「ロクでなし魔術講師と禁忌経典」シリーズの日常主体、ラブコメあり、ドタバタあり、過去話もありの短編集第6弾。色々な意味でイヴの過去話のインパクトが凄い。本編17巻が色々な意味でこの巻既読前提っぽかったのでずっと本編読むの止めてたんですけどやっと読めるぞ〜!!
イヴの過去と「イグナイト」の矜持
イヴがイグナイトの次期当主を継承するまでの過去編『炎を継ぐ者』が色々な意味で今回の肝。アゼル公が予想以上にやってることエグいというか、多分これイヴ母の死も間違いなく一枚かんでますよね……イグナイトによって一番酷い目に遭ってきたイヴ自身が、イグナイトへの風当たりの強い最前線に配置されて疲弊していくのが本当にしんどいし、そんな彼女が唯一心を許せる存在だった母違いの姉・リディアに一筋の光を見出し、それすらも奪われるという展開があまりにもきつい。というかここまでくるとリディアの一件すらも17巻のあらすじを読んだ限りアゼル公の差し金では?と思ってしまうわけで……。次期当主の座を追われ、母方の旧姓を名乗るようになったイヴが今もなお「イグナイト」の家の名にこだわる理由。大切なものを奪われても本能的な部分でかつての姉との約束にこだわる彼女の姿に胸が熱くなりました。いや、もう短編は気にせず17巻読んじゃおうかなと思ったことも結構あったんですけどこれは17巻の前に読めてよかった。
全体的に「両親」の話が多めだった
短編の方はシスティーナの両親が娘とグレンのデート(?)をこっそり追跡する「お父様が見てる」の破壊力が高かった。というかシスティーナ父がグレンの行動にケチつけて、光速でシスティーナ母からブーメラン喰らう姿が楽しすぎる。この話のでイチャコラしていたシスティーナの両親が、同じ巻の「魔導探偵ロザリーの事件簿・無謀編」で不倫疑惑から破局の危機を迎えてるのあまりにも急展開過ぎるんですけど、この話は本当にへっぽこ探偵ロザリーを中心にしたドタバタという外面に騙されがちだけど、起きてた事件の深刻さが凄いな……。ナムルスがまさかのトンチキ中二センスだと発覚する「名無しの反転ルミア」や、ちょっとサボりたかったグレンが仮病を使ったら教え子3人がやってきて大変なことになる「仮病看病☆大戦争」も面白かった。しかし、仮病の話はグレンのサボりの理由がめちゃくちゃわかるやつで、若者には確かにその感覚はわからないかもしれないが許してあげて欲しい……という気持ちになってしまう。いやほんと体調だけじゃなくてそこまで体調悪くはないけどメンタルの出力不足で休みたいみたいなのあるじゃないですか……ねぇ……。