Vのガワの裏ガワ2 | 今日もだらだら、読書日記。

Vのガワの裏ガワ2

 

「マネージャー、やっていただけませんか?」
高校生神絵師の千景は、クラスメイトの少女・果澪のVTuber 「雫凪ミオ」を仲間たちと制作し、見事大人気個人VTuberにした。それからも順調に活動は続け……夏休みの直前。果澪から「さらに活動を広げていくにあたって、マネージャーを雇うか、事務所に所属したいと思ってる」と相談される。話し合いの末、千景は果澪のために、VTuber事務所『Bloom』を運営している知人に話を聞きに行ってみることに。ところがそこで「お前には期間限定で『金剛ナナセ』のマネージャー業をやってほしい」と、まったく別のVTuberを託され……!? 千景にとってはそのお願いを受け入れる理由などなかったのだが――千景の選んだものとは?

様々な紆余曲折の末、個人勢ではトップクラスの人気Vtuberに上り詰めた「雫凪ミオ」。夏休みを前にしたある日、千景は果澪から雫凪ミオの活動を広げるためにマネージャーか事務所への所属を検討していると相談を受ける。知人が小さなVtuber事務所『Bloom』を経営していることを思い出した千景は、話を聞きに行くが……何故か『Bloom』に所属する唯一のVtuber「金剛ナナセ」のマネージャー業を依頼されてしまい!?

1巻を踏まえて更に掘り下げられる少年少女達の関係性が良い

Vtuberという華やかな世界を舞台に、Vtuberの「中の人」とそれを支えるクリエイター達のぶつかり合い、そ裏で展開される等身大の高校生男女の人間関係が魅力的な物語のシリーズ第2巻。1巻が綺麗に終わってたからどう続けていくのかと思ったけど、今回は新キャラクター・金剛ナナセこと世良夕莉を中心にしつつ、前巻で登場した少女たちの思惑も濃密に交錯する物語となっていました。生真面目で面倒くさく気高い後輩系ヒロイン・世良ちゃん可愛かったんですがこれ次巻以降どう続けていくんだろう。今後もヒロイン増えていくパターンなのか……!?

元はといえば校内で最悪の出会い方をした相手。雫凪ミオのために請け負った金剛ナナセのマネージャー業……と割り切って接していたはずが彼女を少しずつただの仕事相手だとは思えなくなっていく千景。その一方で、千景には知らされていない「ウラ」もあって……目標とされた数字に向かって順調にチャンネル登録者数を伸ばしていく金剛ナナセの姿が頼もしい一方でどこか不穏さが拭えない、アンバランスな空気がとてもよかった。そして、そんな千景を心配しつつ胸の内に秘めた思いが強くなっていく果澪・桐沙の姿が印象的でした。

どうして『Bloom』にはひとりしかVtuberが所属していないのか。どこかよそよそしい世良と事務所の社長・花峰の関係性。挫折しかけた世良を救ったのはクリエイターの「アトリエ」ではなくて臨時マネージャーだった「亜鳥先輩」で……。前巻に引き続き、絶望に沈みそうになる少女達に必死に手を伸ばす千景が最高にかっこよかったです!

そして「雫凪ミオ」と彼女を巡るクリエイターたちの物語は1巻でまとまっているのだけど、1巻を踏まえた上で果澪にも桐沙にも仁愛にもしっかり物語の続きが……人間としての掘り下げがあってそこも満足感高かった。1巻はちょっと桐沙が空回りしてるくらいで恋愛要素は殆どなく、あくまでVtuberとそれを取り巻く裏側……クリエイター達の想いのぶつかり合いが主軸に添えられていたけど、2巻では千景を見守るうちに彼への恋愛感情が芽生えていく果澪の姿がとても丁寧に描かれていて、更に生まれたばかりのその感情を現在の友情を壊したくないゆえに持て余す姿が印象的でした。

あと、なにげに大人たちに振り回される千景……という構図がなんとなく印象強かったな。娘の世話をよその高校生男児に任せっきりな仁愛の父、色んな意味で不器用そうな果澪父。頼れる大人だと思っていた花峰も世良との距離感を掴みかねていて……出番こそ多くありませんが、子どもたちを庇護する存在になりきれない不完全な大人たちの姿が頼りなくて、どこか憎めない。

恋愛モノ方面に舵取ってきたなあ

困っている友人を見過ごせない千景の性格、そんな彼のありかたを是としながらもどこか複雑な感情を抱く少女たち……高校生男女の感情のぶつかり合いと水面下で育っていく恋愛模様は最高に楽しかったのですが、これは完全に個人的な趣向の話になるんですが、1巻は恋愛要素の少ない「クリエイターの青春モノ」として楽しんでいたので、こちらの方向に行ってしまうのか〜と少し残念な気持ちも。

とはいえ、雫凪ミオの新衣装の話で桐沙とワイワイやってるところとかはめちゃくちゃ楽しいし、新衣装にアトリエ先生のヘキが詰め込まれるのにはニヤニヤするし、なにより今回の世良の数字への固執と劣等感から来る拗らせぶり(有名絵師に仕事でファンアート描いて貰うことでバズを狙うのは嫌なのに自分のキャラデザとモデリングはガチガチの有名絵師を選ぶという設定、拗らせててめちゃくちゃ好き)みたいなのめちゃくちゃわかるやつだし、自己肯定感の低い世良とそんな彼女に自信を持って羽ばたいて欲しい事務所の社長・花峰の複雑な関係とかも良かったし……クリエイターものとしての要素が決してなかったわけじゃない、むしろ天才肌すぎて共感しづらかった果澪の話よりもあるある感高くて濃厚になってた部分もありました。この辺今後どのくらいの配分で続けていくのかは本当に気になります。このくらいの比重で続いてくれると良いなあ。

ただ、クライマックスでマネージャーとしての契約時に「アトリエとして金剛ナナセのファンアートを描かない」と宣言した千景が世良のためだけに金剛ナナセを描く……と、大事な所に千景の創作者としての立ち位置を入れ込んでくる展開がめちゃくちゃ好きなんですが、そのファンアート描かない話が序盤で出たっきり終盤まで特に蒸し返されないので、なんかあと一歩盛り上がらなくて、もっと盛り上げてほしかったのに!!!という気持ちが凄い。ファンアート描かない話ふってきた時点でこれ絶対終盤でファンアート描くやつだ〜〜!!!!!と期待しすぎた部分はかなりあったのですが、中盤の積み上げがないせいで問題解決のために都合よくファンアート出してきた感あったなというか。

果澪の感情の動きがめちゃくちゃ繊細に描写されていただけにどうしてこっちにももう少し割いてほしかったみたいなこと思っちゃいました……この展開、好きすぎるだけに……!!!!!

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