魔術学校の二学期が終了したある日、待ちきれなくなったジオエリオンとクノンが魔術で対決することに。内々にやるつもりが、気がつけば同級生に先輩に教師に世界一の魔女グレイ・ルーヴァまでが観戦する一大エンターテインメントに!?そして、予定通り半年で単位の見込みを立てたクノンは研究チームを発足させて大本命である「魔術を入れる箱」の開発に取り組むが、それが思わぬ結果を呼ぶ羽目に……!?
「待て」が出来ない男たち
前巻のジオエリオン「焦がれて待とう」から今巻第一話『焦がれた逢瀬』までのこのスピード感。1年生ではトップクラスの魔術使いである二人の魔術対決は周囲の期待に応えてめちゃくちゃアツくて面白いものだったんですが、それはそれとして自分で逸るクノンを留めておきながらも全くクノンとの逢瀬を我慢できないジオエリオンに笑ったし、待ってましたとばかりに即受けるクノンにも笑ってしまった。というかもう魔術対決のはずなのにいちいち描写が恋人同士の逢瀬みたいなんですがそこんとこどうなんですか!?クノンの性別が違ったらまじでミリカ様に超強力なライバル出現!!になるところだったので危ない。(ミリカ様は仲の良い男男を外から見守りたいタイプ)こんなの作中の同学年女子だったら腐ったオタクになっちゃうじゃん!!とおもったら普通に作品内世界でクノンとジオエリオンのカップリングが流行ってて指さして笑った。ですよね〜!!!クノンとジオエリオンの二次創作があったらご一報くださいどっちが上でもいいです。
これまでの集大成という名に相応しい1年生編クライマックス
色々な意味で初っ端のクノンとジオエリオンの魔術対決にインパクトを持っていかれがち(※個人の感想です)な今巻でしたけど、魔術学校1年目の集大成という説明に相応しいこれまでの総決算のような内容でした。同じ特級クラスや“派閥”で知り合った面々はもちろん、クノンが波乱の種を巻いた二級クラスの顛末まで含めて、色々な意味でクノンが入ったことで様々な化学反応がおきたのを感じられて楽しい。特に感情が欠落していたはずの聖女レイエスの成長がめちゃくちゃ面白かった。感情を持たなかった人間が感情を獲得するという物語がこんなに笑えちゃっていいのか。里帰り回で、昔の彼女を知る人々がすっかり金と作物の虜になって帰ってきた聖女をみて困惑するのめちゃくちゃ笑うし、トドメとばかりに彼女が学園に戻った途端に発生した例の騒動とそれに対する反応には本当に笑うしかなかった。特に作物について、言ってることが完全に「面倒くさいオタク」なレイエス、もう感情が無いというよりは単に「感情が表に出にくい」レベルなんですよね……むしろ生まれた感情に振り回されてる感すらある。
そんなふうに周囲に大きな影響を与えながらも本人はあくまで自分の欲望に正直に、マイペースに生きてるクノンでしたけどそんな彼だからこそジオエリオンへの執着と魔女グレイ・ルーヴァと会話した際の反応が印象的でした。特に後者の取り乱しっぷりはなかなかすごい。女性に対してはつねに紳士なクノンがあのハプニングをやらかすのはなかなかいい感じに取り乱してたよなあ。
婚約者のミリカも動きはじめて、今後がどうなっていくのか更に楽しみになったシリーズ第四巻でした。それにしても学校の面々はまだしもリンコやミリカまで男同士はやぶさかでもない!!とか言ってるの笑うんですよ。男男間クソデカ感情が嫌いな女子なんていません!!(クソデカ主語)