イエット共和国で引き続き勇者の遺物の探索を続ける……とは名ばかりに割と楽しく(?)日々を送るライナとフェリス。そんな彼らの前に“勇者”本人の噂が舞い込んできて…「伝説の勇者の伝説」シリーズの幕間のエピソード+書き下ろしの過去編を収録した番外編短編集第4巻。
ライナ、働く(働けてない)
いろいろな意味で怠惰が服を着たような男・ライナがフェリスに食費を絞られて空腹のあまり泣く泣くレストランでアルバイトする「わーきんぐ・ぶるーす」が色々と凄い。でも予想通り働けてなかった。面倒くさくて動かないところまでは割と予想できる感じなんですけど厨房担当に回された時のメシマズの理由が「動きたくないから遠くにある食材を使わない/動いて取れる距離の食材で済ませる」であまりにも斬新すぎる…レシピ通りに作らなくてマズい、は定番ですけど流石にその理由は予想できなかった。いやでもさすがにこれはさすがに虐待では……フェリスちゃんとライナに餌あげて!(ライナは犬ではない)あと、エステラからの依頼でフューレル姉弟の祖b……伝説の魔獣を倒しに行く「がーでぃあん・モンスター」がめちゃくちゃ好き!!こういう人間なのに人間の範疇を超えてる謎の超人が出てくる短編めちゃくちゃ好きで!その伝説のまじゅ……お婆ちゃんが姉弟に対して行った意趣返しがまた絶妙で、二人の反応にもニヤニヤしてしまった。それにしてもヴォイスきゅん無敵の人か?
過去編思ったより酷くなくて良かった
書き下ろしの過去編「ジュルメ、最後の授業」は前巻の過去話の1年後、互いに切磋琢磨しながらも気心の知れた間柄になっていった天才児3人だが、訓練所の卒業試験はお互いを殺しあわせて最後の1人のみが卒業できるという残酷なものだった。師匠であるジュルメは彼らを逃がそうと独り奔走して……というお話。2巻の過去編があんなだったしタイトルが「最後の授業」だしでもう重たい想像しかできなかったのですが思ったよりも救いのあるお話で良かった。いや、もうタイトルでビビりまくってるところに短編の方で勇者の遺産によってライナのトラウマが掘り起こされる「ぷりしえんと・ますく」とかありましたし。いやでも何回も絶望的な未来を想像させるようなひっかけがあって生きた心地がしなかったし、感情のジェットコースターが凄い。結局ライナがローランド帝国から逃げられるわけではないんだけど、まあアレやらコレやらの展開にならなかったのは本当に良かったよね…。
厳しいけれど愛情を持ってライナ達に接するジュルメ、昼行灯に徹して革命の時機を待つラッヘル・ミラーという元同期の二人の関係性も良かったです。というかミラー確か現在軸だと結婚してましたよね。ね!!!(思わずWikipediaに調べに行った顔)