ローランドに戻ったシオンは国王の責務を放り出してライナを救出に行ったことを咎められ、投獄されてしまう。ミラーを筆頭にかつての革命の中心となった重鎮達が集まり、シオンの処遇を巡って審問会が開かれるが。一方、スフェルイエット民国に帰還したライナの元には兄弟弟子のピアが殺害されたという知らせが届いて……。
旧革命派の面々のやりとりよかった
ローランドでの、シオンとミラー一派のやりとりがめちゃくちゃ良かった!ライナ・フェリスとシオンの間に築かれたような距離の近い関係性とは違って、ミラーとの間にあるのは基本的に打算と利用価値で。でも距離感が近すぎない彼等だからこそシオンの性格や行動をある程度割り切って、彼の甘っちょろいところも含めて許容して信頼することができるんですよね。「堕ち伝」での味方であって味方ではなかった彼等の関係性を知っているだけに、余計しんみりしてしまうものがありました。あと、前巻でのシオンの人間らしい矛盾した行動を楽しそうに語れてしまうルーク、本当に「人間」が大好きなんだな……。もともとの性格もあるけど『堕ちた黒い勇者』の件があって何もかもをひとりで抱え込んでしまいがちだったシオン。そんな彼がライナからの叱咤を受けたことで自らの行動を見つめ直し、更に勇者と悪魔(ルシル)からの干渉から一時的に開放されたからこそミラー達に腹を割って話す今日があるのだというルークの言葉が印象的でした。それまでに積み上がった死体の数がいかに膨大だったとしても、この回り道は決して無駄ではなかったのだと。しかしルシルはともかくフロワードはどこいったんだ。特にフロワードがいたらもっと色々と拗れていた気がするのでスムーズにシオンの処遇決められたのは良かったけど、姿が見えないのは見えないので不安だ……。
また終わり方がエグい!!
一方、ピア殺害の報によって呼び出されたライナたちを待っていたのは全く元気なピアと、ティーアを中心にした魔眼保持者達の軍団と、彼等に手を貸すリューラ。すったもんだの末、ライナは魔眼保持者達のリーダー・未来眼を持つエーネのもとに向かうことに。世界が南のローランド・北のガスタークという二大国家とその間に挟まれる形で存在するスフェルイエットというおおむね3つにまとまってしまったいま、それじゃあ魔眼保持者達はどうするんだという話とエーネが語る「未来」のお話。魔眼保持者達の処遇は良くも悪くもローランド行ってもガスターク行ってもろくな目に合わないのは確定なので彼等がスフェルイエットに付くのは必然という感じではあるのですが、ティーア達と同じ出自で、かつそこから心から信頼できる仲間たちと出会うことが出来たライナだからこそできる説得に、胸が熱くなりました。しかし神とか勇者とか悪魔とかの影響が薄まり、三国が争う大きな理由も薄くなってきて互いに牽制し合いながらも協調路線を模索し始めて、猶予期間こそ短いけれどニンゲン達にとって明るい日差しが見えてきた……と思った所から一転してエーネの語る未来の話があまりにも不穏すぎるんですが!?時間ないからって雑に不穏な情報だけ与えて去るんじゃない。また終わり方がエグいよ!???!?