「彩雲国物語」シリーズ、完結編。最期の一日を残して眠りについた秀麗。一方、劉輝は旺季との戦いを避けるために紫州を落ち延びて……というお話。
シリーズ中盤以降はその優柔不断さにヤキモキさせられる事も多かった劉輝ですが最後に来て大きく成長した姿が眩しかったです。その優しさは失わないまま、「王」としての大きな器を持った姿はまだすこし頼りないけど、劉輝と秀麗に惹かれて集まった人々の顔ぶれを見ていたらそんな心配もふっとんでしまうようでした。これまでの長い物語で出会った人々が劉輝のために次々と駆けつける姿は感無量でした。
そして、劉輝の王としての成長も凄く良かったけど、やはり秀麗が復活してからの盛り上がりぶりはやばい。色々な人の力を借りながら、最後の1日になると知りながらそれでも真っ直ぐに劉輝のところへと駆け抜ける彼女の姿が印象的でした。男子陣の活躍も凄かったんですけど、劉輝や楸瑛と共に旺季の前に並び立つ秀麗の姿を見たらやはり主役が居ないと締まらないなあと。
………しかし、それでも年の功には勝てないのか、最後で美味しい所を全部、彼の人に持っていかれた気がしてならない(笑)いやほんとうにあの人の「あの」登場のしかたはズルいですよね!?そしてほぼメインキャスト総登場なこの場面で、出番を食われた一部の人(つか黎深&絳攸)がマジ哀れ……
序盤で語られたあの思わせぶりな未来図をしっかり回収し、大団円でありながらもどこか最後は少し切ない終り方が素敵でした。本当に面白かったです。
……しかし、個人的には割を食った人とか最後の最後で出番のなかった人とかにも是非日の目を当ててあげて欲しいな。あと1冊くらい……外伝とか、でないものでしょうかw
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彩雲国物語 紫闇の玉座(上)
ずっと縹家のターン!!!!!
秀麗の大活躍も凄かったし旺季とか紅州牧コンビとか色々なキャラクターの見せ場が多かった巻だけど、最初から最後までどこまでも瑠花姫&羽羽様に持って行かれっぱなしだった気がするシリーズ最終巻前半戦。
「家を守る」という自らの作った柵から解き放たれた瑠花様率いる縹家の活躍が頼もしすぎてやばかった。瑠花様の自分と違うしかし同じ道を選んだ秀麗に対する目線が優しすぎて、そしてすべてを理解した上で自らの命を瑠花に託した秀麗がかっこよすぎて、そして終盤の縹家の娘たち+羽羽様とのやり取りに転がった。数十年ぶりの再会を果たした二人のやりとりにニヤニヤが止まらない(主にモフモフ的な意味で)!!あと英姫さまかっこいいよ英姫様。
一方で、クライマックスに入って以来暴落を続けていた劉輝株にようやく下げ止まりが……「完璧な」王としての器に、王族として誰よりも正当な血筋まで持つ旺季に対し、劉輝を支持する数少ない人間たちの本音が聞けたのが良かった。悠舜のような派手な活躍はできなくても、彼らを支えるために劉輝がしていることの「本当の意味」も。
最高の盛り上がりを見せる中、いよいよ長かったシリーズも残り1冊。命を賭した秀麗からのバトンタッチに王としての劉輝がどう応えるのか。最終巻が本当に楽しみです。
彩雲国物語 蒼き迷宮の巫女
迫り来る蝗害の脅威に対して、縹家では秀麗が、王宮では旺季一派が大活躍。……前巻から引き続き、劉輝達の空気具合やばい。ストーリーもクライマックス目前だっていうのに、これでいいのか。唯一、楸瑛が結構出張ってましたがこの活躍も本線とは外れた部分というイメージが強かったなあ……
というよりも、「劉輝が王では、何故いけないのか」をしっかりと示されてしまったのが、そしてそれがあまりにも説得力のある理由でありすぎて辛いです。「好きな物のために王になる」ことが何故いけないのか、旺季が何のために王を目指しているのか。彼らを納得させる理由を見出そうにもさまざまな部分で手遅れ感が漂いすぎていてキツイ……。そして、そういう意味で官吏の違いを問うた時、秀麗って劉輝ではなく旺季側に近い人間なんですよね。……もうなんというか、読んでいる側まで劉輝もう王じゃなくてもいいんじゃねとか思ってしまうのです、が。
とりあえず縹家での騒動もひとだんらくし虻害への希望も見出せたのは最大の戦果でしたが、ここから王宮に戻る秀麗達を待ち構えているのは旺季不在の王宮、というこれまでに無く厳しい状況であるわけで……秀麗は戻ったら官吏ではなくなるわけだし、うーん、ていうか、旺季が担ぎ出してきそうな劉輝の対抗馬って……あれ?
これからどうなるんだろう、良い意味で先が見えない。続編が楽しみです。
それにしても、今回の旺季・孫陵王・凌晏樹のやりとりに萌えたのは私だけじゃないはず!
彩雲国物語 黄粱の夢
読み飛ばしていたので順番左右しますが最新刊から1冊戻り。静蘭と燕青が「殺刃賊」を潰した時のお話をメインに邵可&薔薇姫の出会いを収録した番外編集。
静蘭と燕青に暗い過去があるのはなんとなくこれまでも幾度となく示唆されてましたが、予想以上に重たい展開にびっくりしました。特に静蘭の「小旋風」という渾名の由来がそんなことに起因するものだったとは……。
孤高の皇子時代に唯一の心のよりどころだった劉輝との心温まるやりとりにも、母・鈴蘭との悲しいすれ違いも印象的でしたが一番印象に残ったのは前王・戩華の意外な「父親としての」素顔ではないでしょうか。ただの「父と息子」に戻った彼と静蘭が一瞬見せた気の置けないやり取りが微笑ましいのと共に、彼等のそういう関係を許さなかった当時の状況が物悲しくもあり。
しがみついていた「皇子」としての立場を奪われ母を殺され「殺刃賊」に囚われ、まさにどん底状態の静蘭を引きずり出した燕青の方も、彼に負けず劣らずな深い闇を抱えていて……そんな二人が1000人の敵を前に背中を合わせた一瞬は思わず燃えた!!ツンツンした態度をとりながらも時々どこか自分よりも危うげな一面を覗かせる燕青を放ってはおけない静蘭の立ち回りにニヤニヤする。
二人にとってはあまりにも重い「過去」のお話でしたが、二人の一瞬ともいえる出会いが『その先』の人生を顧みようとしなかった彼等の生き様を変えた。そして再び別々の新しい人生を歩み、再びめぐり合うその様子はそれこそ「運命の出会い」だったといえるのではないでしょうか。別に静蘭×燕青の悪友関係萌えなんて思ってません、ちっとも思ってませんとも!!!
書きおろしの邵可と薔薇姫の出会い話も素敵。飄々とした邵可のフリーダム具合に翻弄され、だんだん彼のペースに引き込まれてしまう薔薇姫の姿と、ピントのちょびっとズレたやりとりにニヤニヤが止まりませんでした。いろいろな意味で最後に持っていかれた!!
彩雲国物語 暗き黄昏の宮
劉輝株大暴落(ストップ安/最安値絶賛更新中)の巻き
すでに読了済の人たちから噂には聞いてましたが、もうなんというか、秀麗や他の人の頑張りを片っ端から台無しにしていく劉輝がマジヘタレすぎる……もちろん、敵となる人たちがあまりにも一枚上手で…というのはあるのだけど、もう少ししっかりできないものなのか。これまではまだ「わかってないから仕方ない」みたいな部分があったけど、自らの言動が事態をさらに悪化させるであろう事を予感しながらもその場の流れに流されてしまう劉輝は、本当にヘタレとしかいいようが……
序盤に普通に乙女ゲーしてた頃の秀麗贔屓が今になってこんなにも大きく、取り返しのつかない過ちとして浮かび上がってくるとは……そしてその後もどんどん自ら再起の目を潰して行っていたという事実が、胸に痛い。彼らの行動が間違っていたとは思わないけど、もう少しうまく立ちまわっていれば…みたいなのはあるよなあ。気がつけば周囲は四面楚歌、こちらには切れる手札もなく、なすすべもなく翻弄されていく劉輝達が本気で哀れ。物語は最終章に突入ということですが、なんかもうバッドエンドしか道がないんじゃないかと思われてしょうがない。この道は本当にあの、1巻で示されたような輝かしい未来へとつながっているのだろうか。
普通の人間でも過労死しておかしくないような激務を続けてきた秀麗が、回復のために担ぎ込まれた縹家で僅かな静養の時間を得て、様々な選択肢を持ちながらも最後まで王の為の官吏であろうとする姿がかっこいいのですが、その努力をブチ壊しにしようとしているのが、その王本人というのがなんだかなあ…味方のはずの人たちにどんどん足元をすくわれていくのがなんともやるせないです。
次こそ、次こそはいい加減劉輝には本気出して踏ん張って欲しい……。
彩雲国物語 黒蝶は檻にとらわれる
[著]雪乃 紗衣 [絵]由羅 カイリ 吏部尚書・紅黎深が解任され、吏部侍郎・李絳攸の処分を決める御史大獄が開かれた。官吏潰しと異名を取る清雅と渡り合い、辛くも御史大獄を乗り切った秀麗だが、今度は黎深の解任を不服とする紅家の官吏が一斉に出仕を拒否、王都の経済にも圧力をかけられてしまう。秀麗は犬猿の仲の清雅と共に、事件の対応に追われるが…!? |
そこでその選択はないだろう!!しかも敵の手の中で思いっきり踊っちゃってるよ!!!序盤はもうちょっと、「ヘタレだけどやれば出来る男」だった筈なのに最近のヘタレっぷりはほんとどうなの!!!
というわけで、一気に物語が急展開。黎深の解任をきっかけに紅姓官吏達が出仕拒否と経済制裁を起こし、それを解決するために清雅と秀麗が奔走していたら事件の裏に思わぬ人物の存在が明らかになる、というお話。
今回は本当に御史台側の動きが面白かった。清雅と秀麗の背中合わせなライバル関係も良い感じだし、散々罵倒されながらもすっかり秀麗になつかれちゃってる葵皇毅との関係や、秀麗の破天荒ぶりに振り回されてだんだん雰囲気の変わってきてしまった御史台の様子がとても美味しい。特に清雅の鬼畜エロ台詞や燕青&清雅のやりとりにはニヤニヤしっぱなしですよ。デレ分が限りなく低いツンデレ……というかサドデレ?なセーガ最高です。ああもう、恋愛感情かどうかはとにかく明らかにそれなりに好意持ってるのに、どこまでもデレそうでデレない絶妙なデレ度の低さがたまりません。
秀麗と清雅、葵皇毅を中心とする御史台での人間関係がどんどん面白くなって、今までになかったタイプの人間達の中で少しずつ自分なりに成果を出していく秀麗や朝廷から離れて事件の為に奔走する邵可パパの活躍が目覚ましい分、劉輝・絳攸・楸瑛を中心にした王様近辺の動きがもどかしくてたまらない。(※清蘭は私の中ではもうギャグキャラ扱いなので、今後も元気にお嬢様の悪口言う奴にイガグリとか投げててください(オイコラ))実際、とりまき二人はとにかく(ひでえ)劉輝については王様として少しずつ成長している部分もそれなりに見てとれるんだけど、周囲の活躍でそれが霞まくってるのとそれ以上にダメなところが悪目立っちゃっててなんだかなあ……。まあ実際、あまりにも相手が悪いというのはあるんですけど。
追い詰められた劉輝は遂に彼の中でも「禁じ手」とされていたとある手段に出てしまうのですが……彼の中で「人間の劉輝」としての様々なモノを犠牲にしての選択も敵の手の内で動かされているというのがまた。しかも、秀麗が漸く周囲の官吏に「気に食わない女性官吏」としてでなく「手ごわい御史台の官吏」として認められ始めたところでそれをやってしまったことで、もろに敵の思うとおりの展開になってしまいそう。秀麗の身体には一種のタイムリミットが発生し、劉輝の知らないところでは内乱・クーデターフラグまで立ちつつあるわけですが本当にこの物語、どこに着地するつもりなんだろう?間違いなく「そして二人はいつまでも幸せに暮らしました」という展開にならない事だけは確かな予感。
序盤で語られた後の世の評価によれば、秀麗が後の世にまで伝わる功績を残すのはこの後になる筈なので、このまま大人しく後宮入りするような展開にはならないんだろうけど、劉輝と秀麗の二人にとって少しでも幸せな結末になるといいなあ…。次はよもやのタンタン再登場フラグっぽい気がするのでそっちの意味でも期待。
彩雲国物語 黎明に琥珀はきらめく
[著]雪乃 紗衣 [絵]由羅 カイリ 秀麗達が藍州に出向いている間に吏部の調査を進めていた清雅は、絳攸を投獄してしまう。師と慕う絳攸を救うため、調査と御史台で開かれる御史大獄での弁護を申し出る秀麗だが、上司である葵皇殻は意味深な言葉を彼女に突きつける。更に、縹家の策略が絳攸を襲い… |
楸瑛に続き、絳攸に苦難が降りかかる「紅」家編。黎深・絳攸親子の親離れが描かれます。
今回も、面白かったけどとにかく重いなあ……。劉輝が真の意味で楸瑛・絳攸の二人を手に入れるためには絶対に避けては通れない道だったというのは理解できるのですが、メインである筈の劉輝と秀麗の恋路については話が進むほど先行きが暗くなっていくのはどういうことだろう。二人が頑張れば頑張るほど、二人の距離が決定的に離れていってしまうのが見ていて辛い。
姪バカ担当の黎深さま、癒し担当のうーさままでシリアスでなんだか重苦しいキャラになっちゃって、私どこで息抜きをしたら良いのか……唯一、近頃秀麗に構ってもらえなくて本性全開モードな静蘭がこの作品唯一のギャグキャラとして頑張っておりますが。親友に弟に、挙句の果てには楸瑛や絳攸にまで先を越されてすっかりふてくされ気味で暗黒面全開の元王子様に、様々な意味で笑いが隠せません。特に、「再就職」を果たした楸瑛との手のひらを返したようなやりとりには爆笑しました。「劉輝のため」とかっこいいところを見せた楸瑛の立場全くなし。貴族派はまず先にこの元王子様を追い落としたほうが良いと思うんだ。次代をしょって立つ彩雲国ギャグの星・静蘭に栄光あれ。君が居ないと重苦しい雰囲気がどんどん加速してしまうよ!!
今回は黎深の捻くれまくった親子愛にもじーんとしましたが、やはり最後の、絳攸の夢に登場する二匹の文鳥に関する小噺が良かった。ある意味ベタだけど、彼らが未だに絳攸の原点というか、支えになってくれているという事実に胸が熱くなりました。
しかし黎深様は本当にツンデレだなあ……絳攸の名前をつける際のやりとりとか、彼の姓が「李」である意味・理由とか、そもそも絳攸を拾おうと思った理由とか。不器用すぎる愛情が、とても愛しい。そして次回からはどーんと出番が減りそうな予感なのがとても悲しいです。
ラストで遂に明かされた、秀麗が劉輝からの結婚を拒み続ける理由。もうなんていうか、その理由を踏まえると劉輝は自分で自分の首をキュっと絞めちゃってるんですけど。まだまだ重苦しい展開が続きそうだけど、そろそろ序盤のようなご都合主義全開なスッキリ円満解決的展開が懐かしくなってきたなあ…。
彩雲国物語 隣の百合は白
[著]雪乃 紗衣 [絵]由羅 カイリ 年末に士気が下がる左右羽軍の面々を盛り上げるため、武術大会が催されることになった。優勝者は宮廷一の色男・櫂瑜様の恋愛指南が受けられると聞いて左右羽軍以外の部署の官吏達や御馴染みの面々までが飛び入り参加して…!? 他、邵可が黒狼を継ぐきっかけとなった話、そして百合姫から見た通称「悪夢の国試」の顛末のお話の計3本+αを収録。 |
後半2篇がまさに黎深様スペシャル。ここんところ、全体的に出番も無く影が薄くなりがちな黎深様の登場を心待ちにしていた貴方は絶対買いの1冊となってますw
「恋愛指南争奪戦!」はあらすじやタイトルからも想像出来る通りの、典型的なコメディ話。必死に優勝を狙う武官達を容赦なく追い落としていく御馴染みの面々の容赦ない姿も素敵過ぎますが、オチもいい具合にいかしてます。しかし、終始笑いの止まらない作品だっただけに、ラストではしんみりしてしまいましたね。
次の「お伽噺のはじまりは」は、紅家三兄弟の兄弟想いな姿が伝わってくる良い話。弟たちの為に自らの手を血に染める事を決意した邵可の姿にも胸を打たれるのですが、それ以上にラストの黎深・玖狼のやりとりが素敵すぎでした。黎深かこいいよ黎深。
そして書下ろしとなる「地獄の沙汰も君次第」。天上天下唯我独尊まっただなかの黎深が、邵可の傍に居たいが為に国試を受けようとして…という話。邵可や秀麗にはあんなにストレートな愛情表現をする黎深様が百合姫や「悪夢の国試組」に対してみせる素晴らしいツンデレっぷりに、最後までニヤニヤが止まらない話でした。紅家の経済力をフル活用した挙句、最終的には「あの」前王まで巻き込んで……というくだりではもう爆笑しっぱなし。黎深様かこいいよ黎深様。
そして更に何げに良い味出しすぎなのが、コウくんこと幼少時代の絳攸。黎深を無邪気に慕うその姿は様々な意味で同情を禁じえませんでしたが、その後も黎深と百合の仲を誤解(でもあながち間違いではない)してみたり、百合と噛み合わない会話をしてみたり……と可愛さ炸裂でした。
今まで出た「彩雲国物語」の短編シリーズの中では文句なしに一番面白かったんじゃないでしょうか。特に紅家及び吏部ファンの人は必読の一冊です。
れいしん様かっこいいよれいしん様。
彩雲国物語 白虹は天をめざす
「花」を返上して藍州へ帰ってしまった楸瑛を取り戻すため、迷いを抱えたまま十三姫と共に藍州へ向かった劉輝。秀麗は監察御史として、劉輝を連れ戻すため蘇芳と燕青を連れて藍州に向かう。しかし藍州では縹家が、王不在の王都では劉輝を良く思わない貴族派が暗躍し始め…
そんな状況で、一抹の不安を抱えたまま逃げ出すように藍州へ向かう劉輝ですが、今回はそんな彼が王として大きな成長を遂げます。王都から離れる事によって現在の自分の状況を再把握し、悩んで悩んで悩みまくって出した「王として生きる」という結論。今まではどうにもこうにも「愛に生きる人」というか、文字通り秀麗バカのイメージが強かったんだけど、周囲に頼る事をやめ、また親しい者達以外にも目を向ける「良い王」になろうと改めて再起した劉輝。これは秀麗じゃなくてもうっかりグラっと来ますよね…全く本人は意図してないんだろうけど押して駄目なら引いてみろ作戦大成功!!なんじゃないですか!(笑)
そして今回外しては語れないのが影で意外な活躍を見せる蘇芳。秀麗の周りに居る男性の中では抜群に頼りなくて、どちらかというと庶民派な彼の意外な能力が明らかに。というか、劉輝に対する感想があまりにも庶民派な蘇芳すぎて笑えました。今まで片意地張っていた秀麗を自然体にし、精神面からのフォローを入れて居たのが彼だっただけに今回の別離は残念でしょうがないのですが、家族水入らずの姿を見るとこれはこれでよかったのかなあと思ったり。というか、このシリーズにおいて庶民派という存在がどれだけ貴重か考えるともう…!!
それにしても最近、皇殻やセーガと秀麗のやりとりがかなり楽しみになってきた自分が居ます。秀麗が今まで見ようとしなかった面を片っ端から見せつける皇殻は嫌味な人に見えて絶対悪い人じゃないと思うし、清雅と秀麗の今後のライバル関係も楽しみ。何より、彼らによって見えてきた「貴族派」と国試組、彩七家との関係はかなり興味深くて、今後どうなっていくかに期待。
秀麗の体の変化、貴族派や縹家の暗躍、そして吏部の情勢など今後も目を離せなさそうなこのシリーズ。次は久しぶりに黎深様の活躍が見られるのかなと個人的にわくわくしてますが、この状況じゃあ兄バカ姪バカの黎深様は見られないんだろう事がちょっと残念です。
彩雲国物語 青嵐にゆれる月草
御史台で働き始めたものの、意地悪な同僚・陸清雅に事あるごとに嫌味を言われ、日々自宅で食材相手に鬱憤を晴らす毎日。そんな秀麗と清雅の元に後宮に上がる予定の藍家の姫・十三姫の身代わりとなって暗殺計画の背後関係を探れという大きな仕事が飛び込む。複雑な思いをよそに、再び後宮に上がった秀麗だが…?
今まで「初めての女性官吏」としての秀麗の凄さばかりが強調されてきた彩雲国ですが、「紅梅は夜に香る」で冗官に落とされたことで過剰なまでに誇大化された秀麗のスーパー女性像が取り払われ、久しぶりに等身大の少女としての秀麗がクローズアップされた印象。今までどれだけ彼女が虚勢を張って生きてきたのか実感しました。
現在の自分では清雅にどうやったって敵わないことを認めた上で、今自分が出来るだけの事をやっていこうとする姿勢がかっこいいです。敵わないとはいえ今まで秀麗の周囲に居た人々よりは全然身近なライバルである清雅と一般人代表(笑)のタンタン達との話が中心になったのが凄く良かったんじゃないかと思います。ぶっちゃけ乙女ゲーの世界から秀麗の成長物語になった感じで、個人的には以前より好印象かも。今までのキャラクターがなりを潜めてしまったのはちょっと寂しいですが…(特に黎深様)
一方、十三姫の問題と共にクローズアップされてきた藍家の問題。楸瑛の苦悩や黎深の意味深な行動を見ていると、今後藍家や紅家とも事を構えるような展開になるのかも。不謹慎ですが今後そんな展開になるのなら結構楽しみです。
しかし、個人的に今回のツボヒット大賞は仙洞省の司令になったリオウ君。うーさまとのコンビを想像するともう微笑ましすぎて笑いがこみ上げてきます。子供なのに濃い大人達に振り回されるリオウ君が哀れ。次巻では是非うーさまとのやりとりを見てみたいですw