うららの記事一覧 | ページ 8 | 今日もだらだら、読書日記。

うらら一覧

VTuberなんだが配信切り忘れたら伝説になってた8

 

淡雪から「あるもの」をもらったダガーの様子がおかしくなり!?
想像以上に"ライブオン"な五期生達がデビューし、さらなるカオスへと突入したライブオン。そんなある日、三期生の淡雪が配信企画を上手くこなせず落ち込むダガーを励ますため「あるもの」をこっそり渡した結果……

自称アンチ、自称記憶喪失、そして物カプゴリ推し宇宙人。個性豊かすぎる5期生を加えてますます騒がしくなったライブオン。ある日、各学年から代表者を選出してバレンタインチョコを作る……という企画で上手く振る舞えなかったと落ち込んでいるダガーちゃんを見かけた心音淡雪は、彼女を元気づけるためこっそり「とあるもの」を渡すのだが……?

スト◯ロとかいう伏線(合法)

5期生のダガーちゃんにスポットライトを当てた最新刊。あらすじでも伏せられてるけど何も伏せた意味がないこのプレゼント、何も知らないピュアな子を慰める目的でス◯ゼロ渡してるんじゃないですよ!アル中になったらどうするんですか!!いやまあもう淡雪さんのキャラが一貫してていいことだけどさ!!!

ダガーちゃん、「記憶喪失」というキャラクターと自身が持つ善良でピュアな性格があまり噛み合っていない印象があり、どう落とし込んでいくのかというのはかなり気になっていました。そもそも記憶喪失設定自体がダガーちゃんの自信のなさに由来する後付設定だったこともあり、「設定」として昇華するのがかなり辛そうな雰囲気もあり……もういっそ記憶喪失の設定とかなかったことにして仕切り直したほうが本人のためにも良くない??と思っていたんですが…………えっこのストゼロ伏線だったの!?結果としてダガーちゃんに自らの才能を自覚させ、更には記憶喪失という「設定」を「持ち芸」として昇華させるというパーフェクトな解決の仕方してるのすごすぎるんですけど、あまりにも解決までの流れがライブオンすぎるんよ……。

次巻は同じく5期生である宮内回の気配。自称「アンチライブオン」である彼女の設定も結構振る舞いの難しいキャラだな……という印象があったので、どう落とし込んでいくのか楽しみです。

配信的にはワードウルフ回が大変楽しかったんですが、ましろさんだんだん百合こじらせてきてませんか……?時々めちゃくちゃな女女間の執着感じるんですよね……。あと出番少なめキャラのカステラ回答回が楽しかったです。最近は全体的にライブオン内でのコラボ配信が中心になる機会が増えて、ちょっとしたゲーム実況回とかカステラ回答回とかあまり出てこなくなってしまってた気がするんですが、原点回帰感あってよかった。


バズれアリス 2 【追放聖女】応援(いいね)や祈り(スパチャ)が力になるので動画配信やってみます!【異世界⇒日本】

 

「聖女アリスの生配信」に新聖女がデビュー!?
追放先の迷宮で異世界――現代日本に繋がる鏡を発見し、レストランを営む青年・誠の協力で配信者デビューを果たした聖女アリス。念願の収益化を達成し配信者として絶好調な彼女のもとに、「地の聖女」セリーヌが訪れる。親友であるアリスの無事を喜び、一緒に邪智暴虐の王を倒そうと彼女に協力を求めるセリーヌ。しかしアリスが「動画配信で生きていく」と断ってしまい、口論の末に2人は互いの気持ちを吐き出し合う。その結果、セリーヌも配信者デビューをしたり、アリスの将来を賭けた「決闘」を配信したりすることになり……!? 「聖女」兼「配信者」がバズって戦う異文化交流コメディ、第2回配信開始!

難攻不落の迷宮に追放された聖女アリスは迷宮内で不思議な鏡をみつけて、異世界(現代の日本)で異世界系動画配信者としてデビュー。楽しい迷宮の仲間たち(?)と共にこの世の春を謳歌していた。チャンネルも収益化を果たして絶好調のアリスの元に、同じ聖女であり親友のセリーヌがやってくる。アリスが追放されたことに憤慨し、エヴァーン王国で革命を起こそうとするセリーヌ。その旗頭としてアリスを連れ戻したいセリーヌに対し、セリーヌを配信仲間に引き入れたい誠は迷宮攻略対決を持ちかけて……!?

シェフ・ラビットちゃんとかいう憑依系TS美少女があざとすぎる件

これまで通り異世界のアレコレに直接手出しを出来ない誠に代わってアリスがセリーヌと戦う展開……と思いきや、誠自身が異世界にバ美肉して新キャラとして戦うぜ!!という展開でひっくり返った。対決相手のセリーヌさんもしっかり配信者としてチャンネルを開設したりインスタグラマーとして活動開始して……と、物語的にもチャンネル的にも新キャラが大量追加で混沌としてきたシリーズ第二巻でした。

ていうかとにかく新キャラ(笑)のシェフ・ラビットちゃんの性癖盛り盛り具合がやばい。無機物憑依TS美少女という時点で相当一部オタクの性癖を直撃していそうで大変なわけですが、再生数を稼ぐためなら恥じらいなどいらん男のツボは男の俺が一番良く知っているが!!??とばかりに完璧な計算で男を殺すための最終兵器として爆誕してしまったのでリスナー達の性癖がおびやかされすぎる。個人的にはもうちょっと恥じらってくれたほうが良かったなぁ!!とも思うわけですがここまで恥じらいを捨てて媚び全振りしてるのはまた別の良さがありますね。

新キャラのセリーヌさんが初見優等生っぽいキャラから親友のアリスを前にして少しずつ素が出てくるところも良かったし、ランダの新たな一面も見れたのでそういう意味でも楽しかったです。新キャラ達に見せ場を食われた感のあるアリスも要所要所ではちゃんとヒロインしてるというか、誠が人形を媒介にしてとはいえ同じ世界にやってきたことで改めてお互いの関係性を意識する……という展開がしっかり盛り込まれていてここにきてメインヒロインとしての補強が行われた感ありました。触れ合えなうことができない2人がいつか手を取り合うため、改めて迷宮攻略を決意する展開がとても良かったです。

そんなヒロイン混戦状態の中で、セリーヌやラビット目当てで増えたフォロワー達をアリスのパワーに変えるために行われた「応援上映」回でニヤニヤ笑ってしまった。キャラクターグッズが光る棒なの面白すぎるし、なによりセリーヌさんの煽り方が完全に経験者のそれなんですけどどこでそんな文化知ったんですかねぇ!!

一筋縄ではいかない異世界事情が見えてきた

新キャラを加えてますます盛り上がるアリスの配信チャンネルですが、その一方で彼女が身を置く異世界の事情はそう簡単にはいかないようで……1巻時点でのエヴァーン帝国の言われようがあまりにもボロクソだったもので、基本的には今後登場しないかアリス達が楽しくやってる裏で勝手に自滅するか……くらいの雑なかませ犬くらいにしかおもってなかったんですが……今回の話を読むと相手は思った以上に狡猾だし、アリスが今後配信パワーをもりもり集めたとしても簡単に倒せる相手ではなさそうな気配。ていうかここまで強大な相手なら普通にアリスが生きてると知って潰しに来てもおかしくない気がしてくるな……。

改めて誠とアリスが共に居ることの覚悟を問われたり、ランダ──というか聖女や魔王の力の一端が明らかになったり、一方現代日本ではアリスのチャンネルの仕掛け人(誠)の正体に感づく者が現れたり……と、今後の展開への布石となるような伏線も盛り盛りな1冊でありました。今回提示された内容をふまえると今後結構シリアスな話に行ってもおかしくないけど、今後どうなっちゃうのかな。誠の店の今後についても(いまのところ配信活動は全くそちらに良い影響を与えていないので)気になる。続編を楽しみに待ちたいと思います。


え、社内システム全てワンオペしている私を解雇ですか?

 
icchi

社内システムをワンオペしていた佐藤愛は、 社長交代を機に解雇予告を受ける。 退職後、ファミレスでひとり悲しみに暮れていた愛は、 幼馴染の鈴木健太と再会する。 そして健太は彼女を自らのスタートアップに招待した。 相手の心に寄り添うために始めた事業、 その名も「真のプログラマ塾」。 佐藤愛の熱く、時に破天荒な講義で受講生たちは、 少しだけ前を向く。 ストレス社会で頑張る全ての人たちへ。 明日がちょっとだけ笑顔になれるお話です。

SEとして就職した会社がブラックで、日々の業務に疲弊していた佐藤愛。仕事を少しでも楽にするべく、オタク趣味(コスプレ)を心の拠り所にしながら同僚達と業務を自働化するシステムを作り上げてワンオペ業務をしていたが、それまで黙認されてきた社内でのコスプレが新しい社長の目に止まり、挙げ句『1人で回る仕事など本当に必要なのか?』と言われてリストラされてしまう。失意の中ファミレスでぐだを巻いていた彼女は幼馴染の起業家・鈴木健太と偶然再会。彼の立ち上げた「真のプログラマ塾」の講師として再出発することに……!?

現代社会を舞台にした追放→ざまぁ物

コミカライズが面白かったので手に取りました。高いプログラミング技術と高いカウンセリング能力を併せ持つ主人公が自分の才能(と趣味の両立)を認めてもらえる会社に転職して実力を発揮していく、一発逆転ストーリー。お仕事でストレスを抱えて塾を訪れた顧客の悩みを会社でコスプレをしているという一風変わった主人公が解決していく……という1話完結形式の物語なんですが、ただ技術面のサポートを行うだけではなくて自分と同じ視点に立ってメンタル部分なケアもしてくれるのが印象的でした。悩み事の内容も割りと全体的に社会人あるある系の話なので、共感しやすい内容だったかなと。

個人的に面白かったのが、プログラミング未経験者の俗に言う「子供部屋おじさん」にプログラミングを教える話。やる気のない人を顧客にしたくないという理由で「未経験者を客として取らない」としていた幼馴染・健太が顧客を切り捨てようとするのに真っ向から立ち向かう主人公の姿が頼もしかったし、努力が上手く噛み合わないまま社会という歯車からこぼれてしまった男性が主人公の導きによって再起していく……という展開もよかったけど、未経験者でもわかるプログラミングの基礎のお話がめちゃくちゃ面白かった!あとキャラクター的には百合ちゃんが良かったですね。「ツンデレちゃん」の渾名の示す通り、初登場時はツンツンしていた彼女が終盤ではすっかりデレデレになってるところかわいいかよ。

そして、各章の合間に主人公を手放した前社が業務回らなくなって破滅していく様子が描かれていくのが、現代を舞台にした「追放→ざまぁ物」のような読み味で面白い。社員を「数字」でしか見られない社長が最後まで会社が業務不全に陥ってしまった理由が理解できないまま破滅していくさまが痛快だったし、最初から最後までフォローのしようがない小物悪役ムーブなの大変良かった。内勤とはいえファーストインプレッションが「露出度の高いコスプレ姿で仕事している」だった主人公に新社長が色眼鏡掛けてしまう気持ちわからなくもなくはないし、「ひとりが対応できなくなったら機能不全に陥るようなシステムはそもそも駄目」みたいな弁もまぁ一理あるなと思うのですけど、主人公にワンオペで業務させてたのもストレスのあまり社内でコスプレしてたのも主人公に引き継ぎ用の資料すら作らせずに放逐したのもお前の会社なので……と思うと(その後の対応や主人公に行った報復行為などもひっくるめて)何も擁護出来ないんだよな……。

そんな前職社長がやぶれかぶれに実行した報復行為に現職の社運をかけたイベントを潰れされそうになり……八方塞がりの中でダメ元で呟いたSNSの口コミが前職/現職で築いた人脈を介して大きな炎上・ムーブメントへと発展していくクライマックスがまた良かった。思わぬつぶやきが影響の大きいインフルエンサーの目に止まって爆発的に拡散されるの、SNSあるあるだよなーと思いつつ、思わぬところから既知の人物にバトンが渡っていく展開には思わずニヤニヤしてしまう。

ちょっとほっこりできる平社員あるあると、現代を舞台にした追放・ざまぁ展開が大変楽しいお話でした。前社の話は流石に続けられないだろうけど、1話完結形式でどこまでも続けられるお話だなあと思うので末永く続いて欲しいな。


腹ペコ要塞は異世界で大戦艦が作りたい World of Sandbox

 

科学よ、これがファンタジー(理不尽)だ!
戦艦を作りたいのに、鉄が足りない! 気がつくと、SFゲームの拠点要塞ごと転生していた。しかも、ゲームで使っていた女性アバターの姿で。 周囲は見渡す限りの大海原、鉄がない、燃料がない、エネルギーもない、なにもない! いくらSF技術があっても、資源がなければ何も作れない。 だというのに、先住民は魔法なんてよく分からない技術を使っているし、科学の"か"の字も見当たらない。それに何より、栄養補給は点滴じゃなく、食事でしたい! これは超性能なのに甘えん坊な統括AIと共に、TS少女がファンタジー世界を生き抜く物語。

ふと気がつくと、前日までプレイしていたゲーム【ワールド・オブ・スペース】の拠点に転移していた主人公。しかも、ゲームで使用していた女性アバターの姿で!?拠点の統括AI《リンゴ》の頭脳を駆使して拠点を整備し生き残りを図るが、資源も食料もエネルギーも何もなしの状態。なにもかも手探りで周囲を探るところから始める羽目に……!?

モニターの外の侵略戦争

自分のやっていたSFゲームの拠点に異世界転移してしまった主人公が、何もない状態から拠点を整備し何もわからない異世界(ファンタジー)で生き残りを目指していく物語。なにもかもがわからないところからまずは自分たちの状況を把握して、最低限の栄養源を生産するところからはじめ、次第に食料を生産し、やがて資材を生産し、自分達のいる異世界の住民たちとの交流・貿易を図るために艦やユニットの生産に手を伸ばしていく。そして、貿易を行おうとした港町はある問題に悩んでいて……と、ゲームのチュートリアルからさいしょの村のクリアまでみたいな展開が面白かった!資源さえあれば何でも出来るハイテクを持ちながら、資源がないのでなにもできないというタイトル通りの「腹ペコ」具合もゲームの序盤っぽいし、ゲームが現実になってしまったせいで種族の詳細や生活設備の有無など元のゲームでは肉付けされていなかった部分が足りなくて躓いてしまうままならなさが面白い。こういうジャンルのゲームが好きな人にはめちゃくちゃ刺さるお話なんじゃないかと思う。

そして異世界交流的には、艦内で生産した資材を交易材料にして飴と鞭を上手く使って少しずつ現地民を自分達に依存させていく手腕が凄かった。1巻時点では比較的友好な姿勢を取っているのですが、もうこれ絶対にどっぷり依存させておいてジワジワと支配する流れですよねえ!現地民の方も自分達が依存「させられてること」に危機感を覚えつつ、ズブズブと深みにハマっていくこの感じ。そして主人公は最初から最後まで拠点の内部にいて、一連の出来事はモニターの向こうで淡々と進行していく。自分が当事者のはずなのに最後までゲーム感覚が抜けていない薄ら寒さというか、時折発揮される主人公の獣人少女好き設定とかも微笑ましく感じる反面ゲームと現実の区別がついてなさそうな感じがして薄ら寒いというか……。このまま順調に資源を稼いで版図を伸ばしていくのか、どこかで痛い目を見たりする方向性なのか続きが気になるシリーズ第一巻でありました。

というか主人公すら統括AIに少しずつ依存させられているというか「管理」されてる感が結構ある気がするんですよね。この統括AI、「甘えん坊」といわれているけどもっと変に主人公のこと拗らせてるというか……これ物語の進行によってはヤンデレ方向というか、後味の悪い展開もありそうで不穏だなぁ……

個人的にはこのジャンルのゲームへの造詣があまりないので元のゲームをうまく想像できない部分があり(わりと元になるゲームジャンルを「知ってる前提」で話が進んでいる気配を感じる)、同時に転移前の世界観や主人公自身に関する掘り下げが殆どないこともあって少しどういうスタンスで読めば良いのかわからない部分もちょくちょくあったので、その辺は今後もう少し掘り下げや言及があると良いなあと思いました。せっかく性転換している主人公なのにその辺の反応や描写が蛋白気味なのも勿体ない。ただ、この「血の通ってなさ」こそが味という感じもするのだけど……。


2022年読んで面白かったラノベ16選(11ヶ月遅れ)

「このラノ2024」TL見ていて去年のまとめ作ってないことを思い出した。

今見たら2022年まではギリギリ好きラノがあったのでもうそれで良かったのでは……??感があるのですが、確認したら年始にたたき台だけ作って途中まで記事書いて放置してたので完成させて出しておきます。多分ここから10選に削ろうと思ってたと思うんですが、今削ると完全に2023年を踏まえた作品群になるからそのまま出します……ここのところはこのラノの投票作を語る記事を同じ時期に出していたのでそれの亜種だと思ってください(このラノ投票しそこねましたの札を手に)。

来月か再来月くらいにまた似たような作品の語りしてるかもしれませんがみなかったことにしてほしい!

現代舞台

有象 利路「サキュバスとニート 〜やらないふたり〜」→感想
超健全(意味深)な異種族交流コメディ
エッチなことが大嫌いなサキュバスとワケあって絞り殺されたい(物理)主人公が繰り広げる異種族交流系コメディ。びっくりするほどエロい展開はなにもないし主人公の悪友が一番主人公への感情を拗らせてるまであった。ギャグとシリアスの緩急がある話が大好きな人におすすめ。
夏目 純白「純白と黄金」→感想
これは「ヤンキー」という名の現代異能バトル
表紙から真面目な不良物・スタイリッシュなヤンキーテリトリーバトルを想像してしまうのですが私はヤンキーがヤンキー(オーラ)出して吹き飛ぶみたいな展開大好きなので手叩いて喜んだそうな。超真面目に変なことしてる話、「シリアスな笑い」が好きな人に。男同士のクソデカ感情もあるにはあるよ。
コイル「オタク同僚と偽装結婚した結果、毎日がメッチャ楽しいんだけど!3」→感想
感情の名前が変わっても変わらない距離感が最高
偽装結婚をきっかけに同居を始めたジャンルの違うオタク男女ふたりが人生の岐路もどんな苦難も「あなたと一緒なら楽しい!」と前向きに乗り越えていく物語。本当の恋人になっても、子供が出来ても変わらぬ距離感がとても良かった!オタク同士の上質な生活を楽しみたい方へ。

ファンタジー・異世界

鏡 貴也「大伝説の勇者の伝説1 行く先未定の大逃亡」→感想
「悪魔」と「英雄」と「勇者」と「ニンゲン」達のものがたり
2021年年末からずっと読み進めてきた「伝勇伝」シリーズ、なんとか2022年中盤で読み切る事ができました。「大伝」になってからはほんと、全世界を股にかけた戦記物としてもめちゃくちゃ面白かったし、何よりライナとシオンとフェリスを中心にした人間関係の変化がたまらなく面白かったです。来春から完結編の連載がスタートするとのことで、読むなら今しかない!!
南野 海風「魔術師クノンは見えている」→感想
ひょっとして魔術師と書いて「オタク」と読むのではないだろうか
盲目の主人公が視力を得るため魔術を究めようとする……というとシリアスで重たいお話みたいなのですが、その辺の話は序盤で乗り越えてあとはひたすら前向きに魔術探求に打ち込んでいくお話です。架空の魔術設定談義とか極まったオタクが集まってなにかする話が好きな人におすすめ!
楽山「俺の召喚獣、死んでる」→感想
動かない召喚獣、どうやって動かす?
なぜか伝説の大魔獣の「死体」を召喚してしまった主人公が、学園内でのチームバトルを勝ち抜くため自らの召喚獣の使い道を模索する。様々な試行錯誤がとにかく楽しいし、何より主人公チームを中心とした学生同士のワチャワチャが楽しかった。魔術探求×青春×頭脳バトル×ラブコメが好きな人へ!
夏海 公司「はじまりの町がはじまらない」→感想
サービス終了目前のMMORPGを舞台にしたテコイレ劇!
意思を持ったMMORPGのNPC達が、自分たちの世界の終焉(サービス終了)を食い止めるため必死にテコ入れを行う。NPCであるからこその様々な制約を上手くくぐり抜けていく展開が楽しいし、なにより主人公である町長オトマルとその秘書官パブリナの掛け合いがおもしろかった。サ終の思い出を持っている全ての人へ!
新 八角「チルドレン・オブ・リヴァイアサン 怪物が生まれた日」→感想
「もしも」の日本を舞台にした、少年少女たちの生存闘争
2011年に大地震……ではなく、海から来た魔物の襲撃を受けた日本。喪失の痛みと戦いながらもそれぞれの事情から死んだ海獣の殻を身に纏う少年少女達。過酷な世情の中で、海に導かれるように人間をやめていってしまう主人公の姿が印象的でした。人型決戦兵器とかそういうの好きな人に!(直球)
二丸 修一「君はこの「悪【ボク】」をどう裁くのだろうか?」→感想
異世界で繰り広げられる親友だった少年達の殺し合い
殺人衝動を持つ主人公と行き過ぎた正義感を持つその親友。無二の親友だったふたりはとある事件をきっかけに対立し、その対立は異世界をも飲み込んでいく──。主人公ふたりの咽返るような濃厚な執着と対立が最高でした。男男親友同士のクソデカ感情バトルが好きな人は読んでください。

悪役令嬢

雨傘 ヒョウゴ「強制的に悪役令嬢にされていたのでまずはおかゆを食べようと思います。」→感想
虐げられた悪役令嬢による、努力と根性の逆転劇
悪役令嬢が乙女ゲームの破滅フラグをひっくり返すお話……なんですが、乙女ゲーム自体に多くの謎が仕込まれていてそれを紐解いていく設定が大変おもしろかった。なにより、歩くのもままならない主人公がタイトル通り「おかゆを食べる所から」地道にはじめる逆転劇がめちゃくちゃ良かったです。
福留 しゅん「残り一日で破滅フラグ全部へし折ります ざまぁRTA記録24Hr.」→感想
24時間で状況をひっくり返す、スピード感が気持ちいい!
タイトル通りのお話なんだけど、タイトル通りに24時間以内で状況を完全にひっくり返すというスピード感、爽快感がめちゃくちゃ良かった!続編となる2巻は色々な意味で書籍だけでは完結しないお話なので頼むからアルファポリスに掲載されている間章を一緒に読んでほしい。1巻は強いヒロイン、2巻は綱渡りのようなハラハラする逆転劇が読みたい方へ。
マチバリ「まだ間に合う!明日処刑される悪役令嬢ですけど、スチル回収だけはさせてください!」→感想
割と真面目にミステリーやってるんですよね
タイトルが完全に出オチなんだけど、読めば読むほど深まっていく謎とその謎を解き明かしていく展開が楽しかった!オタク系異世界転生ラブコメと破滅フラグ回避とミステリーという要素が奇蹟のマリアージュを奏でてたし、大団円なラストが大変好みでした。乙女ゲーム悪役令嬢モノのいろんな要素を美味しく摂取したい人へ!

Vtuber

小路 燦「VTuberのマイクに転身したら、推しが借金まみれのクズだった」→感想
憑依から始まる推しVtuberとの奇妙な相棒関係
何故か推しVtuberが配信を始めると彼女の使用しているマイクに意識が乗り移るようになってしまった主人公のお話。オンライン・オフラインそれぞれから推しをサポートする、奇妙な相棒関係(一方的)が面白かった。憑依モノ好きな人のご意見をききたい。
塗田 一帆「鈴波アミを待っています」→感想
強火ファンから見た「推し」の姿ってこんなにも美しいんだ
流星のように現れ、そして消えたひとりのVtuberと彼女の影を追い続けるオタクの主人公。色々な意味でファンとしての粋を大きく逸脱した行動が痛々しくもあるけど、彼の目線から映る「推し」の姿はあまりにも美しくて、良かったです。最高の景色を見たい人に。
とくめい「アラサーがVTuberになった話。」→感想
炎上してもめげない。だって元ブラック社畜だからね。
デビュー時の悲しい事件(※自分のせいではない)がきっかけで、Vtuberとしてデビューした途端に炎上してしまった主人公が元ブラック企業の社畜として培った強メンタルで炎上などなんのそのと伸し上がって……のしあがらないがどっこい生きてるお話。Vとして伸し上がらない話、少なくても2022年時点ではめちゃくちゃ貴重だったな……。
烏丸 英「Vtuberってめんどくせえ!」→感想
炎上!ネットの闇!!男性Vモノはなぜ燃えるのか!!!
男Vtuberだというだけで不当に叩かれまくっていた主人公に同期デビューの女性Vtuberが接近してきて……というところから始まる炎上騒動とその顛末。自分を変えるために一生懸命頑張るヒロインと、彼女を守るためなら自分が泥をかぶっても構わないと強大なネットに闇に対して啖呵を切る主人公の少年漫画的なムーブが大変良かった。こんなんリアルでやられたら惚れてまうやろ……こっちは炎上をバネにのし上がる話です。


ゆるコワ! 〜無敵のJKが心霊スポットに凸しまくる〜

 

最強女子高生、桜井梨沙と、腹黒残念美人、茅野循が贈るとびきりの怖い話!
「私たちも部活で青春をしてみるっていうのはどうかしら?」 最強女子高生の桜井梨沙は、悪魔的頭脳を持つ残念美人の茅野循に誘われ、 オカルト研究会を結成することに。 活動内容は心霊スポットを探索し、調査結果を会報にまとめること。 早速病院の廃墟に向かうが……。 呪いの神社、最凶事故物件、そして「カカショニ」。 ヒトコワ、呪い、都市伝説もどんとこい!  ゾクゾク怖くてスカッと爽快、最強女子高生ふたりの快進撃!

元柔道部の女子高生・桜井梨沙は悪魔的頭脳を持つ友人・茅野循に誘われてふたりきりのオカルト研究会を発足させる。校内に拠点が欲しいだけの研究会、真面目に活動する気など微塵もなかったがひょんなことから過去の研究会で発行された冊子を目にして興味を惹かれ、心霊スポットと名高いとある廃病院に向かう……。

最強女子高生コンビが無双する系ホラー!!(隠し味は百合の味)

軽い気持ちでオカルト研究会を立ち上げたふたりが気になる心霊スポットに突撃取材(概ね無許可)してオカルトやそこに救う人間の悪意と遭遇・対決。好奇心を満たしまくるお話。色々な意味で我が道を行く主役の女子高生コンビがサクサク事件を解決してしまうのであまり怖くなく、ホラーが苦手な人でも楽しめるお話でした。

人間怖い系の話かとおもえばオカルトだったり、オカルトかとおもえば人間怖い系の話だったり……というジャンルの幅の広さも良かった。頭の良い循が周囲を翻弄し、危険な状況は梨沙の体術で対抗する……という感じで基本的に対人間であればおおむね敵なしで安心して見ていられるのが色々な意味で強みだと思うんですが、何割かの確率で相手がオカルトなのでいい感じに安心しきれない感じになっているの良い。ただし、頭脳や体術だけでなくメンタルも普通に強いし頭が良いので多少呪われてても呪いそのものを解決してしまい案外なんとかなってしまう。第三話の「亡者の家」とか、最強だと思われていたふたりが本物の霊を引いてしまってガチで呪われる……というお話なんですが、様子がおかしくなりつつも家族やプロの霊能力者を巻き込みしぶとく立ち回る姿が強すぎて笑ってしまうし、最終的には状況を楽しみながら自分たちで霊障を解決してしまうという展開がめちゃくちゃ心強かったです。

なにより個人的に好きだったのが、女子高生ふたりの関係性が透けて見える第二話の「黒津神社」。丑の刻参りが流行していると噂の神社を調査していたら梨沙の名前が書かれた藁人形を発見してしまい……というお話なんだけど、藁人形を作った犯人を梨沙には気づかれないように探し出し、このへんだとアタリをつけてジワジワと悪魔のような冷酷さで追い詰めていく循の執念が凄い。隠しきれない循→梨沙へのクソデカ感情が最高に良かったし、絶妙に後味の悪い結末もいかにもなホラーで良かったです。なんていうか、少女漫画誌の夏休みの付録についてくるホラー小冊子のような後味の悪さだったなと……(アラサー以上元女児じゃないと伝わらなさそうな表現)(今の少女漫画雑誌って夏のホラー冊子の付録ってあります!?)

その一方で、エピローグで描かれる梨沙→循への感情も大変に良かった。色々な意味で好意がわかりにくい不器用な女・循の伝わりにくい気遣いをしっかり理解してそんな彼女を好ましく思いつつもそれとは全く別のところで彼女とともに過ごす時間そのものを「楽しんで」いる梨沙の姿が印象的でした。それはそれとして例の2話の顛末はもう藁人形が見つかった初手からずっと梨沙には内緒にされてるのでアレなんですが……いやでも梨沙なら余裕で循の肩を持つと思うので無問題かもしれない!?

各編が短めにまとまっていてホラー苦手民でも楽しく読めて、更に主人公2人の関係性でニヤニヤ出来てしまうとても楽しいお話でした。いくらでも続きを作れそうな部活物、というか実際Web連載版ではもっともっと先があるようなので続刊にも期待したいです。


組織の宿敵と結婚したらめちゃ甘い

 

昨日の敵は、今日の妻。夫婦として生きる異能力者達の甘々ホームコメディ!
「……大っ嫌い!」 「奇遇だな。おれもだ」  かつて敵対する異能力者の組織に属し、反目し合う目的のために抗争を繰り広げていた二人。  《羽根狩り》の異名を持つ犀川狼士(さいがわろうし)と、《白魔》と呼ばれる最強の異能力者・柳良律花(なぎらりつか)。  血で血を洗う毎日を過ごし、まともな社会経験のない二人だったが…… 「ろうくん、大好きっ」 「俺もだよ、律花」  組織解散後はなぜかイチャコラ付き合った上に結婚していた!  憎さ余って可愛さ100倍? いまや、毎朝会社に行く際に玄関で「いってらっしゃい」のチューをするくらいバカップルを地で行く夫婦。  だが夫にはただひとつだけ悩みがあった。  それは、妻と一度も寝床を共にしたことがないということ……要するに彼は既婚者なのにいまだ童貞であったのだ!  これはそんな夫が数々のトラブルに巻き込まれながらも、  身持ちのお堅い妻との愛を深めるため、今日も必死にアプローチを続ける艱難辛苦の物語である。

かつて《異能狩り》と呼ばれていた少年と最強の異能力者と呼ばれていた少女。《濡れ羽の聖女》《落とし羽》を巡る血で血を洗う闘争から十年──かつて宿敵同士として命をとりあっていたふたりは結婚し、すっかりバカップルとなっていた!?かつて《異能狩り》と呼ばれた男・犀川狼士にとって目下一番の悩みは、妻・律花との性交渉が未だないことで……。

イチャイチャラブコメは異能バトルのあとで

異能バトルの主人公&ヒロインの10年後を描くラブコメ。理解のある上司(主人公の元上官)や親友(ヒロインの元戦友)、妻の兄(シスコン)、飼い猫(異能持ち)……と、そこかしこにかつての異能バトルの痕跡を残しまくりつつもそんなものは知ったこっちゃねえとばかりにイチャイチャしたり夫婦生活のアレコレに頭をなやませたりイチャイチャしたり夫の後輩に嫉妬したりイチャイチャしたり童貞を卒業するために策を巡らせたりイチャイチャしたりする展開がとても楽しかった!章間にかつての異能バトル時代のふたりの様子が描写されていくのですがそちらとの温度差で毎回風邪引きそうになる。

そんなわけで基本的には異能バトルとは名ばかりのイチャイチャ夫婦生活ラブコメなのですが、物語を読んでいくうちに少しずつ不穏な気配が2人に忍び寄ってくる。《濡れ羽の聖女》の完全消滅を持って終結したはずの異能力者と無能力者の戦い。戦いは本当に終わりを告げたのか?律花が頑なに狼士と寝床を共にする事を拒む理由とは?彼女が能力を使う際の代償とは……そしてクライマックスで満を持して現れる、過去からの刺客。狼士は愛する妻と平穏な家庭生活を取り戻すため、一度は捨てたはずの武器を再び握る。かつてのような戦いの日々を再び望む「敵」に対して「平穏な日常こそが本当の戦いだ」と訴える展開が大変良かったです。

最近流行りのラブコメ系は近年ずっと避けて通ってきててかなり腰が重くなっていたのですが、こちらは現代異能バトルが好きだからこそ刺さるタイプの戦後系ラブコメ(コメディ強め)でめちゃくちゃ楽しかったです!あとさりげなく著者の前作と世界観のつながりを感じる小ネタの数々にニヤニヤしてしまった。突然始まる懐かしの野球回に大草原不可避だし、どこかで見たことあるようなババアやコンビニ店長に笑ってしまう。いや、例のコンビニ懐かしい……そこでアルバイトするの、どう考えても異能バトルよりも過酷なので敵さんにおかれましては強く生きて欲しい。


ロクでなし魔術講師と禁忌教典24

 

そして今、禁忌教典の真実が語られる――
メルガリウスの天空城での決戦を超え、アルザーノ帝国は救われた。だがグレンは帰ってこなかった。彼のため、残された人間たちは立ち上がる。一方無限にも続く《無垢なる闇》との戦いの中でグレンが出会ったのは――

メルガリウスの天空城を舞台にした死闘は幕を閉じ、世界に平和が戻った。かつてのような平和な日常を送るシスティーナたち。しかし、そこにグレンの姿はなかった。一方、あらゆる並行世界を渡り歩きただ独り《無垢なる闇》との戦いを続けるグレンは、ひとりの少年と出会い───

前半の救いの無さが酷い

シリーズ完結編。いやあの本当に、《無垢なる闇》とグレンの終わらない戦いを描く前半戦がしんどかった。予想はできていたけど本当にしんどかった……。相手がいかに強大で無茶苦茶な存在なのかということ以上に、グレンの旅の結末が前巻の時点でそれとなく語られていて、その通りの悲劇的な結末に向かって突き進んでいくのがわかってしまうの本当に絶望しか無い。ていうか追想日誌1巻からずっと謎だったグレンが幼い頃の記憶を失った理由とその経緯、いくらなんでもえげつなさすぎじゃないですか?????いやあとほんとうに今回、カラー口絵の出し方がえげつないよな……(システィーナの口絵で希望を持たせておいて次のページであの変わり果てたグレンの口絵だすのあまりにも人の心がないんですよ……)。

とにかく絶望しかない前半、並行世界で出会った謎の少年・ジャスティンとの奇妙な二人旅が色々な意味で唯一の癒やしなんですが、その癒やしも完全にその後落とすための伏線でしかないので更にしんどいし、システィーナと並ぶグレンの「もう一人の愛弟子」であった彼が前巻でああいう終わり方を迎えたのも、この結末を迎えるために必要だったとしても本当に寂しい話なんだよな……。

完璧を超えた最高のエンディングだった

一方、無限とも言える闘いをグレンが繰り広げている間にシスティーナを中心にしたアルザーノの人々はグレンを救うために奔走する。ジャティスから託された遺産を完成させ、絶望の輪廻に囚われたグレンと全ての元凶である《無垢なる闇》を再び目の前に引きずり出すために。絶望の底から一気にひっくり返される展開が急すぎて一瞬混乱したのですが、よく考えればアルザーノでの最終決戦で活躍していた町の人々(短編集の面々)のエピソードとか、この展開をやるための布石だったんだろうなあと納得。彼らの誰もがグレンと関わることで影響されて、これまで踏み出せなかった一歩を踏み出していって……そしてそれは並行世界を超えて高須九郎や少年ジャスティンへ、そして魔王フェロードやジャティス=ロウファンをも引き込んでいったんだなと。

今こそ明かされる「禁忌教典」の真実。最後の目的を果たすために人々の想いが一つになっていって……もう笑っちゃうくらいのクソデカ元気玉っぷりに笑ってしまうんですが、その奇蹟を生み出すためにジャティスの頭脳と魔術を持ってしても五億年以上もの気の遠くなるような試行錯誤があったんだとすると本当に………しかし改めて退場したはずなのに霊圧高すぎるんだよなぁこの人!!!!!!!失敗したパターンどれもリアルに想像できすぎてしんどすぎるし、本当にこの結末を導き出した彼が孤独に退場していくのしんどすぎるというかそれはそうとアルベルトの背中を撃つグレン世界線は正直ちょっとみたい(迫真)

そこかしこで懐かしの第一巻を彷彿させるクライマックス、もう間違いなく序盤を意識しているであろう台詞回しの数々でガッツリ泣かされてしまった。登場人物たちみんな絶対幸せにしてくれると信じていたけど、予想を更に超えた幸せエンディングだったしもう色々とずるい。それとなく語られる登場人物たちのその後の姿にもニヤニヤが止まらなくて最高でした。本当にお疲れ様でした。楽しかったーーー!!!!!(それはそれとしてもう1〜2冊くらいは短編集でお目にかかりたいですよろしくお願いします!!!)


ロクでなし魔術講師と禁忌教典23

 

迷い込んだ夢の世界。 ここから抜け出す唯一の方法は――
ジャティスとの最終決戦の最中、グレンが迷い込んだのはセラが生き、セラと共に生きているifの世界。優しく暖かい世界の中で、グレンが下した決断とは!?  そして禁忌教典をめぐる戦いに決着が訪れる――!?

ジャティスとの最終決戦でそれぞれにとって都合の良い「もしもの世界」に誘われてしまったグレン達。すぐに現実に戻ってきたシスティーナ達とは対象的に、グレンだけは夢の世界から戻ってこなかった。「もしもあの時セラが死ななかったら」というもしもの世界に迷い込んでしまったグレンはセラと祝言を挙げるため彼女の故郷を訪れており──果たして無事に夢の世界から帰還し、教え子たちと共にジャティスとの因縁に決着を付けることが出来るのか!?

最後の最後で投下された情報が多すぎる

完結目前にしてグレンがこれまで向き合うことができなかったセラの死と向き合い、彼女を乗り越えて先に進んでいこうとするお話。ジャティス仕込みの「なんでもあり」な「もしも」の世界──現実に限りなく近い演算世界だからこそ起こりうる、死者達との会話がとてもよかった。突然命を落とすことになったセラに関する様々な無念を晴らすことができたというのがあまりにも大きいけど、本編読者である我々としてはもうセリカの再登場が色々とズルいんだよなあーーーーー。

そこからの復活したグレンを加えたジャティスとの最終決戦。これまで教え子たちを導く立場でありながらも自らも大いに迷い続けてきたグレンが自分自身の進む道を決めて強大な「正義」に立ち向かうのめちゃくちゃ良かったんですけど、当のラスボスであるはずのジャティスがもう完全にヒロインみたいなムーブしてるの面白いな。自分でやっておきながらグレンの復活で誰よりも喜んでるの面白すぎるし今回一番ヒロインしてたのってひょっとしてシスティーナでもセラでもなくて彼だったのではないでしょうか。グレンに対するジャティスの存在強度が強すぎるんだよな……。

果たしてジャティスとの決着は着いたもののめちゃくちゃ24巻に続いたし、その終わり方があんまりすぎてめちゃくちゃこちらの情緒をメチャクチャにして行った……。24巻が出るのは知ってたし23巻発売前から公開されている24巻のあらすじの時点でただグレン達の勝利で綺麗に終わるわけではないことは全然知ってたわけですけど……だからってここで終わるなんてそんなことってある!?

魔王フェロードやジャティスすらも恐れさせた、そんな彼らすらも乗り越えてきたグレン達ですら打倒することが叶わない最大の敵。しょっぱなでしれっと示唆されていたジャティスの過去──彼を「狂える正義」へと駆り立てた少年時代の初期衝動とそこに登場するグレンと思しき「正義の魔法使い」とその末路。そしてトドメとばかりに不吉すぎるラストのシスティーナの独白。思った以上に明かされた情報に救いがなさすぎて、たった一ヶ月だけど続きが待てなくて発狂する。いえねこの記事が公開された翌日には読めますけど発売日当日に新刊読み終わってしばらく発狂してた。

最後の最後で投下された情報量が多すぎて(しかも結局グレンやジャティスに関する本質情報は明かされないまま最終巻に突入なんだよなあ)本当にどうなる最終巻!!!!!!


【悲報】お嬢様系底辺ダンジョン配信者、配信切り忘れに気づかず同業者をボコってしまう〜けど相手が若手最強の迷惑系配信者だったらしくアホほどバズって伝説になってますわ!?〜

 

チンピラお嬢様、爆誕ですわ!
「はぁ、今日も視聴者0、登録者3……。向いてないのかしら、わたくし……」 ドレス姿でダンジョン攻略するお嬢様系配信者、山田カリン(16)。 しかし動画は伸びず、一年たっても底辺をさまよっている。 そんなある日、カリンはダンジョン下層で妙な男を発見する。 「そんじゃいまから爆破すっからな?」 その手には国が禁じる危険物質が―― 「なにやってんだてめぇオラアアアアアアア!」 「ぐはぁぁぁっ!?」 迷惑系配信者をボコったカリンは、チンピラお嬢様として人気に火が付いて……!?  おハーブすぎるダンジョン無双バズ、開幕ですわ!

世界中にダンジョンが出現し、ダンジョン探索者が「職業」として市民権を得た世界。16歳の山田カリンはとあるアニメのキャラクターに憧れてお嬢様言葉にドレス姿で優雅にダンジョン探索を行うというのをコンセプトにダンジョン探索配信を始める。だが動画再生数も登録者数も全く伸びず、たまに視聴者が来ればなぜかフェイク映像を疑われるばかり。ある日、ダンジョン探索の帰り道に違法なアイテムを使ってダンジョンの壁を爆破しようとしている探索者を発見してその場の勢いでボコってしまったのだが、それをきっかけにして彼女は「有名迷惑系配信者を成敗したチンピラお嬢様」としてネットに名を馳せていくことに……!!

現実は二次元より奇なり

序盤は「冴えない底辺配信者で探索者な山田カリン」としての視点から始まっていて、そこからボコった迷惑系配信者のリスナー達やネットの民・匿名掲示板のユーザー達の視点を通すことで「実はこの子とんでもない実力者じゃない……?」と見せていく構成がめちゃくちゃ丁寧で面白かった。ずっとソロプレイだったので比較対象がいなくて自分の能力を凄いと思っていなかったとか、迷宮内の素材を持ち帰ってないので繋がりが出来ず探索者達にも存在を認識されていなかったとか、あまりにもやってることが規格外すぎて配信を見た人もフェイク映像だと思ってスルーしていた……とかとか、トンデモな設定を成り立たせるための肉付けが全力で行われていて説得力が凄いしトンデモ設定だけど違和感がなくて、まさしく現実は二次元より奇なりな展開になっている。未成年が素材を持ち帰れない理由とかありそうすぎて唸ってしまった。

そんなこんなで自分の実力に対して完全無自覚なカリンお嬢様(中身は苦学生)が迷惑系探索者をボコったことで存在を一般認知され……バズで付いたリスナーを掴むために「いつも通りの配信」をやってみたらとんでもない規格外ぶりにみんな困惑&ダンジョン攻略動画の情報量としても規格外すぎて界隈が阿鼻叫喚、という展開がとにかく楽しい。基本的にはカリン側の視点とコメント欄(彼女の配信を見ている視聴者達)の視点で物語が綴られていくんだけど、カリンお嬢様のお嬢様言葉や元ネタに合わせてどんどんコメント欄にもお嬢様言葉が広まっていったりして会話が先鋭化していくのとかかつての2chやYoutubeのコメント欄あるあるすぎておハーブ生えちらかした。動画配信モノらしいテンポの良いコメント欄からのツッコミと、その中で繰り広げられるカリンお嬢様の規格外な無自覚無双プレイがめちゃくちゃ楽しかった!タイトルから感じる荒っぽさとは裏腹に、とにかく最初から最後まで楽しく安心して笑えるコメディになっているのめちゃくちゃ好き。

今回は結局カリンの持つスキルの正体などにはほぼ触れられず「いつもの迷宮探索配信」を見せただけの1巻だったので(でもそのただ配信をしただけの1巻がこんなに面白いのでズルい)、今後深堀りしたらどんな話が飛び出してくるのか気になりすぎる。おハーブ育てながら次巻をまとうと思います。