[著]中村 恵里加 [絵]たけひと 緊急捕縛部隊と米軍の合同演習が行われることになり、舞台となる無人島に旧捜査六課のメンバーが集う。久しぶりの再会を喜ぶ面々だが、その影では米軍による恐るべき陰謀が動いていた。更に、“特高”に所属するアヤカシ・鵺のネジが捕縛部隊のとある人物に復讐するため、合同訓練中の島に現れて…!? |
改めてこの話読むと痛い、痛いよ……痛すぎるよ…。久しぶりに六課メンバー揃い踏みで鍋を囲んだり、優樹との一件を引きずりつつも捕縛部隊で先輩達とワイワイやってる太一朗の姿が今までになく和気藹々と描かれているだけに、ラストの展開が痛すぎる。
「……おかしいんですよ、私」
「そうだね、君はおかしくなった。その原因全てが君にあるとは言わないが、僕はとても悲しいよ」
右目の「侵食」により今までとは明確に違う、今までになく攻撃的な考えを覗かせはじめる優樹。共同演習では、今回は仮想標的としては御役御免となったものの、米軍の陰謀で虎司が重傷を追って動くことを余儀なくされ、再び彼女の中で“主”と呼ばれる鬼が目を醒ますことに。シリーズ通して痛々しい描写がとにかく多かった優樹ですが、今回はなんだか和気藹々と平和な雰囲気……とか思ってるとラストで激しくカウンターパンチ。ラストの痛々しさは、戦闘相手を考慮しても今までの中で格別です。
「……君は、本当におかしくなってしまったんだね。僕は少し悲しいよ」
一方、捕縛演習のため森林の中に居た太一朗は赤川や木島と自らの考え方の違いや捕縛対象として現れた虎司に対して自分がとってしまった行動に若干の違和感を覚えながらも復讐のため島に乱入したネジと交戦し、最後の決定的な“何か”を明け渡してしまう事に。優樹が彼を評して「誰かに似ている」と言うシーンがありますが、ラストの様子なんかもろに4巻ラストの高橋幸児的で、多分それのことを言いたかったんじゃないかなあと思ってみたり。しかし彼のことを一番嫌っていた太一朗がそうなってしまうというのはなんとも皮肉です。
彼に宿った“モノ”がいつを境に根を張り出したのかが物凄く気になるところですが、太一朗の思考が決定的にその方向に傾いてしまった時といえばやはり4巻のアレかなあ…5巻で登場した彼女との相違点を考えると、“それ”が人間の手に委ねられる条件というのがなんとなく見えてきそうな気がしますが…うーん。
好きだった。
色々あったが、嫌な記憶ばかりでは決してない。彼らを殺したいなどと、決して思わない。
それなのに、心に浮かんでくるのは、殺意ばかり。
理由も何もない、彼自身の殺意ではない殺意。
「さようならだ、山崎太一朗くん。僕は決して君のことが嫌いじゃなかった。できれば君の死を見届けたかったが、もうそれすらも不可能だ。僕は君の助言者になることはできない」
全てが終わったあと、船上での大田と太一朗の会話が地味に涙を誘うっていうか……思わず緩みかける涙腺と戦った。ていうか、こんなことになるまでそんな事すら気付けなかった太一朗のツンデレっぷりがなんか凄い哀れで、なんかもう……