつも通り面白かったです。鍵はもういっそ、真冬ちゃんに取り入るために腐男子になればいいと思います。特に第三話「喋らない生徒会」の破壊力はまさに最凶。言葉でのコミュニケーションするのを禁止され、口パクで会話を始めたらどんどん曲解されていって、どんどん周囲の人を巻き込んで…という展開に大爆笑。あと第四話「抗う生徒会」もヤバイ。二次元と三次元の区別がついてない深夏とのやりとりに爆笑した。

あと忘れちゃいけないのが、「えくすとら」。特にマギル先生の独白は「ぶっちゃけ“碧陽学園生徒会議事録シリーズ”なんて誰も使ってない」「最近、このシリーズってマンネリだよね」「このラノ上位入り確実」とか色々ツッコミどころ満載過ぎて噴いたwwwそして忘れちゃいけないのが鍵と深夏のやりとりだなあと…まさにあれは、クラスメイトのツッコミに、全面的に同意。

しかし、えくすとらのラストがよりによって鍵と深夏のあのやりとりだっただけに、その会話と対象的なエピローグが気になる。さすがにここまできて、飛鳥エンドはありえないと思うんだけど…「夢見る生徒会」で、これまで一切本編には登場しなかった林檎・飛鳥が登場したのも今後への伏線?

結局のところ、この引き方には物凄い惹かれてしまうんだよなあ…。


メイド刑事9

[著]早見 裕司 [絵]はいむらきよたか

いつになく取り乱した梶が海堂家にもたらしたのは、葵がかつて所属していた清瀬のレディースが何者かに襲われ、壊滅したという知らせだった…!その事件を皮切りに、彼女の身近にいる人間が次々と狙われていく。犯人の目的は、葵と貴美香を戦わせる事で……
   個人的お気に入り度数
黒須姉妹との対立が激化する中、清瀬のチーム壊滅から始まって葵の周囲の人々に次々と魔手が伸びていく…というシリーズ完結編。

大切な人たちが傷ついていくのに何もすることができない葵の姿がなんとももどかしい。とくに、ルカの危機は巻頭カラーで示唆されている出来事だったので「ルカ、にげてにげてー!!!」と叫びたくなったり。朝倉老人の大活躍はもうちょっとじっくり見たかった気がしますが。メイド刑事と背中合わせに戦う姿がかっこいいよ朝倉老人!7巻の「執事探偵」にニヤニヤしてた私ですが、普通にメイド刑事ならぬ「執事刑事」ができたんじゃないですか朝倉老人!!外伝としてどっかでやらないものかしら。

そして貴美香…真奈香が始末された時点でこの結末も半ば予想できるとはいえ、葵と貴美香の仇敵コンビで善香に…という展開もみてみたかった気がする。

後半は、ひとしきり直接攻撃した後は海堂が政治的に陥れられて…とますます追い詰められていく葵達。しかも、彼女を追っていくうちにとんでもない陰謀にぶちあたって…という展開。書斎での葵と海堂のやりとりが唯一の息抜きと言うか、真顔で口説き文句連発な御主人様にとてもきゅんきゅんします。動揺してる葵がまた可愛いなあ!!あと、窓際族と思わせておいて……な狭間警部の大活躍にニヤニヤする。

ラストはなんか、突然ファンタジー(違)な展開になっちゃって「!!???」だったけど、シリーズすべてを通しての熱い展開は健在だったのでこれはこれでアリ…なのかな。個人的には結局ニキータさんの正体はなんだったんだろうとかとても気になるので、執事刑事と合わせて番外編で1本出してほしい気がする。

最後の展開を読んで
葵「わたくしと御主人様の冒険はこれからでございます!」
とか言いたくなったのは私だけでいいです。


黒椿姫 雷鳥の暗殺者と公爵令息

[著]魚住 ユキコ [絵]カワハラ 恋

グロンヴァール王国の第一王位継承者として、幼い頃から側近の者達の裏切りや死別を繰り返してきた王女・エルダ。人間不信に陥った彼女は自分の命を狙いに来た暗殺者・レイフェンを敢えて従者として雇う事に。暗殺者と暗殺対象である二人の奇妙な生活が続く中、野心家の公爵令息・ヒースコートが彼女に求婚を申し入れ…
   個人的お気に入り度数
ためしに3冊ほど買ってきたティアラ文庫最後の一冊は、暗殺者とお姫様のちょっとエッチな主従ラブ。ところで全くストーリーと関係ありませんがヒースコートがスザクにしか見えないの私だけですか……。

個人的に「幼い頃から暗殺組織で育てられた暗殺者が暗殺失敗して暗殺対象と同居生活送る内に情が移り、暗殺組織に連れ戻された暗殺者を暗殺対象が無茶を承知で助けに行く」というシチュエーション(長)が大好きすぎて困る私としては、好みドンピシャ。人間不信のエルダがいろいろな事いいながらレイフェンに少しずつデレていく様子にもニヤニヤで、暗殺者モノとしても主従モノとしても文句なしにドツボ。最後にレイフェンの素性が意外なところに通じていくのも面白いんだよね。彼の正体が明らかになった時は思わず唸りました。「どう上手くやっても身分的に結婚は無理だろ…身分的に」という二人なので最後の設定は上手いなあって思いました。

そしてメインの2人もいいんだけど、公爵令息・ヒースコートの腹黒っぷりが良い!!笑顔で本心隠して酷い事を考えてるかませ犬キャラって正直最高じゃないですか!!人間不信で警戒しまくりなエルダとのやり取りには、本当にニヤニヤした。あと、彼の忠実な騎士であるアナベルが良いキャラすぎたので、ぜひともイラストで彼女の雄姿を拝みたかったです。個人的にはヒースコートがラスボスくらいの展開でもいいんじゃないかと思っていたのですが、ラストのエルダとのやりとりが最高すぎたのでむしろこのオチはありあり。

そんなこんなで、最後までとにかく楽しく読めました。買ってきた3冊の中では一番お気に入りかも。続きは…さすがに期待できないのかな。こっそりとシリーズ化に期待してみます。


ヴァンパイア・プリンセス

[著]水戸 泉 [絵]南国 ばなな

若くして、死んだ人間を“屍鬼”として復活させることが出来る「リリス」になってしまった少女・ファウスリーゼ。屍鬼達は本能的に彼女に恋心を抱いて従ってしまうので本当の恋を知らぬ彼女だが、ただ一人・真木名という男だけは違っていた。そんな真木名が拾ってきた少年は、ファウスリーゼがかつて短い間を過ごし、忘れられなかった人間に瓜二つで…
   個人的お気に入り度数
キスとDO-JIN!」シリーズ書いてる小林来夏さんの本職名義でティアラ文庫創刊ラインナップのヴァンパイアもの。屍鬼達の争いを避けるために個人的な関係を築く事を出来る限り避け、淫魔でありながら純潔を護り続けてきたファウスリーゼが、屍鬼でありながらなぜか彼女の命令に従わない真木名に犯されてしまって……というお話。

すごくエロエロだった。
創刊ラインナップはこれしか買ってませんが、先日読んだ「紅の勾玉」くらいがティアラ文庫のアベレージラインだとしたら突き抜けすぎだと思われる。本番が確か4回だか5回だかあった。いや水戸さんのBLは以前読んだ事あるので予想してたけど!!

割と典型的な「最初はイヤイヤだったのに段々それが快感に…!」的なお話。ゴーカンからはじまる恋もあるよ系。とりあえずエロシーンがとても読み応えがあったよ、くらいしか感想が出てこない…いや一応褒め言葉なんですが。若いうちから「リリス」となり、無条件に屍鬼達から愛されてしまうため愛されるという事のを理解できていないファウスリーゼが、少しずつ真木名への思いを自覚していくという過程が素敵。

ただ、個人的には彼女の周囲にこれだけの人間が居るのに真木名以外が相手のエロが殆ど出てこないのには不自然感を感じたかも。彼女の決めた命令に逆らえない屍鬼である鳴瀬や純情少年っぽい波留がエロに絡んでこないのは仕方ないとはいえ、ラスボスである“彼”とは一悶着くらいあっても良かったんじゃ…と思ってしまう同人脳。この手の小説で微妙な立ち位置の幹部級の敵が触手攻撃してくるというお約束だけは忠実に護ってましたが、そのくらいか。敵にけしかけられた男子生徒が処女厨丸出しの発言をかまし出した時にはうっかり爆笑した。

後書きでページ数制限を大幅に突破してかなり圧縮を迫られたみたいな話がありましたが、実際本来もっと長い小説だったんじゃないかなあと思わせるような消化不良感をなんどか感じました。もうちょっと色々な展開があったのに物語をとりあえず終わらせるために真木名とファウスリーゼの関係だけに絞って収録しました、みたいな。というかいっそ波留とか居ない方が物語のバランスとしては綺麗だったんじゃあ…。作中では彼が一番ツボだったので、主役級の扱いっぽく物語りに絡んできた割には思いっきり脇役だったのが残念。もういっそ上下巻で連続刊行にしちゃえばよかったのに。

……波留が出てきた瞬間、真木名×波留とか、真木名が波留を連れ込んでファウスリーゼと3Pとかそういう展開をうっかり期待した私は、そろそろ一度どこかの神社で邪念をお祓いしてもらったほうが良いでしょうか。


魔女っ子サラリーマン

[著]高将 にぐん [絵]さらちよみ

ある日突然、父親から少女趣味全開な魔女っ子ステッキを手渡された普通のサラリーマン・津島弘文。どうやら死んだ母親はホンモノの魔法少女で、その力が弘文に受け継がれちゃったらしい!?しかも取引先の社長・江南誠が、変身した“彼女”に一目ぼれしたといい出す。魔法少女を辞めるには処女(処男?)を喪失するしかないのだが…
   個人的お気に入り度数
いい年したサラリーマンが、なぜか魔法少女に変身しちゃって……というリーマンモノのBL。…魔法少女なのにリーマンジャンルなんだ!?とかおとまh……なんて思っちゃ駄目だ!!飛び出すカラーピンナップもついてるよ!!!タイトルを見て先月の「猫耳父さん」的色物を想像しましたが、TSなので主人公普通に可愛かったよ。残念です

飛び出すピンナップといいタイトルといい、色物臭しかしないこの作品ですが、読んでみたら意外過ぎるほど正統派(?)なラブコメでした。変身後の弘文(=るりか)に一目ぼれしたという江南とデートしたりしていくうちに、ヒラ社員と取引先の社長というだけの関係の時には見えてこなかった意外な一面が見えてきて、でもその笑顔を向けているのは“本当の自分”じゃなくて…というのはTSものの王道展開ですね!多分!(あんまりそのテのものはBLじゃなくても読まないけど)

そして、るりかの“ガーディアン”(=マスコット)としてパンダに変身してしまう従兄弟のトーヤが実にいいキャラだった。元々主人公の事が好きで、弘文が魔法少女を継いでからは「魔法少女を引退させるために」と言って処男を狙ってくる彼が、なんだかんだと江南との仲を取り持ってあげちゃうという展開がとても好きだー。そして割合ノリノリに魔法少女やってるらしいトーヤくんの今後がとても気になりますw

TSとはいえ二人の関係の障害として異性が登場してくるせいか、BL小説を読んだ時に毎回感じる独特のファンタジー感覚(というかないない感)も薄く、すんなり「ああ、この二人は本当にお互いが好きなんだなあ」と世界観に没入できたかも。軽いノリで楽しく読めました。

…唯一、個人的に行為のシーンでいきなり、弘文の一人称で展開されていた地文での江南の呼び方が「」になったのは凄い違和感だった。それまで本当にBL小説を読んでいる時特有の違和感薄い作品だったので、特にかも。…え、いや普通、男→男の呼び方で「彼」とか言わないよね…?たいしたことではないんだけど、そこだけが物凄い引っかかった…。

しかし付録の「飛び出すピンナップ」は…どうなんですか実際BL読みの人的に……正直、読む時にすごい邪魔だったんですけど…


紅の勾玉 姫君の幼馴染は陰陽師

[著]大槻 はぢめ [絵]ひだかなみ

帝の姫君・桜子の幼馴染は稀代の陰陽師・阿倍清明の孫である光彰とそのライバルであった芦屋道満の孫の泰雅だった。幼馴染の二人に護られて平和な毎日を送る彼女の最大の悩みは、結婚適齢期を過ぎた16歳になっても恋文の一つも来ない事。「このままでは行き遅れてしまう!!」と気色ばむ桜子の元に、遂に一通の恋文が…!?
   個人的お気に入り度数
ティアラ文庫は創刊の辺りから密かに気になっていたのですが、大好きな「平安で陰陽師モノ」と聞いて手を出してみました。ぶっきらぼうでややツンデレな清明の孫とイケメンで冷静沈着な兄貴分な道満の孫と帝のお姫様で三角関係平安ラブ。“清明の孫”ってどうかんがえてもビーンズ文庫のアレ思い出すよ……

正体の見えない相手との逢瀬を重ねながら少しずつ桜子が自分の恋心に気付いていく心の様子が丁寧に描かれていて、あまずっぱくて可愛かった。“憧れ”と“恋”という一見似ているようで全く違う感情の違いを少しずつ自覚していくのは定番ですがやはり甘酸っぱくて良いですね。読んでいる方からすると結構早い段階で彼女が本当に好きな相手がわかってしまうので、自らの恋心に戸惑い、相手の様子に一喜一憂する桜子の姿はかなりニヤニヤもの。

そしてこのお話で一番ツボに入ったのは本番シーンでの光彰。
ぶっきらぼうな熱血ツンツンだと思っていたら、本番入ったら桜子の可愛さにキュンキュン止まらないよなデレデレ言動と歯の浮くような愛の言葉を囁きまくりで、今までお前どれだけ溜め込んでいたのかというか、「正直お前が一番可愛いわコンチクショウ!!!」と叫んでいました。エロシーンはあってもなくてもどうでもいいくらいの薄さでしたが、エロがないと光彰がデレないと考えると実にこの本はエロがあってしかるべきだなあとしみじみ思ったり。

ただ、手紙が来た辺りで「ああ、手紙の主は実は○○…と主人公が思い込んでいたら実は△△で、××の正体は□□で最後◎◎なんじゃね?」って思った内容そのまんまだった…ってくらい展開が読みやすいので、出来ればもう少し捻ってほしかったかも。特に、恋文の相手や桜子を狙っている相手の正体を謎解きっぽい感じで後半まで秘めているので、それが序盤からミエミエだとちょっとむなしいものが…

あと、なんとなく「陰陽師はなんか悪霊っぽいの退治する人」「平安時代は16歳になったら行き遅れ」「とりあえず3晩夜這いされたら結婚完了☆」くらいの平安知識で書いちゃったんだろうなーっていうのが透けて見えるのは、平安要素を楽しみにしてた身としては少し残念。「陰陽師の末裔の男の子達と、現代にはびこる悪霊たちに狙われるヒロイン」みたいな設定の現代学園異能にしちゃったほうがすっきりした気がします。

…どうせエロレーベルなんだから、闇の魔物にヒロインが襲われるところはもうちょっと……イヤナンデモナイ。


紫色のクオリア

 

女子中学生の女子高生・波濤マナブは自分以外の人間がすべて『ロボット』に見えるという毬井ゆかりと出会い、その秘密を知ることに。彼女の瞳が持つ不思議な能力を知りながらもそれを受け入れ、親友としてかけがえのない時間を過ごしていたが、ゆかりの周りで奇妙な出来事が起こり始めて…!?

「悪魔のミカタ」のうえお久光と「JINKI」の綱島志朗が贈る、コラボレーション小説。生きている物がすべてロボットに見えてしまうという力を持つ少女と、彼女を巡る事件を描く異能系SFモノです。

久しぶりに完全な絵師買いだったのでどうなることやら不安だったのですが、めちゃくちゃ、面白かった!前半のちょっとゆる?い空気のSFっぷりも素敵ですが、後半以降のダークでハードな展開も凄いツボ。巻末オマケ4コマはニヤニヤ連続だし…いやあ、本当に最初から最後まで全力で楽しめた!オマケ4コマの七美の可愛さは異常と言いたい

序章の「毬井に関するエトセトラ」では、生き物をロボットという「無機物」という形でしか捉えられないゆかりと、親友としてゆかりのすべてを受け入れようとするマナブと、彼女の能力を受け入れられないが故にゆかりと距離を置いてしまったかつての親友・七美という3人のやりとりを中心に描かれます。視点を中心にその五感だけが特異な力となってしまっている彼女とどのように付き合っていくかという物語なのかとおもったら、最後で彼女の持つ思わぬ能力の真実が明かされ、ゾクっとなりました。特に、『殺人犯』の末路についてはゆかりに一切悪意がなさそうなのがなんとも……!!

しかし、物語は後半の「1/1,000,000,000のキス」に入ってから更に一変。っていうか一変してからが本当にすごかった!!前編のネタバレに触れまくりなのでどこから語ればいいのかわかりませんが、一言で強引に表現するなら異能+ヤンデレ+百合+ループもの。ゆかりの持つ性格のせいか、どこか暖かな雰囲気が流れていた前編とは打って変わってシリアスでハードな物語が展開されます。どこか胸の中で自らのやってきたことに間違いを感じながらも、それを永劫に認めることはできないという所まで来てしまったマナブの想いがとにかく痛くて、胸に重く圧し掛かる。

何度となく未来への分岐を辿っても、自分すべてを投げ打ってでも変えたかったたった一つの「確定された運命」だけは覆す事が出来ないという展開は先日読んだばかりの「運命のタロット」シリーズを思い出しました。

“彼女”にとってあまりにも永い時を経て、漸く望んだ結末にたどり着いた時には思わずジーンとしてしまったのですが、そうしたら…ラストが!前編でちょろっと出てきたものの普通にゆかりの能力の一部なのかとあまり気にしていなかったのに、のに!!様々な意味で深読みしてしまうラストの展開に、再び背筋が寒くなった。ハッピーエンドだと思ってたけど実は……なんてことがあったらと思うともう、恐ろしすぎます。しかしそれが良い。

ところで、綱島志朗というとJINKIもいいけどデビュー作「LIFE:ERRORS」の大ファンだった私がここに居る訳ですが、「紫色のクオリア」と「LIFE:ERRORS」って雰囲気似てるよね、と呟いてみる。最初設定の割にはギャグ率高めなSFだったのが徐々にハードな展開に化けるあたりとか、ほのかに香ってくる百合臭とか、最後の方に主人公が色々な意味で病む辺り(待て)

4861270243LIFE:ERRORS 1 (ブレイドコミックス マスターピースコレクション)綱島 志朗
マッグガーデン 2004-03-26

by G-Tools