ミソラを庇って重症を負い、更に呪力を暴走させ《狂乱》状態になってしまったカナタ。治療のため《ベベル》第一人工空島地下都市に運ばれ……そこでベベルの教皇アンネローゼと自身の身に宿る呪力が形を取った女性・エミリーに出会う。呪力の暴走を抑えるために3日以内にエミリーを殺さなければいけないと言われるが、カナタはエミリー自身に興味を持ち……!?
色々な問題が解決するパワーアップ回!(ただし展開はますます不穏)
教え子達と別行動となったカナタが一時「教官」をお休みして持て余し気味だった自身の《呪力》と向き合うお話。6巻に引き続きメチャクチャ面白かった……!!1巻からずっと持ち続けてきた自身の問題を克服するパワーアップ回でした。教官としてのカナタは一旦お休み……と言いながらも、やっていたことは瀕死だったカナタの命を繋ぎ止めて呪力を託した女性・エミリーと向き合い、生きるのを諦めかけていたその本当の望みを気づかせ/暴くという展開で、序盤はほぼほぼいつもミソラ達に課してる「特訓」と同じ流れなんだよなあ。そもそも幼馴染のクロエや特務小隊の後輩・ユーリも彼がきっかけで大きな成長を果たすことが出来たみたいな話がありましたし、もう根本的に生き様がこうなんだろうなと。その割に言葉が足りないのは毎度どうしたものかなんですが!
どう足掻いても3日の生命しか保証されていないエミリーに自身が本当はもっと生きたいと思っているという望みを自覚させるのは残酷とも言えるのでは……と思ったけれど、そこからお互いに全力でぶつかりあうことで両方が存続できる未来を模索していく展開はアツかったです。ただ、今回は結果的に最高の形でことが運んだけれども、生命を救われた相手だからといって彼女の望みのためであれば生命をいともたやすく投げ出してしまえるカナタの精神性にはこれまでとは違った形で危うさを感じてしまいました。これから戦いの規模もますます大きくなっていきそうだし、どうなっていくのか楽しみな一方でめちゃくちゃ不安になる顛末でもあった。
呪力を宿したことで発生していた魔力枯渇の問題を遂に解決し、人間の魔力でも魔甲蟲の呪力でもない《冥力》、そして魔力と冥力の先にある《絶力》──他の誰も持ち得ない絶大な力を獲得したカナタ。覚醒したカナタが前巻で苦しめられたエリスを相手に無双する展開は大変に胸躍る展開だったのですが、敵側もそのカナタの戦闘力を遥かに凌駕する強敵を用意してお待ちしてるの一筋縄ではいかなさすぎる。都市を大きく巻き込みながらの戦いもカナタとしては本意ではないでしょうし、色々な意味でただパワーアップして大勝利では終わらない展開が印象的でした。というか今回力を課してくれたアンネローゼ教皇の一派も味方とは言いづらいし、人類最高の能力を獲得してしまったということはカナタを巡る争いも今後は更に激化していくだろうと考えるとむしろ不穏しかないんだよな。絶力を使う代償の話も……というか先の巻のあらすじがしれっとネタバレしていくのは如何なものか!!!(今巻読んでて感じた不安的中してるじゃん!なんでだよォ!!)
人の身として最高と呼ばれる絶大な力を手に入れ、それでも世界を救う勇者ではなく落ちこぼれ小隊の教官として元の居場所に戻っていくカナタの姿が大変に良かったです。色々横道に逸れた感じはあったけど次巻こそは舞台を「空戦武踏祭」に戻していくようで、こちらの展開もどうなっているのか。もう色々不穏しかないけど続きが楽しみ!