うららの記事一覧 | ページ 12 | 今日もだらだら、読書日記。

うらら一覧

はたらけ!おじさんの森 1

 

二足歩行の動物が暮らす島にやってきたのは…おじさん? 人気ゲームにトリップした人とあにまるの交流を描く、ほのぼの問題作!
大ヒットゲーム『あつまれ! あにまるの森』。その新作発売日に、行列から離れて、買いそびれてしまったサラリーマンがいた。 森進(もりすすむ)・42歳独身、中堅企業総務部に勤務するサラリーマン。落ち込む進は「おじきち」と名乗るおじさんから、見たこともないゲームソフトをもらう。 帰宅しておそるおそるプレイしてみると------ゲームの中にある島にトリップしてしまった。そこは言葉を話す二足歩行の動物、通称「あにまる」が暮らす不思議な世界・「あにまるワールド」。 戸惑う進の前に再び現れたおじきちが言う。「今日から皆さんには、この島で楽しい共同生活を送って、エンジョイして欲しいオジ」 水を探し、食料を調達し、火をおこし、魚を釣り……ビールを飲む!? 4人のおじさんと4匹のあにまるの心の交流が胸アツ!? さぁ、ハートウォーミングおじさん島ライフにログイン!!

休日の早朝から並んで買うつもりだった人気のスローライフゲーム『あつまれ! あにまるの森』の新作を、迷子の子供を助けたために買い逃してしまった総務のサラリーマン・森進。と、彼の後ろに並んでいて同じく列を抜けてしまった森秋良。大人しくゲームを諦めて帰ろうとしたその時、謎のおじさんからゲームソフトを貰う。そのタイトルは『あつまれ! あにまるの森』……ではなく、『はたらけ!おじさんの森』。とりあえずゲームをプレイしようとしたところ、何故か意識を失ってしまい……!?

「おじさん」と「あにまる」が織りなす、ゆるゆる無人島スローライフ

タイトルの出オチ感に反して、人が良くて有能な「おじさん」たち4人と彼らに庇護されることになった「あにまる」の子供達が異世界の無人島を舞台に某ゲームのようなほのぼのスローライフを送るというハートフル異世界転移物でした。どうみても元ネタであろう例のゲームはやったことないので理解できるかな……という気持ちもあったのですが、元ネタ(多分)のゲームをプレイしていなくても全然楽しめました。

主人公である4人のおじさんがまた本当に良いキャラしてるんですよね。物腰が柔らかくて気遣いの人・総務部のサラリーマンとして皆を取り仕切る主人公の進、最年少(38歳)でガラが悪くすぐに頭に血が登ってしまうけど本当は感動屋・あにまる達が健気な行動をするとすぐに感極まって茂みに駆け込んで涙ぐんでしまう秋良、一番年上で頑固職人タイプのおじいちゃん・山太郎、絵に描いたような引きこもり(リモートワーク)の中年オタクだが時折とんでもないポテンシャルを発揮する木林。彼らがそれぞれの強みを発揮して「わかもの」によって傷つけられたあにまる達の心を癒やし、島で起きるちょっとしたトラブルに次々と立ち向かっていくのが頼もしかった。ただかっこいい・心優しいだけでなく、かまいすぎてうっとおしがられたり、おじさんならではの面倒臭さがあるのもたまらない。隙あらばビールで乾杯しはじめる描写から絶妙な加齢臭がする!!

無人島を発展させたり、「あにまる」達と仲良くなることでポイントを得ることができて、任意の物との交換に使用できる……という神から用意されたシステムも良かった。無理のない範囲で作れるものは自作して、自分たちでの対応が難しい物をポイント交換するという仕組みによってイージーモードな無人島サバイバルを送ることが出来て、コンセプト通りの「スローライフ」を楽しめるわけなんですよね。ミッションやポイント交換のシステムが「できそうなことは自分でやってみよう」というモチベにもつながっていくのが上手い。その他『島のテーマソングを作ろう』なんて突拍子もないミッションが、進の手によって交流企画として仕立て上げられたりするのも面白かった。

競争相手である他の島の住人は今巻では殆ど登場しなかったけど、基本的に子供・動物に優しいおじさんたちが異世界転移に選ばれているので基本的には悪い人の居ない世界観となっていそうではあり、そこも良かったです。「おじさんに悪い人が居ない」世界観なんだけど、おじさん概念への過剰な賛美ではなくて純粋に良いおじさんしか選んでいないという理由と原因がある。あと、明日夢さんの島の顛末にニヤニヤが止まらない。

予想外にハードな世界観がどう動いていくのかも気になる

物語の後半では、「あにまる」たちが度々口にする「わかもの」とは何者なのか、なぜ彼らは「おじさん」という概念を知らないのか。そしておじさん4人をこの島に召喚した自称この世界の神「おじきち」の正体が語られます。いや予想以上に重たい世界観でびっくり。

2巻以後も基本的には無人島ゆるゆるスローライフが中心になるようだけど、「わかもの」達との因縁も提示された以上は続いていくんだろうなあ。どう動いていくのか気になる。


かなりや異類婚姻譚 蛇神さまの花嫁御寮

 

すっかり落ちぶれた華族に生まれた櫻子は、代わって権勢を誇る蛇神一族の御曹司と政略結婚するよう決められた。しかし結婚式当日、櫻子は夫である冬夜の手によって惨殺されてしまう……という未来を予知する。鳥神の守護を受ける櫻子は、「炭鉱のかなりや」のごとく危険な未来限定の予知能力に目覚めてしまったのだ。死を回避しようと決意した櫻子は、家族を巻き込み、婚約破棄から始まりあの手この手でフラグを折るが、「面白い女だ」と冬夜から溺愛されてしまい、何度やり直してもバッドエンド!? ハッピーエンドにたどり着くまでくり返す、蛇神に嫁いだ炭鉱のかなりや令嬢櫻子の“こんなはずでは”奮闘記!

落ち目の華族に生まれ、父の連れてきた浮気相手の子のせいで家族仲は最悪。更に彼女が異能に目覚めたせいで長女としての誇りまで奪われて……蛇神一族の御曹司・冬夜の元に嫁ぐことだけを心の支えに毎日を生きてきた……ところが、18歳の嫁入り当日、夫である冬夜の手にかかり惨殺され──という最悪な未来を見てしまった10歳の櫻子。殺されたくない一心で、婚約者との顔合わせの日になんとか破談に持ち込もうと画策するが、その行動が逆に冬夜の興味を惹いてしまい!?

未来視の少女と執着心つよつよな旦那様の異類婚姻譚

神の異能を受け継ぐ血脈が力を持つ架空の極東を舞台に、結納の日に婚約者に斬殺される未来を垣間見てしまった主人公が未来を変えるため奔走するお話。顔は良いがヤンデレ気質の婚約者やままならない家族関係を、制御できない未来視の異能に翻弄されながら軌道修正していく展開が面白かった…!!一周目では婚約者によく思われたいあまりに見せられなかった「素」の部分を婚約破棄してもらうために出したら、むしろそちらが相手方に刺さってしまい「おもしれえ女」として認識されてしまう……というある意味「やり直しモノ」では定番の展開ですが、そんな彼が執着心つよつよな蛇神の血を引く存在だったので溺愛されてしまってさあ大変。彼に恨まれて斬殺されるルートを回避したと思ったら今度はヤンデレ心中エンドが発生したりしてしまったりして、それも回避したと思ったら今度は別の方向から執着されて三角関係に……!?などと、ままならない未来のフラグ管理に悲鳴をあげるヒロインの櫻子が大変に微笑ましかったです。

恋する人を定めたらひたすらその存在に執着してしまう──という蛇の異能憑きの設定が上手く生きていたなあ。最初に見た未来で櫻子は義姉に執着するあまり自分の立場をも放り出して自分を斬殺しに来た冬夜の姿を目の当たりにしてるわけなんですよね。その強すぎる執着を見た後で自分に恋する冬夜の姿を見ても(たとえそれが確定しなかった未来の話だとしても)すぐに信じられるかという話なわけで。かなり早い段階で相思相愛になっているのに未来視の能力のせいでなかなか彼に愛されていることを信じられない、未来視の能力故にその理由を伝えることも出来ずに苦悩する櫻子の姿が印象的でした。

そして冬夜との関係を改善しても、最初の未来で虐められていた義姉の良き理解者になっても、何故か改善しない未来。そもそもこれ、何が悪いのか…!?というところからはじまる、「それなら該当者全員で腹を割って話そうじゃないか」の流れには納得なんだけど、これまでため込んできた鬱屈が爆発してしっちゃかめっちゃかになったクライマックスが大好きすぎる。お互いに腹を割って放して拳を突き合わせて殴り合ってわかりあうの、完全に少女小説(少女小説ではない)の文脈じゃないんだよなぁーーーー好き!!!

異種族婚姻、ヤンデレ気質のヒーローに溺愛される展開、破滅フラグ回避の婚約破棄モノ……とここまで揃ってるのにここまで破天荒で(良い意味で)ハチャメチャな話になるの、さすが「(仮)花嫁のやんごとなき事情」の夕鷺かのう先生だなあ。大好き!!と改めて思った次第でした。いや本当に最高だったな!!そして続けようとすれば続けられなくもないお話な気がするので、続編が出ると良いなあ。

ところでこの作品が気に入った人は是非同じ作者さんの「後宮天后物語」を読んでいただきたいですよろしくおねがいします。ヤンデレヒーローと後ろ向き令嬢がババアだらけの後宮で繰り広げる異能バトルありの恋愛モノです。

夕鷺 かのう(著), 凪 かすみ(イラスト) 「後宮天后物語 〜簒奪帝の寵愛はご勘弁!〜【電子特典付き】 (ビーズログ文庫)」
夕鷺 かのう(著), 凪 かすみ(イラスト) (著)


ようこそ実力至上主義の教室へ 2年生編9

 

「やっぱり一之瀬さんはAクラスに上がること諦めた、ってことなのかな」
修学旅行も終了した12月、2学期最後の特別試験・協力型総合筆記テストが発表される。 内容は1人ずつ交代で試験問題を解き、最終的にクラス全員で全100問のテストを解くというもの。堀北Bクラスは坂柳Aクラスとの対戦となる。 試験準備が始まる中、南雲が次期生徒会長を決めると宣言する。2年生の生徒会メンバーは堀北と一之瀬。立候補を問われるも一之瀬の意思は生徒会自体を辞めるというものだった。 新たな生徒会メンバーの確保という問題の他、鬼龍院を狙った万引き偽装事件も発生し、生徒会周辺も慌ただしくなっていく。 『無理してないから。……私も、綾小路くんに会いたい……』 学園黙示録は新たな混沌へ――。

2学期の学期末試験を前にしたある日、生徒会長の南雲に呼び出された綾小路は次の生徒会選挙について聞かされる。現生徒会役員の堀北と一之瀬、どちらが生徒会長になるかを巡って勝負を持ちかけられるがその勝負は一之瀬の生徒会からの引退という予想外の展開によってドローになる。そこに、南雲によって万引き犯に仕立て上げられそうになったという3年の鬼龍院が飛び込んできて……。

生徒会長交代劇に一つの時代の終わりを感じる

新生徒会長・新役員決めに鬼龍院の万引き冤罪事件……と、特別試験よりもその外部が忙しかった、2学期編の最後を飾るシリーズ第9巻。

本人も言ってますが在任期間が長かったので、南雲生徒会長の退任というのは一つの大きな時代の終焉を感じました。しかも形だけの退任ではなく、これまでのような好き放題出来る暴君のような行動は取れなくなりそうな退き方。綾小路との対決もつかないまま終わってしまうのか……と少し残念に思う反面、彼との決着は無人島サバイバルのあの瞬間についてしまっていたような気もします。最後まで独裁者にはなれてもほんとうの意味で「一番」にはなれなかった男の悲哀を感じる。

堀北鈴音の成長、一之瀬帆波の覚醒。そして……

南雲が退き、その後を継ぐことになったのが一之瀬の辞退によって新生徒会長に就任した堀北鈴音。今回はいろいろな意味で一之瀬帆波の物語だったと思うのですが、それに負けず劣らず彼女の成長がいろいろな所で見て取れるのが良かった。自らの右腕として宿敵・櫛田桔梗を引きずり込んだ手腕も見事だったし、綾小路のお膳立てがあったとはいえ与えられた情報を即座に整理して鬼龍院の冤罪事件の謎を暴き、同時に南雲の牙をも折り、それと並行して学年末試験でもしっかり戦略を立ててAクラスから勝利をもぎ取っていく手腕は去年の彼女からは想像も出来ないほど。堀北学の愛弟子であった元副会長・桐生からの称賛の言葉がいろいろな意味で今回の全てだったと思うのですけど、本当に良い女になったな鈴音。そしてそんな彼女の手のひらで転がされがちな櫛田ちゃん本当に最近残念可愛い。手のひらで転がされつつもしっかり堀北にも一矢報いてくるところはそう簡単には転がされないぞという強い意志を感じてニヤニヤが止まりませんでしたが。9.5巻で堀北・櫛田(・伊吹・天沢)がキャットファイトしてるだけのイチャイチャ短編読みてぇ〜〜。

その一方、生徒会を自ら辞めた一之瀬帆波もどこかこれまでの彼女とは違った、不敵な笑みを浮かべていて。2年生編に入って以来その真っ直ぐすぎる性質が足枷となって他クラスとの点数争いに上手く加われなかった彼女のクラスでしたが、まだまだ勝負は終わっていないぞといわんばかりの覚醒ぶりにニヤリとしてしまいました。元々彼女、1年生編4巻の船上特別試験では綾小路ですら舌を巻くような活躍をしているわけで。色々吹っ切れたらとんでもない強敵に化ける可能性を秘めているんですよね。これまでの心優しい一之瀬の姿を知っているとどこか不安になる、でも今後が楽しみになってしまう一之瀬穂波覚醒回でした。

逆に今回の試験を見ていてつくづく思ったのですがここで一之瀬クラスが盛り返すと今回みたいな正統派な学力がモノをいう試験の時って龍園クラスだけが頭一つ下になってしまうことが浮き彫りになったわけで、彼らがどう盛り返すのかも気になる。お得意の外野で攻める戦略が通じなくなりつつあり、そうなると去年の一之瀬クラスと同じくらいには詰んでる気がする。1年の学年末で龍園がリーダー復帰した際に大敗を喫したのが一之瀬のクラスであったことを考えると、今回の一之瀬と龍園のやりとりにはどこか因縁を感じてしまいましたね。

それにしても今回色々と不憫すぎた上にタイミングもひたすら悪かった軽井沢さん、今回の綾小路のアレコレといい、最大のライバルとして覚醒した一之瀬の発言といい本当にどうなるか心配。綾小路が完全に彼女を振る体制に入り始めてるのも相当アレなんですが、今回の一之瀬の最後の発言、裏を返すとクラスの利にする形で軽井沢脱落させるぞっていってますよね……下手したら去年の龍園より性質悪いやつだこれ〜!!!


このビル、空きはありません! オフィス仲介戦線、異常あり

 

入社以来、契約ゼロを続けていたオフィス仲介営業の咲野花。ついに初契約かと思われた案件も押印直前で壊れ、とうとう営業から謎の男性早乙女さんの一人部署・特務室に異動になった。特務室に仕事はなく、同期には蔑まれ、花は退職を申し出る。だが早乙女さんから「査定に響く」という理由で慰留され最後に一つだけクライアントの希望に合致するオフィスビルを探すのだが……。見つからない。どれだけ電話をかけても見つからない。これだけ探して1件も見つからないなんてことある? 花の中で、何かが弾けた。辞めたかった花の中で、エンジンがかかる音がした。それが崖っぷち社員の反撃の始まりだった!

オフィス仲介会社の初の女性営業として周囲の期待を受けながら入社した咲野花。ところが最初の案件で躓いて以来トラブルが続き、契約が一件も取れないまま早乙女さんという男性社員が一人所属しているだけの謎の部署・「特務室」に異動させられてしまう。到底やる気があるといえない早乙女、任された仕事はテンプレ文を返すだけのクレーム対応と先の見えないブッカク──下調べ作業で……!?

地道な調査と観察によって導き出される「最良の回答」が気持ち良い

予想外の形でクライアントの地雷を踏んだり、ヒアリングしきれなかった情報に足をすくわれたり……と才能はあるはずなのにうまく仕事に結びつけられていなかった主人公・花が会社で昼行灯の遊撃部隊みたいな立ち位置をしているやりての上司・早乙女の元に異動させられて彼の一見奇抜な行動に翻弄されながらも自分の力で才能を開花させていくお話。オフィス仲介会社を舞台にしたお仕事小説としても、主人公の成長物語としても面白かった!

一つの案件をひとつずつ解決していくのではなく、主人公が一つの案件をこなしている裏で社内では別の案件が進行していたり、それとは全然関係ない所で身近な人のお悩みを聞いていたり……彼らの「お悩み」や「すれ違い」──作中のあらゆるところに散らばっているピースが予想外の形で噛み合い、主人公の知っている所や知らない所で解決に導かれていく。複雑なパズルを解きおわった後のような読後感がとにかく気持ちいい。

そんな心理パズルのような展開を下支えしていくのが主人公達の堅実な情報収集パート。「ひらめき」や「偶然」から解決案が導き出されるのではなく、1件1件の地道すぎる物件調査・クライアントに対する深い理解やリサーチ・自分の足を使った実地探索を経ているからこそ、その成果として導きだされるたったひとつの最良の回答があるんですよね。本当に意味があるのか?と疑うような地道な仕事が成功に結びついていく展開が爽快でした。

お仕事小説としても面白かったけど、登場するキャラクターたちや彼らが織りなす人間関係も魅力的で。序盤は花が何者かにSNSでなりすましアカウントを作られて嫌がらせを受ける……という事件があって一度は会社をやめようとしたり、社内の誰も信用できない状態になるんですが、その期を経たからこそこれまでは表面上しか見えていなかった社員同士の信頼関係が見えてくる第二章が本当に良かった。メインである早乙女さんと花ちゃんの凸凹上司部下関係も好きなんけど、最初いけすかないやつとして登場したのに、なにかと同期の花のことをほっとけない光村君の存在が個人的にはめっちゃ好き。

お仕事モノではあるんだけど社内だけでなくてクライアントやライバル会社の社員・商店街のおじさんや元バイト先でお世話になっていたママやランチの時によく利用する中華料理屋の店員さんまで、ちょっとしたキャラでも個性たっぷりに描かれているのもとても楽しい。個人的に中華料理屋の陳さんがめちゃくちゃ良い味出してて好きなんですよね。主人公とは本当に殆ど縁のないキャラクターのはずなのに、この絶妙な個性の強さはずるいわ。


私はご都合主義な解決担当の王女である 5

 

王女権力で無双する―― これが正しい権力の使い方! 政略結婚回避ラブコメ第5弾!
クリフォードにかかった濡れ衣を晴らすため兄セリウスと城下視察に出た私――王女オクタヴィア。 実はこの視察、裏で王族暗殺計画が動いているオプション付き! 危険は百も承知で敵の正体を暴くべく揺さぶりをかけたところ、待っていたのは衝撃の結末だった――。 「何故、殿下は傷ついておられるのですか?」 再び、彼を頼ることになるなんて……!?

シル様襲撃事件の容疑者として投獄されたクリフォードの冤罪を晴らすため、お互いの従者を交換してセリウス王子と市政の視察に赴いたオクタヴィア。ところが、視察の裏では王族の命を狙う計画が動いていた…!?全てを白日のものとするため、囮として様々な揺さぶりを賭けていくオクタヴィアだが……。

セリウスとの兄妹関係が良かった

視察編決着。前巻から引き続き、冷戦状態でこれまではぶつかり合うだけだった兄王子との絡みが良かった。従者の横入りも入らず一緒に過ごす内に少しずつ以前はそうだったであろう、気のおけない関係性に近くなっていくのがたまらない。そしてそんな兄妹の仲の良い様子に正体不明の感情を抱くクリフォードの姿にニヤニヤしてしまった。

その反面、視察で明らかになった事実は色々と衝撃的なことばかりで。麻紀が知る「原作小説の世界」とは食い違っていく関係性や展開、予想外の所から出てきた襲撃の真犯人。父王の伴侶・エドガー様の実家で行われたやりとり、そして襲撃事件の裏にいたのは思いもよらぬ人物で……と、次々と明かされていく終盤の展開には思わず息を飲んでしまう。いや、かつてのセリウス王子って本当に妹のことを大切に思っていたんだな……もちろん「オクタヴィア」が「麻紀」になったことも大きな要因ではあるんでしょうし父王の様子から不穏なものを感じ取ったことはあるのでしょうが、麻紀のあずかりしらぬところで原作小説の展開を捻じ曲げてしまうくらいに彼女のことを大切に想っていたんだな……と思うと。

2巻の時も思ったんですが今回うっすらと明かされた王家の話も含めて、世界観の「ご都合主義」部分に塗り込められた創造神からの悪意が半端ないんですよね。今回のラストで明かされたセリウス王子の記憶を奪った張本人が本当にその人だとしたら、完全にオクタヴィアの心を折りに来てるじゃないですか。今後の展開が楽しみだけど不安しか無い。小説家になろうのあとがきによると次巻で第一章完みたいな展開らしいので、いろいろなことに決着が付きそうでとても楽しみです。面白いんだけど設定が複雑な割に進みが遅い物語なので早めに次巻出ると良いなあ……!!(あと最初の人物紹介の所もうちょっと拡充して欲しい4Pくらい使って欲しい)

そんな中で読者も若干忘れかけてたオクタヴィアの婿取り話がサラっと蒸し返されてて笑った。そして王女なのにばっさり斬られすぎててもう一回笑う。相手は王女なんだからもうちょっと手加減してあげて!!でも本編でこれだけイチャイチャしてるのにクリフォード以外の相手を婿取りするのはやっぱり無理がありますよ!!!(はよくっつけの旗を振りながら)


100日後に死ぬ悪役令嬢は毎日がとても楽しい。

 

「小説家になろう」で話題の「悪役令嬢」作品がGAノベルより刊行決定!! 大幅に加筆修正し、新規エピソードも掲載。
「100日後にきみは死ぬ」 公爵令嬢ルルーシェは神様から天啓を受けた。 ただでさえ婚約者の王太子殿下は他の女にうつつを抜かし、婚約破棄は目前と言われているのに……。 しかもその未来を知ったとて、ルルーシェの死は変えることができない。 だが、死に様やその影響は変えられる──そう教えられたルルーシェは神様に賭けを申し出る。 「わたくしの死に様が美しければ、褒美を下さい」 「いいよ。次の人生に望むモノを何でもあげる」 ルルーシェは残していく家族への支援や、己の死の裏で蠢く「陰謀」を止めようと行動するが──。 悔いのない優美な最期を迎えるため、神様すらも翻弄する、ルルーシェ最後の100日が始まる。

何者かに階段から突き落とされて意識を失った公爵令嬢ルルーシェは、神を名乗る存在から自分が100日後に婚約者の王子の手にかかって殺されることを告げられる。しかもその死を皮切りにして婚約者や家族、身近な人達も次々と悲惨な破滅を迎えるという。自分の死を変えることはできないが死後の未来を変えることは出来ると知った彼女は、未来を変えるため奔走するが……!?

「悪役令嬢もの」という概念の使い方が上手い

複数の感想ブログで絶賛されていて気になっていた作品なのですがとても良かった……!!自分がいなくなった後の未来を少しでも良くするために婚約者である王子の浮気相手の男爵令嬢を自分の跡継ぎとして教育し、引きこもっていた弟を外に引っ張り出し、浪費癖のついた両親に農業や料理といった新たな楽しみを教えて、暗殺者を止めるために剣術の訓練をして、夜は自分に未来を告げた『神』と夢の中でお話して……破滅の未来を変えるために一息吐く暇もなく動き回るルルーシェの生き様が鮮やかに描かれていました。それは決して彼女にとっては楽しいだけの道程ではなかったとおもうんだけど、物語の中を所狭しと動き回る姿がとても楽しそうで。

自分の感情を押し殺し、悪に徹することで物事を強引に推し進めていくルルーシェだが、その一方で少しずつ周囲の人々の本当の思惑が見えてくる。自分が婚約者に刺されるという未来の本当の状況、婚約者の王子サザンジールが自分の前でも「浮気相手」を連れ歩く理由、王子の弟ザフィルドの叶わぬ恋……ルルーシェも様々な誤解をしていたけれど、同じように読者である我々も気づかない間に同じような勘違いをしていて。真実が次々と明かされていく終盤に唸ってしまいましたし、読み終わってから最初に戻って一度読み直してしまった。たしかにそう言われてみるとそういう表現はされてなかったよなあ……!!

これはネタバレになってしまうかもしれないんですが最初にさりげなく使われた「まるで悪役令嬢だね」という言葉が色々と鍵になっていて……この物語本当に悪役令嬢という概念の使い方が上手。作中で言葉の意味を再定義させることでちょくちょく話題に登る「悪役令嬢なんて概念本当の乙女ゲームには存在しない」系反論をすり抜けていくし、その半面乙女ゲームの悪役令嬢という単語に付随する概念を物語の中に見事に取り入れてくる。まさしく彼女が悪役令嬢でなければいけなかった理由がしっかりあって……いや、ほんとネタバレにならない程度に、でも読んだ人には伝わる程度にこの話したいんだけどこれで伝わってる……!?

一方で何か、まだまだ世界観にさらなる真実が隠されていそうな……というかこれ実はゲームの世界でした系のどんでん返しが待っていそうな気がしてならないんですがこれは。『神』の名前の話とかルルーシェが何故か知っている指切り概念の話とか、ちょっと乙女ゲーム転生世界とかゲームの世界と現実が繋がってる話っぽい匂わせが複数あるんですよね。ルルーシェの残りの人生全てを賭けた未来改変は成功するのかも含め、次巻でどう決着が付くのか楽しみです。


Twitterのリンク用サムネをアイキャッチとは別に作成・設定したい

ずっとやりたいと思っていたんですが……twitterでURLを貼ったときに表示されるサムネをマ●ュマロとかn●teのデフォルトみたいな文字主体の画像にしたいという話。

今は書影の画像をアイキャッチに設定してそれがTwitterのサムネにもなるようにしてたんですが、感想記事はともかく、まとめ記事系は書影貼ってもインパクト薄くないですか…?個人的に記事タイトルをドカンと見せたほうが強い気がしてるんですが……。ブログのアクセス数を稼ぐことに関してそこまで強い執念はないのですが、まとめ記事って毎回無駄に時間がかかるので出来ればもう少しtwitterで引きを強くしたい。同人サイトのアクセスは諦めているけどこちらのアクセスはモチベのために一定数維持したい。人付き合いは苦手だけどそれはそれとして沢山RT・いいねが欲しい(自分に正直)ので出来ればツイッターに流れてきた時に「おっ」と言わせる感じにしたい。

【ステップ1】サムネ画像を作る

まずNoteやマシュマロがやってるんだからテンプレ画像に指定した文字を載せた画像を自動的に出力するシステムはおそらくある。そして多分Wordpressとかのプラグインとかもあるはず!!と検索してみたのですがみつからなかった。そもそもTwitterCardとかブログカードとかで検索するとブログ内でリンクにリンク先のサムネを拾って表示させるアレが出てくる。そうじゃない。PHPで画像に文字を載せること自体は出来るっぽいんですがやりかた知ってる人が居たらご一報下さい(絶対あるとおもうんだよな…!!!!!!!)

検索するとブログ更新をガチで頑張ってる人は1つ1つオシャレなサムネを作成して付けているようなのですが、とにかくこれ以上ブログ更新までの敷居を上げたくないのでPhotoshop等でサムネを1つ1つ作成する流れも遠慮したい。プラグインがない以上全自動での作成は難しそうだけど、せめてブラウザ内で完結させたい。

ここで思い浮かんだのがGoogle傘下の画像編集アプリ「Canva」に作成したテンプレート画像をアップし、文字の挿入位置などをざっくり決めて保存。それをテンプレートにして出力用の画像を作成・ダウンロードするという手段でした。土台は自分で適当にPhotoshopで800×418pxの画像を作成しました。


Canvaのテンプレートには「Twitter投稿用」という項目があるので、特にこだわりがなければこの辺から好きなテンプレを拾ってくると良いかとおもいます。(※「有料素材を含む」という記載のあるテンプレートは無料使用に制限がかかるので注意)


↑取りあえずこんな感じで作成完了!!(右下の本らしきなにかは自分で描いた)

【ステップ2】作ったサムネ画像をTwitterCardとして設定する

作成した画像を早速ブログ記事のアイキャッチに登録、TwitterCardに反映させてみる。文字が目立ってなかなか良い感じ……なんですが、アイキャッチが正方形サイズで固定されるブログの一覧ページでは見た目がとても残念な雰囲気に。サイト内のアイキャッチ、ほぼアイコンとしての使用なのでこっちはこれまで通りの書影がいいなあ……。



ここでカスタムフィールドに「twittercard」という要素を追加し、フィールドタイプを「画像」に設定(私は「Advanced Custom Fields」というプラグインでやってます)。このカスタムフィールドに要素が入っているときはTwitterCardのサムネを書き換えるように設定。Simplicity2では「header-twitter-card.php」「header-ogp.php」を編集すればOKでした。他のテーマだとheader.phpあたりにあるかも。

最後に、作成したカスタムフィールドの「手順」欄に作成したCanvaの編集リンクを載せる。


テンプレ右上の「共有」ボタンを押してメニューを出す→「リンクをコピー」か「テンプレートのリンク」をクリックして編集用のリンクを取得。「リンクをコピー」だとテンプレを直接編集、「テンプレートのリンク」だと最初に作ったテンプレを複製してそちらを編集する形。元テンプレを編集するのはなにかで事故った時にリスク高いな……と思ったのですがテンプレを無限に増やすのもなんか嫌だったのでテンプレを複製し、複製したテンプレを編集する形でリンクを作成しました。

完成!!


これで概ねやりたいことは出来たかなと思います。とりあえずまとめ記事とか雑記系はTwitterCardを別に作成する形で運用してみようとおもうんですが、余力があったら感想記事用のテンプレも別に作ってみたいですね。版元ドットコムさんから画像を引っ張ってきて、右側に書影・左側にタイトルとキャッチとか入れると引きが強くなるかも。

追記

そうか!OGP画像っていうのか〜!!!(そういえばTwitterでしか見方を確認してないので気にしてなかったけどOGPって項目があったね……)
「OGP画像 自動作成」で検索したらメッチャ出てきました。結構難易度高そうなので元気のある時にチェックしてみる……。

↑具体的な画像作成方法


↑どんなサムネが良いのかレイアウト面まで含めて


声優ラジオのウラオモテ #08 夕陽とやすみは負けられない?

 

「ねえ、佐藤」「なによ渡辺」「わたしたち、一緒に暮らさない?」
 『ティアラ☆スターズ』ライブの第一弾「ミラク」VS「アルタイル」が終了し、遂に乙女たち「アルフェッカ」に挑むことが決まった夕陽とやすみ。調子を取り戻した若手随一の人気声優・乙女に率いられて盤石な体制の「アルフェッカ」を前に、二人は一時休戦、協力して後輩の指導とチーム強化にあたることを決める。  しかしアイドル声優活動を疑問視する年上の新人・羽衣纏は、ライブへの注力に不満な様子。その姿を以前の自分と重ねた千佳は、ぎこちないながらも彼女と対話しようとするが――。

『ティアラ☆スターズ』ライブのサプライズゲスト・桜並木乙女に圧倒的な実力差を見せつけられた夕陽とやすみ。次のライブはそんな彼女が率いる「アルフェッカ」との対決で……なんとしても彼女に勝ちたいと闘志を燃やすふたりだが、ユニットメンバーであり年上の新人声優である羽衣纏が煮え切らない態度を見せる。彼女はアイドル声優としての活動そのものに否定的なようで……。

もうすっかり不仲が建前になってるんだよなぁ

どちらかというとふたりの「親友」「相棒」としての関係がクローズアップされてた回だと思うんですが、無理に対立する必要がないからか由美子から千佳への好意が基本的にダダモレだし、それを「あなたのそういうところ、本当に嫌い」で躱しながらも満更でもない顔の千佳にニヤニヤが止まりませんでした。いや、今回まじでことあるごとに千佳ちゃん「あなたのそういうところ〜」って言いすぎじゃなかったですか?もはや完全に好意を取り繕うのに使われてるんだよなあ。そんな流れから始まる一週間のお泊り合宿、新婚夫婦の仕草すぎて笑う。

メインとしては6巻で未解決のまま終わった羽衣纏の掘り下げが中心。「仕事用」ではない彼女の意外な素にはニヤニヤしてしまいましたけど、他の新人声優達と違い出だしが遅れてしまった彼女がアイドル声優活動をすることに対して感じる畏れは察して余りあるものがあり……そんな彼女に、不器用ながらも直球な夕陽が心を尽くして「どんな経験も役者として無駄にはならない」と伝えていく展開がとても良かったです。実際、彼女が内に抱える無理しすぎてしまうことへの畏れなんかは桜並木乙女の過労問題を解決した経験がなければ解く事ができなかったと思えて、回り道に見えたとしてもその経験は糧になっていると実感出来る展開も良かった。

その一方で、『ティアラ☆スターズ』での配役に自分たちの関係を重ねずにはいられない由美子は、アイドル声優活動に否定的な纏の言動を見てかつて彼女と同じ思いを抱いていた夕暮夕陽が現在のアイドル声優としての活動をどう感じているのか不安に感じ始める。彼女が現在の仕事のことをどう感じているかなんて、一番近くで見ていたやすみが一番よく理解しているはずなんですが……それでも実際に言葉にしてもらわないと不安な時ってあるよね。

夕陽がふと漏らした言葉によってその不安は加速し、なんとしてでも今回のライブでアルフェッカに勝ち、夕陽に「最高の景色」を見せようと意気込むやすみ。それでも、実力差は圧倒的で……焦りだけが空回りして少しずついつもの自分を保てなくなり、夕陽とも噛み合わなくなり……救いを求めるかのように自分が演じるキャラクター・レオンに感情移入していく彼女の姿が見ていて辛かった。

オタクくん生きてるーーー!?私死んでるーー!!!

……からのソシャゲの期間限定イベントのボイス再収録、そしてクライマックスのライブの流れ……もうここ、やすみと夕陽よりもライブを見ていたオタクのほうに感情移入せずにはいられない。レオン(※やすみのキャラ)のオタク、生きてる!?お前らライブでサイリウムちゃんと振れた!?私は感極まってサイリウム振るどころじゃなかった!!!隣に立ってたオタクに介護してもらわなきゃ……って思ったけどひとり参戦だった上に隣もレオンのオタクだったから誰も介護してくれなくて無言で崩れ落ちたし光る棒振るどころじゃなくて棒立ちでライブ見てたし中盤の演出に気付いてもう一回膝から崩れ落ちた(見てきたように幻覚の話をするオタク)……いやだってこんなの絶対耐えられないでしょ……めくる先輩よく最後まで平静保ってたよなこれ。

こういったライブって歌の上手さもダンスの上手さも確かに重要だけど、そんなことより「ここに確かにキャラクターが居る」とオタクたちに思わせることこそ重要、ホントそれなんですよね……だってこれはアイドルのライブじゃなくて「二次元アイドルコンテンツの声優ライブ」だから。あまりにも大正解で唸ってしまったし読んでいたら勝手に脳が架空の存在しないオタクになって幻覚を見てしまったので私はもうだめです。このシリーズ、割と「アイドル声優」としてのお仕事・「声優」としての演技のお話を別々にやってる印象だったんですが、アイドル声優としてのライブ演出を突き詰めた結果、一周回って声優としての演技力に話が戻ってくるのあまりにも完璧な帰結だし最高でした。これまでの7巻分の全ての物語があったからこそのこの結末で、文句なしに最高。

そしてライブでのやすみの演技を見た夕陽の反応がなにより最高ですよね自分で仕掛けておいてあのモノローグ…………この…このぉ…!!!二人はやっぱりこうでなくっちゃな!!!決め台詞とも言える「〜本当に嫌い」が最後に挿入されるのも最高で……イヤほんと、この作品アニメ化したら第一話から最終話までの夕陽役の声優の「あなたのそういうところ、本当に嫌い」の切り抜き比較動画を作って欲しい。第一話初回から今回のラストでどのくらい言葉のニュアンスが違うんですかって話で。もう公式が自ら切り抜き動画作るくらいの勢いでお願いします。改めましてアニメ化おめでとうございます!!!!!


VTuberのエンディング、買い取ります。

 
Tiv

『推し』の最期をプロデュースする救済と再生の物語――
VTuberアイドルグループ『星ヶ丘ハイスクール』所属の VTuber――夢叶乃亜。 彼女を推すことに青春の全てを捧げ、V界隈でも名を馳せていた高校生の苅部業は、乃亜の魂の醜態がネット上に晒され、大炎上したことで人生が一変する。 「おれはあの夜に死んだ……」 運営から推しの臨終を告げられ絶望した業は、高校を休学し一年後VTuberの炎上ネタを扱うブロガーとして日々を過ごしていた。 そんな業の元に『自分のVTuberを炎上させてほしい』という依頼を持ち込む美少女、小鴉海那が現れ――。 「これは人助け……いえ、VTuber助けみたいなものです」 『推し』の最期をプロデュースする救済と再生の物語。 第35回ファンタジア大賞〈大賞〉受賞作!

Vtuber・夢叶乃亜を推すことに青春の全てを掛けていた高校生・苅部業。V界隈でも有名人だった彼の人生は乃亜がリアルバレ・炎上からの活動終了に追い込まれたことで一変する。光のトップヲタからVtuberの炎上を扱う闇のブロガーに転身した彼のもとに、元同担の少女・小鴉海那からとある依頼が持ち込まれて……?

Vtuberオタク達のエンディングノート

面白かった。かつて推しを炎上で亡くした主人公が自らも「炎上」を駆使して依頼を受けたVtuberの最期をプロデュースする物語……であるのと同時に、「夢叶乃亜」を推していたオタク達が彼女によって付けられた心の空白に対してケリをつけるエンディングノート的な物語だったなと思います。

彼女の影を追い自らもVtuber界隈に飛び込む者、新しい「推し」を見つけた者、他のVtuberに彼女の姿を投影しようとする者。そんなかつての同志であったオタク達の未練に対して主人公が炎上という手段を用いて容赦なく「引導」を渡していく。「Vtuber」と「Vtuber推しのオタク」、両方が納得の出来る終わり方を水面下で模索していく展開にはどこか救いがあって。いやほんと、炎上からのコンテンツ終了、辛いもんな……好きという気持ちをSNSに吐き出すことすら難易度の高い行動になってしまうのが特にキツい……私はV界隈のオタクじゃないけど全然対岸の火事ではない……。

どのエピソードも良かったのですが、個人的には特に綾小路ねいこのエピソードが好きでした。年配のオタクであるキャップン氏が年若い主人公に対して少しだけ感じてしまう負い目・憧憬も良かったし、やろうとすればもっと直接的なつながりを作ることも出来たであろうにあんな形で推しと接する姿もとても良い。最近涙腺が脆いのでタクシーのくだりで全てを察して泣いてしまった。

全ての「推し」を持つオタクに読んで欲しい物語(クソデカ主語)

依頼を受けたVtuberを燃やしていくという手法はいろいろな意味で賛否両論あると思いますが、物語を読み進めていくにつれて主人公の真意と、彼自身もまた夢叶乃亜の欠落を埋めるために足掻き続けている姿が見えてくる。炎上ブログでの活動を通して彼女の復活が有り得ないことを誰よりも実感していて……それでも時折『乃亜ちゃんに会いたい』と独り言ちずにはいられない。そんな彼が「もうひとりの自分」ともいうべき存在と──そして自分自身の傷跡と対峙するクライマックスはとてもアツいものでしたし、いなくなった推しだけを一途に見つめてきた彼が、一途に自分を想い続けるヒロインの手によって引導を渡されてしまうラストがまた良かった。あらすじで書かれている通り救済の物語であると同時に「再生」の物語でもあったと思います。

Vtuberモノというより、推しがいる全てのオタクに読んで欲しい物語(※面白かったオタクが感極まって使うクソデカ主語表現)でした。特に好きなコンテンツの炎上に接したことのあるオタクならば、良くも悪くも刺さる作品ではないでしょうか。いや拒否反応出る可能性もありそうなので責任は持ちませんけど。

「夢叶乃亜推しオタク達の物語」としては1冊で完璧にまとまっていてとても満足感の高い一冊だったのですが、表題の「〜買い取ります」の部分を踏まえると物語としてはおそらくスタート地点に立ったところでしかないハズなんですよね。次巻にどう繋いでいくのかとても楽しみです。


魔術師クノンは見えている 3

 
Laruha

水魔術で空を飛び、水中で呼吸する――天才の魔術探究に常識は通じない!
魔術学園での商売を早くも軌道に乗せ、実力で三派閥同時在籍を勝ち取ったクノンは、各派閥の先輩と共同研究を開始! 特に水中での呼吸法の研究は、いつしか難破船の財宝探しへと話が広がり、ついには実地調査で海に飛び出すことに。特級の生徒なら海底だって散歩道! 巨大魚に襲われてもーー「大丈夫。水辺は僕の領域ですから」 使える魔術のレパートリーも倍に増え、ますます実力をつけた盲目の天才による、常識破りの魔術探求・第三弾

自分どころかクラスメイト達の金策まで軌道に乗せ、いよいよ本格的に魔術の研究を開始したクノン。3つの派閥に所属する先輩たちを巻き込んで共同研究を行ったり、海に眠る財宝を探しに行く羽目になったり、三級クラスの授業を受けて2つしかない魔術のレパートリーを増やそうとしたり、二級クラスの生徒達と模擬戦することになったり。そんな中で、教師のサーフからの依頼で二級クラスに赴いたクノンは魔術よりも派閥争いに興じる生徒たちを目の当たりにして……。

「オタクが好きなことしてるだけの話」が面白くないわけない

2巻は特級クラスの同級生達の話が中心となっていましたが、3巻は生活基盤を確保したクノンがいよいよ本格的に魔術研究に打ち出すお話で、下級クラスの生徒達から派閥の先輩・教師まであらゆる学園関係者を巻き込んで繰り広げられる物語が楽しかった!良くも悪くも今回は魔術研究のお話が中心で物語的には動きの少ない一冊とも言えるのですが、行動力の化身のようなオタク(クノン)が他のオタク(魔術師達)を片っ端から巻き込んでやりたいことが出来る環境で好きたい放題しているわけで、それが楽しくないわけないんだよなあ。

魔術師達が人によって様々な魔術特性・属性を持つのと同じように、クノンが出会った彼らが魔術に対していろいろなスタンスを持っているのも見えてくる。特級クラス内で話が収まっていた頃はなんだかんだいいつつ皆が同じ方向を見ていた感じがあったのですが、魔術にそこまでの興味を持たない三級クラス、貴族たちの派閥争いの縮図となっているニ級クラスの生徒達との邂逅・すれ違いがまた印象的で。大きな才能を内に秘めているのに魔術よりも将来の生活のほうが大事という彼ら彼女らに対して、家庭環境から根本的に違うクノンが説得することは難しく……という描写にはこちらまでもだもだしてしあうのですが、その裏ではクノンとの出会いを通してその生き様に影響されていく生徒たちも存在する。三級クラスの子達の話とか、なにげに今後の展開への種まきだったような気がしているので今後が楽しみだなあ。そして珍しい魔術があれば生徒たちを導く責務なんか投げ捨ててひとりの魔術師に戻って興奮してしまう教師陣達が大人気なくて好き。

その一方、学園の外では早くも学園でのクノンの活躍が話題になっており……いろいろな意味で次巻は話が動きそうで、楽しみですね。というかその話題の的になってる話、クノンが学園で一番最初にやったやつじゃないですか……ここからの活躍を知ったらどうなってしまうんだ。しかし守ろうと思ってた婚約者が予定を前倒ししまくって前に出てきてしまって慌てるミリカ殿下、まじで強く生きて欲しい。

ジオエリオンとの関係、美味しい!!!!!

これまで基本的に誤った紳士観の弊害で、女子しか眼中になかったクノンくんに男の影が…ヤッター!!ニ級クラスの派閥争いの中心にいる人物、「帝国の狂炎王子」ことジオエリオンとの出会いにめちゃくちゃテンション上がってしまった。水と炎、対称的でありながら似た者同士、出会った途端に最高の親友として、そして最高のライバルとしてお互いを認識している彼らのやりとりにニヤニヤが止まらない。出会ったばかりなのに妙にお互いへの解像度高いのも美味しいし、そしてやたらと距離が近いとか同性でよかったとか周囲からちょっとズレた心配されてるのに別の方向でもニヤニヤが止まらない。いやこれ次の巻ではバトルしてくれるんですかね?「焦がれて待とう」はズルいですって!!

いや〜これほんと絶妙に至近距離でありながら自分には関わり合いのないところでふたりのやりとりを観察してニヨニヨできるイルヒ、腐女子のベストポジションすぎてずるいな……「学園の壁になりたい」みたいな感覚で私もイルヒになりたい人生だった……。