イエット崩壊時に起きた洪水で海に投げ出されてしまったライナたち。見知らぬ無人島に漂着した……と思ったら、そこはなんとローランド帝国にあるフェリスの家の領地だった。数カ月ぶりに帰国したふたりが真っ先に思い出したのは、自分たちをこんな境遇に落としたシオンに復讐することで……!?
舞台はローランド帝国へ!#シオン寝ろ
長かったイエット共和国編が終わり、舞台はローランド帝国へ。ライナとフェリスがこれまで以上にシオンの巧みな動きで仕事を与えられて右往左往したり、逆にシオンがライナ達に振り回されたりというお話が中心。なんだかんだで内政の手伝いしてるライナは結構楽しそうにやってる気がするんですけど、なにはともあれシオンの仕事の仕方が睡眠時間度外視のブラック労働で、頭おかしいんだよなあ……ていうかこういう判断力を求められるような頭脳労働の人が睡眠時間取らないのどう考えても駄目だと思うし、これだけ徹夜が常態化してたらそりゃあ思い詰めて極端なこと考えたりするわけだよ……シオンは本当に寝ろ。シオンの仕事を手伝わされることになったライナがシオンのベッドに居着いてしまい(シオンはそもそもベッドにほとんど戻ってこないので別に同衾はしていない)シオンの男色疑惑が発生するの味わい深さが凄いんですけど、本編であれだけ冷酷で危険な人物として描かれ続けてきたフロワードがほぼ、娘(シオン)の行き遅れを心配する面倒くさい母親みたいになってるの面白さが凄い。彼の本質自体は変わってなくてただ単純に視点を変えただけなんだけど、視点を変えただけでこれだけ変わるの面白いな……。
それにしても素朴な疑問なんですけど、二人がローランドに戻ってきてシオンに会いに行く話、今回の「きる・ざ・きんぐ」と本編6巻の両方に全く別のシチュエーションで載ってる気がするんですけど微妙にシチュエーションが違うんですよね。あと本編6巻だと戻ってきてすぐにライナが○○してる気がするんですけどこれどういう時系列……?一回戻ってきてまた出ていってたりする……?読み進めていけばわかるかな……。
ゾーラとライナの悪友っぷりが良かった…!!!
書き下ろしの過去編「天才の流儀」は前巻に引き続きライナが『隠成師』に所属していた頃。彼が『ローランド最高の魔術師』と呼ばれるようになった由縁や、前巻でメインになったゾーラとの出会いのお話。前巻でピア達と出会って改心(?)したゾーラがなんか逆の方向に面倒くさい男になっててめちゃくちゃ笑ったし、そのノリでそのままライナにウザ絡みしていくのめちゃくちゃ楽しい。一方、暗殺者の少女・ビオとの一件やらなにやらを経て心を閉ざし気味のライナがゾーラのあまりのウザさに辟易しながらもだんだん心を許していくのがとても美味しかった。いや、なんかこの二人ものすごく「悪友」なんですよね……フェリスのような異性の相棒ともシオンのような相互クソデカ感情な親友ともピア達のような苦楽を共にした良きライバルとも微妙にちがって、いい感じにお互いに執着がないと言うか、カラっと遠慮がないのがとても良い。それにしてもゾーラは自分が懸想してる人物の名前をそっとライナに教えてあげて欲しい。ぜったいよろこぶから。いやローランド帝国側に万が一にでも伝わるの避けたくてわざと伏せてるのかもしれないけど。
ゾーラ、前巻のあとがきで「そのうちドラマガ掲載分にも出てくる」と言ってたし、ライナのようにただ上からの命令を拒絶して割を食うだけではなく、自分の譲れないポイントは死守しつつ組織の中でうまく切り抜けるような器用さも持っているようだから死んではいない気がするんですよね。ドラマガ掲載分=おそらく現在軸の短編でライナと絡むの、めちゃくちゃ楽しみになってきたなぁ。