“庭” の検索結果 | ページ 10 | 今日もだらだら、読書日記。

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征服娘。

[著]神楽坂 淳 [絵]鈴羅木 かりん

名門貴族の娘として生まれ、商才に恵まれた少女・マリア。彼女は才能があっても血筋や性別の所為で損をしなければならない社会に我慢することが出来ず自らがこの世界を掌握せんと、侍女にして親友のアッシャと共に動き出す。ひとまず目先に迫った結婚から逃れる為、2年間修道院に入る事にしたのだが…
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才能はあるのに“女”であるがゆえに結婚して家庭に入るという将来が確定してしまっている貴族の令嬢が、自らの手で未来を切り開く為に国家の頂点に立つという野望を抱く…という物語。

自分の弱点や欠点を正確に把握して、自分に出来るところから少しずつでも堅実に野望に向かって邁進していくマリアの姿がとにかくかっこいい。将来、父や兄と事を構えることも視野に入れながらも彼らから間違いを正されればきちんと受け止めるし、自分が弱者である事も認めたうえでそれを出し抜く計画を練る。その大それた望みとは対照的に堅実な動き方が好印象でした。「世界征服の第一歩として、まずはカーニバルの露店から!」という小ささが凄く良い。

また、そんな彼女に惹かれて集まる協力者達が非常にかっこいいのです。侍女であり親友にして訳ありっぽくてクールな元王女・アッシャ、貴族だけどアウトローでマリアと同じく野望を持ったラウラの魅力は勿論の事、彼女の「信望者」とも言うべき庶民達がまたかっこいい。特に水夫のマルコの発言には痺れたなぁ。ある意味最大のライバルともいえる父親・ジャコモとマリアの駆け引きも物凄く面白かった。

マリアが手がける「ティー」や「チョコレート」をはじめとして現在ではデザートとして広く流通している嗜好品がまだ一般化しておらず、それをマリア達が女性ならではの感性で一般に流通させていこうとするという過程も興味深かったです。今後もこういった甘味流通ネタが出てきそうな気配なので、そちらも併せて楽しみ。

…しかし、個人的にはほぼ文句なしだったんですが、唯一挿絵が……鈴羅木さんは某社のゲームアンソロ時代からのファンなのでラノベの挿絵と聞いて楽しみにしていたのですが、キャラを重点に押し出した派手な画風や、線の太いしっかりとした描き方がイマイチこの作品には合っていないように感じました。良くも悪くも「1枚のイラスト」として完成してしまっていて文章の挟まる必要すら無い空気を感じるというか…なんなんだろうなぁ、この違和感…。


ネクラ少女は黒魔法で恋をする4

[著]熊谷 雅人 [絵]えれっと

高校受験を目の前に控えた空口夏樹は、彼氏と上手くいかずに悩んでいた。それなのに姉の真帆ときたら、残しておいた冷蔵庫のプリンは勝手に食べるし、挙句人の枕元でブツブツと黒魔法の呪文を唱え始めるし…。思わず夏樹は一方的に姉を無視することにしてしまうのだが…
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「ネクラ少女?」シリーズ、4作目は各キャラクターに焦点を当てた短編集。空口姉妹の仲違い、大河内&雛浦が暴漢を退治するため奔走する話、湊山先輩のちょっぴり甘酸っぱい勘違い話(笑)と、演劇部の夏合宿の話の4本を収録。

真帆のネクラ成分は順調に薄くなり気味で、それが少女の成長を描く青春ラブコメとしてひとつの魅力ではあるんだけど、それが逆にこのシリーズ最大の個性であろう「ネクラ少女」という部分を徐々に殺しつつあるのが難しいところだなあ。なんていうか、ただの青春ラブコメになってしまって、安定した面白さはあるんだけどラブコメが元々あんまり好きじゃない身としてはいまいちピンとこない作品になりつつある…。

それでも各キャラクターの個性が立っているので、それぞれの短編は非常に面白かったです。一見仲悪そうに見えるんだけどお互いがお互いを気にせずには居られない空口姉妹の関係にニヤニヤしつつ、雛浦さんのまるでマンガみたいな(…小説だけど)家庭環境と、そんな彼女を引きずり回す大河内との凸凹コンビっぷりが微笑ましくなったりとかなり楽しめました。湊山先輩は……その……ご愁傷様、です。

ただ、真帆の毒気が抜けつつある現状では、演劇部の夏合宿を描く「空口真帆と仲間たちの夏」は正直微妙だった。一之瀬先輩との仲も進展するかと思いきや一之瀬は気絶しっぱなしで肩透かし食らわされたカンジだし……ここは一つ一之瀬先輩と色々なぶっちゃけ話をするみたいな嬉し恥ずかしイベントを挿入すべきだったよ!というか、一之瀬先輩の影が薄すぎて、「本当にコイツとくっつくの???」ってカンジが否めない。今のままだとこの二人の関係は真帆の空回りにしか見えなくて、次で余程上手い事やってくれないと、くっついても「え、なんで?」って思っちゃいそうだ。

そもそも、1巻以外での一之瀬先輩の存在が物凄く空気なので、何故真帆がそこまで一之瀬に固執するのかが見えてこないのが致命的です。キャラも他の演劇部の面々が上手い事キャラを立てているのに対し、あんまりキャラが立っていないように見える。読んでいるほうとしては、真帆も神門とくっついてしまえば?という気持ちにならなくもなく……

神門は2巻で登場した時には結構好きなキャラだったんだけど、本当に一之瀬と真帆をくっつける予定になっているのなら、神門は2巻のみのゲストキャラにしておいて3巻以降は真帆と一之瀬の恋愛模様に話を絞って欲しかったかなあ。

さてさて、物語は次で最終巻ということですが、殆ど全く進展が見られない一之瀬先輩との関係や3巻で意味ありげに出てきた割に4巻では存在ごとスルーされた生徒会長、真帆の傍に潜んでいるらしい黒幕悪魔……などなど、大量にあるような気がする伏線をどうやって回収してくれるのでしょうか。大きく物語が動くであろう最終巻に期待。

個人的にはラスボスっぽい雰囲気を纏った生徒会長の活躍がとても楽しみ(あれ?)


少女七竈と七人の可愛そうな大人

[著]桜庭 一樹

ある日、ごく平凡な女・川村優奈は辻斬りのように七人の男と寝、灰のように燃え尽きたいと思った。狂乱のような1ヶ月の後、身ごもった彼女は誰の子とも知らない子を生んだ。そんな「いんらん」な母から生まれた七竈はみるみる美しく育っていって…
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「いんらん」な母親と人並みはずれた美貌を持って生まれた少女・川村七竈と彼女を巡る人々(一部人間外)の視点から描かれる、連作短編。

「かんばせ」を始めとしたどこか古風な言葉遣い等からしっとりとした大正文学的な印象を受けるのですが、それでいて会話のテンポは非常に軽妙で、どこかライトノベル的ですらあります。七竈の友人であり、こちらも超絶美少年な雪嵐とのちょっと倒錯気味なやりとりや、飼い犬・ビショップの視点から語られる物語も非常に良いのですが、個人的には雪嵐に憧れる後輩・緒方みすずとのやりとりが一番好き。「なんですか、後輩」「本当にヘンな人ですね、先輩」と互いに罵りながらみすずが徐々に七竈に惹かれて行く姿がみてとれて、なんだか微笑ましい。「後輩」「先輩」って呼合いが二人の複雑な心の距離を端的に表しているようで、また素敵でした。よもやラストでああいうオチに行くとは予想も付かなかったけど。

美少女でありながら男など滅べばいいと考える鉄道マニアというちょっと変わり者な七竈ですが、そんな彼女が内に抱える悩みは意外にもごく普通の少女らしくて、そのギャップに魅了されました。

既に通り過ぎてしまった青春時代のほろ苦さとか、輝いていた一瞬の思い出を思い出さずにはいられない。ハードカバーは敷居が高いから、と今まで積んでおいたのを思わず後悔せずにいられない一作でした。


暴風ガールズファイト2

[著]佐々原 史緒 [絵]倉藤 倖

チーム名もユニフォームも決まり、いよいよ本格始動する新生ラクロス部。しかし、「同好会」から「部活」へ昇格し、公式戦に出場するにはあと4人チームメイトが足りない。そんな中、五十嵐が進入部員候補として目をつけたのは、和製ホラーマニアのオーストラリア娘に学園が誇る“王子様”で…!?
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1巻から間髪いれずに読みました、続けて読了の女子高ラクロススポ魂小説第二段。メインキャラクターが「12人(+α)」と、シリーズ第二巻としては物凄く多い筈なのに、そのキャラクターの人数を全く感じさせない各キャラクターの存在感が凄い。確かに嶋あたりは全体的に霞んじゃってる印象を受けましたが、それでも12人が12人、強烈なインパクトを残していきました。

特に、今回は中学生トリオが美味しい所持って行きすぎだったかと。依奈の独白も小坂姉妹の複雑な家庭の事情もさることながら、おそらく最も不順な動機で入部したであろう性悪双子・明葉&光葉姉妹が少しずつラクロスの楽しさに目覚めていくくだりは、もうたまらない。この2人は個人的に苦手なタイプで、序盤からほぼ嫌悪感しか抱いていなかっただけに、ラストのやりとりが一気にツボに来てしまいました。

噂の武士気質の「王子様」はぶっちゃけ、こういう女子高モノに絶対「居そうなキャラ」で面白みにかけたかなーとか思ってあんまりツボには来なかったのですが。どちらかというと、すっかり皮をはいだ級長のツッコミ役としてキャラを確立してしまった長谷川が地味に良い味を出していたと思います。なんていうか、ボケだらけのあのラクロス部に、ツッコミキャラはとっても重要なのです。彼女がいなければあの部活はボケしかいなくなってしまうのです。うん、どう考えても最重要キャラだよね?

そして、今回僅かにフラグがたったような気がする広海と博巳のダブルヒロミコンビから目が離せません。軽薄な駄目兄貴かと思わせておいて、いいとこあるじゃないですか。というか博巳さんは良いツンデレ。

遂に12人そろって迎えた公式戦。ガンガン勝ち抜いていった緒戦の爽快感から一転、去年の優勝校・西嶺大付属との絶望的な戦いはもうひたすら熱くて、紙面の向こうから彼女達を応援したくてたまらなくなりました。古豪を余裕でぶっちぎった後に、こういう圧倒的な試合を見せられると凄く何か感じるものがありますね。結果として負けてしまうわけですが、“負けを知る”という意味で、この敗戦は彼女達に必要なものだったのだ、とも思えて、それでもこちらまで悔しくなって…。登場人物たちと一緒になって笑い、怒り、泣いた一冊という感じでした。本当に、スポーツに全く興味をもてない自分がスポーツの試合でここまで熱くなれるとは思いませんでした。

この敗戦をまたバネにして、強く立ち上がる彼女達の姿が是非とも見たい!…と思ったら、後書きに続編は売れ行き次第…というどっかで聞いたような恐ろしいコメントが…。ああ、その後書きのセリフ、かの名作女子寮歴史モノ「カーリー」でも読みましたよね。それで「カーリー」の続編はまだですか?え、これって事実上の打ち切り宣言とかじゃないよね!?
確かに合宿以降、妙に駆け足な部分が気になってはいたんですけど…。

是非とも続きが読みたいので、ファミ通文庫編集部様は是非とも続編の検討をお願いします。ほんとお願いします。ついでに「カーリー」続編の検討もお願いします
ファミ通文庫は気に入った作品率が実は一番高いのに、高確率で二巻で終了しちゃうからほんと困る…!!



オマケ。
タイムリーに投票受付中のようなのでぺたっと。
投票してこようかと思ったんだけど、誰も彼も魅力的すぎて正直困る…!
級長がぶっちぎってるようなので敢えてツッコミやツンデレに入れるのもありかな…!!



イヴ・ザ・ロストワン

[著]山田 桜丸 [原作]C's Ware

内調の新人・桐野杏子は着任早々ワールドトレードビルセンターで爆発事故に巻き込まれる。その時、一緒に事故にあった女性が殺害され、彼女はその事件を追う事になるのだが…。一方、ワールドトレードセンターを爆破した男は“アドニス”となる人物から脅迫を受け、“SNAKE”として動くことを余儀なくされる…。
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桜庭一樹先生、直木賞受賞おめでとうございます!!

というわけで、急遽今月は「積んでいる桜庭作品を読もう月間」と決定してみたわけですが(といってもたった3冊しかつんでないんですけどね!)1冊目は桜庭さんがファミ通文庫からデビューする前、「山田桜丸」名義でゲームシナリオを担当された作品“イヴ・ザ・ロストワン”のノベライズ作品です。実は「EVEシリーズ」は一通りプレイ済、桜庭さんのノベライズ版もこの1冊以外すべて読んでいる私なのですが、「ロストワン」のノベライズだけは絶版になっていた関係で長らく手元になく、こうして漸く手に取ることが出来た、のです、が……これは正直ノベライズと呼んでいいのか……あまりにも出来が酷い。前半は特に「小説版」とは、とても呼べない。

まず、姿無き爆弾魔“SNAKE”の正体が明かされ、エルディアに舞台が移るまでの過程が、ダイジェストで必要最低限にしか語られていません。その為、この作品は絶対に原作ゲームをプレイした人以外にはオススメすることが出来ません。多分、前知識を全く持たずに読んだら何が何だかわからない上、“SNAKE”の正体だけ明かされてしまうという状態に陥るでしょう。この状態では原作ゲームをやってもちっとも楽しめやしない……本当にこれは、ゲームを既にクリアした人のための副読本扱いしてしまってよさそうです。

ただし、登場人物達がエルディアに舞台を移した後の展開は中々面白いです。ゲームをクリアしていればという前提条件が必要となりますが…。特に杏子とSNAKEの視点でのみ語られてきたストーリーに第三の人物である「プリシア編」を追加したのは上手かったと思います。というか、原作ゲームで「???」だった部分がかなりプリシア編で明かされたりするので、原作ゲームの展開が意味不明だったという人は読むと良いのではないかと。結構面白い事実が浮かび上がって来るし、<EVE>の眠りを護りながら、彼女の目覚めを待ち続けるプリシアの心理描写は流石という感じ。

また、SNAKEの行動の理由が明かされたのも良かったですね。結局原作のゲームだと正体が明かされるまでの杏子編ではあまりにも存在感がアレだし、最後の行動の理由も意味不明だし……とある意味謎に包まれていたSNAKEの心理描写が結構あったのは嬉しかったです。ただ、杏子がSNAKEの中の人に惚れてるっぽい描写は素で引いた。それはさすがに強引過ぎるよ!!!

ただ、残念だったのはなんでこれ、ゲーム内で補完してくれなかったんだ!ってことなんですが……プリシア編がED後でもいいので追加シナリオとして追加されたら、ここまでロストワンが糞ゲー扱いされることも無かったんじゃないかと言う予感が。

ロストワンというゲームは、「EVE burst error」という名作PCゲームの続編として作られ、大変に評判がよろしくなかったアドベンチャーゲームです。むしろ糞ゲーとして名前が知れ渡っているゲーム。実際改めてプレイするといろいろトンデモ設定があって、確かに「ミステリー」や「サスペンス」としては全く成立していないような気がします。ただ、その辺が気にならなければそれなりに面白いゲームだと思います。パソコンを通して語りかけてくる脅迫者「アドニス」の薄気味の悪さはかなり衝撃的ですし、プリシア&真弥子の一瞬の邂逅も好き。そしてエルディア編で訪れる終末的な描写はかなり圧巻のものがありました。その辺は凄くツッコミどころ満載な設定をさて置いても楽しんでプレイできたと思います。

実は私、EVEシリーズの中では一番この作品をやりこんでいたりするのですが。
今から考えると、新人賞をとった作家さんが書いてくる設定はめちゃくちゃだけど魅力はある、「B級ライトノベル的」なアドベンチャーだったかと。

…いや、なんていうか、凄く、「burst error」という名作の続編として作られたことで物凄く損した作品だと思うんですよね、これ。面白くないわけじゃないんだけど「burst error」と面白さのツボが全く違うので、前作ファンが怒り狂うのも理解は出来るんです。出来が悪いことを否定する気も毛頭無いし。

ただ、いっそ全くの別のシリーズとして作られてれば、あるいは…とか思ってしまう、今日この頃。



ところで、他に感想書いてる人がいないのかーと思って検索したら、「雲上四季」の秋山さんが感想書かれてるじゃないですか。

……と、とりあえず「ZERO」「TFA」「バーストエラープラス」のノベライズは面白いんですよっ!?3作品とも原作の前後を描いた番外編なので過度な原作知識は必要とされませんし、それぞれ女性キャラの心理描写に焦点を当てる事で「桜庭一樹」さんらしい作品になっていたかと思います。「ZERO」は1年ほど前に読み返してるんだけど、時間軸の関係で「主人公二人が直接出会わない」のを前提に、間接的に二人を協力させて1つの事件を解決させるっていう手法が絶妙で面白かった。

できればロストワンのノベライズは見なかったことに!



【2月27日 追記】
後天性無気力症候群さんの記事を見たらやらずにはいられなかった。
反省などしていない。(カバーのサイズがまるで合ってないけど)


最初期の傑作…間違っては居ない…よね?(黒歴史的な意味で)


お・り・が・み 獄の弓

[著]林 トモアキ [絵]2C=がろあ?

名護屋河の本家に帰っていた母が巫女姿の妹を連れて帰ってきた。今まで思いもしなかった妹の存在に鈴蘭は喜ぶが、名護屋河本家で厳格に育てられた睡蓮は姉や世俗の穢れっぷりに嫌悪を示すばかり。魔殺商会はどうにもウマが合わない姉妹を連れて、真夏の海に社員旅行に出かけたが…?
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予告通り、海で水着の話。本筋は何気にハードですが海効果かコメディ要素も満載で面白かったです。

妹の睡蓮がもういかにも「世俗を知らず、自分の血筋を誇りに思う巫女さん」のテンプレそのまんまで、とっても素敵です。「神殺し」分家である伊織に偉そうに当たったり、姉のミニスカを見て「はしたない!!」と叫びだしたり、世俗を知らないが故に鈴蘭に弄られたり…と、微笑ましい限り。

海に集った面子はいつものメンバーに加えて聖堂協会の一部メンツが集まり、ものすごくカオス。みーこ様とマリーチのコンビは色々な意味で頂上決戦と言う感じだし、いつもとは打って変わって振り回される役のクラリカもなんだか新鮮でした。そして睡蓮に致命的な弱点を突かれて言い負かされ、凹むイワトビーが可愛い(笑)

ウマが合わなくてついつい弄ってしまうけど、実際妹が出来て嬉しくてしょうがない鈴蘭の内心でのはしゃぎっぷりが伝わってくる前半コメディパートがあるからこそ、後半のシリアスな姉妹対決が哀しく思えます。でも、この姉妹対決、哀しいとかそういうのもあるけど熱すぎる。拳で語り合おうとする姉・鈴蘭の姿に燃えました。

やっと掴んだ幸せな家庭を護る為に自ら“魔王”になろうとする鈴蘭。…となると、やはり次は協会が敵になるのかな?何はともあれ続きが楽しみです。


ムシウタ 00. 夢の始まり

[著]岩井 恭平 [絵]るろお

友達もあまり居らず、家にも居場所が無いと感じている目立たない少女・杏本詩歌。自らの居場所が欲しいと願う彼女は目の前に現れた不思議な女性にその夢を語る。それが、悪夢の始まりとも知らず…。一方、小さい頃から不思議と困っている人を見分ける事の力を持っていた利菜は、3人の虫憑きと出会って…。
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詩歌・大介・利菜ぞれぞれの「はじまり」を描く番外編です。

詩歌が虫憑きとなる「夢の始まり」は、なんかどこかで見たことあると思ったらつい先日アニメでほぼ同じ話(…の、大介と詩歌が邂逅するまで)を見ていたのでした(1巻にも同じような描写があったような気がしなくもないんだけど…どうだったっけ?)。その分、詩歌の家庭の事情よりもその後の大介と土師の関係やなみえの葛藤などが面白かったです。

ていうか土師と大介はなかなかいい関係してますよね。おねえちゃん思わず読了後に「土師×大介」でググっちゃったよ。でもムシウタで女性向ってあるのかな。さすがになさそうだな。個人的に有夏月×大介も良いとおもうよ。

そして後半は「レイディ・バード」こと利菜が虫憑きになったエピソード「夢の黄昏」。1巻ラストで彼女が「本当の夢を忘れていた」というシーンがありましたが、むしばねのリーダーとして疲弊するうちに忘れてしまった訳ではなく、意図的に忘れようとしていたというのもあったんですね。序盤は一見可愛らしい子供同士のお話にみえるだけに、ラストの重さが印象的でした。

しかし、最近の「ムシウタ」シリーズは何度も言ってるけどキャラクターの把握がしきれなくなってきて、久しぶりに出るキャラクターとか居るとそのキャラクターが本編でどのような活躍をしたキャラクターなのか思い出せないということが多すぎてかなり困ります。もうちょっとここだけはなんとかならないものかなあ。「なみえ」とか「センティビート」とか名前はなんとなく覚えてるけど、あんまり印象が無くてイマイチ感情移入出来ないというか、意外な過去に驚いたりしづらいというか。

アニメ化もしたことだし、クライマックスへのおさらいとして富士見の「超解!」シリーズみたいなムック本を一冊希望。


ぼくと魔女式アポカリプス

[著]水瀬 葉月 [絵]藤原 々々

ぼくこと宵本澪は“普通”を嫌う高校生だ。人生は壮大な暇つぶし、学校では変人扱いされているがそれでも“変人”という型から逃れる事は出来ない—と思っていたが、ある日の放課後、引っ込み思案で普通の少女・砧川冥子に告白されて以来すべてが変わってしまって…
 

主人公の恐ろしいまでの中二病発言に危うく本を投げ出そうかと思ったけど、そこを我慢して読んだら凄く面白かったです。投げないでよかった。後2P主人公の独白が続いていたら多分投げてた気がしますが。

中二病で人生投げまくってる高校生がひょんなことから喪われた種の復活を願う魔術師達と、彼らの依代となった代替魔術師達がお互いが持つ“根源闇滓(ルート・アンシィ)”を奪い合うという血みどろの戦い「聖杯戦争励起節(エキサイテイション)」に巻き込まれてしまうというお話。全体的に物凄い欝展開まっしぐらですが、ストーリー展開自体はかなり王道なもので、例によって主人公も最後には中二病な自分が今まで疎んでいた“普通”の中にこそ大切なものがあったと気づくという展開になっています。

なにはともあれ、魅せ場は。ヒロイン・冥子の扱う「代償魔法」は自らを自傷する事によってその肉体を魔術に使うというものですし、こういう設定のお話ではお約束の、魔術を使う“代償”として自らを削るような展開もあり…で、どうみてもこのシリーズのラストは幸せにはなれないんだろうなあという予感がひしひしとしてきます。表紙に騙されないエロ養分もきちんと完備。特にラストで明かされる、“敵”の魔術師の正体とそれに慟哭する主人公の姿は凄く良かったです。凄くストーリーに引き込まれたし、魅せられたし、泣かされた。

ただ、一つだけ不満を申せばイマイチ強引な設定が多かったというのを感じました。特に冥子と巳沙希が代替魔術師となった原因がどちらも強姦絡みだったのには正直閉口したなあ。なんか、女の子でこういうネタだったら「とりあえず●イプしておけば可哀想だろ!!」って男の欲望が透けて見える気がして、女の読み手としてはよい気分がしませんでしたね。後者はまだいいんだけど、冥子が父親に強姦されて自殺したっていうのはもう、本当に理由がないと言うか安っぽいお涙頂戴のための設定って感じで…正直こっちは学校で虐められてるという設定があるんだから、それ絡みで良かったんじゃないかと思うと言うか、家庭の問題に持ち込む理由があまりないんだよなあ…。

キャラクター的には主人公のトランスセクシャル設定(←ネタバレ)も実にイイですしヒロイン勢もよい味出してますが、色々な意味で草太というキャラクターにツッコミ入れずに居られない。ちょっ…おま…ショタな外見で昼行灯な腹黒ってどういうこと!!その外見で数々の女の子達の母性本能を掻き立て、次々と虜にしていくという設定は実にけしからんです。更にその魅力で男まで食い物にしようとは…そ、そんな上目遣いで腕ハグされたって本当の生意気ショタッ子萌えには通用しないんだからねっ!…………じ、じじじじつにけしからんぜハァハァ(*´д`)



…ぶっちゃけ中盤で草太に代替魔術師容疑がかかった時(ネタバレ)、
草太×澪をかなり濃厚に妄想したのは乙女のヒミツです☆(ちっとも隠せてない)


キスとDO?JIN!?お兄様はTAXフリー!??

[著]小林 来夏 [絵]由良

2回目となるイベント参加の場で七海の本を買ってくれたのは明良という儚げな美少女。しかもその兄は西南北の元師匠で、ワイルド系な商業作家・ワイルダー東条だった!西南北や高橋とともに、かなり強引に東条の原稿の手伝いをさせられることになった七海だが、彼には脱税の疑惑がかかっていて…!?
 

同人誌作家を目指す少女と、美形カリスマ大手が繰り広げるシンデレラストーリー(?)第二段。
あんな騒動があったタイミングでこのネタ来るとは、小林先生空気読みすぎです。密かにマダム・バタフライこと蝶子さんの元ネタはある程度この渦中の方ではないかと思っていたので(バタフライエフェクトはスルーしても、ジャンルと言い、華やかなお名前といい…)蝶子さんに脱税疑惑のネタが絡んだら個人的には完璧だったのですが(笑)

相変わらず執事がいい具合にイカレイカしてます。今回は西南北と執事の活躍がイマイチ少なめでちょっと残念ですが…
むしろ82Pの挿絵のためだけにも買う価値ありです

ストーリー本編も凄く良いですが、一時話題になった「同人誌の脱税」という件に関する薀蓄がめちゃくちゃ面白かったです。利益が20万円以上上がったら納税しないといけないとか、なぜ同人誌が脱税しやすいのかなどなど。ちょっと複雑な家庭環境である東条兄妹の家庭環境や脱税の理由にも焦点があたり、前回よりもぜんぜん面白かったかな(やっぱ、「バタフライエフェクト」とテンバイヤーネタは無理を感じたし)。

ただ、正直やはり七海の「弱小サークル」としての活動描写は、どうにも本物の弱小サークルの人間からするとどうしても微妙です。ジャンルの違いはあると思うんだけど、書いてる人自身は商業で活動していてそれなりに大手なのだろうし、どうもそこだけリアリティが欠けてるって言うか…

蝶子が七海に対して「本当にすきなのね、バス王が」って言うシーンがあるんだけど、やはり読んでいると七海は本命はオリジナルで、でもオリジナルが売れないから今はバス王で売名中、って印象を感じます。そういう話がメインじゃないのは分かるけど、どうせ「弱小サークル」であることに変わりは無いんだから最初からオリジナルサークルとして活動させても良かったんじゃないかなあとか思う。というか、大手の裏事情的なネタが満載の本編の方が断然面白いので、いっそのこと七海もとっとと大手サークルまでなりあがってしまえばいいと思うんだけど。

ところで、この本を読んでいて最大の衝撃を受けたのは実はあとがきだったりします。

ていうかね、わたしBLの方のペンネーム水戸 泉っていうんですけどね、…




 な ん で  す  と  ?

実は私、商業系のBL小説は2冊しか持っていないのですが、うち1冊が件の水戸泉さんの本だったりします。もう一冊はかの有名な「お金がないっ!」。後輩が彼女の某錬金術師漫画時代に出した同人誌のファンだったので、同人誌の方も何冊か読ませてもらったりしました。たった2冊しか持ってないBL小説作家のうちの1冊にヒットするなんて狭すぎるよこの業界。

ちなみに持っているBL小説は、不思議な力で両性具有にされてしまったショタッ子がツンデレ天然系な美形青年だの独占欲の強い弟だの、学校の不良だの、触手を呼び出せたりする不思議な少年だの相手に大変な事になると言う実にファンタジーHOMOな内容だったのですが主人公がヤられまくってる割りに本編はしっかりしていて面白く、読んだ同人誌の方もエロは多くて自分設定大爆発だけど文章が上手く、ストーリーに引き込まれる力は一品で普通に面白いと言う感じで密かに「いっそライトノベル方面に来てくれたら作家買いするのに」と思っていた作家さんでした。こんなところでめぐり合うとはなんの運命の巡り合わせでしょうか。

…いっそ小林来夏名義で電撃文庫とかMF文庫Jあたりでギリギリなバトルありなファンタジー書いてくれたら絶対買うんですけど、駄目ですか。


とらドラ・スピンオフ! 幸福の桜色トルネード

[著]竹宮 ゆゆこ [絵]ヤス

どこまでも不幸体質な生徒会庶務・富家幸太がひょんなことから知り合った少女・狩野さくらは生徒会長・狩野すみれの妹。「全教科赤点」という偉業を達成したさくらの家庭教師役を頼まれた幸太は、それ以来彼女の行動にときめきっぱなしで…
 

とにかく不幸な少年・幸太と天然ボケなおっとりトラブルメイカー・さくらが生徒会の愉快な仲間達と巻き起こす、「とらドラ!」番外編。とことんバイオレンスな大河・竜児コンビと違って初々しい二人の姿は見ててほほえましいです。それなのにどうしてこいつら、発言だけはとことんエロいのか(笑)さくらちゃんは天然ボケ…というよりも「天然エロス」という言葉が良く似合うと思います。

勉強を見てあげている幸太が追試が終わってしまう事で二人の関係も終わってしまうことを恐れたり、相手を想う余りに一緒に居ない方が良いのではないかと悩んだり…ととにかく初々しくて甘酸っぱい恋模様が素敵です。そして二人を見守る生徒会長・副会長コンビがまたイイ。初デートで必死に暴走ヤギや暴走羊から二人を護ろうと奮闘する姿は申し訳ないけど笑いが止まりませんでした(笑)

生徒会長・狩野すみれはこちらでネタにしたときは「林水会長+高天原A÷2」くらいの印象だったのですが、実際は天才肌ではあるけどちゃんと少女としての一面も持ち合わせていて、可愛いけどかっこいい、そんな女の人でした。予想してたよりも更に魅力的なキャラでした。そして北村との掛け合いがまた最高で……あの、ごめん大河。

でも個人的に一番ツボにはまったのが合宿の話。例によって不幸体質が災いして入院し、暫く会う事が出来なくなった幸太とさくらがなんとなしにすれ違うという話なのですが、夜のプールでの二人の発言が可愛くて可愛くて…!一応言い争ってはいるんだけど、ふたりがどれだけお互いを好いているかが伝わってくるシーンで、凄くツボでした。うああああ?二人ともか?わ?いい?よ?!!

いつものどこか殺伐としたハイテンションなラブコメな「とらドラ!」も良いですが、たまにはこんな脳みそとろけそうな甘いストーリーも良いなあと思いました。面白かった…!