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面白かった本3冊×10年分挙げて2010年代を振り返る

ラノベ読み界隈の「2010年代おすすめ作品」の流れを見て、私も軽く10〜20作品程度まとめられたらいいなとおもったけど結局30冊構成になりました。自分の毎年のまとめとブログ記事の記載を元に作成しているので10年代ベストではなくイヤーズベスト3×10になっていたり、当時面白かったもの優先でまとめているので最新刊までおいつけていない作品が混ざっていたりしますがそのへんはあらかじめご了承ください。おすすめ作品というよりもおすすめ作品で語る2010年の思い出の趣が強い。

タイトル多いのでコメントは撒いていきます。

2010年

2010年は某ラノベのアニメで狂ったりもしていましたがなんといっても「フルメタル・パニック!」シリーズの完結が個人的にはデカかったと思います。戦争しか知らなかった少年がひとりの少女と出会い、年相応の少年らしい心を取り戻していくロボットラノベの傑作。っていうかこれ終わったの2010年なんですねゼロ年代の印象が強い……

「魔王城」は異能の力を持って生まれたがゆえに迫害される子どもたちを守るため、軍から派遣されてきた青年が「魔王」を名乗るまでの物語。ファミ通文庫で屈指に好きな作品なんですが何故か電子書籍化されていないので2020年度も「魔王城電書化しろ!!!」と叫び続けていく所存であります。あと同年1巻発売、少年少女の“空想”が世界を塗り替える「空色パンデミック」も最高に面白いんですがなんでこっちも電子書籍化してないんですかファミ通文庫ーー!!!
→「2010年に読んだ本まとめとオススメ10選」

2011年

2011年はやっぱり「はたらく魔王さま!」のインパクトが強かったです。異世界の魔王が新宿線界隈のファーストフード店でバイトしながら部下の四天王とともに赤貧生活を送ったり、現地の女子高校生と良い仲になったりライバルの女勇者や異世界からの刺客とドンパチしたりする。ファンタジー世界のシリアスな設定とは裏腹に、地に足がついた庶民派感覚が最高に楽しかった。

あと10年代で一番おもしろかったノベライズは?と聞かれたらとりあえず「円環連鎖のウロボロス」を推します。原作ゲームの展開を踏襲しながら少しずつ本来の展開から外れていく構成と、それでも間違いなくこれもシュタインズゲートに繋がる物語であると思わせていく展開が秀逸。本編も文句なしに面白かったですがファンディスクのノベライズである「比翼連理のアンダーリン」もめちゃくちゃおもしろかったです。なんであの恋愛脳寄せのお気楽ファンディスクがあんなクソ重展開になるんだよ…天才か。

あとこちらはカドカワサブスク対象作品おすすめまとめでも取り上げてしまったのですが、同年完結の「Re:バカは世界を救えるか?」。なんちゃって邪気眼の青年が本当の異能(ただし弱い)を手に入れ、たったひとりのヒロインを守るために本当の「正義の味方」として成長する展開が最高に好きでした。
→「2011年に読んだ本まとめ」

2012年

2010年代に読んだ少女小説の中で一番思い入れのある作品はと聞かれたら迷わず「(仮)花嫁のやんごとなき事情」と答えると思います。お金にがめつく男勝りのヒロインがひょんなことから自分と顔がそっくりな王女の身代わりとして隣国の皇太子と(離婚目的の)婚約をして…というお話。強引で面倒くさい旦那様の猛攻にタジタジになりながらも、いざとなったら彼を守るために立ち上がる姿が大好きでした。1巻のドレス姿で旦那様の危機に飛び込んでくる挿し絵が死ぬほど好きという話定期的にしてる。

「僕の妹は漢字が読める」はオタク文化が進化しすぎて文字文学が衰退した未来を舞台にした時間改変SF系兄妹ラブコメ。頭の悪い作中作のイメージとは裏腹に、めちゃくちゃ真面目に文字文学が衰退する未来の話を描いてるんですけど、それと並行して主人公と彼の「妹」達を巡るラブコメが邪魔にならず空気にもならずで進行していくのが凄いバランスだった。あと私はこの作品で黒ストに目覚めました。

「ボンクラーズ・ドントクライ」は転校生の少女を巡る甘酸っぱい恋のお話。男2:女1の三角関係でありながら、ヒロインに確かな恋心を芽生えさせていく反面、それと同じかそれ以上にいつでも一緒にやってきた親友を取られてしまうとヒロインへの嫉妬心をつのらせていく主人公の複雑な心情が、甘酸っぱい青春模様が最高に燃える。
→「2012年に読んで面白かったライトノベル10選」

2013年

マジでこれどこで取り上げるか悩むし2010年代総合ベスト1を挙げろと言われたら間違いなく「バカとテストと召喚獣」なんですけど、本編完結した2013年で挙げます。特に後半は少年漫画のような王道展開をやりつつそこかしこで笑わせてきて、ラブコメとしても後半はW主人公状態になっていた明久/雄二それぞれの恋路をしっかりと決着つけるところまで描ききってくれたの本当に大好きすぎるんですけど、それはそれとして明久と雄二の友情が最高すぎるなので全女子よろしくおねがいします。文句なしに10年台いちばん推したカプです……。

この年は「東京レイヴンズ」も第一部クライマックスだった頃で、こっちも最高に面白かったです…次々と展開されるド派手な陰陽術バトルが楽しすぎたし、春虎を中心にその周囲で繰り広げられる様々な登場人物たちの葛藤と成長、それを見守る大人たちの因縁と激突、そしてその合間に次々と明かされていく真実に震えました。レイヴンズはなんというか…来年こそ完結すると良いですよね…。

発売自体は全然この年ではないんですけど、単巻きれいにまとまってる枠で「消えちゃえばいいのに」がめちゃくちゃ面白かった…ただひたすら淡々と一方的な愛と死体を積み上げられる物語なんだけど、このどこまでも救いの見えない理不尽な物語が最高。
→「2013年に読んで面白かったライトノベル7選」

2014年

「ノーゲーム・ノーライフ」は良い意味で安定して面白い作品なんですけど、自分の読んだところまでで総合すると過去編である6巻がめちゃくちゃおもしろかったんですよね…その後制作された劇場版も良かった。何もかもがゲームで決まる「人が死なない戦争」にたどり着くまでにいかに人類が犠牲を払ったかというお話なんだけど、これがあるからこそ今の彼らが存在するという感慨深さと、同時に本編でも活躍するあのキャラクターやあのキャラクターがいかに規格外なのか知ることが出来るのも楽しいというかだいたい全部ジブリールのせい。

数年ぶりに新刊が出た「踊る星降るレネシクル」も楽しかった…傷つけることを恐れていた主人公が、闘いですべてが決まる街の落ちこぼれ少女の面倒を見ることになって…というお話。「個性」と呼ばれる異能を使い戦う少年少女たちと、その裏で蠢く大人たちの陰謀!という王道ド直球の異能バトルが楽しかった。あと私は主人公に愛をささやきまくる親友の乾が好きです。

アニメ「K」のノベライズをまとめて読んだのもこの頃なんですけど、やっぱり「K -Lost Small World-」での八田と伏見の巨大感情の持て余し合いというかすれ違いというかなんかそういうのが本当に好きだったなと思い返すと思うんですけど、コレに関してはとにかくこのあと劇場アニメ化で改めて殴られ直した感が強い。八田と伏見はアニメの序盤までは好きそうであと一歩好きになれない奴らだったんですけど、2期の着地点があまりにも完璧に好みで後追いで撃ち抜かれました…これまでの物語全てを踏まえて、彼らがありえない夢の中で背中合わせに共闘する劇場版「CircleVision」も好き。
→「好きなライトノベルを投票しよう!! 2014年上期」投票します

2015年

完結した2019年に持ってくるか悩んだけど6〜10巻くらいをまとめて摂取したあの時が一番ヤバかったな…と改めて思うので2015年にしました「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。」。面倒くさい自意識を拗らせてすべてを独りで抱え込み、自滅的な解決法ばかり選んでいく主人公の八幡と、その彼の行動をよく思わない反面でつい頼ってしまう周囲の人々のエゴの押し付け合いが最高に面白いし読んでて胃が痛かった。雪乃・結衣の両ヒロインは勿論のことですけど葉山とのお互いに好きじゃないけどお前のこと信頼しているというあの関係が死ぬほど好き……渡航作品における男男間の「お前が嫌いだ」は愛の告白と同義だなとど云々。

新刊が出ないまま来年いよいよ4年目を迎えてしまう「甘城ブリリアントパーク」ですが、可愛らしい女の子達と可愛らしいマスコットたち、そして主人公が男ひとりという一見ハーレムに見えそうな構図をしておきながらもその実は中身はオッサンなマスコットどもが酒のんでぐだを巻く裏で、元天才子役である主人公が様々な遊園地内の厄介事を一手に請け負って胃を痛めながらヒロインの生命が掛かった遊園地再生を目指して死ぬ気で頑張る(頑張らないとヒロインが死ぬ)お話です。良くも悪くもかわいいイラストと毒っ気の強い展開が癖になること請け合い。来年こそ新刊出るのをお待ちしています……。

この頃アニメ合わせで一気読みした「銃皇無尽のファフニール」も面白かった!ドラゴンに立ち向かうため集められた「D」の少女達と、ただひとりの男性の「D」であり特殊部隊で兵器として育てられた少年がドラゴンに立ち向かいながら絆を深めるお話。ハーレムラブコメ的な構図でありながら主人公の悠がヒロイン達のひとりひとりに真摯に向き合っていく姿と、ヒロイン達全員の固い絆が印象的で嫌味なく読める。あと主人公の元職場の上司(男)があまりにも主人公のこと好きすぎていかがわしいのでそういう意味でもよろしくおねがいします。
→「好きなライトノベルを投票しよう!! 2015年上期」投票します。
→「好きなライトノベルを投票しよう!! 2015年下期」投票します。

2016年

2016年は色んな意味で「クオリディア・コード」の年だったな〜と思うのでまとめて挙げます。7月のアニメ開始直前に前日譚とクズ金を読んで一気にハマったのですが、朱雀壱弥がどうしてアニメでああいう面倒くさいキャラになったのかがよく分かる東京編「そんな世界は壊してしまえ」、アニメでも明かされなかった千種霞の本領発揮が見られる千葉編「どうでもいい 世界なんて」はなんとしても読んでほしいし、幼馴染百合の三角関係が強すぎる神奈川編「いつか世界を救うために」も捨てがたい。ほたるちゃんと舞姫の関係も良いけど、私は來栖×真里香を推していきます。クオリディアという世界全体の前日譚である「クズと金貨のクオリディア」も良かった。よはねす〜。

そしてアニメのノベライズとして描かれたダッシュエックス文庫版の3巻(※3巻自体は2017年発売)の破壊力が高すぎる。アニメもめちゃくちゃ楽しく見たんですけど(作画のことは言うな)、あの壱弥と霞の衝突の話に渡航先生の男男間の巨大感情がたっぷりつまったモノローグがたっぷりつくわけなのでまぁ死なないわけがなかったね!!!しつこく言うけど渡航作品における男男間の「お前が嫌いだ」は愛の告白と同義だと思います。
→「好きなライトノベルを投票しよう!! 2016年上期」投票します。
→「好きなライトノベルを投票しよう!! 2016年下期」投票します。

2017年

個人的にずっと続編待ってるシリーズの一つがこの「最強喰いのダークヒーロー」なんですがそろそろ諦めたほうが良いのだろうか…。僅かな能力しか持てなかった主人公が、様々な手段を駆使して相手の裏をかきツワモノだらけの学園内能力者トーナメントを勝ち上がる物語。圧倒的な能力差のある相手を用意周到に調べ上げ、その裏をかいていくスタイルがとにかく楽しく、下剋上ものでありながら俺TUEEモノのような爽快感すらある。ライバルにしてチームメイトの爽やかイケメン王子・ルイくんとの関係性も個人的に推してました。

同じ望先生の作品で「ラノベのプロ!」もよかった…実体験らしきネタも織り交ぜつつ、ライトノベル作家の主人公と幼馴染ヒロインのあれこれを描く業界系ラブコメ。友達少なくてちょっと拗らせ気味の主人公が作品作りに対しては高い意識を持っているのがかなり新鮮でした(ラノベ作家もの、割とぐうたらというか締切とデッドヒートしてる人が多い印象だった)。あととにかく業界ネタとか置いておいて幼馴染ラブコメとして破壊力が高いのでオサナナジミストは読め。

そしてオタク女子高生の主人公と隠れオタクの腐男子教師が繰り広げるWeb原作のラブコメ「腐男子先生!!!!!」。書籍化は途中までしかしてないのですが(いつか最後まで書籍化してくれるって信じてる…)、「オタク楽しい!」を肌で感じられるWeb原作ならではのライブ感の強いオタクネタ満載の序盤から、「書き手」と「読み手」の関係、ついには「生徒」と「教師」の恋愛ものとして少しずつ移り変わっていく二人の関係性が楽しかったです。
→「好きなライトノベルを投票しよう!! 2017年上期」投票します。
→「好きなライトノベルを投票しよう!! 2017年下期」投票します。

2018年

「ロクでなし教師と禁忌教典」は本当にもう9巻くらいからノンストップで「前巻も最高に面白かったのにこれ以上面白くなるの!?」って状態が続いててヤバい。グレンvsアルベルトの親友対決を描く13巻も最高に良かったですが個人的にはやっぱり最初はいけすかない上司として、そして現在では素直じゃない同僚としてヒロインへの昇格を遂げたイヴが可愛くて仕方ないので11巻を推します。とりあえず騙されたと思って読んでみてほしい。

続きが出るの出ないのと別の意味でハラハラしっぱなしの「ファイフステル・サーガ」もなんとか2019年のうちは生きてて良かった…別々の立場で少し不思議な力を持つ3人の主人公を中心に恋愛や政治、そして戦争…と様々な物語が繰り広げる壮大な戦記ファンタジー。同じ方向を向きながらも味方同士ではない彼らの関係性や、彼らの周囲で繰り広げられる人間関係等も魅力の一つ。

割とこの路線の青春ラノベは避け気味なんですけど、表紙買いした「彼女のL 〜嘘つきたちの攻防戦〜」は本当に面白かった……「嘘」を見抜くことができる少年と、少女がついた「優しい嘘」にまつわる物語。恋愛未満の彼らの距離感が心地よく、読み終わるとどこか温かい気持ちになれる一冊でした。
→2018年に読んだ面白かったライトノベル6選

2019年

2019年はまず以前から気になっていた「錆喰いビスコ」を読むところから始めたんですけどこれがまあとにかく面白かった!ど真ん中一直線の王道少年漫画的展開が気持ちいいし主人公である少年ふたり・ビスコとミロの二人がぶつけ合う「愛(not恋愛)」の姿がとにかく熱い。巨大なキノコをはやして攻撃するスタイルの奇抜さもぶっちぎりで、とにかくめちゃくちゃ動く所でアニメ化してほしい気持ちしか無い。トリガーかスタジオジブリで劇場版アニメにしてくれって定期的に言ってる。

今年は色々と悪役令嬢物を読みましたが、その中でも一番個人的に面白かったなと思うのが「悪役令嬢なのでラスボスを飼ってみました」。破滅ルートしか無い悪役令嬢に転生した主人公が生き残るために隠しルートのヒーローであるラスボスの男を落としに行く。落としに行ったはずがすっかり手のひらの上で踊ってしまっている姿が可愛すぎるし、巻を経る毎に魅力を増していく正ヒロインにして最大のライバル・リリア様がまためちゃくちゃに良かった!

そして超今更すぎるんですけど今年ようやく「ようこそ実力至上主義の教室へ」読んだめちゃくちゃ面白かった……。とある事情で天才的な能力を隠して「事なかれ主義」と嘯く主人公・綾小路が時折見せる人でなしっぷりが最高に興奮するし、表面に出ないようにしながらもそんな彼が同じ学年の食わせ者達と渡り合っていくのがめちゃくちゃ楽しい。ちょうど今第一部が終わって来年からは新展開がスタートするのでそういう意味でも良いタイミングで読んだなと思います。いやもうほんと2020年が楽しみだなあ!!!
→2019年読んで面白かったラノベ10選


婚約破棄から始まる悪役令嬢の監獄スローライフ 下

 

公爵令嬢レイチェルのだらだら監獄生活&エリオット王子への嫌がらせは、さらにさらに加速する―!!地下牢でペットを飼ったり、お楽しみ会を主催したり…そしてフリーダムなレイチェルに振り回される面々は―!!さらには最強のヤンデレ女騎士まで現れて!?エリオット王子たちの運命やいかに!? (「BOOK」データベースより)

見に覚えのない罪で婚約を破棄された上投獄されたの公爵令嬢が本性をあらわにして牢獄に自ら立てこもり、悠々自適な生活を送りながら自分をいびろうとする元婚約者の王子とその取り巻き達をいびり返すお話。完結編。

最後まで恋愛沙汰にも刃傷沙汰にもならず(いや一部の人は別の意味で大変なことになっていたけど)、最初から最後まで一貫して軽いノリで突き抜けていったので安心して楽しめた。この流れから王子一派が処刑されるようなオチになったらちょっと嫌だなあ…と心配していたんだけど、むしろ暴走して刃傷沙汰に走ろうとする周囲を引っ掻き回していたはずの主人公サイドが食い止める展開すらあって笑ってしまう。絶対にシリアスも泥沼にもさせないこのさじ加減が凄かった。2巻という巻数もいい感じに間延びせずにきれいにまとまってよかったと思う。

散々無茶苦茶やっておきながらもレイチェルは最終的にエリオット側の生命を取るような流れは一切望んでいないのが本当に面白い。絶妙に王子側が暴走しすぎないよう「節度」を持ったいびりが展開されていくし、レイチェルの配慮が届かない/手の出せない部分は彼女が育て上げた侍女軍団が完璧に彼女の意図を汲んで行動してストッパーとして機能する。こんなん、レイチェルへの嫌がらせに拘泥するあまり臣下からの信頼を失ってさえいるエリオット一行が勝てるわけがない。

楽しくドタバタしながらも、気づけば取り巻き一行は一人ずつ王子の周りから排除されていき、貴族達への求心力もしっかり剥ぎ取って…一切の弁明の余地なく王子の政治生命を完璧に断っていく流れが見事でした。しかし同時に、レイチェルが一番望んでいた結末は「自分も次期王妃の座を追われて牢の外でも悠々自適に暮らす」ことだったと思うので正直試合で勝って勝負に負けた感じが物凄くあるんだよな…いや、そのへんのバランスがまた絶妙なんですが。

ともすれば重くなったり残酷になったり後味が悪くなってしまいそうな題材を扱いながらも、最初から最後まで明るく笑える話として計算され尽くした展開がどこまでもお見事でした。楽しかったです!レイチェルがラストでプロポーズした相手、私も彼と結婚したい。


異世界転生アンチテーゼ 転生魔王はチート転生者をチートで殺します

 
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「異世界転生者って何でハーレム作りがちなんだろうな?」「そう言う魔王様も、わりとハーレムじゃありませんか?」人間と魔族が対立し、剣と魔法の溢れる“ありがちな”世界・イグラリア。そこでは、元日本人の転生者が魔王として君臨していた。「転生モノ」を好む彼は、側近の魔女・セレスと共に『転生者が転生者を殺す』皮肉な構図を楽しんでいて―。特権階級の三男に転生した剣神、過労死して転生した元社畜、最強を追い求めて転生した魔術王―魔王の許へやって来る「ありふれたチート転生者」の矛盾や身勝手さを、チート魔王が論破し、そして返り討ちにする“異世界転生”ファンタジー。第24回スニーカー大賞編集部大賞受賞作。 (「BOOK」データベースより)

異世界転生して「魔王」となった日本人の青年。四天王の美少女達に弄られたり、大量の事務仕事に忙殺されたりしている彼の趣味は、自分以外の異世界転生者を探し出し、“狩る”ことで……。

あらすじからもっと軽いノリで異世界転生モノの矛盾にツッコミ入れていく、メタ系のギャグ小説かと思っていたのですが、どちらかというとむしろブラックギャグ系と言うか……!ラストバトルなしでひたすらラストバトル前のラスボスとの対話をやっているようなお話なんだけど、転生して魔王になった主人公が転生者達を自分に向かってくるように仕向け、論破し、チート能力で狩っていく。戦いの描写は一切なくて、それまで語られてきた物語が唐突に終了する。そこに同じ人間への情とかそういうのは一切なくて、ただ愉悦の為に消費されていく姿は滑稽ですらあった。

なんというか、異世界転生という「物語」を駆逐するための「物語」なんだなあと。あまりにもあっけない最期の描写に最初は唖然としたけど、熱いバトルシーンなんか描いたらたとえ最後に負けたとしてもバッドエンドの物語として成立しちゃうもんな。

タイトル通りの「異世界転生」に向けられたカウンターパンチ的な物語が最高に悪趣味で楽しかったです。色んな意味でひとでなしの主人公がどういう経緯でこういう愉悦を得るに至ったかも大変興味あるけど、それはもう舞台装置的な扱いで語られないままのほうが美味しい気もするけどどうかなあ。

まだまだ1巻ではやられてない異世界転生のテンプレはいっぱいあると思うので是非とも続きを出して欲しい。


幼なじみが絶対に負けないラブコメ

 

幼なじみの志田黒羽は俺のことが好きらしい。家は隣で見た目はロリ可愛。陽キャでクラスの人気者、かつ中身は世話焼きお姉系と文句なしの最強である。…でも俺には、初恋の美少女で学園のアイドル、芥見賞受賞の現役女子高生作家、可知白草がいる!普通に考えたら俺には無理めな白草だけど、下校途中、俺だけに笑顔で会話してくれるんだぜ!これもう完全に脈アリでしょ!ところが白草に彼氏ができたと聞き、俺の人生は急転直下。死にたい。というかなんで俺じゃないんだ!?俺の初恋だったのに…。失意に沈む俺に黒羽が囁く―そんなに辛いなら、復讐しよう?最高の復讐をしてあげようよ―と。(「BOOK」データベースより)

幼なじみ・黒羽の告白を袖に振って、現役美少女高校生作家・白草に片思いをしていた丸末晴。結構いい感じに距離を縮めていると思っていたのに、白草に付き合っている相手が居ると知ってしまう。意気消沈する末晴の前に現れた黒羽は、「白草に復讐しよう」と提案して……?

これは面白かったー!!恋愛感情をこじらせた主人公とヒロインたちが、本当は相思相愛の筈なのに空回りしてお互いに足を引っ張り合って両思いになるタイミングを逃し続ける姿がめちゃくちゃ楽しい。とにかくどのキャラクターたちも魅力的で、彼ら彼女らが繰り広げるテンポの良い会話を追っているだけでも楽しかった。

「初恋」というたった一度のトクベツな感情を持て余し、それ故にあらぬ方向に向かって暴走していく三人の様子が楽しく、同時に甘酸っぱい。好きだからこそ許せない、許せないけれどやっぱり嫌いになれない!と、お互いにお互いを牽制しあっては後悔で身を焦がす、もどかしいやりとりがたまらなく滑稽であり、たまらなく愛しかった。すれ違ってるだけで黒羽とも白草とも最初からお互いの好感度がMAXみたいなところあるのでわりと読んでる方としてはもどかしく、特に幼なじみの黒羽とのやりとりには何度「もう早くくっついちゃえよ!!!」状態ではあったのですが、同時にタイトルがこんななのにもかかわらずかなりギリギリまでどっちに転ぶかわからないデッドヒートを繰り広げているので気が抜けないし、三角関係モノだけどどっちのヒロインもおざなりにならず同時に主人公の心の動きにも優柔不断さを一切感じさせず(むしろ主人公の対応は最初から最後まで誠実ですらある)、なおかつどっちともくっつかないというさじ加減が絶妙でした。っていうかこれ、経緯を考えるとどっちに転んでもタイトル間違ってはいないのかな……!?

ヒロインふたりも可愛いけど、周囲を彩る男キャラクターたちが魅力的なのも更にポイント高い。悪友・哲彦との気のおけない軽妙なやりとりには思わず男のケンカップル好きとしてニヤニヤしてしまうし、そんな哲彦が末晴の事を手のひらで転がしつつも重すぎない期待を向けてくるのがたまらなく良い。あと白草を巡る恋のライバルである阿部先輩がまた良いキャラなんですよね……末晴が封印してしまったとある「才能」に対して阿部が抱く嫉妬とも憧憬とも言える複雑な感情が、大変に好きだし、最後に哲彦とふたりで末晴の話をする場面とか性癖に刺さりすぎてもうね。

なにより、彼ら彼女らからの期待を一身に受けて、時には逃げて、それでも最後はしっかりとキメてくれる主人公・末晴がかっこいい!過去に大きな挫折を経験していて、まだそこから立ち直れていなくて、それでもそれが「好きな女の子のため」であれば周囲の力を借りつつもそれを乗り越えることが出来る。普段はどんなにかっこ悪くても情けなくても大事なところで道を誤りはしない。王道ど直球で一生懸命な主人公像が清々しく、アツかったです。

ヒロイン2人の水面下でのやりとりは剣呑すぎてちょっと怖いところもあったけど、素直にキャラクターたちの会話劇を楽しめるお話で楽しかった。次があるならヒロインが増えそうな気配だけど、どうなるんでしょうか。あんまりヒロイン増えるとしっちゃかめっちゃかしそうだけど、続きがあるなら読んでみたい。


ようこそ実力至上主義の教室へ11

 

初めて出た退学者の衝撃冷めやらぬ中、1年最後の特別試験『選抜種目試験』がついに告知された。内容は総合力が問われるもので各クラスは筆記試験、将棋、トランプ、野球等、勝てると思う種目を10種選抜。本番では1クラスを相手に、ランダムに選択された7種の種目で争うというものだ。また各クラスには1名司令塔が存在し、勝てば特別な報酬が得られるが負ければ退学となるらしい。綾小路は自ら司令塔に立候補。そして坂柳が望んだ通り、AクラスとCクラスとの試験対決が決定する。「だが私は楽しみになったぞ綾小路。これでやっと、おまえの実力を見られるんだからな」綾小路VS坂柳の激戦必至の一騎打ち始まる! (「BOOK」データベースより)

一年の最後を飾るのは、お互いにフェイクを含んだ10種目ずつ勝負の方法を出し合い、その中から選ばれた7種目で対決するクラス同士のタイマン対決。その勝負の鍵を握る「司令塔」に自ら立候補した綾小路は、クラスの支柱的存在だった平田・櫛田が精細を欠く状況で掘北と共に坂柳率いるAクラスと直接対決することに。一方、Dクラスと対決することになったBクラスは、Dクラスの不気味な動きを感じており……。

生徒達が勝負種目や細かいルールを決めることが出来る学年最後の「特別試験」。クラスメイトの情報を詳細に分析して勝てる競技と最適な組み合わせを模索しつつ、他クラスと腹の探り合いをするという頭脳バトル的な前哨戦の攻防が楽しかった!そして久しぶりの堀北の活躍にも胸が熱くなる。相変わらずヒロインっぽい動きは全くないのだけど、なんというか綾小路と背中を合わせて戦える存在に成長しつつあると言うか、以前のようにただ綾小路の知略に頼るのではなく、綾小路の苦手とする部分から攻めて情報や協力を勝ち取ろうとする堀北の頭脳プレーが最高に楽しかったです。色っぽい展開が1ミリも期待できない手料理披露にニヤニヤしてしまう。あと須藤は本当にいい男になったね……掘北もう須藤とつきあっちゃえよ……。

Aクラスだけでも厄介なのに、Dクラス内には退学者を出した前回の試験をきっかけに自分の殻に引きこもってしまった平田と、綾小路を陥れようとする策略に加担した人物として致命的にではないが求心力に傷を付けられてしまって元気のない櫛田、そして相変わらず動きが読めない高円寺──という最大の問題が残っていて、代わりに掘北が立ったとはいえまずクラスをまとめ直すところからスタート。高円寺の問題は完全に二年生編に持ち越し感だなあ…。櫛田の問題なんかはうまいこと振り出しに押し戻した感はある。

クラスメイトの退学につながってしまった現実を認められない平田に過去と現在の過ちを直視させ、結果的に誰かを切り捨ててでもそれを受け止めて先に進ませる力を与えた綾小路。わざとどん底まで追い詰めた上でそれ以上の「闇」を持って立ち直らせるやり方は軽井沢相手でもやってましたけど、今回は少しだけ平田への友情的な何かが見て取れなくもないような気がするのが印象的でした。いや実際どうなんでしょうかあのあたりの解釈…綾小路あいつ地文でも平気でミスリードするから…男の背中の挿絵良いですね(現実逃避)…………。

Dクラス内部での攻防、CクラスvsAクラスの戦いも楽しかったのだけど、並列で語られるDクラスvsBクラスも最高に楽しかったと言うかキャー!!龍園サーーーン!!もうカラー口絵からして龍園復活の期待しかできなかったんですけど、久しぶりの悪どい作戦と腕力にモノを言わせたDクラス(旧Cクラス)の大暴れを見ることができて楽しかった。その分、相性の悪いBクラスが割りを食った感はあるけど、むしろ星ノ宮先生の意味深ムーブからしても2年になったら一気に盛り返してきそう。眩しいほどのひたむきさでまっすぐに上を目指す一之瀬率いるBクラスと、担任教師の中では一番汚い手を使ってきそうな星ノ宮先生の組み合わせ、正直期待しかできない。

「ホワイトルーム」で綾小路の存在を知ってから、ずっと彼との直接対決を夢見てきた天才少女・坂柳。両親の愛情を一身に受けて育った少女と生まれたときから無機質な部屋の中で愛情を知らずにそだった少年の、生徒の目が最小限になったからこそ実現できた「本気」のチェス対決が最高にアツかったです。坂柳が綾小路に向ける同情でも憐憫でもなく恋焦がれるようなしかして恋というには苛烈すぎるような想いが、激戦の後で綾小路に投げかけられた言葉が、とても良かったです。しかし最後でそうひっくり返してくるのかー!!綺麗に事が運んだようで最後でだいなしにしてくる流れはまるでこれまでの綾小路のやり口を見ているようで、「やりかえされた」感がすごい。終わり方も踏まえて最高に燃える「負け戦」だったと思う。

悲喜こもごも受け止めて、かけがえない何かを手に入れ失いながら良くも悪くも「振り出しに戻った」学年末。学園側vs生徒の対決も見据えてきそうな二年生編に期待しか無い。


ようこそ実力至上主義の教室へ10

 

季節は春、3月を迎えた高度育成高校の1年生。だが3学期末試験時点で歴史上初めて退学者を出さなかった結果、1年の全クラスに追加の特別試験『クラス内投票』が実施されることとなった。それは生徒自身が退学者を選ぶ非情な試験。誰かが退学しなければならない。その現実を前に冷静な平田の声も届かずCクラスは分裂。疑心暗鬼が広がる中、裏切り者も現れ最大の危機を迎える。一方他クラスの状況はAクラスが早々と退学者を決め、Dクラスは龍園が退学濃厚。そんな状況の中、Bクラス一之瀬はクラスメイトを救うため南雲生徒会長とある取引をしようとしていた。だがその条件は一之瀬が南雲と交際するというもので―!? (「BOOK」データベースより)

三学期の期末試験を好成績で終えた一年生を待っていたのは、クラス内で評価投票を行い最も評価の低かった生徒一人を退学させるという過酷な追加試験だった。退学を回避する手段は、2000万プライベートポイントの支払いのみ。これまでまとまりを見せていたCクラスの面々も、たちまち疑心暗鬼にかられバラバラになっていく。そんな中、水面下で綾小路を退学させようという陰謀が動き出して……。

クラス内部・そして外部で繰り広げられる駆け引きが熱かった。クラス内の投票で全てが決まるようにみせかけておいて、蓋を開けてみたらむしろ他クラスから投じることができる浮動票的なプラス評価をどう集めるかがキモになっているのが面白い。

借金をしてでもクラスメイトの退学を阻止しようとするBクラス、表立って動くことはできないがなんとかして龍園を退学させたくないDクラスの石崎一派、そして何者かの陰謀により一転して退学の危機に陥った綾小路。利害が一致した三者が水面下ギリギリで行う攻防戦がめちゃくちゃおもしろかったけど、友人の幸村がピンチのときですら「退学にならないといいな」くらいだったのに龍園の退学阻止の為にDクラスに入れ知恵する綾小路、実は龍園のことめっちゃ好きでは!?読者として、綾小路にとって一番強敵だったのは明らかに龍園だったと思うし復活してまたやりあって欲しいというのはめちゃくちゃにあるんだけど、平穏な毎日を望むといいながら龍園の復帰を内心で待ち望んでいるような動きを見せる綾小路も大概に人間らしくなってきている。

なんとか被害を最小限に抑えることはできたけど、残された傷跡は深そう。平田はもっとヤバいことになると思ってたんだけど、正直この流れで今後使い物になるかは疑問が残るし色んな意味でまだまだ闇を吐き出しきってない感じが凄い。Bクラスも結果として溜め込んでいたプライベートポイントをすべて吐き出してしまい、最後の特別試験を前にして生命線を失う羽目に。それにしても今回退学になってしまったあの人はよく考えると本当にひとりだけ何の役にも立っていなくて、もうかなり序盤からこの時のために暖められていた存在なんだなという感じがして……やりきれないものがあるな……。

次巻は一年生生活最後の巻にして、Aクラス坂柳との直接対決。どんな駆け引きが行われるのか、とても楽しみだけど同時にこれまで中立を保ってきた学校側に綾小路を排除しようとする人物が現れたり……と、いよいよ物語が本題に入り始める気配を感じてそちらもどうなるのかとても気になる。南雲生徒会長も動かないわけないしどうなるんだろうな……。


ようこそ実力至上主義の教室へ8

 

3学期開始と共に、高度育成高等学校の全生徒は山奥の校舎へと案内される。実施される特別試験の名称は『混合合宿』。男女別に1学年を6つのグループに分割。さらに2年、3年もグループに合流するという。最終的に所属する全生徒の平均点が高かった上位3つのグループにボーナスポイントが与えられる一方、最下位のグループ責任者は退学となるという。退学処分有りの特別試験に慄く一同。そしてグループの分け方は生徒に一任。敵同士だったはずのクラスと手を組むという感情的なもつれが波乱を生む!さらに新生徒会長の南雲、そしてあの高円寺にも動きがあるようで―!? (「BOOK」データベースより)

3学期初の特別試験は、男女別々に1学年を6組にグループ分けし、更にそこに上級生を加えた6グループ×2で行われる点取合戦。勝利できれば大量のポイントが手に入るが、一定条件で退学が確定してしまう危険な試験だった。友人の幸村がリーダーを務めるグループに入ることにした綾小路だが、そのグループは同じクラスの高円寺や先日揉めたばかりのDクラスの石崎を始めとして各クラスからひとくせある面子が揃い、一筋縄ではいかない気配。しかも、同じグループになった2年の生徒会長・南雲が元会長・堀北に点数勝負を仕掛けてきて……。

ちょっと男子ーーー!!!!!!
中盤で何の脈絡もなく始まる男のシンボルの見せあい正直めちゃくちゃご褒美なんですけどこれひょっとして誰かのコミケ原稿かなんかが混入しちゃってない!?こういうの女子向けの下ネタ系ギャグ本で何冊か持ってる……。唐突に明かされた主人公の巨○設定に爆笑してしまったし高円寺の言語センスでまたクソ笑ってしまうし龍園までが嫌がらせ目的で煽ってくるの笑ってしまった。更に、地文の綾小路が実に淡々といつもの調子で高円寺のエクスカリバーを妙に耽美に描写してくるのとか本当に無理でした。キレッキレで面白かったけどほんとになんでこの流れで突然このシーン書いちゃったの!?

物語全体としては新たな敵、乗り越えないといけない試練の存在を匂わすお話、だったのかなあ。2年の生徒会長・南雲の汚いやり口にはドン引きしたんだけど、その悪意がこちらに向いてたわけではないので対岸の火事感が強い。南雲は今後の大きな障害となっていくのでしょうけど、支配圏の広さとは裏腹になんか行動原理から小物感が漂っていると言うか、特に7巻までの対龍園戦が盛り上がりすぎてたので比較してしまう。

むしろ今回はクラスの異端児・高円寺への対応がメインだったのかなという気がしなくもない。のらりくらりと周囲の追求をかわし続けてきた高円寺から、最低でも「退学はしたくない」という本意を聞き出せただけでも大進歩では。しかし、今回はなんとか最低限の協力を取り付けたけど、仲間として解り合えたとは言えず。今後上に上がるためには高円寺の協力は必須だと思うので、そこも今後は大きな問題として降り掛かってくるんだろうなあ。

あと、地味にリーダーとしての振る舞いや自分の至らなさに葛藤する幸村が良かったです。幸村の真摯な姿に打たれて思惑はどうあれ協力するグループメンバー達の様子にもほっこりした。序盤の頭の固いガリ勉メガネが良くここまで成長した……。

それにしても、この手のラノベで全体の9割以上ひたすら男子しか出てこないの、なんというか人気作じゃなければできない贅沢な構成だと思ってしまう。軽井沢さんは相変わらず可愛かったし、ドキ★男だらけの林間学校私得ではあったんだけど、本来のファン層的に大丈夫??


悪役令嬢なのでラスボスを飼ってみました2

 

「わたくしが続編のラスボスで生徒会長・ゼームスも飼えば、クロード様の破滅ルートが回避されるわね?」ミルチェッタ公国で起きた魔物の反乱で、皇太子として窮地に立つ魔王・クロード。乙女ゲーム世界に転生した“悪役令嬢”アイリーンは、魔物と人間が敵対する続編シナリオが開始されたと感じ、婚約者の破滅フラグを折るべく、2の舞台・ミーシャ学園に男装して乗り込むけれど!?悪役令嬢、第二のラスボス攻略なるか!? (「BOOK」データベースより)

乙女ゲーム『続編』のシナリオを舞台に、アイリーンが続編の攻略キャラたちを巻き込みつつ旦那様から逃げ回りつつ、事件の解決(=ラスボス攻略)を目指すシリーズ第2巻。「ゲームで置きた事件の記憶」を足がかりにしつつ、前作ラスボスであるクロードや悪役令嬢アイリーンが生存していることで大幅にシナリオの変わった「現実の事件」を紐解いていく展開が面白い。前巻と違って「破滅目前の悪役令嬢」というバッドステータスのないアイリーンの持ち前の行動力と破天荒な男前っぷりが、男装していることも相まって輝くこと輝くこと。

例によってゲームの主人公側が悪で、悪役令嬢側が善という展開なんですけど、ゲームヒロインのセレナよりもむしろ味方であるはずの魔王様のラスボス感がすごい。旦那様の目をかなりの力技で切り抜けていくアイリーンと、確信犯か偶然なのか紙一重な行動で彼女を追い詰めるクロードの駆け引きがめちゃくちゃ楽しくて、始終ニヤニヤしてしまった。嫁バカを炸裂させつつも嫉妬深くドSなクロードとそんな彼にベタ惚れだけど旦那様の「お前を泣かせたい」系の発言には恐怖しか感じないアイリーンの恋の駆け引きが楽しすぎました。特に電書版書き下ろしでのやりとりは必見すぎるので電書派じゃないひとも読んで欲しい。

そして、そんなクロードの大暴れっぷりやらなにやらで割を食っている感のあるのが今回の敵役であるセレナ。前巻も敵側の小物感が結構すごかったんですけど、今回のセレナはもはや障害にすらなってない感があって、クロード&アイリーンの手のひらで踊らされてしまった感。セレナ本人も無自覚のまま、憎きアイリーンによって憧れのリリアの「足かせ」として仕立て上げられてしまう姿はどこか滑稽であり、身内には寛容なアイリーンの冷徹な策略家としての一面を見ているようで印象深かったけど。

前巻で登場したゲーム正ヒロイン・リリアが前世の記憶を取り戻したことで、物語は二人の「転生者」によるゲーム知識をフル活用した人材獲得合戦の様相に。今回は試合で負けて勝負に勝つみたいな状態だったけど、その間にリリアもしっかり地盤固めは行っているので今のところ戦力は互角か。乙女ゲームのシリーズ作品はまだあるようだし、王位継承権争いもセドリックにも十分目はあるわけでまだどう転ぶかはわからない。どうなっていくのか続きが楽しみです。


錆喰いビスコ

 

すべてを錆つかせ、人類を死の脅威に陥れる“錆び風”の中を駆け抜ける、疾風無頼の「キノコ守り」赤星ビスコ。彼は、師匠を救うための霊薬キノコ“錆喰い”を求め旅をしていた。美貌の少年医師・ミロを相棒に、波乱の冒険へ飛び出すビスコ。行く手に広がる埼玉鉄砂漠、文明を滅ぼした防衛兵器の遺構にできた街、大蛸の巣くう地下鉄の廃線─。過酷な道中で次々に迫る脅威を、ミロの知恵の閃きと、ビスコ必中のキノコ矢が貫く!しかし、その先には邪悪県知事の奸計が?。第24回電撃小説大賞“銀賞”に輝いた、疾風怒涛の冒険譚! (「BOOK」データベースより)

謎の災害によって文明が滅び、錆びに犯された日本を生きる、お尋ね者の「キノコ守り」の少年・ビスコと、心優しき医師の少年・ミロ。接点のなかった2人の少年(と一匹の蟹)が死の病に犯されたそれぞれの家族を救うため、幻のキノコ「錆喰い」を求めて冒険の旅に出る。

旅の中で様々な出会いがあり、そこでの出会いを通して2人が人間的にも戦士としても成長していく姿がめちゃくちゃ楽しい。並行して、最初は利害関係の一致から旅を始めたくらいの関係だったミロとビスコが、徐々にお互いに背中を預けあえるかけがえのない相棒になっていく姿が印象的でした。

もう序盤からびっくりするくらいミロくんがヒロインをしているんですけど、同時に女の子のような見た目でありながら誰よりも強靭な精神を持っているのも彼なんですよね。どんな状況でもその想いを見失わず自分を貫こうとする姿があまりにも強く、だからこそ、終盤でその意志が敵の手によって無理矢理に砕かれようとする展開に惹き込まれてしまった。

そういう意味ではむしろヒロインはビスコなのかもしれない……?ワイルドを気取っているけど情に厚くて誰かのピンチを見過ごせず、仲間を傷つけようとする相手にはすぐ激昂してしまう姿はまさしく少年漫画の主人公なんですけども、終盤は完全に姫姉様(ナウシカ)みあった……。などと考えていたらツイッターで「アクタガワ(蟹)がヒロインでは!?」とツッコミが来たのでもう3人で結婚したらいいんじゃないかな(提案)

終盤、キャラクターたちがびっくりするくらいに「愛してる」を連呼する。その「愛」という言葉について、あとがきでは「憎悪や執着も含めて誰かを強く想うこと」と説明されいて、そう言われてしまったら確かに最初から最後まで愛しかない物語だったなあと。主人公サイドも敵サイドも含めて、誰もが誰かへの譲れない「強い想い」を持っていて、それを暑苦しいくらいにぶつけ合うクライマックスにただただ圧倒されました。

物語の「続き」を想起させつつも一冊の中にこれでもかとばかりにぎゅうぎゅう詰め込んで、なおかつ一旦綺麗に終わらせてくる感じが良い意味で新人賞受賞作という感じで、劇場で見る長編オリジナルアニメーションのような濃厚な一冊でした。面白かった……!!

それにしても、こんなに男臭くて大丈夫か?っていうくらい熱い男たちの物語だったんですけど、ビスコを認めてからのパウーさん(ミロの姉)がえっちすぎるのでワイルド系でえっちなお姉さんが大好きな人は早く読むんだ。


彼女のL 〜嘘つきたちの攻防戦〜

 

遠藤正樹は嘘がわかる特異体質で、川端小百合は決して嘘をつかない少女だった。そして学校のアイドル佐倉成美は、常に嘘をふりまく少女だった。ある日、川端と佐倉の共通の友人が亡くなってしまう。自殺という噂だったが川端は「彼女は殺された」と言い、佐倉も「彼女を追い詰めたのは私」とうそぶく。真相を知りたいと川端に頼まれた正樹は、その力で誰も知らない佐倉の心の内を知ってしまい―。願いと嘘と恋が交錯するトライアングルストーリー。(「BOOK」データベースより)

とある少女の死の真相を探るために、苦手としていたクラスメイトの佐倉から話を聞くことになった遠藤正樹。話を聞くうちクラスメイトたちに見せる学園のアイドルとしての彼女とは少し違った彼女の一面に触れることに──嘘を見抜けるがゆえに嘘が嫌いな少年と、嘘をつかない少女と、嘘つきな少女が織りなす青春ミステリー。

嘘つきの佐倉と嘘をつかない川端、間逆な二人の少女と接するうちに、潔癖症的ですらあった遠藤の嘘に対する見方が変わっていく。それを許容し、使い方によってはそれは悪いものではないのだと。優しい嘘つきもいるのだと。と同時に、小さな嘘がきっかけで距離をおいてしまった父親との関係を再構築していく。

最後の最後に暴き出された「真実」はとても悲しい結末だったけど、二人の少女がその事実を彼女たちなりに受け止めて、前に進もうとしていく姿が印象的でした。誰も彼もが相手を思いやり、それゆえにすれ違っていく姿がやるせなく、それでもどこか温かい気持ちにさせられる。とても優しい「嘘」のお話。

ミステリーとしても青春ストーリーとしても家族の物語としても大変おもしろかったのですが、主人公と二人の少女の恋愛とも友情ともつかない感じの、なんとも言えない距離感がまたとても好きです。というかもうとにかく佐倉が可愛すぎてツライ。一行でまとめろといわれたら「佐倉が可愛かった」になるくらいに可愛い。イラストの凛とした表情も、状況によってころころ変わっていく変幻自在で小悪魔な姿も、そして最後の最後で覗かせる彼女の本当に表情も、最高に可愛かった。いや川端も可愛いんですけれども!

とっても面白かったです!