発作的に自らの空想の世界の住人になってしまう「空想病」の少女・結衣。高校受験の日に偶然彼女の「空想」に巻き込まれてしまった主人公は、何故かその後も彼女につきまとわれることに。なんだかんだで彼女の空想につき合わされていくうちに……というお話。
ちょっと不思議要素を孕んだ、それでも普通の少年少女達が繰り広げるボーイミーツガール……だとおもって読んでいたら、後半以降の展開に度肝抜かれた。結衣の空想が世界に広がり、空想が現実を侵食し、どこまでが『空想』でどこからが『現実』かわからなくなっていく。足元が揺らいでいくような感覚。空想が空想のまま終らず、周囲の人たちの認識を捻じ曲げて現実までをも書き換えていくのが凄かったです。
そしてこの作品のキモは色々な意味で最後の1Pだと思うのです。いえ、あまりにも自然に書かれているので最初全く気付かなくて、読書メーターの感想を見ていて読み直して噴出したのですが!!この落ちてるように見せかけてちっとも落ちてない最終ページ凄い。もうなんていうか「最終ページが本編」と断言してもいいくらいじゃないか。
2巻がここからどう展開していくのか、とても楽しみです。
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今月のまとめと読了記録[2010年3月分]
3月に読んだ本は7冊でした。
いよいよ3月に出た新刊を月内に1冊も崩せなかったという現実に打ち砕かれそう。
アクセス解析とかも引き続きバカテス無双だったので割愛。
2010年3月の読了記録
再読と漫画を含め、全25冊です。少ない……
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ライトノベル春の100冊フェアを勝手に捏造企画に便乗した
絵空さんの「ライトノベル春の100冊を勝手に捏造企画」に便乗。
角川春のライトノベル100冊フェアに便乗して「角川も春も関係ねえ!!俺のお勧めの100冊を読めエエエエ!」と叫ぶ企画です。基本的に1作者1シリーズ縛り、レーベル問わず(ただしティアラ文庫やBL系は除く)で選出しました。
完結作品は意図的に途中までしか選んでません。
「ここまでは読んで欲しい」「ここまで読んでハマらなかったらもういい」くらいの心持ちで選んでます。
ややなんで打ち切られたし系多めなのは仕様です。
初心者向けとかそういうことはありませんむしろクロウト向けの面持ちあり(特に電撃文庫)
見たい人は続き読むからどうぞー。
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学校の階段2
ものすごくいまさらですが、1巻再読して続きに手をつけ始めました……学校の階段を走って上ったり下りたりする「階段部」の面々を描く、学園スポコン(?)第二巻。今回は生徒会から正式に「部」として認められた階段部が正式な部昇格を目指して奮闘するかたわら、「階段部」誕生のきっかけに迫るお話。
顧問探しからはじまって、部員獲得、書類提出?…と外交的なお話が中心になったせいで1巻よりもスポコンというより学園ラブコメの香りが強くなっていた印象。でも、階段部設立のきっかけを作った九重vs刈谷の夜の階段レースにはものすごく心がときめいて、ワクワクする。
さまざまな紆余曲折があって陸上部と階段レースをする羽目になって、1巻では三枝に散々翻弄されていた神庭が逆に相手を翻弄する展開には、彼の成長を感じ取ってにやりとしました。
そして1巻でさんざんいがみ合っていた神庭と井筒がすっかり仲良くなっているのに盛大に噴いたそしてちょっぴり萌えた!1巻を再読した時はあまり感じなかったのですが、1年生コンビのほかにも刈谷&遊佐の(元)生徒会コンビとか、何やら不吉な言動をしていた三枝など、何気に男子分が美味しい。特に神庭&井筒と刈谷&遊佐には今後もぜひとも活躍していただきたいところです。私が男子萌え的な意味でワクワクします。
しかし、2巻の殊勲賞はなんといっても小夏姉ちゃん&大津先生だとおもうんだ!!典型的な「厳しいから生徒には嫌われるけど教え子思いな先生」だった大津の躊躇いと、まっすぐに生徒の味方であり続けようとする小夏。立場は違うけれど同じ思いを奥底に持っている二人のやりとりにニヤニヤが止まりませんでした。
……それにしても、1巻再読したあとに初読時の自分の1巻感想読み直したら「小夏のキャラが薄い」とか書いてて、当時の自分はどこに目を付けていたのかと……再読時の感想は「小夏ちゃん可愛いよ小夏ちゃん」だったという不思議でした。
読書遍歴を振り返る流れに便乗する その1(小学時代編)
あこやさんちの「読書遍歴を振り返ってみる」エントリを読んで、色々ホイホイされたので便乗してみます。
ラノベ関係の読書遍歴は以前書いた「懐かしのラノベを語ってみる」エントリで殆ど書いてしまったので、今回は基本的に「ラノベ以外」で。
うちは小さい頃から割りと、親が両方とも本を読ませよう本を読ませようと必死になってる人達だったので何かと本が家にある家庭でした。幼稚園時代からとりあえず本棚だけは完備されてたような記憶が……
小学生時代その1:絵本関係
▲Amazonで見る | おおむら ゆりこ 福音館書店 1967-01-20 |
それはいいけど、読み直してみるとこのネズミたち、結構腹黒……ゲフンゲフン
▲Amazonで見る | 岩崎 ちひろ 岩崎書店 1972-01 |
自分の事を話さない女の子が、人を助けて死んでいくお話。
うちは家族そろっていわさきちひろが好きだったようで、結構いわさきさん挿絵の絵本が多かった。そして現在手元に残ってる絵本もいわさき率激高だった。
▲Amazonで見る | Dick Bruna 福音館書店 2000 |
小学生時代その2:日本の児童文学編
▲Amazonで見る | 杉浦 範茂 講談社 1987-05 |
岐阜から東京に迷い込んでしまった飼い猫が野良猫の「イッパイアッテナ」と出会う話。
これもよかったけど続編の「ルドルフたびだちひとりだち」も好きでした。
正直仲間になったブッチーが可愛すぎると思うんだぜ…
▲Amazonで見る | ヒロナガ シンイチ 講談社 1999-11-15 |
はつかねずみな宇宙人と小学生の男の子が色々するお話。
▲Amazonで見る | 理論社 1980-03 |
なんか全体的に「●●に向けて旅するお話」が好きだった。ルドルフとかもそうだし…
▲Amazonで見る | 瀬川 康男 理論社 2000-04 |
脳内類似品として「ながいながいペンギンの話」なんかも。
▲Amazonで見る | ひらい たかこ 講談社 1999-04-15 |
日常世界から異世界に迷い込んじゃう系の話も大好きでしたねー。「霧の向こうの不思議な町」「地下室からの不思議な旅」とか。子供の頃は、電車に乗るといつ電車が異世界に繋がってしまうのかとワクワクしてました。
中学生以降は、電車に乗るたびいつ電車が止まらなくなって惨劇の幕があけてしまうのかガクガクしてました(※最終電車的な意味で)
▲Amazonで見る | 前川 かずお ポプラ社 1978-02 |
▲Amazonで見る | 三木 由記子 講談社 1980-11-10 |
▲Amazonで見る | 永井 郁子 あかね書房 1987-12 |
わかったさんのおかげで長らくクッキーつくりにハマったけど我が家にはオーブンがなかったのでそもそも全く上手く焼けなかったという罠が……
小学生時代その3:海外の児童文学編
▲Amazonで見る | E.H.シェパード 岩波書店 2000-06 |
今では「●ィズニーとか邪道です、シェパードの挿絵最高です」と叫ぶような原作信者になりました。
▲Amazonで見る | Tove Jansson 講談社 1979-08 |
洪水で離れ離れになったムーミンファミリーを呼び戻すため、ムーミンパパ達がなぜか「演劇」をする話。
▲Amazonで見る | 井伏 鱒二 岩波書店 2000-06 |
動物語を喋れるドリトル先生と、ドリトル先生の家の動物たちのお話。
▲Amazonで見る | 久米 元一 あかね書房 1990-04 |
白いオオカミと、その飼い主(?)の少年が狼の保護地域を目指して逃避行するお話。なんか全体的に食べ物の描写がおいしそうだった記憶が。
映画版のグラフィックは、どう見ても主人公がウッソ(Vガンダム)
▲Amazonで見る | Michael Ende 岩波書店 1976-09 |
長くなったので、中学校以降の読書遍歴は別エントリに……
ギャルゲヱの世界よ、ようこそ! disc3
「メモリーロンド」の一件で傷ついた理恵も回復し、なんとかこれまでの日常を取り戻した武紀たち。ところが、今度は春海が隠し事をしているようで…。不安に思っていたところ、春海と夏海の実父だという男が現れ、二人を引き取りたいと言い始める。それは、既にこの世から消えたはずの、武紀が展開しなかった「ファンディスク」のシナリオ通りで…!?
ギャルゲーの世界を現実に投影してしまった主人公と、彼の手によってこの世に投影されたヒロイン達が織り成すラブコメ第三巻。今回は、あらすじの通り春海・夏海姉妹を中心とした都筑家家庭崩壊(?)編。2巻読んだときに「そういえば、すっかり春海夏海姉妹が空気だなー」とか思っていたら、そこからこんな物語が展開するとは。オープニングの淋しそうな姉妹の姿がとても印象的でした。
春海・夏海の実父が登場し二人を引き取ろうとするという、武紀が展開しなかった「ファンディスク」の内容と酷似した現実の展開から、更にこの物語のシステムに対する疑惑が提示されていく、謎解き的な展開が面白かったです。今回は結局……でしたが、火種自体は残したままの終わり方となったので、これが今後の伏線へと繋がっていくのかな?とはいえ、ゆうきが自分のシナリオを評して「ファンディスクらしい甘々展開」と言った通り、ファンディスクで破滅的な展開になる可能性は低そうな気がしますが…
武紀がヒロイン達の中から「誰か一人を選ぶ」事で現在展開されている「シナリオ」にも終わりが訪れてしまうのか、それともただ現実の人間と同じように誰かを選んだ後もこれまで通りの日常が続いていくのか。それとも今回おぼろげに提示された「ハーレムエンド」という新たな展開を選んで未知のシナリオに突入するのか…、今後の展開が非常に楽しみです。
それはそうと遂に高橋愛子ルートの可能性が垣間見えたわけだが!!
今回も良い男前だった高橋愛子さん、個人的には是非とも正ヒロイン昇格していただきたいものですがいかがなもんでしょう。いやまあ、攻略不可ヒロインだからこそ輝くキャラって感じもするんですけど。
FBオンラインで連載中の「シルバーブレット」側のキャラクターもさりげなく関わってきたみたいなので、そろそろあちらの外伝も読むべきかなぁ。文庫化してから読むか、先にオンラインで読むか結構悩ましい…。
Gosick 〜ゴシック〜
「今のうちに買わないと挿絵つきで読めなくなっちゃうよ!」という脅迫観念(違)の元、今更読み始めました。(←どうやら挿絵付き「Gosick」が別途出るようですよ!)第一次世界大戦後のヨーロッパの小国を舞台に、日本の帝国軍人三男の少年が少し不思議な女の子に振り回されるというおはなし。同じミステリー文庫の「しずるさん」シリーズのような、安楽椅子探偵モノなんだとなぜか思い込んでいたのですが、普通にミステリーしてました。
ヨットに乗りにきたはずが、なぜか不吉な噂を持つ“幽霊船”に乗ってしまい、噂の通りに同乗者がどんどん死んでいってしまうという状況の中、見た目は可愛らしい少女なのに、老獪な印象を持つヴィクトリカが時々垣間見せる少女らしい一面が可愛らしかった。作家・桜庭一樹というと「推定少女」や「少女には向かない職業」のイメージが私の中で非常に強く、そういう作品と比べると「Gosick」は「らしくない」印象を受けたのですが、読み終わってから再考すると、「EVE THE LOSTONE」が持っていた雰囲気に近いのかなあとか思いました。いえ、展開が無茶すぎるとかそういう意味ではなく、あくまで持ってる雰囲気が!逃げ場の無い閉鎖空間の中で、徐々に“死”が間近に迫ってくる感覚とか、そういうあたりが。過去の「QueenBerry号」での、エレベーターのトラップはトラウマすぎる…。
ミステリーというよりは少年少女の冒険話として面白かったです。Twitterで「角川つばさ文庫から出せばいいのに」という意見を見て「なるほど」と思ったのですが、青い鳥文庫とかと一緒に並べたい気がします。
個人的に、「あわせて読みたい」児童文学は「クレヨン王国と水色の魔界」。
1円玉の話がトラウマすぎる。
クレヨン王国水色の魔界 (講談社 青い鳥文庫)三木 由記子 講談社 1991-06-15 by G-Tools |
フォルマント・ブルー リミックス
奇病に侵され、18歳の誕生日に生命を落とす事を運命づけられた少年・楷名春希。絶望のままに無気力な毎日を送る彼は廃棄場で自らの事を「シンセサイザー」だと言う少女・庭瀬伽音に出会う。彼女との出会いを経て、少しずつ生きる気力を取り戻していく春希だが…
富士見ミステリー文庫の「フォルマント・ブルー カラっぽの僕に、君はうたう。」を加筆+文庫未収録の短編を加えた新装版。不治の病に冒された少年と自分の事を「電気の歌姫」と名乗る少女が出会い、二人の過去や未来に立ちふさがる出来事を乗り越えていく、というお話。
笹野響哉の存在が序盤から示唆されていること、敵側の事情がある程度明かされてくること、ラストで主人公が死の運命から逃れた事に対する説明が加えられていた事など、富士ミス版では結構唐突に思える事が多かった伽音が攫われてから先の展開に対するフォローが加えられていて、旧版よりも判りやすくなった印象を受けました。楽器屋の主人と庭瀬教授の関係とか伽音の出自なんかも、富士ミス版では明かされてなかったっけ…?とにかく、そんなに多くを加筆しているわけではないのですが、説明不足だった部分に細やかな修正が施されていて、これだけの加筆でも結構雰囲気変わるものだなあ。
主人公達と同じくらいに、チョイ役のはずのガルバニックの辿った顛末が胸に残る。主人公達よりも誰よりも、色々な意味で「悲劇的」な運命をたどったのは彼だよなあ。ガルバニックとしての「それ」と、若き音楽家だった「彼」が誰も知らない所で鬩ぎ合い、破滅へと進んでいく姿が切ない。
音楽の奏でる美しい雰囲気と、人間という種の醜さという対称的な要素が同居する物語ですが、個人的にはやはり春希と伽音がコンテストに応募する用の音楽を一緒に作っていく場面が好きです。なにかを創り上げていく場面というのは、凄くワクワクするなあ。そして「心音」を音素材として撮るシーンは、別に何もしてないのにエロいですよね!!
同時収録の短編「皇帝の棲家には、電気仕掛けの歌姫。」は、ピアニストを目指す一人の若者が、春希と出会う前の伽音と出会うお話。存命の頃の庭瀬親子の人間関係等が透けて見える一方、普通に良い青春話だーと思っていたら、オチに噴いた。そ、そう来るのかーーーっ!
断章のグリム11 いばら姫(下)
[著]甲田 学人 [絵]三日月 かける 死なない異形と化した母親と共に、「いばら姫」の泡禍が発動する真喜多家に隔離されてしまった蒼衣達。泡禍の正体も掴めないまま、惨劇は彼らの予想を越えて広がっていく。雪乃と蒼衣の指示で、庭に出た田上颯姫は思わぬ人物に出会い… |
怪異描写的には前巻ラストが最高潮という感じだったので、前巻ほどの衝撃はなかったのですが、それ以上に今回は正常な人間の異常さが強調されている物語のように思えました。泡禍の影響ではなく、あくまで自分自身の考えで“異常な”結論に至った人間の姿に、背筋が凍る。今までのように、あくまで非日常的な何かが原因で命を落とした…というのではなく、非日常がトリガーを引いたとはいえ、結果としては「正常な人間同士が殺しあった」という形になってしまったのがとても悲しい。特に莉緒にはひとつでもいいので救いのある展開がほしかったなあ…と思います。結局最後まで彼女は、姉や弟の“代用品”としか見てもらえてなかったわけで。
しかし、エピローグでの風乃での態度をはじめとして、なんだかすっきりしない終わり方。いつぞやの千恵のように、莉緒の“騎士”としての再登場もありうるのでしょうか。続きが楽しみです。
EVE TFA—亡き王女のための殺人遊戯
[著]桜庭 一樹 [原作]C's Ware うだるような真夏の昼下がり、ふとしたきっかけで天城小次郎が知り合った不思議な少女・セシル。本屋と喫茶店、それっきりの邂逅だと思っていたがその晩彼女は小次郎の探偵事務所に依頼を持ってきて…。一方、小次郎の元恋人・桂木弥生の元にはとある少女を探してほしいという依頼が舞い込み…。 |
小次郎・弥生の両視点から別々の依頼を操作しているうち、“殺人遊戯”と呼ばれる連続殺人の核心部分へとつながっていくという辺りはゲームと基本的に同じ流れ。以前読んだ「EVE ZERO」ノベライズは原作の「マルチサイトシステム」の特性を無理に小説に持ち込んで時系列がわかり辛いという状態になっちゃってましたが、今回は基本的に時系列順に物語が語られるので凄く判り易い。
特に、小次郎と弥生の邂逅が両視点から見れるのは面白いなあ。小次郎が「弥生が追いかけてくるような気がした」と語ったのと同時刻、弥生が本当に小次郎を追いかけようと動き出していたり…と二人のすれ違いやシンパシーがもろに伝わってくるのが面白い。というか桜庭さんは本当に弥生好きだね!小次郎に今も心囚われ続けてもがく彼女の心理が痛いほどに伝わってきます。
今回のゲストキャラで物語の鍵を握る少女・セシルのなんともいえない妖艶な無邪気さみたいなのが物凄い印象に残った。掴み所のない蝶のような少女ってこういう事を言うんだろうなあ。
まりなさんの出番が必要最低限に絞られているため、まりなファンの私としてはそこだけとても残念だったのですが、ラストは彼女が美味しいところをまとめてもっていってくれるのでとてもニヤリとする。エピローグでの小次郎との同性の友人のようなさっぱりした会話も好きだなあ。しかし何度読んでもこれ、オチが色々と酷いwww