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「このラノ2023」感想と自分の投票の話

『このライトノベルがすごい!』編集部(編集) このライトノベルがすごい! 2023
『このライトノベルがすごい!』編集部(編集) (著)
宝島社
発行:2021-11-25T00:00:01Z

今年も「このラノ」のアンケートに参加したのでざっくり自分の投票とざっくり本読んだ感想の話をします。協力者は降りて久しいんですが最近の協力者枠は自分の投票と総合コメントが載せてもらえていいなあ。しかし向こうの協力者枠の募集要項で指定されてるほど今読めるか微妙なところだしなあ……ギリギリその数字になってても最近の新刊を読んでるわけじゃないしなあ……という顔。

殿堂入りが……殿堂入りが多い

今回で3回目の新文芸部門1位だった「本好き」に加えて、殿堂入り条件緩和で例年ずっとWEB投票1位だった「よう実」、上位常連の「チラムネ」がランクイン。よう実はともかくチラムネはアニメ化もまだだしこれからも投票したくなること多いのではー!?よう実も作者インタビュー見る限り3年生編ありそうな雰囲気だし、と思ってしまったけどたしかにずっとランキング上位にいたもんなあ……。

よう実にハマってこのラノ投票復帰したという経緯があったので投票できなくなる前にコメント一度採用されてみたかったですが多分凄く競争率が高い。

作品紹介とインタビューに重点を置いた紙面楽しい

去年の感想でも言った。協力者の投票内容が全部載るようになったのも性別年齢別のランキングが載るようになったのもブックガイドの方にも投票コメント掲載が入るようになったのもあって、以前の紙面よりも作品との出会いに重点を置いている感じが楽しいです(毎年言ってるけど名台詞コーナーが消えたのだけが寂しい)。ランキング入った作品殆ど読んでいない状態だったので(このブログの中の人は特に最近のラブコメの波動に全然ついていけていません)これからしっかり中身を精読して気になる本に手を出してみたいとおもいます。

あと表紙が特集記事の載っていて殿堂入りのSAO、表紙に載ってる目次がインタビュー主体になったのも表紙からのランキングバレを上手く避けてる感じで上手いなあと。つまり来年再来年あたりで俺ガイルとかよう実表紙の可能性あるな。ないか。

よう実の衣笠先生インタビューはここ数ヶ月アニメ雑誌「ニュータイプ」に掲載されたインタビューよりも書き手側の話が多くて、今までと視点が違う感じが面白かった。綾小路のキャラクターが出来るまでとか、トモセ先生との出会いの話なんかも面白かったなあ。あとちょくちょくエロゲー時代からのファンが指摘している「完結させられない問題」にも言及していて、小説のほうが性に合っているので大丈夫ですみたいな話をされてたので良かったなあと思います。3年生編の話もちょっとしていたので2年生編で終わるってこともないみたい。楽しみ!!

これに投票しました

コメント採用どころか「よう実」以外全部ピックアップもなくて寂しい。去年と今年は投票時のコメントをそのまま残していたのですが、毎年のまとめと比べてちょっとよそ行き気分で文章書いてるので自分で読み返すとちょっとおもしろいですね。キャラクター投票のコメントはもう少しテンション高めでも良いのかも(ていうか堀北さんが!堀北さんが初ランクインしてておめでとうだった!!よう実の女性キャラだと堀北伊吹櫛田の凸凹トリオが好きなんですけど見事にランクインしない3人なので悲しいw)

作品部門

1:七斗七「VTuberなんだが配信切り忘れたら伝説になってた」→感想
配信事故を切っ掛けに成り上がっていくVtuberの話…という目新しさに惹かれて手に取った作品ですが、毎巻コミカルな会話劇をやりながら各キャラクターに焦点を当てて掘り下げていく構成になっているのが、読みやすいし安定感がある。リスナーとの会話劇にも「毒」が殆どなく、安心して読める作品なのが嬉しいです。
2:小路燦「VTuberのマイクに転身したら、推しが借金まみれのクズだった」→感想
借金を抱えたギャンブルクズのVtuberエリンが、圧倒的な個性と超絶トークスキルでシンデレラロードを駆け上がっていく姿が痛快。同時に、彼女のバイト先の同僚でありマイクに転身した主人公がそれとなくファンの意向を伝えたり、萎縮してしまいそうな時に発破を掛けていくことで影に日向に彼女を支えていく展開が良かった。
3:コイル「オタク同僚と偽装結婚した結果、毎日がメッチャ楽しいんだけど!」→感想
主人公二人のお互いを束縛しない・否定しない・一緒に居て心地の良い関係性が物語を通して伝わってきて、読者も読んでいて元気がもらえる作品。偽装夫婦からスタートして少しずつ絆を深めあった二人が自然に距離を縮めていってお互いを本当の伴侶として認めていく展開がとても良かった。
4:夏目純白「純白と黄金」→感想
かっこいい男の子たちが鎬を削る、スタイリッシュなヤンキーバトルだと思って読み始めたら「ヤンキー」という概念の限界に挑戦するかのような、現実離れしたど派手な展開の連続がとても楽しかった。荒削りに感じる部分も多い作品でしたが、とにかくノリと勢いで読ませていく感じが良かったです。
5:衣笠彰梧「ようこそ実力至上主義の教室へ 2年生編」→感想
高校生活全体の折り返しに差し掛かり、顕著に変化していく人間関係が印象的でした。クラス崩壊の危機を乗り越えて結束を高める級友達を尻目に、主人公・綾小路は不穏な動きを見せていて。これから物語がどう動いていくのか、まだまだ目が離せそうにありません。

女性キャラクター部門

◆櫛田桔梗(「ようこそ実力至上主義の教室へ 2年生編」)
クラスの中で一度は完全に居場所を失った櫛田が、再び居場所を得るために自分にしか出来ない形でその存在価値を示そうとしていく姿がアツかった。以前の腹に一物隠し持った姿よりも本性を出した後のふてぶてしい姿のほうが魅力的に感じたし、犬猿の仲である堀北との関係性の変化も楽しみ。

◆加々宮エリン(「VTuberのマイクに転身したら、推しが借金まみれのクズだった」)
借金持ち・ギャンブル狂いのクズという強烈なキャラクターでありながら、アンチのコメント・同業者からの嫌がらせすらも逆手に取って自分の起爆剤に変えていくトークスキルが最高でした。

◆柚日咲めくる(「声優ラジオのウラオモテ」)
「声優」であり「声優オタク」でもある彼女がその2つの間で葛藤し続ける姿が好きです。後輩声優からファンサを貰って内心悲鳴をあげたりする姿が微笑ましい一方で、自分の「推し」である彼女たちと一つの椅子を奪い合わねばならないという二律背反に悩み、葛藤する姿が印象的でした。

男性キャラクター部門

◆綾小路清隆(「ようこそ実力至上主義の教室へ 2年生編」)
強い。かしこい。ひとのこころがない。他の生徒達とは全く別の場所を見ていそうな綾小路が同級生たちをどこに導いていくのか。とても楽しみです。

◆クノン・グリオン(「魔術師クノンは見えている」)
生まれつき目が見えないというハンデを背負いながらそれを乗り越えさせた結果、女性と見ればナンパしてしまう・底抜けに明るい・ちょっとマッドな見習い魔術師とかいうとんでもない逸材が爆誕してしまった。いろいろな意味で今後どんなふうに成長していくのか楽しみすぎる人材です。

◆グレン=レーダス(「ロクでなし魔術講師と禁忌教典」)
殆ど出番のなかった最新刊でも最後に美味しいところを持っていくところはさすがの主人公!!宿敵・ジャティスとの対決も間近に迫っているようで、どんな活躍を見せてくれるのかとても楽しみです。


アラサーがVTuberになった話。

 

過労死寸前でブラック企業を退職したアラサーの私は気づけば妹に唆されるままにバーチャルタレント企業『あんだーらいぶ』所属のVTuber神坂怜となっていた。「VTuberのことはよくわからないけど精一杯頑張るぞ!」と思っていたのもつかの間、女性ばかりの『あんだーらいぶ』の中では男性Vというだけで視聴者から叩かれてしまう。しかもデビュー2日目には同期がやらかし炎上&解雇の大騒動に! 果たしてアンチばかりのアラサーVに未来はあるのか!? ……まあ、過労死するよりは平気かも?

過労死寸前でぶっ倒れ、ブラック企業を退職した主人公は妹の薦めで企業のVtuber募集に応募、『あんだーらいぶ』のVtuber神坂怜としてデビューすることに。ところが、同期Vtuberが不祥事を起こして2日目で解雇され、その矛先が無関係のはずの神坂にも向いてしまう。なにをやっても炎上してしまうという逆境だらけの状況で生き残ることが出来るのか──!?

社畜が異世界に飛ばされたと思ったら炎上していた

面白かったー!!割りとこれまで読んだVtuberモノは「好き」が昂じて憧れの職業についた主人公が売れっ子Vtuberとして成り上がっていくみたいなお話が多かったので、業界に興味のない主人公が「お仕事」として活動を始めるという展開がまず印象的でした。

底辺Vだけど前職での貯蓄があるのでお金の心配はしなくて良くて、最悪ダメなら転職する道もなくはなく、毎日炎上してるけど前職の仕事での経験を思い出せば全然気にならなくて、むしろ極少数でも自分のことを評価してくれるひとが居ることが嬉しい。職業選択の一つとして「Vtuber」を選んで、上手く行っているわけではないけど今の立ち位置を気に入っているという主人公の考えが良くも悪くも重くなくて良かった。企業所属のVtuberって雇用契約を結んだ社員なわけで、確かにこういう経緯で業界に入る人もいるはずだよなあ……。

そんな彼が前職との方向性の違いに戸惑ったりしつつも高いクレーム耐性で炎上を受け流していくの良かったし、「自分なら炎上してもノーダメージだから」と積極的に周囲の炎上を引き受けていく。本人はもともと炎上ノーダメージだけど、時間が経つにつれて彼のリスナーたちも炎上耐性付けていくのにニヤリとしてしまったし、いつのまにか似たような個人勢の炎上系Vtuberやそのリスナーとも仲良くなってるのには声出して笑ってしまった。さすが、常に推しの炎上にさらされ続けたリスナー達だ面構えが違う……。

内に外に支えてくれる妹ちゃんが可愛かった

デビュー直後は炎上したこともあって先輩Vtuberの畳…柊冬夜や彼をVtuberの世界に誘った妹ちゃんくらいしか好意的な人間がおらず、同じ企業のVtuber達からも遠巻きに見られていたのが、元サラリーマンとしての気くばりの上手さや人の良さが相まって少しずつ周囲に人が増えていく展開が良かったです。とりあえず畳と主人公の薄い本ください。でも先輩後輩の女性Vと絡んだら百合の間に挟まる男として燃えるんですよね。ここが地獄か。女性Vが他のVに絡んだら「てぇてぇ」とかいうくせにお前ら〜〜〜!!!

章間に動画のコメント欄ではなくて匿名掲示板の企業スレッドの様子が入るんですけど、こちらも最初アンチや同情だらけだったのが少しずつ「縁の下の力持ち」的な認識になっていくのが胸熱でしたし、それとなく掲示板に常駐して話題操作しようとしてる妹ちゃんがかわいい。妹ちゃんの他に色付きIDが数人いますけど、この辺もそのうち中の人がわかったりするのかな。なおチャンネル登録者数はほとんど増えない模様。

そうそう、主人公が隙あらば挟み込んでくるちょっと好きすぎて気持ち悪いくらいの「妹大好き」トークが大変きもちわる……微笑ましいのですが、その一方で当の妹ちゃんも口ではお兄ちゃん嫌いとか言いつつ実は誰よりも兄のことを心配してるのが大変可愛いかった。過労で倒れた兄を心配してVtuberデビューさせたら予想外に炎上続きで、しかも兄がそれを全く気にしないどころか自ら炎上を請け負いに行ってしまってるのに複雑な感情を抱いてしまうのとか本当に可愛いんですよね。匿名掲示板で印象操作しようとしたり、某百科のアンチコメントを削除しまくったり、休日になると頻繁に兄妹でお出かけ(兄いわくデート)してる姿が微笑ましすぎて、にこにこしてしました。兄妹もの好きな人にメッチャおすすめしたいなこれ〜〜。

少しずつ好転の兆しが見えるとは言えコメント欄に荒らしが貼り付いてるままだったり、後輩デビュー疑惑のある元同僚(♀)の話とかも語られないまま終わってしまったのでこのままコンスタントに続巻が出ると良いな。あと畳と主人公の薄い本ください。


VTuberなんだが配信切り忘れたら伝説になってた5

 

三期生も一周年! 記念配信の準備が進む中、光の様子が…!?
まともなVTuberが遂にいなくなってしまった大手運営会社ライブオン。切り忘れから大人気となった三期生・心音淡雪は、シオンママと性(聖)様のカップル成立に末永く爆発しろと思いつつ、迫る『三期生1周年記念』に向けて準備を進めていた。しかし、オールスターコラボやデートなど楽しく活動する中で 「い゛、い゛ら゛っ゛じゃ゛い゛、あ゛わ゛ゆ゛ぎ゛ぢゃ゛ん゛……」元気で良い子な光ちゃんが頑張りすぎて喉を壊してしまい!? それでも休もうとしない光ちゃんだったが、淡雪から「リスナーの想い」を伝えられることで徐々に心境も変わっていき――。衝撃のVTuberコメディ、アニバーサリーな第5弾!

2期生の騒動も一段落し、デビュー1周年に向けて企画を練りはじめた淡雪たちライブオン3期生の面々。企画の一貫として全員で歌を披露することになったが、歌が苦手な光ちゃんが練習のしすぎで喉を壊してしまう。それでもなお、今まで通りの過密スケジュールでVtuber活動を行おうとする光ちゃんに、淡雪は……!?

また変態と百合カプ(と淡雪ハーレム要員)が増えた!!

ライブオン面々の中でやや存在感薄めだった光ちゃんを中心にした三期生当番回。ファンに見捨てられることが怖くて、忘れられることが恐ろしくて、ついつい「頑張りすぎて」しまう光ちゃんに同じVtuberの立場から、そしてひとりのファンの立場から彼女の勘違いを正して立ち直らせる淡雪と光ちゃんを親身になって心配してくれる三期生や周囲の面々……という、ファンや同期達との絆を感じる感動的な展開なのですがそこからどうしてそこにたどり着いてしまった!? 温度差がすごすぎて風邪引くわ!!!

いやでも確かに光ちゃん、個性の強すぎるライブオンの面々に押されて(少なくても作中では)存在感が薄くなりがちだったので良いテコ入れだったのだろうなと……いや他の面々が霞むほどの強烈な変態(しかも性知識がない分逆にブレーキがない)として戻ってきたのは……どうなのかな……??

その他にも今回は前巻の展開を受けてすっかりバカップルになってしまった聖様×シオン、エーライさんに劣情を抱くちゃみちゃん……とますます百合の花園が咲き乱れる展開だったしあわちゃんハーレムも増えた。いやでも、以前シュワちゃんによって「組長」という二面性を覚醒させられて以降その二面性を戦略的に使う事で自らの強みとして生かしていくエーライさんめちゃくちゃいいキャラですよね。組長モードのときも含めて素は割りと男前だし、これはちゃみちゃんも惚れますし、コラボASMR配信のときのさじ加減が絶妙すぎる。四期生お披露目回のときは一番興味ないキャラだったのに、今四期生の中だと一番この子が好きだなあ。

コラボ配信回も良かった&新展開に期待

いろいろな意味で今回はラストの「光ちゃん覚醒」がすべてを持っていった感じが強いのですが、ライブオンの全ライバーが集まる「監禁人狼」の回もめちゃくちゃ良かった。推理ゲームとしての局面もありつつ、鍵となっていくのが各ライバー自身の個性の強さと彼女たちに関する理解度の高さというのがすごく良い。11人という大人数を動かしながら誰もに何かしらスポットが当たる展開になっているの良かったし、出番の少なかった晴先輩が最後の最後で無双するのが晴先輩らしすぎる。

また、各章幕間に挟まれる3期生のカステラ(マシュマロ)返信の小話も良かったです。これ割と個性が出るし、淡雪の一人称視点じゃないからこそ見えてくるものもあって面白い。それにしてもこの手の動画は本当に見ないので感覚がわからないのですがましろのカステラに送られてきたましろ×淡雪の百合SSは御本人による音読なんですか?えっちすぎませんか?

そして中盤にこれまで一切触れられてこなかったライブオン以外のVtuberについての言及があったとおもったら、次巻は外部ライバーとのコラボと、前巻にちらっと匂わされていた淡雪自身の掘り下げ話になるようで…!?割とライブオンの身内のみの盛り上がりで進んできた物語が新キャラクターたちの登場をきっかけにしてどう変わっていくのか気になるし、Webでも人気のあったエピソードとのことで、次巻どうなっていくのか本当に楽しみです。


魔術師クノンは見えている 2

 
Laruha

偉大な魔術師と最先端の研究環境が集まる魔術都市でも盲目の天才が大暴れ!
魔道具「鏡眼」を開発し、視界を獲得した盲目の天才・クノンは、さらなる水魔術の研鑽のため魔術学校へと旅立つ。 最先端の研究環境と最高の魔術師が揃ったそこは、彼にとって絶好の遊び場。聖教国の聖女や、雷光の異名を取る魔術師だって研究対象。教師や先輩、偉大なる不死の魔女までもが、そんな魔術一筋なクノンの言動に振り回されつつも注目する中、クノンは早速聖女に共同研究を持ちかけ……? クノンの才能が世界にバレる、発明ファンタジー第二弾!

師ゼオンリー経由の紹介で住み慣れた実家を離れ、魔術学校に入学したクノン。目標である特級クラスに入学出来たのは良かったが、入学直前に学園から送られてきた申し送りで驚愕する羽目に。思わぬ形で苦境に陥ったクノンだが、むしろどこか楽しそうで…!?

学園内の台風の目になっていくクノンにワクワクがとまらない

2巻目も面白かった!王宮魔術師達とのやりとりからしてしょっぱなからさぞかし濃厚な魔術オタク達の全力の「遊び」が見れるのだろうなとワクワクしていたんだけど、今回はむしろ学校側の教育方針でクノンを含むクラスメイト達全員が1から生活基盤を築く所がメインとなっていました。でも「稼げない魔術師は一流にはなれない」という学校側の説明があまりにも的を得ていて関心してしまった。あと、この世界の魔術師こういう人達だからこそクノンの超軟体水球みたいな基礎魔術の応用技みたいなものでも偏見を持たずに食いついてくれるんだろうなあ。「あの問題児・ゼオンリーの弟子」という部分も一部を覗き色眼鏡を掛ける理由にはなっていない気配で、良い意味で学園の台風の目になっていく姿にニヤニヤしました。

世間慣れしていない貴族の子息のクノンに突然降り掛かった金銭問題ですが、初代侍女であるイコの教育が良かったこともあってか危なげなく生活費を確保することに成功し、更には仕事に悩む同級生たちに様々な研究を持ちかけることで彼らをサポートしつつしっかり自分の利も確保していく。基礎魔術をひたすら創意工夫と応用で拡張していったクノンにとってはいろいろな意味で十八番みたいな展開なんだろうなあこれ。あと、狭い世界で引きこもっていて親の仕送りで魔術学校に行く予定のクノンに庶民の金銭感覚を覚えさせたイコの慧眼ぶりがすごい。同級生達とのやりとりはどれも良かったですが無感情と言いつつ感情豊かな聖女ちゃんが特に可愛かったです。

魔術師学校編としてはおそらくまだまだ始まったばかりで、派閥の話も今回ちょっと顔見世があったくらいだしクノン自身の研究も大きな進展はなかったし、「鏡眼」の話もまだまだ考察を重ねている段階だし、なにより未だにクノンが使える魔法も2つだけなんですが、生活基盤も確保したところでいよいよ次巻では本格的に魔術学校での学園生活が始まるのかな。とても楽しみです。

ところで書き下ろし番外編のミリカが強く生きてほしすぎる。女友達が数十人とかいうパワーワード!!



純白と黄金

 

ようこそ喧嘩都市へ。ここは思い出と約束の無法地帯。
《純白の悪魔》それは最強と称された少年の異名。 ヤンキーの聖地・東北で100人の敵を叩き潰した後でさえも彼のシャツには、返り血一つ存在しなかった。 数多の伝説と偉業によりその名は全国に轟き、遠くない未来に全てのヤンキーが彼の舎弟になるだろうと囁かれていたが…… ある日、彼は姿を消した。 時は流れ、ヤンキー全盛時代。 東京最大の喧嘩都市・猫丘区では第二の《純白の悪魔》を生み出すため、六つの高校が参戦する盛大な喧嘩が始まろうとしていた。 そんな狂騒の最中、一人のオタクの少年が猫丘区に降り立った。 名を安室レンジ。 かつて圧倒的な力で東北の頂点に君臨し、ヤンキーを引退した《純白の悪魔》だった――。

中学時代に修羅の国・東北で伝説のヤンキー「純白の悪魔」として伝説を築いた少年・安室レンジはオタクとして高校デビューするために東京の黒淵高校にやってくる。ところが、そこは東京のヤンキー達がしのぎを削る喧嘩都市であった。学園の筆頭ヤンキー・赤城ザクラを倒してしまったレンジは自分を助けようとしてくれた女ヤンキー・鬼津アオイの目指す「ヤンキーが差別されない世界」に共感し、彼女と共に猫丘区にある6つのヤンキー校の頂点を決めるテリトリーバトル「シマトリー」に挑むことに。

シリアスな笑いが炸裂する現代異能×ヤンキーバトル

表紙とあらすじから硬派な不良モノを想像していたのですが、ヤンキー概念と現代のSNS文化・スマホアプリを使ったテリトリーバトル要素を下敷きにした俺TUEE系無双系異能バトルもの(長)でした。

ヤンキーが混入した造語の数々でシリアスな笑いを引き起こしていちいち笑ってしまう。初っ端で強いヤンキーが出すオーラ的なやつを《邪気威(ヤンキー)》と呼び始めたところで既に笑ってしまった。あとなにげにSNS文化要素が色々混入していて、ヤンキー専用SNSとか自撮りの「カチコ映え」とかも地味にポイント高いんだけど個人的に一番笑ったのはSNSのイイネが「ヒャッハー」になっていたところです。他人のヒャッハーで承認欲求を満たすヤンキー、正直めちゃくちゃおもしろいな。あと東北への風評被害が凄い。

出てきたモブヤンキー(「汎用ヤンキー」って用語が登場人物間でも普通に使われてるのにも笑う)が主人公達の仕業で軽率に吹き飛んでいく派手なバトル展開と、その合間に割りと唐突に挟まれるヒロインとのイチャイチャも良かった。やや設定や文章に荒削りさを感じる部分もあったんですが、結構その場の勢いで楽しく読めたな。

男同士の複雑感情(を美味しく頂きたい主人公)が良かった

主人公・安室レンジがぶっちぎりに最強な設定で、俺は平和な東京(※平和ではない)でオタクデビューしてオタク友達作って目立たず生きたい……といいつつ、でも皆に気づかれる前に殴り倒せばいいよネって常人では見えない速さで雑魚を昏倒させていくのでこれは戦いになるのか!?と目を疑うレベルなんですが、オタクとしての自分とヤンキーとしての自分の両方を受け入れた結果「ヤンキー達がそれぞれの因縁を胸に激突する所を特等席で見守ろれるの実はオタクとして美味しくない!?(意訳)」ということに気づいてしまったので基本的に雑魚は倒してお膳立てをしつつ自分は基本的にボス戦に関わらないという最強の傍観者ポジションに目覚めてしまい無問題だった。彼らのすぐ横に居ながらも完全に上位レイヤーから彼らの因縁を俯瞰してるの、俺TUEE設定だからこそ出来る展開で色々と凄い。

黒淵高校の筆頭ヤンキー・赤城ザクラが実質もう一人の主人公みたいな立ち位置になっていて、彼がレンジとの出会いを機に自分を見つめ直し、道に迷い慢心していた己を鍛え直し、袂を分かったかつての仲間達と戦うためにふたたび立ち上がり、独りで戦うのではなく心を通わせた仲間を改めて手に入れる……という展開がとてもアツかった。というか彼が中学時代に組んでいた東京最強のヤンキーチーム・《天下逆上》のメンバーが現在のテリトリーバトルの中心となっている6つの学校でそれぞれ筆頭ヤンキーを張っている……という展開が完全にオタクが好きなやつなんですよね。男同士の複雑巨大感情じゃん。これはレンジも特等席で見たがるわ。

不良モノかとおもったら俺TUEE異能バトルモノ、男男間の複雑巨大感情かとおもったらそれを見守る強いオタク……といろいろな意味で予想を裏切られる設定で面白かったです。いや面白かったけど色んな意味でみんな表紙に騙されない!?いやでもこの内容を正確に読み取れる表紙って難しいよな……すでに2巻が出ているようなので、そちらも楽しみです。


VTuberなんだが配信切り忘れたら伝説になってた4

 

聖様が収益化剥奪!? 大人気VTuberコメディ第4巻!
クレイジーなVTuberしか所属していない大手運営会社ライブオン。三期生・心音淡雪は晴の初ソロライブへのコラボも成功し、喜んでいたのも束の間、なんと二期生・宇月聖の収益化が剥奪されてしまい!?

朝霧晴の初ソロライブでのコラボが成功し、憧れの晴先輩との距離も縮まって喜んでいた淡雪の元に2期生の宇月聖の収益化が剥奪されてしまったというニュースが飛び込んでくる。心配しなくて良いといわれたものの、それ以来聖は他のVtuberとの絡みを避けるようになり……。

淡雪のVtuberとしての成長を感じる

配信を切り忘れて酔いどれ姿を配信してしまったところなぜか人気Vtuberになってしまった心音淡雪と彼女が所属するライブオン社の愉快なVtuber達が繰り広げるコメディ第4巻。ストゼロで覚醒する酔いどれキャラ・シュワちゃんのテンションの高さも楽しいんだけど、今回はむしろシラフモード(あわちゃん)のVtuberとしての成長が凄く良かった。あわちゃん、お酒なくてもいつのまにやら普通にトーク盛り上げられるようになってるし先輩方の悪ノリには適度にノリツッコミいれつつ基本はツンツンなのも美味しかった。シュワちゃんはボケ、あわちゃんはツッコミ。清楚のことはそろそろ忘れたほうが良いと思う。

これまで受け身だった淡雪が自分から企画を立てて積極的に他メンバーに絡んでいく展開も良かった。それに対して前巻までで彼女の手腕によって(変態の)ポテンシャルを引き出された面々がすっかりその一面を自分のウリとして前面に押し出してくるの、強さしか無い。それはそれとして、前巻ラストで文字通り「新生」した晴先輩が普通に配信のコメント欄やコラボ動画に普通に混ざってくる様子には、胸が熱くなるものがありますねえ。

個々のエピソードだとクソゲー大好きネコマ先輩が自作したゲームを淡雪がプレイする『ネコマ先輩とクソゲー』が最高に好きなんですけど、今の若い子はデスク○ムゾンネタって通じるんですかね……!?マイ○ラ……もといワルクラでデザインセンス壊滅的で豆腐的なオブジェしか作れない淡雪が何故か建築対決で他のライバー相手に勝ち抜いてしまう(概ね決まりては自爆)『ワルクラ配信2』も良かった。ゲーム実況系のネタはハズさないなあ。

二期生3人の、意外な素顔が良かった

今回は2期生の下ネタ担当・聖様が収益化剥奪されたことに端を発する2年生掘り下げ回。これ表紙が公開されてから何度も言ってるけど、表紙の聖様のおっぱいがタイトル文字で隠されてるの、これセンシティブ対策で谷間とか隠す時にやるやつだ〜〜!!!ってメチャクチャテンション上がってしまった。センシティブ問題を扱う今回の話に完璧に合ってる。偶然にしては隠し方が完璧すぎる。

自由奔放でエロい人かとおもいきや本当はとても繊細な心を持っていて性的マイノリティな自分を気にしていて周囲に壁を作ろうとする聖様、ライブオンでは数少ない常識人…とみせかけて実はめちゃくちゃに愛情が強くて強い女のシオンママ……頼れる先輩のようで実はとっっっっても面倒くさい二人が腹を割って話していく内にすっかり愛を深めてしまう展開が大変に良かったです。いやあ百合百合してましたねえ!! 聖からの突然の告白(性的な意味で)に混乱しつつも性別の壁なんて知らんとばかりに全力でありのままの彼女を受け止めてしまうシオンが大変にカッコ良かったです。そしてそんな二人を適度な距離から楽しく見守るネコマ先輩、美味い。

それにしても全部読んだ後に表紙の配信画面のコメント欄見るともう一回笑える。キレながら祝福してるリスナーさんたち可愛いかよ。

次巻はいよいよデビュー1周年記念ということで淡雪達3期生の当番回の気配。今回の有素の家にお泊りする回でちょっと家族の事に対して思うところありそうな態度を見せた淡雪でしたが、そのへんの話もやるのかな。楽しみです。


大伝説の勇者の伝説14 剣の一族の告白

 

父の仇ルシルを前にライナは――!? 急転の14巻!
ガスタークの刺客に毒を流し込まれたフェリス。解毒剤が欲しければライナとシオンに手紙を届けろと脅迫され――!? その頃、ライナは父の仇ルシルを捕縛し、フェリスたちに内緒で父の研究室に連れ込んでいた……。

レイルードに帰還したライナはひとり、父・リューラの研究室へ向かう。そこにはシオン・フェリスに内緒で運び込んだルシルが捕縛されていた。一方、ガスタークからの使者と遭遇したフェリスは彼等に毒を盛られてしまい……。

今度こそ隠し事はなしの3人のやりとりにホッとした

シオンにしろライナにしろお互いの状況を言えずに抱え込んでは失敗するというのを繰り返していたので前巻のライナがひとりでリューラの研究室に向かうラストが本当に不安だったのですが、あくまでエリス家の兄妹関係を気遣っての時間差行動でホッとしました。いやでも前巻のラストはわざと不穏に描いてたよね……。でも、これまでだったらライナがひとりで抱え込んでしまいかねない展開だったからこそ、今度こそ彼等の間に遠慮はなしという事が伝わってきて改めて安心することが出来てよかった。あとライナの不在に取り乱すフェリスが大変に可愛い。最近のフェリスは本当に、ライナのことが大好きすぎて可愛いんだよなあ!!

ルシルが人間をやめて以来まともに腹を割って話すことができなかったエリス兄妹が今こそ腹を割って会話してるところを見れるのは本当に嬉しかったし、一度は敵となったライナを再び受け入れてくれるミラー一派にもホっとしてしまったし、他のメンバーと同じく《女神》の影響から脱したミルクがライナと久しぶりに会えることにはしゃいでいる姿にはにまにましてしまうし、まだ確定ではないけれど長年の敵であったガスタークとも協調路線を歩む方向性が決まって、「神」や「悪魔」の干渉があったせいで手を取り合うことができなかった人間達がすこしずつまとまっていく。明るい未来はまだまだ見えないけど、彼等が手を取り合うならばどんな窮地だって乗り越えられる気がしてくる。前巻も含めて本当に長らく見ていなかった明るい話、なのですが……。

そう簡単に平穏な展開にはならないんだよなあ……

シオンの元を離れ、中央大陸に留まっていたフロワードは明らかにニンゲンではない存在に声を掛けられる。それは神でも悪魔でもなく、10年後のリセットを受け入れて世界の停滞を望む者の声。そして愛されていることを自覚したライナの成長を危険視する者の声。その存在は自分のことを《世界》そのものだと名乗り……。

ローランドにフロワードの姿がないの、前巻のルシルもそうだったしなんか不穏な方向のフラグなんだろうなあとおもってはいたんですがやっぱりフラグだった。神の干渉が届かなくなった世界に予想以上の大物概念が登場してしまった。そして明かされるフロワードの過去、フロワードの先祖である《英雄》の正体、そして彼の持つ指輪を作ったのは「誰」だったのか……フロワードがシオンのこと大好きすぎるのは無印・とり伝の方読めば概ね知ってたからまぁアレです!!

その世界──《メノリス》から現在の世界の状況、彼の成すべきことを聞かされたフロワードは久しぶりにレイルードに帰還する。彼が真っ先に赴いたのは……というところで引き。例によって終わり方が大変エグい!!とかいってたらあとがきで「次もすごいよ!(笑)」とか書かれてしまった。不安しか無いよ!!!


大伝説の勇者の伝説13 昼寝と団子と王様と

 

ライナとシオンがローランドに帰還!――波乱の13巻!
ルシルによってエーネを殺され、暴走するティーア。そんな状況を制止したのは、“生きているべきでない亡霊”だった――。 そしてついに、ライナとシオンは始まりの地――ローランドの地へ足を踏み入れるが!?

ライナとの会話中に突然現れたルシルの手によって殺されたエーネ。『悪魔』の力を失っても圧倒的な力を誇るルシルを相手に絶体絶命かとおもわれたその時、事態をひっくり返してくれたのはライナの父・リューラだった。ところが、彼はライナが思いもしなかったことを提案する。一方、ローランドとガスタークはそれぞれ「神」の力に対抗するための方法を模索しはじめる。シオンはローランドの旧首都・エリス家にある『堕ちた黒い勇者』の遺体を調べることを提案し……。

やはりこれは「人間」の物語なんだなあ

神や悪魔の支配を脱した各国の状況も面白いけど、実質4人目の王が立ったスフェルイエットめちゃくちゃおもしろいことになってきましたよね。前巻の「魔眼の王」、ライナかエーネのことかと思ってたけどティーアのことだったんですね。4人の王が一箇所に集結するタイミングがあんまりなさそうなのが残念なんですが……いつか4人が会議してるだけの話とかめちゃくちゃ読みたい。絶対紛糾しそう。しかし今回の進み具合見てると結構さっくり1年の猶予期間終わっちゃいそうな気が……スフェルイエットの4人の王結局集まって会議とかする機会ある!?なさそう!!

ライナ・シオン・レファルという人外の力をその身に宿していたバケモノ達がその支配から解き放たれて、たった1年のモラトリアムではあるし人類の未来を考えると仕事をしてないわけじゃないんですが、暫しの自由を謳歌する姿が印象的でした。彼ら、らしすぎるほどに「人間」なんだよなあ。特にずっとその身を喰らう苦しみと戦い続けてきたであろうシオンの羽の伸ばしっぷり(いやそれでも徹夜してるけど…)が沁みる。異常な日数の徹夜を繰り返してたの、『勇者』の影響もあったのか……一瞬信じかけたんですがライナの2日徹夜に短すぎってダメだししてくる、徹夜は5日目からが本番とか言い出すシオンの口調が完全にヤバイ薬キメてる人だったのでやっぱり勇者関係ない気がしてきた。

レムルスが「ライナとシオンを救う」と嘯きながらあんなことしたの、読んだ直後は彼等を餌にニンゲン達に命運を託すための策略としか思えなかったのですが、こうして人間の生を謳歌しているシオンの姿を見ているとやっぱり彼等だって「人間」で、正しくライナとシオンを救うための行動だったのかもしれないと思えました。……まあ、1年後どうなってるかは誰にもわからないけどな!!

久しぶりのわちゃわちゃが楽しい…けど不穏〜!!!

ローランド帝国の新しい首都となったレムルスで書類仕事をしていたシオンの元に一通の手紙が届く。差出人はライナとフェリスからのもの。二人に誘われる形で彼等と合流したシオンは久しぶりのローランド帝国旧首都・レイルードへ向かう。

1年間猶予あるから結構巻数かかるでしょっておもってたけどもう残り7ヶ月しかないの!?えっ中央大陸からレイルードまで、遠すぎ!?移動で浪費された空白の2ヶ月の間でたっぷり1冊取って3人のワチャワチャ珍道中を描くエピソード「とり伝・帰還編」とかやってくれてもいいんですけど!!ないの!??

もうとにかく二人の手紙から始まってとり伝ローランド編ばりの久しぶりのライナ・シオン・フェリス3人のわちゃわちゃがちょっとだけでも拝めたのはもう本当に良すぎたんですが(フェリスの手紙で死ぬほど笑った。破壊力が高すぎる)、楽しい時間が流れるのあっという間ですねってその体感時間まで本編で再現しなくて良い。もっと時間を掛けてその楽しい所ねっとりとスローモーションで描写して欲しい。マジ。短い。

そしてレイルードについてからの展開、なんかこうそこはかとなく不穏なんですよねえ!!!お互いに隠し事はなしにしようとか言いながらめちゃくちゃ隠し事してるライナ、不穏しかないんですよぉ!!!あと最後の挿絵のライナが悪い顔!!!好き!!!でも不穏!!!!!


大伝説の勇者の伝説10 英雄と悪魔

 

<英雄>と<悪魔>。ふたりの王の道の果てには……。
黒き勇者の力を手にして、己の覇道を突き進むシオン・アスタール――英雄王。抗えない己の宿命に弄ばれながら、儚き未来を希望するライナ・リュート――悪魔王。かつて、共に手を取り合ったふたりが、いま再び……。

レムルス帝国に連れ去られたライナを取り戻すため、シオンはレムルス帝国へ向かう。様々な因縁がレムルスの中心に集結しつつある中で、ライナは「這い神」を名乗る存在と対峙して……。

あらすじも表紙も全力で煽るじゃん

そんな都合のいい展開ある?って思いながらこの表紙とこのあらすじ見たらシオンとライナのピンポイント共闘期待するじゃん……前巻のキファとフェリスの会話の流れも明らかにその流れだったじゃん……なんならもう大伝3巻くらいの時からこの巻の表紙みてずっと期待してましたよ私は……あらすじの物凄く無難なこと言ってる感じといい、完全にそういうミスリード狙ってるんですよね……おのれぇ……。いやまあなんか次巻くらいで共闘というかまあ久しぶりにふたりの対面くらいはなんとか叶いそうだけど……いやもうどうなんですこれ……。

改めて思い返すと囚われのライナとそれを取り戻そうとするシオンのふたりが中心にいるのは確かなんだけどむしろ這い神・レムルスが『勇者』やら『悪魔』やら『女神』を相手に事態をひっくり返そうと必死で抗う大舞台の前座みたいなお話でしたね。そして彼とライナの会話や女神の独白によって少しずつ彼らの勢力図や力関係が少しずつ明らかになっていく。次巻でいよいよこの世界の謎が明かされそうみたいな……また切り方がひどい……改めて考えると色々な意味で次巻への伏線ばらまき巻だったな……。

さすがにここまで来ると一時的でもライナとシオンの共闘みたいな展開はないんだろうなあと期待せずに待つ感が凄いのですが、スフェルイエット民国というかヴォイスとの協力関係はどうなるのかとか忌破り追撃隊の面々は大丈夫かとかむしろこれ終わった後どうなるのかがめちゃくちゃに気になる。次巻楽しみだけど色々と後が怖いよなあこれ!!

キファ・フェリス・ピアの女子3人入り乱れ一触即発展開には思わずニヤニヤしてしまった。どちらかというとライナたちはヴォイスじゃなくてこっちと共闘すればいいとおもうんですよええ。


歴史に残る悪女になるぞ 悪役令嬢になるほど王子の溺愛は加速するようです!

 

綺麗事だらけの世界なんて絶対イヤ。 ヒロインの正論に真っ向勝負! ちょっとズレた令嬢の異世界悪役転生記!!
正統派ヒロインにありがちな“いい子ちゃん発言”。 それが大ッ嫌いな私が、念願かなって悪役令嬢に転生!! 誰にも文句を言わせない悪女になるためには、体を鍛えて猛勉強し、魔法の腕も磨かないとね! ──と頑張っただけなのに、悪役になろうとすればするほど周囲の好感度が上がるようで!?  いいわ、悪女としてその期待、全力で裏切ってみせます!

転生して密かに憧れていた乙女ゲームの悪役令嬢に生まれ変わったアリシア。幼少期に全前世の記憶を取り戻した彼女はいい子ちゃん発言ばかり繰り返す偽善者ヒロインを悪役らしくぶった切れる「歴史に残る悪女」になるために、まずは身体を鍛えて魔法の腕も磨かなきゃ!と努力の毎日を送るように…!?

最強の「悪役」になるために

悪役令嬢になりたかった主人公が本当に悪役令嬢に転生し、「理想の悪役令嬢」になろうと研鑽を重ねるお話。とにかくヒロインをいじめ抜くためには彼女を超える力と知識を身に付けないと!!とめちゃくちゃまっとうな方向で力を付けていくのがちょっとズレてて趣深いし、悪女という概念を突き詰めた結果めちゃくちゃスペックが高く現実主義で懐に抱きこんだ相手には慈悲深い、高潔で意識の高い「悪役」が爆誕してるの面白かった。悪女に対する認識がズレてる以外はめちゃくちゃカッコいいヒロインなんですが、これ悪かなぁ!?(悪じゃない気がする)

彼女の言ってるの良くも悪くもゲームヒロインと相対する者という方向性の「悪」な気がするので、ゲームヒロインのキャリー・リズが登場するまでは本当に独り相撲を取ってる感が凄いのですが、世間知らず温室育ちのお嬢様らしい一面を見せながらも自らの目で社会が持つ歪みや国家の現状を知り、彼女が言うところの『悪女らしい』方法で自分の身の回りの問題から国内の問題まで、自分ならばどうするのかと考えを育てていく課程がとてもよかった。ちょっとズレたこと言っては「これは悪女ポイントが高いんじゃないかしら……!!」とテンション上げていく彼女に「それは悪なのか!?」「ツッコミが足りない!!」と頭を抱えることも多かったですが!

重いけれど重くなりすぎない展開が良かった

キャリー・リズが登場してからが物語の本番で、アリシアは年若い身でありながら特例としてゲームの舞台となる学園に入学してこれまで培った「悪女」ムーブを思う存分に発揮し始める。ところが、ゲームヒロインの持つ強制力なのか巧妙な扇動なのか洗脳能力なのか学園内はリズのシンパだらけになっていて、これまで親しくしていた兄や兄の友人達(※乙女ゲームの攻略対象達)から敵意を向られたり、知らない学生達がリズを守るためといってアリシアに攻撃を加えたりするように。

学園に入学してからの展開、彼女が貧民街から才能を見出して連れてきた従者のジルやリズの影響を受けなかった限られた一部メンバー以外はロクに味方もおらず、明らかにアリシアが被害者であるような事件も巧妙に彼女の過失になるよう仕向けられたりしてかなり重苦しいお話であるんだけど、8割位の展開は「これは悪女ポイント高かったわね!」で躱されてしまうので物語が重くなりすぎないの良かった。序盤はツッコミ不在でうっとおしく感じるほどだったこの言葉でこんなに心が軽くなってしまうとは思わなかったな。

夢見がちで現実を見てなくてフワっとした耳障りの良い言葉で周囲を扇動するヒロイン・リズとは、まあアリシアと合うわけがないよなあ。人類皆善良的な概念に基づいたリズの非戦主義と人間は別に善良じゃないし出来るだけみんながWin-Winになるようにはするけど自分が良くなるためなら蹴落とすのも辞さないアリシアの現実主義の対決、割りと普通におもしろい議題だとおもうんだけどリズが割りと聞く耳持たない上に取り巻きがいちいちリズの肩持ってくるのでまともな議論にならないんですよね……。

コミカライズの方では微妙に一種の洗脳能力を使ってるっぽいことを匂わせる発言があるので故意的にそういう発言をしてる雰囲気もあるんだけど、その辺は今巻では明かされなかったので次巻に期待かな。しかしこの終わり方、本当に洗脳系の能力だったら2年間接触断ってる間に更にアリシアがアウェーになってる可能性もありそうだけど、そのへんどうなんだろう……。