テトが「唯一神」となるまえ、世界は「神」を目指す異種族達の殺し合いが続く場所だった。それに対抗するすべもなく蹂躙されるのみであった人間の少年・リクは機凱種の少女・シュヴィと出会い、世界を覆す為の「ゲーム」に挑む。テトの口から語られる『大戦』の中で戦い続けた人間達の、語られることのない、最初の神話の物語。
ゲームの誓約を受けない異種族達が繰り広げる「殺し合い」の桁違い感が改めてヤバイ。もはや戦うまでもなく近くで戦争やってるだけで余波で周囲の人間の集落が全滅してたりするのでその絶望感ときたら半端ない。もはや立ち向かうとかそういう状態ですらなく、奴らが気まぐれに近くにやってきたら死を覚悟するレベル。
そんな、あまりにも脆弱な人類が絶望の中でそれでもただ生きようとする姿と、幾度となく絶望に突き落とされながら、いつ終わるとも知らない終わりのない戦争を「終わらせる」ため、自らを捨てる覚悟で立ち上がる姿が印象的でした。異種族であるシュヴィが現れなければ成し遂げられなかったであろう戦いだけど、同時に感情を持たない機械であった筈のシュヴィを動かしたのはリクや人間達が「生きようとする意志」で。彼女の感じた想いがリクを動かし、人間を動かし、そして機凱種をも変えていく姿に胸が熱くなる。
しかし、そんな中で立ち向かう神霊種/天翼種の圧倒的な力ヤバイっていうか若き日のジブリールさんが輝きすぎててやばい。最終的にだいだい全部ジブリールさんのせいじゃないっすかーーー!!いろんな意味でラスボスの貫禄すぎる。いえ、そんな彼女大好きですけど!!改めて惚れ直しましたけど!!
本編が盛り上がる中での過去編でどうなるのかと思ったけど、文句なしに面白かったです!次巻はいよいよ最強の種族・神霊種との戦いになるようだけど、どうなってしまうんだろう。本当に次巻も楽しみ。
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K SIDE:BLACK&WHITE
“白銀の王”アドルフ・K・ヴァイスマンの乗る飛行船の爆発に巻き込まれ、九死に一生を得た、伊佐那社(シロ)、夜刀神狗朗(クロ)、ネコ。奇妙な縁で結ばれた三人は、逃亡先の一室でそれぞれの来し方に思いを馳せる―。クロがかつて仕えた先代の“無色の王”三輪一言、師弟の間に在る絆。幻惑の異能力を操るネコ、彼女はなぜ猫の姿をしているのか。そして、微睡みの中で遠い記憶の底をのぞきこむシロ。そこには、共にいれば心安らぎ、未来を語りあえる二人がいた。伊佐那社、夜刀神狗朗、ネコ―それぞれ“過去”をめぐる物語が幕を上げる。人気アニメ、オリジナル小説第3弾。 (「BOOK」データベースより)
夜刀神狗朗、ネコ、そしてアドルフ・K・ヴァイスマンと國常寺大覚の過去を描く、アニメ「K」の前日譚ノベライズ第三弾。
クロと一言様の過去を描く「繋がっていく者」のほほえましさがヤバい。クロが一言と暮らすようになった経緯はものすごく重いものがあるし、小さい子供ながらつらい境遇にも耐えて遂に手に入れた幸せな生活に思わず胸が熱くなってしまうんだけど、天才肌二人の繰り広げるどこか浮世離れしたやりとりにふきだしてしまうこともしばしば。クロがどんなに一言様を慕っているか、そして一言がどれほどクロを大切にしているかが伝わってくるお話でした。
一方、クロの話とは対象的に幸せな物語から一気に突き落としにかかってくるのがネコの過去話「ワガハイはネコである!」。幼くして膨大な力を持ったストレインであった彼女が知らないままに築いてしまった小さくて幸せな虚構の世界が、些細な出来事をきっかけに砂のように崩れていくのが悲しい。そして、絶望した彼女が現在の『ネコ』になった原因と経緯がやるせない。
シロの見る泡沫の夢としてはじまるアドルフと國常寺の過去話「和洋を超えて」も面白かった。日本から「石盤」の研究のためにドイツにやってきた國常寺がヴァイスマン姉弟と出会い、友人として絆を結ぶまでの話なんだけど、好意的なようにみえてなかなか本心を見せないアドルフに対し、國常寺が彼らしい誠実さで信頼を勝ち取っていく様子にニヤリとする。彼らの出会いはアニメで見たときももうちょっとじっくり見たいと思っていた部分だったのできちんと読めてうれしかったです。
しかし、ここの短編としてみるとどれもいろいろな意味で面白い物語だったんだけど、すべてつなげてみると新たななぞが浮かび上がってくる。3編すべてに登場する同じ名前の「猫」の存在もそうなのですが、ネコの過去話に出てきた老人の風貌とか、「あれ?」ってなったの私だけじゃないよね……何かこう、彼らの間には知られざる何かがあるのではないかと疑ってしまう。無色一派はなんだかんだで、まだまだ謎が多いなあ。
東京レイヴンズ11change:unchange
一年半ぶりに東京に戻ってきた夏目だが、追われる身であるが故にかつての仲間たちと再会することもかなわず、やきもきする日が続いていた。秋乃の言葉をきっかけに、最も監視の薄い天馬に便りを出してみることにしたが……というお話。
10巻で足取りのわからなかった「彼ら」の現在を中心に描いたシリーズ本編11巻。10巻に引き続きシリーズ二部本格始動のための助走の回といった感じなんだけど、しょっぱなから盛り上がるのなんの。大人組のド派手なバトルも展開されて、テンションあがらざるをえない。っていうかこんなところで大友vs木暮の親友対決持ってくるとか、出し惜しみしない感すごい。
表面上は今までとおりの生活を送る者達でもその実は「今までとおり」とは行かず、誰も彼もが水面下で爪を研ぎながら動き出すための時を待っているといった雰囲気が印象的でした。いろいろなところで一年半の重みを感じさせる展開がアツい。
特に冬児と「あの人」の組み合わせには正直びっくりしたけど、あの人ほんとどんだけ大友先生好きなんですかね!?いや、なんというかほんと憧れの人に追いつくためにあらゆる努力を惜しまないかがみんは愛すべきヤツというかいとしいというか尊いですけども、愛が重いわー。これ先の巻で、「お前の育てた春虎と俺の育てた冬児、どっちが強いかなァ!!!」とかいって悪友対決始まっても驚かないむしろ見たい。しかし、執拗に大友を追う木暮も含めて、大人組のフラグは9割がた大友に集中してる気がして正直どうなんですか……。
そんなとまった歯車を動かそうとでもいうような夏目からの便りと、天馬から仲間達への『メッセージ』に思わずにやりとしました。本当に、天馬は美味しいところをピンポイントで持っていくよね!!冬児の言うとおり「普通じゃない」やつらの中に一貫して「普通」を貫く彼だからこその活躍にニヤリとする。
裏で動き出す多軌子一派の陰謀となんとなくにおわされてくるスケールの大きさにぞくぞくさせられながら、本当にこれから動き出すであろう二部本編が楽しみでなりません。これまでは割りと大人組の活躍が目立って学生組は影に隠れてしまう事も多かったので、一年半の雌伏の時を経た彼らの活躍を楽しみにしていたい。
やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。9
あらすじだけで深刻な胃痛がする。
生徒会選挙の日以来、何かが確実に壊れてしまった事を薄々感じながらも表面上は「これまでとおり」を装う奉仕部の面々。そんな中、八幡の策略で生徒会長となった一色いろはが奉仕部に依頼を持ち込んでくる。責任を感じた八幡はひとりで一色の手伝いをするが、敵は予想以上に強敵で……というお話。
序盤で奉仕部の面々が繰り広げるどこまでも空々しく薄ら寒いやり取りも酷いんだけど、一色の依頼で持ち込まれた難題がさらに酷い。有意義のようにみえてからっぽな会議にスケジュールを圧迫され、状況の修正を図ろうとすれば表面上は否定されないままあらぬ方向に曲解される。どんな正論ものれんに腕押し状態なストレスに、これまで以上に磨きのかかった八幡の自虐思考ネガティブスパイラルが拍車をかけて深刻な胃痛がしてきて胃薬のんだら副作用で頭痛してきたまである(※実話)。キャラクターとしては物凄く好きなんだけど、とりあえず八幡殴りたい!!!
彼らがここまでこじれてしまったのは壊れてしまった何かを失うまいとしたせいだと思うけど、同時に彼らを再び結びつけたのは彼らが失った何かを再び取り戻したいと願う強い意志だったと思う。散々迷いながらも、遂に八幡の口から出た本心からの願いにきゅんとなった。全てが元通りというわけでもないし、三人がほんの一歩だけを踏み出しただけに過ぎないし、きっと彼らの関係も「今までとおり」ではないんだけど、それでも再び同じ紅茶を囲む姿に涙した。本当に、よかった。そして、道に迷う彼らに一筋の道を示した平塚先生かっこよすぎて、なんでこの人誰も貰ってあげないの……世の中って理不尽。
一色の言葉や海老名さんとのやりとりなど、なんだかんだで心配されてる彼らの姿にもほっとした。今まで憎まれ役を買って出ることが多かった奉仕部の面々(特に八幡)だけど、彼らの行動をそれとなく理解して、案じてくれる人たちが居る事は大きな救いだとおもう。
それにしても、これまでの巻での遺恨のいくつかまで清算して、この物語にしてはびっくりするほど綺麗に収まった中、これまでとはどこか違う執着を見せる葉山の存在にそわそわする。っていうか八幡の前だけ素を見せてくる葉山の威圧感も相当ですけど、あの状況で迷うことなく葉山の元に向かう八幡マジ……。
K SIDE:BLUE
“青の王”宗像礼司率いる、対能力者治安組織“セプター4”。その屯所の一角にある半ば忘れられた資料室に、重厚な肉体をもつ隻腕の男―善条剛毅がいる。ただならぬ気配を放つ彼は、前“青の王”時代からの古株で抜刀術の達人だという。人気のない深夜の道場で、新米隊員の楠原剛に剣を教える善条。そこへ、室長・宗像が真意の測り知れない薄い笑みを浮かべながら現れる―。 (「BOOK」データベースより)
テレビアニメ「K」の前日譚ノベライズ。新人隊員・楠原の視点から描かれる、伏見が入る前の《セプター4》の物語。
Side:REDで王不在の旧セプター4が描かれたので、宗像が新しい王になった時の話が入るのかなとおもってたらそんなことなかった!けど、青の王になったばかりの宗像が組織としての地固めをしている頃の話。ストレインの捕縛にとんでもない大人数を動員したり、どこかまだ思考錯誤してる感じが新鮮。アニメで始めてみてなんか笑ってしまったサーベルを抜く『抜刀』動作にも意味があるんだなあとしみじみと……。
なんかよい意味でも悪い意味でも「主人公」らしいキャラクターが居ないなあと思うKだけに、楠原の輝く主人公オーラに震える。腕は未熟だけどセプター4の隊員達や元の職場の人間達から愛され、そして王である宗像や前王の側近である熟練の猛者・善条に目をかけられ、悩みながらも少しずつ成長していく姿にニヤニヤする。なんかほんと、「K」らしからぬ王道な主人公の成長物語だ!!
……などとおもっていたらあっさりその考えをひっくり返してくるような後半が衝撃すぎて。Kって主人公としての人物特性を一定以上積み上げると死ぬ法則でもあるんですかね……(赤のクランで一番主人公特性を積んでいたのは十束であると密かに思ってる)。
とにかく良い意味でまっすぐな癒し系主人公キャラだっただけに、彼の退場が伏見の入隊と入れ違いに起こったことが残念でならない。伏見と楠原の絡みも見てみたかったなあ……というか、「デイズ・オブ・ブルー」での部屋割りを見ると、もし楠原が死んでなかったら楠原と伏見が同室になってたんじゃないかしらと想像してしまう。なんか、宗像さんなら何らかの意図を持って伏見のわがままをねじ伏せて同室にしてしまったような気がする……。
これ読んだ後にデイズ・オブ・ブルー読み直したら1話にそれとなく楠原が出てきててじんわりした。何かの形でコミカライズのほうにもでてきたらいいんだけどなあ。
K -デイズ・オブ・ブルー-(1) (KCx ARIA)
黒榮 ゆい、来楽 零(GoRA)、GoRA・GoHands
講談社
発行日:2014/4/7
K -Lost Small World-
中学一年の八田美咲は、寡黙な同級生、伏見猿比古に惹きつけられていた。この偏食の眼鏡少年は、八田にはない聡明さを持っていたから。伏見もまた、次第に八田を必要とするようになっていった。この小柄な少年は、伏見の持たない不思議なエネルギーと優しさを持っていたから―。彼らの小さな冒険。そして、より大きな力への憧れ。だが、彼らが少年だけの世界から抜け出した時、待っていたのは、決別だった―。TVアニメ『K』オリジナル小説第4弾! (「BOOK」データベースより)
テレビアニメ「K」の前日譚ノベライズ第四弾。中学一年生の八田と伏見が出会い、かけがえのない親友となり、共に“吠舞羅”に入り、決別するまでの物語。
最初は同じものを見ていたはずの2人の関係が少しずつすれ違っていき、“吠舞羅”にはいった事で致命的な亀裂を生んでいく。その亀裂に気づき、同時に八田への強い執着を覗かせる伏見の葛藤に微塵も気づかず、伏見もまた当然のように周防の事を慕っていると信じて疑わない八田という構図は「SIDE:RED」や「メモリー・オブ・レッド」でも繰り返し描かれているものなんだけど、改めてその構図にヤキモキする。というかしょっぱなから八田は伏見と仲良くなるきっかけの所からして全く同じ過ちをおかしてるのにも関わらず学習しないの凄い、それだけのことがあっても身内として内に抱き込んだ人間を疑わないのは八田のいいところでもあるんだろうけど。
これ、「K」が八田主役の物語だったら、八田が精神的に成長して伏見と不健全じゃない信頼関係を築く話になってたんだろうな……っておもうと、彼は主役じゃないのが最大の悲劇な気がする。正直、二人の関係性はかなり序盤からどこか健全な関係ではなかったとおもうし、伏見が自覚する前から彼らのすれ違いは始まっていたのだとおもう。“吠舞羅”に入る前、《jungle》と対決しようとしたときに、伏見が「上手く行かなかったら宇宙船作って太陽に突っ込もう(突っ込んで死のう)」と言うのに対して、伏見なら太陽に突っ込んでも大丈夫な「超かっこいい宇宙船」を作ってくれると無邪気に信じている八田の返しが、既に未来を象徴しているように思えた。
たったひとりの親友だった八田が周防に心酔していく姿への苛立ち、あらゆる面で叶わない周防への畏怖。同じ思いを共有できない事からくる疎外感と後ろめたさ。よくも悪くも周防のカリスマで成り立っている組織の中で浮いた存在となっていった伏見が「青」の王・宗像と出会ってそのありかたに惹かれていくのはどうしようもないことのような気がする。アニメを見た感じでは酷く淡白のようにみえる宗像と伏見の関係だけど、なんだかんだで伏見は宗像という「王」に惹かれてあの組織に入ったんだなあ。赤のメンツとは対称的な2人のやりとりと、2人の王の間で選択を迫られた伏見の取り乱す姿が物凄く好き。
縮めようのない亀裂を描き、伏見の離反という形の関係性の崩壊によって締めくくられる物語だけど、最後に加えられたエピローグの物語が彼らの新たな「物語」を感じずには居られないもので、胸が熱くなった。劇場版でもその後でも、彼らが再び手を取り合う日が来る事を願わずにはいられません。
K SIDE:RED
“赤の王”周防尊が束ねる、炎の“徴”を刻む少年たちの集団“吠舞羅”。彼らのホームである鎮目町の一角にあるバー『HOMRA』に、周防の高校時代の担任教師・櫛名穂波が、姪・アンナをともなって現れた。両親を事故で亡くし、病のために施設に入院していたという無表情なその少女は、青い服をまとい、めずらしいものを見るように“キング”周防を凝視する―。「ミコト」。周防の夢の中で彼の名を呼ぶアンナ―彼女は“王のなりそこない”だった。 (「BOOK」データベースより)
青を纏うストレインの少女・櫛名が“吠舞羅”と出会い、赤のクランズマンとなるまでを描いたアニメ「K」の前日譚。
不在の続く「青」の王の器になれると見込まれ、周囲を傷つけない為に大人たちから押し付けられた運命を受け入れようとするアンナが少しずつ“吠舞羅”のメンバー達に心を開いていく姿が微笑ましい。最後は少し切なかったけど、自分の意思で周防についていくと決めた彼女の姿には胸が熱くなるものを感じました。
アニメ版を見ただけでは解り辛い“吠舞羅”の面々の素顔が浮かび上がってくるのがとても面白い。特に、アニメ本編のしょっぱなで死亡している十束が“吠舞羅”においてどんな立ち位置の人物で、その存在が草薙や周防にとってどれだけ重要だったのかがわかるのは凄く良かった。いまいち興味が沸ききらなかったキャラクター達の動きに興味が沸くし、アニメ見直したくなってくる……っていうかアニメ本編は本当もうちょっとこの辺しっかり掘り下げられなかったんですかねえ……(1クールアニメの限界といわれたらそこまでなんですけど)
ダモクレスの剣というわかりやすい「結末」が見えている周防・十束・草薙がどこかでそれを意識しながらもせいいっぱい楽しくやってる感じや、亡くなった青の王のクランズマン・塩津に、周防がいなくなった後の己を重ね合わせる草薙さんとか物凄く好きなんだけど、もう一組、八田と伏見が奏でる不協和音が凄くて読む度にぞわぞわする。“吠舞羅”の中に居場所を作り、周防に心酔する八田に対して複雑な感情を抱く伏見と、疑うことなく「伏見は自分と同じ気持ち」と信じきっていて、伏見の執着と苛立ちにまるで気づかない(気づけない)八田のすれ違いぶりが凄かった。この辺は最近出たばかりの「Lost Small World」でもっと詳しく語られるけども、伏見の一番近くに居た筈の八田が、十束や草薙さんが気づいていた事にすら気づけなかったのは最大の悲劇だと思う。
しかし、個人的には最後の伏見と十束のやりとりがヤバかった!!熱くなりやすい“吠舞羅”の面々の中ではどこか穏やかで執着の見えてこない十束が、伏見に対して一瞬だけ覗かせた周防への強い執着にキュンとなる。ある意味、“吠舞羅”の面々の中で伏見と一番似てるのは十束だったんだろうなあ。
「馬鹿言っちゃいけないよ」
十束の、笑みは含んでいるが真面目な声が響いた。
伏見は怪訝に眉を寄せて十束を見た。
十束は笑っていたが、それはいつもの人好きのする笑顔とは少し違って、どこか酷薄にも見える笑い方だった。
「何かに執着しているような奴は、王になんかなれない」
アニメから大分遅れて読んだのですがとても面白かったです!あと、合わせて読みたいコミック版「メモリー・オブ・レッド」。アニメでは出てこないメンバーにスポットが当たったり、夏の激ヤセ状態になる鎌本が大変ウザカッコよかったり、八田と伏見のギスギス具合に転がったり、終盤になるほど抉ってくる十束の行動に転がったりしました。面白かった!
K -メモリー・オブ・レッド-(1) (KCx ARIA)
黒榮 ゆい、来楽 零(GoRA)、GoRA・GoHands
講談社
発行日:2012/10/12
ご覧の勇者の提供でお送りします
どこからか現れるモンスター達を倒す「勇者」達の活躍を中継する「勇者テレビ」。番組に登場する勇者達は様々な団体と契約して支援を受けてその名を背負い、「スキル」と呼ばれる特殊能力を持って戦う。かつて魔王を倒した「伝説の勇者」の息子・フウトは狭き道を突破して通っている学園の「勇者」として活動することになったのだが、彼とコンビを組むことになった生徒会長の少女・フィオーレには全くやる気が見られない。デビュー戦で大失敗をしてしまった彼は、人気を取るために他の勇者達の戦略を学ぼうといいだしたフィオーレにつきあわされ、他の勇者達を訪問することになったのだが!?
行動の結果の称号としての「勇者」に憧れるフウトが、職業としての「勇者」になってやる気のない相棒に振り回されたり、上手く戦うことが出来ずに葛藤したり、理想と現実の差に思い悩んだりしながら成長していくお話。勇者に憧れながらも能力を上手く発現させられないが故に上手く戦えない少年と強大なスキルを持ってしまったが故に戦うことを忌憚する少女が、お互いの存在や他の勇者達の「勇者」としてのあり方を知りながら少しずつ折り合いを付けていく姿がアツかった。恐らくまったく同じ原風景を胸の中に描きながらも、対称的な道を歩もうとしている2人の姿が印象的でした。
特殊能力「スキル」を持つ人間達とそれ以外の人間達の微妙な温度差が引き起こすトラブルがあったり、なんか胡散臭い話が裏で渦巻いているようだったりと、世界観そのものはかなり重たいのに、その重たさを感じさせないあったかいお話。勇者達が仲間でありながら一種の「商売敵」としてお互いを切磋琢磨していく関係もなんだか心地良いものがありました。
バトルメインというよりも人々の絆がメインと言う感じのお話でとても好き。そんな物語を象徴するようなフウトの「スキル」にも思わずにやにやしてしまいました。面白かったー!!しかし、細かい所できっちり差別化してるとはいえ、どうしても基本設定のところで今劇場版やってるあのアニメを彷彿せざるをえないのちょっと損してる気がする……。
艦隊これくしょん -艦これ- 陽炎、抜錨します! 2
陽炎を主人公にしたファミ通文庫版ノベライズの第2巻。今回は、陽炎が横須賀にやってくるまえ、呉鎮守府で相方的ポジションであった不知火が横須賀鎮守府にやってくる、というお話。
予想以上に不知火が陽炎大好きっ娘で、前回しっかりと絆という名のフラグを立てられた第十四駆逐隊の面々と火花(?)を散らす……ってこれなんて百合ハーレム!?完全に不知火をライバル視している曙のツンギレぶりが可愛すぎるんだけど、舞い上がる陽炎の姿を見てなんだかんだで面白くないほかのメンツの行動にもニヤリとしてしまった。
しかし、そんなピンクの匂いとは裏腹に本編は至極シリアス。イベント海域を舞台に、艦娘達は生きるか死ぬかギリギリの戦いを強いられていきます。「元は普通の少女」であることを一番強調している物語だからこそ、近代化改装や改造もまた違った意味を持ってくる。「艦娘」として強くなりたいというまっすぐな気持ちと、改造を行うことでもうふつうの「少女」には戻れなくなることへの不安・戸惑いの間で揺れる陽炎達の姿が印象的でした。そして、そんな葛藤を乗り越えた彼女たちが行方不明になった不知火の救出に向かう姿がかっこよかった。特にゲームでの彼女達の脆さを知っていると、ル級vs睦月型2人の対決がアツすぎる。
艦隊としての仲間としての絆、女の子同士の友情、そして同系艦の間で育まれる独特の関係性が濃厚に描かれていて凄くよかった!しかし、次巻からは別の鎮守府での物語と言うことで、これまでのキャラクターなど、どういう事になるのかが気になる。というか横鎮提督好きだったんだけどなー提督も変わっちゃうのかな……。
艦隊これくしょん -艦これ- 鶴翼の絆
「艦隊これくしょん」のノベライズ、富士見ファンタジア文庫版は瑞鶴を主人公にして、かつての「艦」としての記憶をはっきりと持ちながら『艦娘』としての二度目の生を送る少女達の物語です。
オリジナル設定と史実・ゲーム要素の絡ませ方が物凄く面白かった!艦これの舞台が「あの戦争」が起こった世界とは似ているようであらざる世界として位置づけられていて、過去の戦いの記憶を持ったまま新たな戦いに臨む彼女たちが、切り離すことはできない過去の因果・宿命を背負いながらも懸命に戦っていく姿がアツい。かつて“幸運の空母”と称された瑞鶴と、彼女とは対照的に“不幸艦”と呼ばれる姉の翔鶴を中心に、ゲームではきわめて不確定なステータスである幸運値を史実であった出来事と絡ませてくるのが興味深かったです。
そしてある時は軽薄に、そしてある時は冷徹に彼女達の戦いを支援しながら、幸せを願う提督がまた地味に良いキャラしてる。「勝利のため」と時には冷徹に艦娘達を戦場へ駆り立てながらも、その裏には艦娘達を護りたいという強い意志と、艦娘達を「兵器」として扱う軍上層部との間で板ばさみになっているような言動がみられるのにとてもニヤニヤする。あと、あふれ出るイケメンオーラ。
自らを憎まれ役に貶める事で苦労を背負い込んでしまう不器用さがほんとこの人、生き辛そうな性格しているなあという感じで大変妄想が膨らみました。 軍上層部に弱み握られて掘r