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ティアムーン帝国物語4〜断頭台から始まる、姫の転生逆転ストーリー〜

 
Gilse

「姫殿下、その叡智で我が師を説得していただきたい」
孫娘ベルと、未来改変の一歩を踏み出した元わがまま姫のミーア。帰国した彼女を待ち受けていたのは、忠臣の無茶振りーー偏屈頑固な超変人賢者の説得だった! 理由を聞けば、ある公爵令嬢の妨害工作で、開校目前だった聖ミーア学園の学園長候補が全員逃走。唯一の頼みの綱はその師匠らしく......?  目指すは、来たる大飢饉に備えた「未来の天才児たちによる新種小麦の開発」。優秀な長を手に入れ、帝国に学問の門戸を開くべく、叡智・ミーアが動き出す! 「こうなったら、わたくしが教鞭を取って差し上げますわ!……あらアンヌ、なぜ止めますの?」 保身上等! 自己中最強! 小心者の自称敏腕教師が、孫娘と運命に徹底抗戦する、歴史改変ファンタジー第4巻!

ルードヴィッヒからの呼び出しを受けてティアムーン帝国に戻ったミーア。四大公爵家のひとつ・グリーンムーン公爵家の妨害によって建設中の聖ミーア学園の学園長や講師候補が獲得できなくなっているという。代わりの学園長候補として、ルードヴィッヒの師匠である放浪の賢者ガルヴを説得してほしいと言われるが……。

「自分の幸せ」のためならいつでも全力!!(良い意味で)

賢者ガルウ獲得を巡るお話がとても良かった。「帝国の叡智」の人となりをを計るため「三顧の礼」を求めて扉を閉ざすガルヴと、そんなガルヴの家の前でわざと待ちぼうけを喰らうことによって相手の非を指摘し、断りづらくしてやる!!と意気込むミーア。例によって思惑がすれ違ったままガルヴがミーアの行動を良い方に解釈して先に折れる……といういつものパターンなんだけど、その一方で「ガルヴに反撃の余地を与えないため」にミーアも全力で礼節を尽くして相手を待つ…という展開がとても良かった。

ミーア、とにかく自分が良い思いをするためならなんでもする人間ではあることは一貫しているんだけど、その一方で一貫して「自分の行動のせいで他人が嫌な目をしたら自分も気持ちよくなれない」「他人に悪い思いをさせたらいつかそれは自分に返ってくる」ということを知っている人間なんですよね。だからこそ、自分が気持ちよく生きるために他人を思いやり、全力を尽くすことが出来る。だからこそ、(様々な誤解はあれど)人々が彼女の二度目の生に惹きつけられる。

その一方で、そういうミーアの気質は決して二度目の生だけで育まれたものではなくて……一度目の生でルードヴィッヒが最期までミーアに尽くした本当の理由。そして、師との問答によって「帝国の叡智」ではなく「ただの人間のミーア姫」に仕えることを改めて決意するルードヴィッヒの想いに胸を打たれます。

ティアムーン帝国没落を巡る謎のひとつが、ついに明らかに…!?

学園に戻ったミーアはグリーンムーン家の令嬢・エメラルダから夏の舟あそびに誘われる。護衛としてシオン、キースウッド、アベルの三人を引き連れてグリーンムーン家とつながりの深いガヌドス港湾国に向かうことに。一方、一度目の生での飢饉の際のガヌドス港湾国の動きに違和感を感じていたミーアは、ルードヴィッヒに相手のことを調べさせようとするが……。

一度目の生でミーアを真っ先に裏切ったとされるエメラルダと、その際に食料支援を断ったガヌドス港湾国。楽しいバケーションの裏でルードヴィッヒ達が動き、ティアムーン帝国没落を目論む恐ろしい陰謀の存在が見えてくる!!という展開がアツい。四大公爵家のどこかに潜むといわれている「敵」の影も少しずつ鮮明になってきた。

それはそれとしてアベルとミーアのイチャイチャっぷりがすごくてお前ら早く婚約しろ!!すぎる。そして、良くも悪くもミーアの親戚筋としかいいようがない、人がよくてポンコツで何故か最近距離を置かれがちなミーアにかまってほしくて仕方がないエメラルダの行動にニヤニヤしてしまった。彼女もなんだかんだでお貴族の習わしや家の事情に縛られているだけなんですよね。いやだって自分のメイドのこと、あれだけ下げる発言をしておきつつ名前ちゃんと覚えてるじゃん……毎度名前を呼びかけては言い直すところとか、可愛すぎるじゃん……これこのままだと絶対に近いうちに破裂する爆弾だなとおもうけど!!

実質前後編の前編みたいな終わり方なんだけど物語はここから第三部に突入。波乱の予感しかない終わり方で、続きがどうなるのかとても気になる。楽しかった!!

今回も書き下ろしがよかった

書籍版書き下ろしはミーアがまっさきに手を入れた新月地区の人々を巡る「現在」と、ミーアベルの回想によって描かれる「未来」のお話。ミーアの善行が巡り巡って孫娘のミーアベルが窮地に陥った際に心強い味方として返ってくるの、本当に胸が熱くなるし、それによって救われたミーアベルがおばあさまの教えに従って「現在」の新月地区の人々に少しでも気持ちを返したい、と思う展開がとても良かった。それにしてもルードヴィッヒの晩年、丸くなり過ぎでは?

電子書籍版特典SSはミーアの家の料理人・ムスタの一度目の生でのささやかな後悔と、現在の輝かしい栄光のお話。黄月トマトのシチューに纏わるエピソードは第一巻の一番最初でも印象的に描かれるだけに、彼の中にどんな葛藤があったのか、そしてその彼がどう変わっていったのかを知ることが出来たのはとても良かった。それにしてもこの話のムスタといい今回の本編でのエメラルダやルードヴィッヒといい、一度目の生での記憶を自覚はしていないないものの継承しているっぽい描写がとても気になる。ミーアが幼少期に「時を戻して」やり直していると思っていたけど、ひょっとして世界そのものがどこかの段階でやり直しているのか?


ヴィクトリア・ウィナー・オーストウェン王妃は世界で一番偉そうである

 

ヴィクトリア・ウィナー・グローリア公爵令嬢。 フレデリック・オーストウェン王子の婚約者である彼女は ある日婚約破棄を申し渡される。 だが、それを「我は婚約破棄を許可しない」の一言で 切って捨てたヴィクトリアが取った行動は―― 「フレッド。……そなたはさっき、我に婚約破棄を申し出たな?」 「ひゃ、ひゃい……」 「では我から言おう。――もう一度、婚約をしよう。我と結婚しろ」 「はいぃ……」 かくしてグローリア公爵令嬢からオーストウェン王妃となったヴィクトリアは その輝かんばかりの魅力で人々を魅了し続ける――!

フレデリック・オーストウェン王子は男爵令嬢であるマリアと恋に落ち、婚約者である公爵令嬢ヴィクトリアに婚約破棄を言い渡した。ところが、当の婚約者・ヴィクトリアはそれを聞き入れない──どころか、どこまでも偉そうに愛を囁いてきて…。

えっこの王妃イケメンすぎ…!?

とにかく偉そうで覇王のような物言いのイケメン王妃様がその偉そうな態度と物言いに相応しい才能を持ってライバル令嬢達を蹴散らし、自分に言い寄る間男も物ともせず、国家を揺るがすトラブルを解決していくお話。

とにかくイケメンすぎる王妃がひたすら偉そうに最初は自分の身の回りから、そのうちに国に関わるような事件までも解決していってしまう姿が爽快。おおむね偉そうな態度とその場の勢いで周囲を圧倒しつつ、その反面しっかりと相手の求めるものをリサーチ・提示して納得させて味方に引き込んでいく手腕がまた見事でとにかく気持ちよかった。常にWin-Winで解決するので誰も損してない。こんなん王子じゃなくても惚れてしまう。

王妃のキャラが強烈で、しかも彼女の行動に誰も彼もが巻き込まれていってしまうため常に本編は慢性的なツッコミ不足ではあるのだけど、そんなツッコミ不在の物語に対してかなり軽めのノリでツッコミを入れてくる地文のテンポがとても良くて、そこもなかなか新鮮でした。いや、その他の登場人物も金のために王にすりよる令嬢やら農家に引力を引かれすぎてる前王の愛人やら猫とふかふかお肉が大好きなライバル令嬢やらなかなかの濃さなんですけど…!!登場人物の中ではヴィクトリアの間男を目指す術士のミカエルだけがツッコミを頑張ってた。

強い王妃×かよわい王、意外なまでにいちゃラブだった

王子フレドリックの婚約破棄騒動から始まる本作ですが、王子が「ざまあ」される展開とかヴィクトリアが王をほっぽってひとりで無双するような展開は一切なく(幾度となく「愛の暴走特急」になってる時はあった)、むしろ最初に婚約破棄を切り出した後はひたすら王と王妃(序盤で結婚した)のいちゃラブになります。ヴィクトリア、世界で一番偉そうだし覇王のような女帝だけど、そんな彼女がなんだかんだと伴侶であるフレドリックの意志を尊重するし、彼の治世をもりたてるために尽力するし、そして夜となれば可愛らしい一面を見せ……見せ…………なんかもう色んな意味で夜の描写も襲い攻めって感じでしたがフレドリック的には可愛い女に映っているのではないかと…はい!!!

そんなヴィクトリア、一見何の弱点もないような「強い女」であると同時に正確に自分の弱点や欠点も把握していて、そこを補うためにフレドリックや周囲の人の力を借りることを厭わない。囚われのフレドリックを取り戻すため、ヴィクトリアがこれまで培ってきた人脈すべてを駆使して奮闘するクライマックスがとても良かったです。

どこまでも破天荒な物語でありながら、その実その破天荒さがきめ細やかなリサーチや正確な自己分析によって補強されているので気持ちよく読めるんですよね。あと誰も不幸にならないので安心して読める。楽しかった!小説家になろうのほうで続編も予定されているようなので、続きをとても楽しみにしています。


ロクでなし魔術講師と追想日誌 8

 

初めて会ったその人は震える程に恐ろしく、本当に優しい人だった
フェジテのみんなが不在のなかで、グレンの家にルミアが住み込み!? まるで新婚夫婦な2人きりの生活に、ドキドキが止まらないルミア。そして思い出す。初めてグレンと出会った、3年前のあの日のことをーー

特務分室の栄光を描く前巻の短編集の直後にこの「狩られる側から見た特務分室時代の冷酷な魔術師殺し・グレンの話」入れるのマジで温度差がすごい。ラブコメからちょっといい話まで、今回もバラエティに飛んでいて楽しい短編集でした。

グレンとハーレイ先輩をもっとセット売りしろ

どの話もすごく良かったんですけど、グレンが馴染みの店からの依頼で幻のキノコ「ゴルデンピルツ」を探すハーレイの案内人をする『キノコ狩りの黙示録』が最高に良かった。システィーナ達を巻き込んで、醜いキノコ争奪戦と化していくのが最高にカオスだし、一触即発どころか最初から最後まで喧嘩しっぱなしのふたりの様子がめちゃくちゃに面白かった。仲悪すぎ通り越して仲良すぎか!?

そして、そんな犬猿の仲のふたりが共通の目的を理由に手を組んだら最強の相方に……って普通に大好きな奴なんですが!!???いやほんと、このふたりにここまでのポテンシャルが秘められているとは思いもしませんでしたよね……ハーレイ先輩、バトルの時は割と後方で生徒たちを護りつつ戦ってること多いから、最前線で問題の解決に勤しむグレンと手を組むこと、殆どないもんな。もっとこのふたりセット売りして欲しい(グレンにはアルベルトという最強の相方がいるし本編で組ませるのには限界があるかもしれないけど)

システィーナの「趣味・小説」の設定、本編ではこれが初出か〜!

趣味で小説を書いているシスティーナがひょんなことから自作の主人公と同じ名前の女性・ミスティナと出会い、彼女に小説の続きを見せることになってしまう短編『貴方に捧ぐ物語』も良かった。はじめてのファンに舞い上がり、読者の意見を意識しすぎて本来書く予定だった結末を捻じ曲げてしまうシスティーナがミスティナの本当の気持ちと家の事情を知り、彼女に自分のような後悔をさせたくないと奔走する姿が印象的でした。

ここで今回の件とは全く関係ないのにミスティナを救うために手を貸してくれるグレン先生がめちゃくちゃ教師してるし、どこまでもシスティーナの思い描いた「ヒーロー」そのものなんですけど、それだけにシスティーナの書いてる小説の内容がほぼグレン×自分の事実をベースにした妄想恋愛小説だったり、その小説の「取材」と称してグレンに催眠術を掛けてイチャイチャしようとするシスティーナのやらかしぶりが輝いちゃってますよね。いやあ恋する乙女はバカだなぁ〜〜!!(褒めてる)

グレンとルミア、初めての出逢い

書き下ろしの過去編『再び出会うその日まで』は3年前、まだフィーベル家になじめていなかったルミアが特務分室時代のグレンに助けられたときのお話。このエピソード、原作初期から開示されてはいましたが……思った以上に血なまぐさい話だ!!というか前の短編集であれだけ特務分室時代の光のようなエピソードをやっておいて、今回は打って変わって外道魔術師達の視点から特務分室の冷酷無比な魔術師殺し、《愚者》グレン=レーダスが任務で敵を殺しまくるエピソード出してくるの温度差がすごくて風邪引く。それにしてもどう考えても助かる余地のない状況から帰還してくる特務分室時代のグレン、異能生存体系の異能持ってそうだよなあ……。

母アリシアの真意を知らぬまま親子の縁を切られてフィーベル家に居候することになり、なかば自暴自棄になっていたルミア。システィーナと間違えられて誘拐されてしまった彼女が「どういう訳か」子供の誘拐事件なんかに駆り出された特務分室時代のグレンと出会い、冷酷な殺し屋という前情報とは違いすぎるグレンの優しすぎる本心と葛藤に触れて本来の優しさを取り戻し、母子の縁を切られる原因となった自らの異能とも折り合いを付ける…という展開がとても良かったです。ラストシーンで改めて第一巻のいちばん最初、ルミアがグレンと“再会”するエピソードがルミア視点で描かれるという構成がまた実にニクくて、ホロリとしてしまう。

ただ、彼女が本来の自分を取り戻すきっかけはグレンの言葉であったけれど、ルミアが再び人間を信じることが出来るようになったのは自分を本当の「家族」として受け入れてくれたフィーベル親子の存在が物凄く大きいんですよね。ルミア→グレンへの思いの強さを改めて感じるのと同時に、彼女がシスティーナやフィーベル家の人々をどれだけ大切に思っているか、その一端が覗けるエピソードでありました。しかしわがまま放題でシスティーナのことが大嫌いだったルミア、何度言われても全く想像できないな……。

ところで、この話を読んだ上で改めてこの巻の最初に収録されているセリカ&システィーナ&リィエル不在の隙にグレンの家で押しかけ女房するルミアが描かれるエピソード『もしもいつかの結婚生活』を読むと、別の意味でニヤニヤできてしまいますね。女王としての権限を利用して軽率に娘の恋路をゴリ押ししようとするルミア母・アリシアに振り回されるルミアの姿を見ていると本当に和解出来てよかったね、という気持ちに……。

いつもとは違う環境に舞い上がってやたらと大胆になってしまうルミアも微笑ましかったですが、合間に襲来してテンプレすぎる安いツンデレとメシマズを振りまくイヴ=サンも最高でした。システィーナさんマジでグレン×自分の妄想恋愛小説書いてる場合ではない。


ふつつかな悪女ではございますが 〜雛宮蝶鼠とりかえ伝〜

 

『雛宮』――それは次代の妃を育成するため、五つの名家から姫君を集めた宮。 次期皇后と呼び声も高く、蝶々のように美しい虚弱な雛女、玲琳は、それを妬んだ雛女、慧月に精神と身体を入れ替えられてしまう! 突如、周囲から忌み嫌われ、鼠姫と呼ばれるそばかすだらけの慧月の姿になってしまった玲琳。 誰も信じてくれず、今まで優しくしてくれていた人達からは蔑まれ、劣悪な環境におかれるのだが……。 「息切れしない、失神もしない……。なんて健康な体でしょう! う、うらやましい……っ」 誰もが羨む玲琳は、隣り合わせの"死"とずっと戦ってきた鋼メンタルの持ち主だったーー!? 大逆転後宮とりかえ伝、堂々開幕! コミカライズも同時発売!

病弱であること以外全てが完璧な雛女・玲琳が落ち目の雛女・慧月の呪術によって体と精神を入れ替えられてしまう。蝶よ花よと周囲から守られる生活から一転して自分(玲琳)を害した罪で処刑の危機、それを脱しても周囲の誰からも完全に見捨てられた粗末な生活を送ることに──なるのだが、当の玲琳は健康な肉体を得たことに大喜びで…!?

儚げ美少女、メンタルは超合金

楽しかった…!儚い見た目、病弱という言葉から感じるイメージからは正反対に、どこまでもへこたれない主人公が自分に向かってくる逆境の数々を「体力がもったいのうございます」と言ってものともせず、健康な肉体に歓喜しながら畑を耕して自給自足の生活を送り、唯一残された慧月付きの侍女を構い倒しながらも没落生活をエンジョイするのがあまりにも楽しい。

それもそのはず、「病弱」なんて言葉では済まされないほどの虚弱な肉体を持って生まれた彼女は、肉体が入れ替わる前から常に明日をも知れぬ生活を送っていたのだった。常に死と隣り合わせで生きてきた彼女にとって処刑による生命の危機だってただの「日常」と何ら変わりがなかったし、病弱すぎる故に常に周囲の人間たちから体調を気遣われ、自分ひとりで出来ることなど殆どなかった彼女にとってむしろほぼ自分ひとりでなんでもやっていける没落生活は長年夢見た「自由に満ちた生活」ですらあり。異常なまでの前向きさの合間に覗く“玲琳”時代の過酷な生にホロリとしてしまう。

「努力」と「根性」は全てを解決する

一方、そんな玲琳に成り代わるため呪術で肉体を入れ替えて全てを手に入れたはずの慧月の方も当然ただでは済まないのだった。周囲の目を引くための仮病では?と疑っていた玲琳の「病弱」が実は普通の人間ではまともに立っていることもままならないような重いものであると知り、普段の“玲琳”のたおやかな姿はそんなポンコツな身体に限界を超えた無理と努力を重ねさせてなんとか成り立っていたことをも知ってしまう。周囲の女官や医者にちやほやしてもらえる…と思っていたら、女官達が元気よく手習いの道具を持ってきて腰を抜かし、体調を崩せば自分で薬を調合しろといわれて呪術で本物の玲琳に泣きつく羽目になったり……玲琳はなにもしていないのにいい感じに自業自得、ざまあ展開になってしまっている展開がぶっちゃけ面白い。

すべての才能を持って生まれてきた運の良い女、病弱も併せ持ち周囲からチヤホヤされていて羨ましい……と思っていたら文字通り血の滲むような努力でその人となりが形成されていたというのがなんとも皮肉なんだけど、華やかな後宮モノでこんなにも「努力」と「根性」をゴリ押ししてくる話があっただろうか。発想が体育会系すぎる!!

しかし、努力と根性でギリギリ生きてるみたいな玲琳の過酷な生に触れ、涙目になりながらそれでもなお「誰も見てくれない慧月より皆に気にかけてもらえる玲琳が良い」とその座にすがりつこうとする慧月には生き汚さというよりもある種の「努力」と「根性」の文脈を感じてしまう。この入れ替え劇だって前向きなものではないとはいえ慧月の必死な努力の成果なわけだし、よくも悪くも努力の方向性を間違えなければ再起できそうと思ってしまう。そしてそんな彼女を、「努力や根性を愛する」血族の玲琳はまんざら悪くないと感じていそうな気がするんだけどどうだろう。

どうにも事件の黒幕がいそうな雰囲気だし、慧月も玲琳も幸せになれる終わり方になるといいなあ。


オタク同僚と偽装結婚した結果、毎日がメッチャ楽しいんだけど!

 
雪子

同人女子とドルオタ男子の、偽装結婚から始まる楽しすぎる結婚生活。
同人作家という秘密以外は普通のOL・相沢咲月は、ある日イベント会場で突然プロポーズされた。相手はメガネ姿のドルオタ……じゃなくて、イケメン同僚の滝本さんで!? 偽装結婚から始まる幸せ結婚生活物語。

金銭面に余裕のあるオタク男女が偽装結婚をして、広い家でシェアハウス的な共同生活を送る話。適度な距離感の保たれた楽しそうな「上質な暮らし」が、読んでて心地よかった。オタク要素はあらすじから想像したものと比較してやや薄めという印象を受けましたが、旦那のハマっている「地下アイドル」話が奇抜な設定で面白かったです。ただ、ちょっと起承転結の転のまっただなかで切れちゃってる感じなのが少し残念で、出来ればもう少し先まで読みたかったなあ。

隠れオタクの男女が織りなす、“上質な暮らし”。

会社には内緒で同人作家をやっているOL・相沢咲月。イベント会場で「結婚しろ」と口うるさい母親の愚痴を言っていたら、なぜかその場に居合わせた会社の同僚・滝本(※隠れアイドルオタク)から「それなら僕と偽装結婚しませんか?」とプロポーズをされてしまい!? 話を聞いてみると向こうにも結婚を急ぎたい家庭の事情があるようで……お互いの利害が一致して偽装夫婦になったふたりが“夫婦生活”と言う名のシェアハウス生活を送るお話。

親戚から管理を任されている一軒家の2階に滝本を住まわせ、基本的には別個の生活を送りつつも時折なにかあれば「同居人」としてお付き合いをする。社会の中でそれなりにうまくやっているふたりが首都圏郊外にある広い家の一階と二階で一定の距離感を保ちながら趣味や生活にお金をかけていくという生活、なんというかすごく生活に潤いがあって読んでいて心地良い。そしてお互いの趣味に没頭しながらも「ふたりぐらし」という新しい生活をエンジョイしている様子がとにかく楽しそう。一時期BLで「上質な暮らし」という概念が流行ったけど、まさにこういう話のようなもののことをいうんだろうなあと思った。もうとにかく暮らしの質が高いんですよね……。

滝本のハマってる「地下アイドル」の話が濃い

出会いの場が同人イベントの会場ということもあってどうしてもあらすじを読んだ時点ではオタク男女のラブコメ的な要素を想像してしまっていたんですが、同人オタク的な要素はかなり薄くてどちらかというと滝本がハマっている地下アイドル・デザートローズの話の比重が多め。宇宙からやってきたアイドルユニットという設定に対してアイドルもプロデューサーもファンもその世界観に即した活動をしている…というのがかなり奇抜で面白いし、メジャーなアイドルではないからこそのファンと公式の距離の近さが印象的。書籍版書き下ろしで描かれる、「デザートローズ」の結成秘話も濃厚な女の子同士の巨大感情案件で楽しかったです。

滝本側の趣味の話がめちゃくちゃおもしろい分相沢の同人活動の話が薄めなのが若干気になってしまうんだけど、正直同人オタクの話は今かなりメジャーな題材になってきているので無理に深堀りしなくてもいいのかもとも。それにしても毎日定時で仕事を済ませて原稿をコツコツ仕上げるて二次創作では壁サー+一次創作では商業を少々…いう姿勢がデキるオタクにもほどがあって、締切前にまとめて原稿するタイプのオタクは震えた。こんなところまで生活の質が高い。

ラブコメとしてはまだ、はじまったばかり

実は結婚を申し入れる前から相沢に好意を持っていた滝本。営業マンとして、そして地下アイドルのオタク活動で磨いたリサーチ力を駆使して彼女の好きなことや嫌いなことをリサーチし、着実に相沢の好感度を上げていくのが良かった。下心があるにはあるんですけどどちらかというと純粋に「好かれたい」という感情が主な感じで、いやらしさが感じられないというか彼の行動が純粋に二人の生活の暮らしやすさに繋がっている感じなのが良かった。相沢の一挙挙動に内心で「かわいい!」と転がっている姿も微笑ましい。

ただ、恋愛ものとしては始まったばかりというかまだ滝本の独り相撲感が拭えない。特に相沢の方には毒親問題が立ちふさがっているのでそっちを解決させないと恋愛的なアレコレは考えられないんだろうな。逆に相沢の実家問題さえどうにかなればあっさり両思いになってしまいそうな雰囲気を感じるんだけど……1巻そこで切るのか〜!!原作のカクヨムの方を見ると今回くらいの分量×3巻でピッタリ終わるくらいの内容っぽいので、たしかにこれはここで切って残りは2巻回しになるのかな〜って感じなんですけど、正直ちょっと本が厚めになってもいいから相沢の実家の件が解決するところまでは入れてほしかったな。良くも悪くもなろう小説の書籍化1冊目にありがちな、中途半端な終わり方してるのが残念。

相沢とのふたりぐらしの暮らしやすさを支えていたのは滝本の営業マンとしてのリサーチ力だったと思うので、今度はそれが相沢の実家に対してどう働くのか、母親の攻略には自信ありそうだけど相沢の話を聞いてると癌は兄貴っぽいけどそのへんもどうなのか。いろいろな意味で2巻が楽しみです。


ロクでなし魔術講師と禁忌教典17

 

公爵家イグナイトの裏切り。クーデター『炎の一刻半』
魔術祭典決勝を襲った最大級の悲劇と天の智慧研究会の最高指導者、大導師フェロード=ベリフの登場――歴史の大いなる転換点で、アルザーノ帝国女王府国軍大臣・アゼル=ル=イグナイトもついに動き出す――。

衝撃のラストだった前巻、突然発生したクーデターに対して一度は心を打ち砕かれたイヴがグレン達の力を借り、戦局を完全に読み切り、絶望的な戦況をひっくり返して家族と対峙していく姿が熱い。これまでの本編・追想日誌の内容の総決算とも言える内容でめちゃくちゃに楽しかった!しかしそれ以上の事件が起きるぞといわんばかりの終わり方に動揺する。いやいや、久しぶりに本編読んだら本当に本当に面白かったんですけどまだまだ面白くなってしまうのかこのシリーズは……。

イヴ、どん底からの再起──大逆転劇がアツい!

そう前巻めちゃくちゃ衝撃のラストで終わってたんですよね…。魔術祭典が衝撃の展開で中断された裏では天の智慧研究会によって邪神降臨の儀式が執り行われようとしていた──ジャティスのその身を顧みない奸計により天の智慧研究会の最高指導者の顔が遂に明らかに…なったのはいいけど、邪神召喚の儀式は完遂されてしまうし(というかむしろおおむねジャティスガやった)街にはその眷属たる《根》が溢れるし、しかも混乱の隙を付く形でイヴの父・イグナイト卿がクーデターを起こし、グレン達は命からがら身を隠す羽目に…という、四面楚歌すぎる展開からのスタート。

イヴの父親の蜂起、というだけでイヴにはしんどい話なのに、更に彼の横にはかつて自分を庇い魔力を失ったはずの姉・リディアの姿が。なぜか自分のことを覚えていない彼女に違和感を覚えつつも二人を目の前にして動揺し、一度は心を折られてしまう。そんな彼女がグレンの叱咤と励ましを受けて立ち直り、長いこと超えることが出来なかった大きな壁、父と姉を超えていく姿に胸を打たれました。また、立ち直ってからのイヴの采配の見事なこと。圧倒的不利に見える戦況を根気よく整理し、戦術により分断して「勝てるかもしれない」と思わせるところまで敵の数を減らしてしまう姿が本当に鮮やか。これはグレンも手放しで褒めるわ。

これまでの総決算のような内容で、面白かった。

イヴとイグナイトの家庭の事情もそうですが、パウエルとアルベルトの因縁などこれまでの本編・追想日誌の内容の総決算、様々な因縁が集約するような展開が最高に面白かった!追想日誌の方は長いこと積んでしまっていたんだけど、この話の前に4〜6をまとめて読めたのは逆に良かった気がする。イヴとアルベルトの過去もそうですが序盤のジャティスの自分の身すら顧みない行動も5巻の過去話を踏まえて読むと説得力が増すなというか…(いやでもアイツ絶対になんだかんだいいながら戻ってくるでしょ…)

また、今回はあくまでイヴとグレンがメインではあったけれど、そんな中で様々な修羅場を乗り越えて大きく成長した生徒達の姿も印象的でした。システィーナにルミアやリィエルといったメインヒロインとも言える少女達の成長はもちろんなんだけど、それ以外の生徒達の成長もしっかりと描かれるのがいかにもこのシリーズらしい。ヒロイン達は色々な意味で今回はお鉢を奪われた形でしたが…イヴとグレンの急接近で動揺する三人娘の姿がなんとも微笑ましかった。

しかし、多大な犠牲を払いながらもなんとか一段落〜と思った矢先に最後の最後で前巻ラスト以上の爆弾をぶちこんでくるのはどういうことなんでしょうねえ!!表紙からしても、次は今回言及のなかったセリカの話か。今回の話がこれだけ面白かったのに、更に盛り上がりそうなラストに興奮が止まらない。次巻が楽しみです!


ギルドの受付嬢ですが、残業は嫌なのでボスをソロ討伐しようと思います

 

強くてカワイイ受付嬢が(自分の)平穏のため全てのボスと残業を駆逐する!
デスクワークだから超安全、公務だから超安定! 理想の職業「ギルドの受付嬢」となったアリナを待っていたのは、理想とは程遠い残業三昧の日々だった。すべてはダンジョンの攻略が滞っているせい! 限界を迎えたアリナは隠し持つ一級冒険者ライセンスと銀に輝く大槌(ウォーハンマー)を手に、自らボス討伐に向かう――そう、何を隠そう彼女こそ、行き詰ったダンジョンに現れ、単身ボスを倒していくと巷で噂される正体不明の凄腕冒険者「処刑人」なのだ……! でもそれは絶対にヒミツ。なぜなら受付嬢は「副業禁止」だからだ!!!! それなのに、ボス討伐の際に居合わせたギルド最強の盾役に正体がバレてしまい――?? 残業回避・定時死守、圧倒的な力で(自分の)平穏を守る最強受付嬢の痛快異世界コメディ!

残業は嫌だとキレ散らかしながら超絶スキルでボスを討つ主人公の姿が爽快。そんな彼女が頑なに「平穏」を望む理由に胸が熱くなったし、コミカルな展開も楽しいけど終盤のシリアスで熱い展開が最高に良かったです。それにしても帯の「魔王アノス様応援コメント」が色々な意味で的確で、読み終わってから唸ってしまうな。

圧倒的なスキルを持つ主人公が残業を駆逐する社畜讃歌

安定した生活を望むギルドの受付嬢・アリナが残業を減らすため、業務終了後に正体を隠してダンジョンに潜り、一線級の冒険者たちをも圧倒する超絶スキルでボスモンスターを討つ!!!というお話。

とにかく残業したくない、定時で上がって安定した生活を送りたいという主人公の嘆きがGW進行中で残業続きだった私の心に深く深く突き刺さりました。超絶スキルを持った主人公の私TUEEモノであるにもかかわらずその無双状態が彼女本来のお仕事には一切関知せず──むしろギルドの受付嬢としての書類仕事はちょっぴりポンコツ気味ですらあって─社畜讃歌として共感できてしまうのが面白かったです。そしてそんな彼女がキレ散らかしながら圧倒的な火力を持ってボスモンスターをワンパンで倒していく姿がとにかく爽快。ところでちょうど最近ソシャゲの方に追加されたこともあってこれ読んでると脳内でめちゃくちゃ独歩くん(ヒプマイ)のキャラソンが流れる。

アリナがギルドの最強パーティをも凌駕するスキルを持つに至った理由にも笑ってしまいました。願いが叶うと言われる夜に神から授かった超絶スキル──確かに願いは叶ったけどそうじゃねえ!!感が凄い。いや、ほんと、そっちじゃなくて、仕事の効率上げてくれればよかったのにね……。

後半の熱い展開も良かった…!!

前半は残業にキレて超絶スキルで無双しつつ「副業禁止」に引っかからないよう必死に正体を隠そうとするアリナとそんな彼女につきまとう最強ギルド《白銀の剣》のリーダー・ジェイドのやりとりでテンポ良くコミカルに進みますが、中盤以降の展開は割合シリアス。突如として現れた「隠しダンジョン」をめぐるジェイド達の戦いと、アリナの過去、彼女が「ギルドの受付嬢」を目指すようになったきっかけが明かされていきます。

職場の待遇改善のために《白銀の剣》の前衛として仕方なく踏み込むことになった隠しダンジョンで、誰かの「死」に誰よりも動揺するアリナのどこにでもいる少女としての姿が印象的でした。そんな彼女が平穏を──知っている人の誰もが喪われることのない「自分の世界の平穏」を守るために必死になって槌を振るう姿が最高に良かった。ただ「楽して安定した生活を送りたい」だけじゃなくて、その裏に秘められた「自分の周囲にいる人々の誰にも死んでほしくない」という強い心に胸を打たれました。

続巻への余地を残しつつも1冊で綺麗に終わる新人賞受賞作品らしい物語で、そういう意味でも本当に楽しかった。割とギルドの偉い人たち的には公然の秘密になってしまったのでは?みたいな部分はあれど、押しの強いジェイドとそれをあしらうアリナのやりとりが最高に楽しかったので、二人の関係がどういうふうに進展していくのかも楽しみです。

それにしてもこの作品、帯の裏側に魔王アノス様(魔王学院の不適合者)の推薦コメントがあるんですけどこれが大変に作品にしっくりきていて、読み終わってから改めて唸ってしまった。『お前ほど冒険している者は他におらぬ』本当にこれに尽きるんだよな……。


やり直し令嬢は竜帝陛下を攻略中

 

人生2周目は、10歳の竜妃サマ!? しかも敵だった陛下に求婚してました
婚約者の王太子から処刑を言い渡された令嬢・ジル。だけど死ぬ間際に、6年前婚約が決まったパーティーに時間が戻る。 破滅ルートを避けるべく、とっさに後ろにいた人に求婚すると最大の敵だった皇帝・ハディス!? 彼が闇落ちする未来を知っている……慌てて撤回するも、喜んだハディスはジルを城へ連れ帰り、ごはんを作る始末。胃袋をつかまれたジルは決めた。 「あなたを必ず更生――いえ、しあわせにします」 いざ、人生やり直し! 累計550万PV突破! WEBの超・話題作!  強すぎた少女×孤独だった陛下の、年の差ラブ・ファンタジー!

「悪役令嬢なのでラスボスを飼ってみました」の永瀬さらささんの新作(といっても既に3巻まで発行されてますが……!)シリアスでかっこいいバトル要素とは裏腹な二人の恋模様が可愛かった!互いの事情やら意地やらで「相手を先に惚れさせる!!」といってお互いがお互いの掘った穴にずぶずぶハマっていく姿にニヤニヤする。

敵国皇帝×時間を逆行した元「軍神令嬢」のワケアリ恋愛攻防戦

婚約者であった王太子の黒い秘密を知ってしまい口封じに殺されたはずの令嬢・ジル。気がつくとそこは6年前の、王太子に婚約を申し込まれる直前のパーティ会場だった!?時間を逆行した彼女は王太子と婚約する未来を回避するため、未来の敵国の皇帝・ハディスと婚約を結ぶことに……。。

片や少女らしい事もろくにできずに軍人としての腕を磨いた元「軍神令嬢」、片や竜神の生まれ変わりとして国内でも特殊な立ち位置にあった「竜帝」。恋愛スキルもあったもんじゃないワケアリな二人がそれぞれの目的のために「自分は相手に惚れたくないが相手を自分に惚れさせたい」と思ってしまい、拙すぎる恋愛攻防戦が繰り広げられるのがめちゃくちゃおもしろかった!胃袋を掴まれたり、イケメンすぎるジルのかっこいい行動に惚れ直したり……と、それぞれどんどん墓穴を掘っていくのが可愛くて仕方がない。胃袋を握られる展開は良いものですね。

ジルが自分の見た未来を話せないのと同じように、ハディス側にも「竜神ラーヴェ」と「女神クレイトス」の伝説を巡って色々と話せない事情があるらしい。しかもその事情は、ジルの元婚約者であった王太子ジェラルドやその妹スフィアにも関係のある話のようで……。ジルが未来の展開を知っているとはいえ、なかなか安易に先を見通せなさそうな展開が良かったです。お互いに話せない事情がありながら(そして若干ハディス側の事情に不穏なものを感じつつも)少しずつ距離を縮めていくジルとハディスの姿にニヤニヤしました。

とにかくヒロインがかっこよかった!!

恋愛はポンコツだけど、元々は軍人として戦場を駆け抜けた「軍神令嬢」であるジルがとにかくめちゃくちゃかっこいいんですよね。「悪ラス」のアイリーンも最高にかっこいいヒロインでしたがジルはまた別の方向のかっこよさがある。戦闘力だけではなく作戦立案能力もあり、軍人としても指揮官としてもパーフェクトな彼女の姿がかっこよすぎる(でも恋愛はポンコツだ)し、異郷の地で偶然巡り合った彼女の未来の元部下(というのも変な表現ですが…)達を指揮する姿に惚れてしまう。

ハディスの身内に潜んでいる内通者の存在、そして婚約を回避しただけでは終わらなさそうな王太子ジェラルドとの因縁。色々な意味で問題は山積していますが今後どうやってそれらを乗り越えていくのか、とても楽しみです。


ようこそ実力至上主義の教室へ 2年生編4

 

全学年、全生徒、総力戦のサバイバル試験、超絶怒濤の壮絶決着!
2週間のサバイバル試験も後半戦。1年生、2年生、3年生、月城理事長代理、様々な人の意志が常夏の無人島で交錯する。 「私は退学を恐れません。綾小路先輩を守るためであれば、何でもするつもりです」 「だから、あたしの許可なく勝手に潰されてないで下さいね」 「もしもの時はそうだな……力づくで乗り切ることにしよう」 「高円寺を封じ込める指揮は俺が取る」 「やれやれ、騒がしいねぇ。それじゃあ、少しだけペースを上げさせてもらおうかな」 「わ、私、どうしても綾小路くんに伝えなきゃいけないことがあって!」 全学年、全生徒、総力戦の無人島サバイバル試験、ついに決着!

波乱だらけの全学年対抗無人島サバイバル、完結編。めちゃくちゃ面白かった!ホワイトルーム生の正体も発覚して月城学園長代理との対決は一段落…という流れなんだけど、ただ1年生組に関してはよくも悪くもますます謎が深まったと言うか、最高にアツい展開ではあるんだけども若干スッキリしない終わり方だったな。2年生編になってから敵が強くなってきてて、綾小路ひとりの力だけでは無双しづらくなってきてるのを改めて感じた1冊だった。

いつもと違う人間関係が印象的だった無人島サバイバル完結編

七瀬との対決・和解、そしてホワイトルーム生との遭遇を経て再び単独行動に戻ることを決意した綾小路。ところが、雨による特別試験の一時中断やそれによる補填など綾小路にとって予想外の事態が次々と発生していく。更に、綾小路の首にかかる賞金を狙った一年生の混成軍が動き始めて……。

ホワイトルーム生の正体が速攻でバラされて「アレだけ引っ張ってたのはなんだったの!?」状態だったんですけど、一年生周りの話はホワイトルーム生の正体が明かされてもなお謎のままというか、正体が明らかになったことでますます謎が深まったと言っても良いまである。なにより、以前出てきた“ホワイトルーム生の独白”の主が、どう考えても今回正体が明かされた人とは別人な気がするんだよなあ。今回のやりとりを見るとちょっと現在明かされてる情報をそのまま素直に受け取ってはいけないような気もしてきて結局の所一年生に関する真相はほとんど闇の中に。果たして今回明かされた人とは別のホワイトルーム生が別口でいるのか、それとも今回正体を出してきた生徒自体がフェイクなのか、もしくは月城以外の別口なのかそれとも(でも月城が把握してないホワイトルームからの刺客が出てきちゃうともう同学年ですら信用できなくなるな……)。綾小路先輩と和解して番犬みたいなムーブする七瀬ちゃんかわいい(現実逃避)。

一年生の誰も彼もが胡散臭い状況の中、これまでの試験で敵対しあってきた2学年の生徒たちと手を取り合い完全に協力することはできないけどお互いを信頼して戦う姿が新鮮で楽しかった。特に「いつか綾小路と本気の勝負をしたい」板柳&「あいつを倒すのは俺だ」龍園との共闘には本当にニヤニヤしちゃう。こういった運動関係の種目がハンデとなる板柳が動けないのを逆手に取って司令塔として活躍する姿はめちゃくちゃ心強かったし、龍園がかつて綾小路と対峙した際に語った自らの“勝負への価値観”がふんだんに発揮される宝泉との戦いなんかもう本当にめちゃくちゃおもしろかったですね。龍園のやってることめちゃくちゃ卑怯なのに、バトルがこんなにアツくなるのはズルいよな。あと最後の最後で詰め込まれた伊吹&堀北の仲悪コンビがめちゃくちゃ好きなんですが、この二人の薄い本はいつ出ますか???(気が早い)

今回は綾小路が結果的に一本取った形になったけど南雲生徒会長との因縁はむしろここから始まった感じがあるし、ヒロインレース的な意味で見せ場をかっさらっていく一之瀬など、今後につながるであろう新しい人間関係の構築が面白い巻でもありました。というか本格的な一之瀬参戦でヒロインレースどうなる?綾小路は鬼龍先輩やひよりとの絆も深めてる感でマジ軽井沢さん無人島サバイバルしてる場合じゃない。

最高に面白かったけど謎はますます深まってしまった…!!

長く続いた無人島サバイバル編の決着巻ということで、熱い展開で最高に面白かった!!……んですけど、その一方でむしろ一年生周りの謎はますます深まってしまったし、なかなか全貌が見えてこないのが若干もどかしい。3冊(一年生との対決という意味では4冊)も引っ張ったにしては、すっきりしない終わり方だったなぁ。また、敵がホワイトルーム生になったことで1年生編のように綾小路が水面下で無双してサクッと裏から勝つみたいな展開がなくなってしまったのは若干寂しさを感じる……学園の生徒側の支配者として描かれる南雲会長を眼力で押し返す場面には挿絵含めてたいへんに興奮したけど。

ただ、1年生編と比べて綾小路一人で対処しきれない事態が増えてくる=周囲の同級生たちを巻き込まざるをえなくなっている現在の展開は1年生編にはなかった要素で本当に楽しいし、並み居る強敵相手に今後どういうふうに綾小路が「成長」していくのか(というかある意味でホワイトルーム製の「完成品」である彼が果たして成長することができるのか?)はすごく楽しみ。あと色んな意味でどうなる一之瀬。最後はスッキリと気持ちよく勝ってくれるといいなあ。


貴サークルは“救世主”に配置されました

 

100部売れなきゃ世界が滅ぶ!? 同人誌に懸ける青春ファンタジー
「ずっと……ずっと、あなたを探していました、世界を救うために」 自分の同人誌によって、魔王の復活が防がれる。突如現れた女子高生ヒメにそう諭された同人作家のナイト。 ヒメの甲斐甲斐しい協力のもと、新刊制作に取り組むのだが…… 「えっ、二年間で六部だけ……?」 「どうして『ふゆこみ』に当選した旨を報告していないのですか?」 「一日三枚イラストを描いて下さい」 「生きた線が引けていません」 即売会で百部完売しないと世界が滅ぶっていうけど、この娘厳しくない!? 「自信を持って下さい。きっと売れます」 同人誌にかける青春ファンタジー、制作開始!

斜陽ジャンルマイナーカプ頒布1桁の弱小サークルがめちゃくちゃな努力したとしたって数ヶ月で100部は無理があるだろという一見トンデモな展開から、本人の努力だけでなく原作側の展開やサークルの配置などが加わり「運が良ければ行ける」と思わせるリアリティ具合がすごかった。「同人誌100冊出さないと世界が滅ぶ」が納得できる設定に収まるのも好感度高い。

「弱小同人サークル」描写のリアリティが凄い

落ち目のアニメジャンルのマイナーカップリングをやっている同人漫画描きの主人公。本は四捨五入でも一桁売れたら良い方、の彼がなぜかタイムリーパーを名乗る女子高生から「救世主」として祭り上げられ、同人誌で100部完売を目指すハメに。100部完売しなければ魔王が復活して世界が滅ぶ!?というお話。

この手のサークル描写って割と同人経験者でもリアリティがない作品が多いように感じるんですけど(同人経験あり商業誌作家の描く「弱小サークル」の描写、全体的に部数が2倍くらい多い、下手すると桁が1つ多い…)これはほんとうに弱小サークルあるある感がすごかったです。

絵が下手なわけではないがランキングに乗るほど上手くもない、ツイッターにイラスト投下しても行ってもRT10程度、漫画を描けば背景がなく全体的に白い、更にサークル名とHNが絶妙に古い、SNS使いこなせてないとかなんか…なんかわかる……(微妙に他人事には思えない!!!)

弱小同人サークル、100部完売を目指す

そんな主人公がヒロイン・ヒメの強烈なダメ出しと入念なスケジュール管理とそして本人の努力によって、次のイベントまでという短い期間でありながらも成長していく。真っ先にSNSでの活動での露出増をアドバイスしてくるヒメ(※オタク歴数ヶ月)のリサーチが完璧すぎる。イラストを投下させることで名前を売り、同時に枚数を描かせることで画力も成長させていくという完璧な計画なんですよね。SNSでのイラスト投稿が活発な絵描きは成長も早いし伸び代もでかいわかる。まあ普通はわかってるけど実践できないから困るんですが!!!(ヒメにスケジュール管理してもらいてぇ〜!!!)

もともと頒布数1桁の主人公が現状のジャンル・カップリングのままで100部完売するのはどう考えても無理があるんですが、配置が良かったり公式側に動きがあったりみたいな微妙に運の後押しを受ける具合がまた本当に絶妙だった。たしかにそれだけの努力にラッキーが重なれば100部完売行けなくもないかもしれない。いやぁ夢のある話だなあ!!!(吐血)

世界の命運が文字とおり自分の両腕にかかったコミケ本番……なんて状況には関わりなく同人誌が売れていくことに素直に感動できる主人公の姿にもまた胸が熱くなりました。自分に自信がなく、同人をしていても内にこもりがちだった彼がヒメのスパルタ教育の成果もあって少しずつ自らの足で前に踏み出していく姿がとてもよかったです。

ファンタジーとしても面白かった

「同人誌100部売らないと世界が滅ぶ!」というあらすじだけ聞くとかなりトンデモなお話に感じるのですが、最終的にはすごく筋が通った展開で「主人公の同人誌が100部売れないといけない理由」にちゃんとオチがついて、同人サークル物としてもファンタジーとしても楽しかったです。読後感が爽快すぎるし、それでいて次巻への種まきもしっかりなされているところがまた隙がなかった。個人的には修羅場のエピソードはもう少しじっくり読みたかったけど、ファンタジー部分との兼ね合いを考えるとこんな感じになるのか。公式燃料投下でコピー本!!!の流れ、わかる。

どうしても同人サークル描写の方に言及が偏りがちなんですが、ファンタジーの方の設定がまたすごく良かったんですよね!!ヒロインがタイムリープしてきていることで少しずつ見えてくる未来の人間関係が面白いし、それでいて解決の糸口が同人方向に寄っているのでいちいち笑ってしまう。魔王が復活する理由があんまりすぎるんですけど理解できてしまうので困るし私ならまず真っ先に元凶を消し炭にするので仕方ないと思う。むしろ元凶を消し炭にするのだけはやっても良かったのでは??ところで、カップリングの解釈違いでガチ喧嘩する主人公ヒロイン可愛いすぎない???

1巻でも綺麗にまとまってるけど続きが出るならまた読みたいなあ。