うららの記事一覧 | ページ 121 | 今日もだらだら、読書日記。

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「ライトノベルのSF化」の話が、10年以上前のラノベに載ってた。

最近発売された「オタク成金」という本であかほりさとる氏のラノベ論がいろいろなところで話題を読んでいるようなのですが、現在絶賛再読中の「セイバーマリオネットJ」6巻と7巻の後書きに、作家を目指している人への苦言のような形で今回話題になっている部分とほぼ同じようなラノベ論が展開されていたので、需要があるかどうかわかりませんが紹介してみます。

「Half Moon Diary」さんの記事で引用されている部分では「ライトノベルのSF化」の項目にあたる部分なのですが、10年以上前に同じ問題について危惧を声明していた、というのはいろいろな意味で面白いかなあと。自分は「オタク成金」を読んでいないので的外れかもしれませんが、こちらはあかほり氏本人が自らの筆で書いた文章なので、興味のある人は読んでみると良いかもしれませんっていうかむしろ皆に「セイバーマリオネットJ」読めばいいと思う。(←これは単純に私が好きだからという話なので、「挿絵的にハードル高いよ!」とかその辺の話はまあ……確かにそうですねすいません。)

あかほり作品にしては珍しく完結してるし、下半分がメモ帳で読みやすいから12冊あっても安心ですよ!

次に思うのは、その作品がマニアックすぎるということです。彼らの前提にはこういう考え方があります。
「これはファンタジー小説だから」
僕などは登場人物がカタカナならファンタジー小説、などとたわけたことを言っている人間です。ここまでは極端としても、ファンタジーの知識がなくともそういう小説に触れる人間もいるでしょう。それなのに、高度なファンタジーの知識(またはSFの知識)が必要な小説を書いてきて「これなあに?」と僕がたずねると、「そんなことも知らないんですか」というような顔をする。おそらく彼からすればこのぐらいの知識は当然持っていなければならないんでしょう。もし、読者に対してもそういうスタンスだとすれば彼が認められる事はないでしょう。そういうものがやりたければ同人誌をやっていればよろしい。
(中略)
今、述べた事と同じく、もう一つは作品をやたらと小難しくする人が多いのも気になります。精神観念の世界をやたらと持ち出して、そればかりを強調する。わからないという人間は、やっぱり切り捨ててしまう。


そういった小説を否定する理由として

僕らの仕事の対象は子供です。子供にわかってもらえなければどうにもなりません。たとえば知っている人間からすればたるく感じる描写も子供のためには絶対必要なのです。そのことがわからなければ、この世界でプロを名乗ることはできません。
(中略)
エンターテインメント精神がまるでないのです。はっきり言いましょう。ヤングアダルト・ノベルズはエンターテインメントの世界です。サービス精神がなければ読者には喜んでもらえません。そう、“喜んでもらう”のです。決して、“教えてあげる”“わからせてやる”ではないのです。


40人のうち本を読まない35人が読める小説を云々という表現と言ってる事はほぼ同じだと思いますが、個人的にはこちらの表現の方がしっくりくるなあと思いました。まあただ、この辺は現在のラノベ読者層と当時のヤングアダルトノベルズの読者層って結構変わってると思うんで、ほぼ同じ主張をしてること自体はちょっとアレなのかもしれない。

彼らが例に出すのは必ず『新世紀エヴァンゲリオン』です。
「だってエヴァは……」
僕はそういうとき言ってしまいます。あなたと庵野さん(エヴァンゲリオン監督の庵野英明氏)ではレベルが違うよ、と。(中略)エヴァンゲリオンはちゃんとエンターテインメントをやってます。(中略)作品の中でも予告でちゃんと言ってるじゃありませんか。「サービス、サービス」と。

(以上、『セイバーマリオネットJ 6.乙女の奇跡・in・チャイナ』226P)


エヴァがあたえた影響って本当に大きかったんだろうなあ…と思った部分。
エヴァ前後で主流となる作品の雰囲気が変わった、というのはなんとなく学生時代に感じた記憶があります。欝でぐだぐだ悩む主人公があの頃を境に一気に増えたよね!とか。

このあと、巻を挟んで7巻の後書きでこのラノベ論に対する反応に対して反応。

前回、ボクが「高度なファンタジーの知識がなければ理解できない物語はだめ」と書いたところ、「そういう作品でももの凄く売れているものはある!」という指摘を何通かもらいました。

これに対する答えは“対象”というものを考えてほしいということです。すなわち、対象年齢、その売るべき本の対象となる趣味の持ち主——という意味での“対象”です。
極端な話、作家が一つの世界観、もしくはその作家の持ち味というものを確立し、明らかに自分の読者がそういった高度なファンタジー知識を要求する作品を求めているときはいくらでもそういうものを書いていいのです。それが作家の売りであり、それによって作家は自らの地位を確保するわけですから。ただ、そういった作家になるまでが大変なのです。

(『セイバーマリオネットJ 7.乙女心と秋の日々』207P)


つまり現在のラノベ界でいうと「K上稔さんだからしょうがない」とかそういう話ですか。「AHEAD」シリーズ以降のとっつきにくさはかなり半端ないと思いますが、確かにデビュー作の「パンツァーポリス1935」は結構読みやすかったし、段々ハードルを上げていったんだろうなあと想いをはせてみたり。

1巻の最初ウン十ページに設定資料集がついててニヤリとするのが川上稔ファンのたしなみだよね!(酷いオチ)


女帝・龍凰院麟音の初恋3

[著]風見 周 [絵]水月 悠

悠太と付き合っている事が発覚して以来、麟音の元には交際を求める男子生徒が殺到。そして悠太は嫉妬に燃える男子生徒達から追い掛け回される日々を送っていた。そんなある日、麟音のピンチを颯爽と救ったのは、彼女の執筆している小説の主人公“カケル”にそっくりなイケメン・天王子翔。彼はかつて悠太によって婚約を破棄された麟音のもと許婚で…
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世間知らずで”自称・非モテ”貧乳お嬢様・龍凰院麟音と巨乳至上主義の非モテ男子・悠太が恋人ごっこを繰り広げるラブコメ第3弾。今回は麟音の元許婚・翔があらわれて悠太に勝負を挑むというお話。メイドvs執事のマジバトルもあるよ!!一迅社文庫の公式ブログで「カバーめくったカラーページ1P目が凄い」とか書いてあったけど、「これのどこが…?」とか思った私はひめぱらに毒されすぎでしょうか。

今回はいつも以上に2chネタやパロネタ多かったような…男子生徒たちが「女帝は俺の嫁」って言いながら襲ってきたり、ボクシング部の主将が「麟音たんを開放するお!」って言い出したときには思わず噴出した。そして良いシーンで「この長い生徒会坂を…」とか出てきて決壊した!!良い意味でも悪い意味でも「やりすぎ感」を感じて、それがこの作品の魅力といえば魅力なんだろうなあ…西尾維新の「化物語」的、趣味でうっかり突き抜けちゃいました感が結構楽しい。

しかしそろそろ悠太は自分の置かれてる状態に気付くべきというか、ある意味不自然なまでの鈍感さにもどかしいものを感じなくもなかったりします。というか、「気付いてないから」というのを盾に、完璧な麟音と美麗の二股状態に突入してるのがちょっとなぁ……“気付いてない”では済ませることと済ませないことがあるよ!悠太が麟音に惹かれているのをある程度認識した上で麟音を助けようとする悠太に手を貸す美麗の姿なんか、ちょっと切ないものがある。

二人三脚の下りや今回のクライマックスなど、普通にかっこいい姿も見せてくれるだけに、そろそろこの辺で自分の気持ちが本当はどちらに向いてるかを認識してほしいです。でも、悠太かっこいいよ悠太とか思ってたら、オチが色々酷かった。いやどこまでも基準は“おっぱい”かよ!!!という意味で酷かった。いや、良い意味でどこまでも「おっぱい好き」を貫く主人公という意味ではよかったというべきなのか……

それにしても噛みまくりつつテンプレ通りのセリフを量産する麟音、お嬢様らしいプライドの高さが邪魔してなかなか本当のことが言えない美麗、そして天然で本心に気付いてなくて対麟音専用ツンデレ状態の悠太。麟音も悠太も美麗もどんだけツンデレなんだよ!

次の巻からは美麗お嬢様のラブコメ本格参戦+新ヒロインを加えた四角関係なお話?悠太もなんだかんだいって麟音への気持ちが育ち始めている感じなので、次でその気持ちがどのような意味を持ってくるのか、ちょっと楽しみ。そしてそろそろ二股状態からは脱却してほしいなあ……

ところで、創平の女装姿に挿絵がないのはなぜですか。
いやむしろあそこは創平よりも悠太が女装すべk……ゲフンゲフン。


運命のタロット3 《運命の輪》よ、まわれ!

[著]皆川 ゆか [絵]乱魔 猫吉

唯の計らいで学生寮の懇親会に参加することになったライコ。ところが、懇親会の最中に片桐先輩の部屋から不吉な物音と叫び声が聞こえてきた。不吉な予感と共に片桐先輩の部屋に向かうライコと《魔法使い》だが、部屋の周囲は霊格の高いものに反応するという強力な結界で覆われていて……
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運命のタロット〈3〉「運命の輪」よ、まわれ! (講談社X文庫—ティーンズハート) (文庫)
色々な人から「運タロは3巻で一気に雰囲気変わるよ!とりあえず3巻まで読むべきだよ!」って言われたけど確かにその通りだった!というわけで“改変”が成立して本格的に物語が動き出すシリーズ第三弾。

“改変”によって具体的に何が起こるかは2巻後書きで示唆されてましたが(しかしやっぱりあそこでバラすのは色々と反則だと思うのですが!!)、具体的に誰が…というあたりで散々ヤキモキする羽目に。粗筋とか展開とか、明らかにあの人っぽいよなー、でもこれだけ露骨に誘導されると実はミスリードで他の人が……とか考え込んでたら普通に考えすぎだったというオチだった。

そんなわけで、身近な人間の死に触れてようやく尻に火がついたライコが、片桐先輩を巻き込む事件の実行犯である《恋人たち》の協力者を探す事になるわけですが、もうライコ以外全員怪しく見えてくるから困る!!そもそも恋人たちの協力者には、彼らに協力しているという自覚が無いわけで、《魔法使い》やライコに対する態度から絞っていくわけにもいかず…うーん、ほんとなやましい。

次辺りでとりあえず《恋人たち》にまつわる事件解決かな?と期待しつつ、このペースだともうちょっと巻数使いそうかなあ…とか。もうちょっと物語のペースが速いと嬉しいんだけどなあ。面白いんだけど、もどかしく感じることが多々。

ところで全然本筋に関係ありませんが、あとがきやら本文やらの単語が色々時代を感じさせて、感慨深かったです。中森明菜がデビューしたての新人って描写されてたり、パソコンがPC98だったり……


運命のタロット2 《恋人たち》は眠らない

[著]皆川 ゆか [絵]乱魔 猫吉

なしくずしに《魔法使い》の協力者にされてしまい、虚空に喋ってるヘンな娘みたいになってしまうわ《虫》に襲われて覆面姿で空を飛ぶハメになるわ、片桐先輩の親衛隊の目の敵にされるわ…もう大変なライコ。その上《恋人たち》が《魔法使い》とライコに戦いを挑んできて!?
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運命のタロット〈2〉「恋人たち」は眠らない (講談社X文庫—ティーンズハート) (文庫)
シリーズ第二巻。前巻ラストで《恋人たち》が動き出して、ようやく物語が動き出したよ!と思ったら再び学園内のゴタゴタ話になってしまってとても肩透かしくらいました。《恋人たち》の正体を探るため動き出すのかと思ったらライコはすっかりそんなこと忘れて学園生活に舞い戻ってしまうし…うおお、話が、話が進まないのがもどかしい…!!

とはいえ、学校の方でも親衛隊が露骨にライコを敵視し始めたり、『第二新聞部』なる組織と新聞部が「謎の空飛ぶ覆面美少女(=ライコ)」の正体を暴く対決とかはじめてしまったり、と大分しっちゃかめっちゃか。どのトラブルも全く解決の糸口が見えてこないのがひたすらもどかしいです。ライコ、片桐先輩にきゅんきゅんハートマーク飛ばしてる場合じゃないよ!あと佐倉がホモにしか見えません。

終盤で《恋人たち》がようやく本格的に《魔法使い》との対決姿勢を見せて、見届け人の《運命の輪》が意味深な発言をしたり……とようやく(今度こそ?!)物語が本格的に動き出しそうな気配。とりあえず3巻で何が起きるのかとても楽しみで……


「あとがき」が3巻で何起きるのか思いっきりネタバレしてるのはアリなんですかこれ!


らのさい!

[著]羅漢連 [絵]色んな人

とあるライトノベルサイトを立ち上げた新人ブロガー・平カズ。彼を取り巻く先輩や同期のサイト管理人たちは、驚くことにみんな美少女だった!——人間じゃないけど!!怖い炎上に荒れるブクマ。そんな時に限ってふぁぼられるちょっとした失言!刺激いっぱいのラノベサイト生活、キミも一緒にはじめてみない?
ほんとに出ちゃったよ!!!

とか思ってたら更に午前中に完売したとか聞いて二度びっくりというかマジでこの超身内ネタ本をどなたが買われていたのか戦々恐々なこの同人誌。私も4コマ1本と挿絵1枚ほど参加させてもらったので「同人活動」カテゴリに入れておきます。うん、間違ってない。というわけで、「連合」とか言うとかっこいいけど実際は変態的な会話を繰り広げていたりするだけともっぱらの噂のラ管連を萌えキャラにしちゃおうぜ!という末恐ろしい同人誌。

どんなに変態的な発言をしていても、グラフィックやしぐさが「萌えキャラ」であれば普通に可愛く思えてしまう、という恐ろしいトラップが発動してるのが色々凄いと思いました。というか皆、絶妙なブレンドで「中の人」と「中の人の萌え要素」が融合してるなあ、と。誰に萌えたとか誰が可愛かったとかは今後のラ管連の未来に差し障りそうだから言いませんが!

以下、一言ずつ各作品の感想↓
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運命のタロット1 《魔法使い》にお願い?

 

憧れの片桐先輩に憧れて…という些か不純な理由で新聞部に入ったライコこと水元頼子は、20年間封鎖されていた資料館に取材として入る事に。そこでタロットカードを1枚だけ発見したのだが、家に帰ってみるとその《魔法使い》のタロットカードの大精霊と名乗る謎の美形が現れる。どうやらタロットカードの封印をといてしまったらしくて…!?

ついったーの少女小説読みの間で何故か「見守る部」が出来るほどの再読ブームな「運命のタロット」シリーズ。実は中学生時代に自分内少女小説全盛期が来てた際にずっと気になってて、結局ご縁がなくて手を出せなかったシリーズだったことを思い出して今更集め始めてみました。…んで、古本屋に行く度にこそこそと運タロを探す日々が続いたのですが、むしろ「ティーンズハート」そのものがめったにないよ!!昔投売りされてた小林深雪とか折原みととか花井愛子すらないよ!!!キャンパス文庫やスーパーファンタジーはちょろちょろあるのに!マジでびっくりしました!!

まあそれはとにかく、ひょんなことから魔法のタロットカード?らしきものの封印を解いてしまった女子高生・ライコのお話。ぶっちゃけ物語は導入というか「さあこれからだぞ!」ってところで終わってしまうので評価不能な感じなのですが……もうちょっと物語の全体像が明かされてもよかったんじゃないかなあ、とか思わなくもなかったり。「その後面白くなる!」って聞いてなかったら色々とキツイものがあったかも……

ていうか何より、ハートマークとか()表現によるセルフツッコミとか状況解説とか、先ほど読んだ「セイバーマリオネットJ」の擬音表現改行連発とは別の意味でいろいろ、なつかしかった。自分がハマった当初の正しい「ライト」少女小説臭がプンプンした。“(しくしく)”とか、昔良く使ったなあ!フォントサイズ弄りはないけど極太ゴシック体による強調表現懐かしいなあ!!とか。

とりあえずラストで敵っぽいキャラクターが現れて、2巻からようやく物語が本格始動しそうな予感なので、続きを楽しみにしたいと思います。


セイバーマリオネットJ 2.乙女のパワーで超勝利!

[著]あかほりさとる [絵]ことぶきつかさ

ライム・チェリー・ブラッドベリーの3人のセイバーマリオネット達と共に、ゲルマニアの侵攻を食い止めた小樽達は、お祭り大好きなジャポネスっ子たちから喝采を持って迎えられる。一方、小樽たちに敗れたセクサドールズ達はファウストに見捨てられ、決死の思いでジャポネスに向かっていた。同じ頃ゲルマニアのファウストは乙女回路を上回るパワーを持つ“女帝回路”を開発していて…
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シリーズ第二弾。ゲルマニアの侵攻を食い止めた小樽とセイバーマリオネット達に、復讐に燃えるセクサドールズとファウストが生み出した新型マリオネットの魔手が迫る、というお話。

色々違いはあるけどアニメとの最大の違いは、ここでティーゲル達が仲間になるということ。アニメ版でどんなに虐げられてもボロボロになってもファウストの事を愛し続けて最終的にはその凍りついた心を溶かしてしまったティーゲルの母性愛には感動しましたが、今思うとここから先、小樽とファウスト二人の間で延々と鬩ぎ合い続ける3人の事を考えるとどちらも同じくらいに厳しい道だなあとか。アニメよりも原作の方が若干大人向けの題材を選んでいるような気がしますね。エピローグで、長屋に戻ったらしれっと花形をこきつかって居座ってる3人がとても素敵。

あと、「ジャポネスガー」の燃えっぷりはいろいろな意味でアニメの方が圧倒的だと思うのですが、こちらのジャポネスガーは二段変形時の展開がヤバイ。ある意味、あのジャポネス城の復活シーンは是非動かしてほしかったような!今読むと必殺技の元ネタとかうっかり理解できちゃって爆笑してしまいました。そして玉三郎と梅幸はのかっこよさは異常。脳内で川村万梨阿&折笠愛ボイスがよみがえってとてもニヤニヤしますよ!!

3巻は各キャラクターに的を絞った短編集。この辺りから大分ストーリーうろ覚えなので、読むのが楽しみです。一度手放してしまったのでまず古本屋で持ってないところ漁らないと読めないんだけどねえ!!


セイバーマリオネットJ 1.これが噂の乙女回路

 

地球からの移民の際に起こった事故により6人の男だけが生き残り、クローン技術によって人口を増やしてきた惑星・テラツー。“女性”は人間を摸した機械・マリオネットの中にその形を残すのみとなり男同士が愛し合う事が普通となったテラツーに暮らす少年・間宮小樽はひょんな事から感情を持つマリオネット達を目覚めさせて…!?

Twitterやらなにやらで語っていたらふと読みたくなって再読。男性しかいない惑星に住む少年・間宮小樽が“乙女回路”という人間に近い感情と強力なポテンシャルを持つマリオネット達を目覚めさせ、独裁国家ゲルマニアの侵略から祖国ジャポネスを護る事になるというお話。

中学生で初めて読んだ時はかなり衝撃が大きかったのですが、今読んでもやはりこの巻のファウスト&セクサドールズのやりとりがエロい。直接的な描写もエロい挿絵も殆どないけど、実に淫靡な雰囲気が漂ってます。しばらく、シリーズタイトルのアルファベット(“SMガールズ”)はそのまんまのイミだと信じ込んでた私です。

とにかくギャグとシリアスとエロの切り替えが絶妙で、さっきまでシリアスやってたと思ったら次の瞬間にはギャグで落としてくるような目まぐるしさがなんか好き。特に顕著なのがクライマックスで小樽達がゲルマニアの中央コンピューターを破壊しようとするシーンで、絶体絶命の大ピンチ!から漫才コントばりに緊張感のないやりとりが繰り広げられる展開が大好きでした。

しかし、改めて再読してみると他のラノベと比べても群を抜いて「軽い」な。内容がないという印象はあまりないのに、ちょっと文字が詰まった漫画とほぼ同ペースで読み切れてしまった事が再読して一番強い印象だったり。あと花形のセリフが片っぱしからリアルに子安武人声で再生されてしまい、とても困りました。


シックス・ボルト

 

異星人から突然の「宣戦布告」を受けた人類は彼らの指定したとおりに子供達を戦士として育て、戦争に備えた。そして2015年、日本で初めての戦地として楯岡市の高校が選ばれるが、戦場に赴いた556人の学生達がそこで見たのは想像を超えた凄惨なもので…

Twitterで「暗黒ラノベ」として話題になっていて、懐かしくなったので引っ張り出して再読。否応なしに異星人との戦いに巻き込まれた高校生達が、異星人たちから与えられた強化装甲服に身を包み、「絶滅戦争」と呼ばれる凄惨な戦いに身を投じていくというお話です。

戦争に駆り出された生徒達は、生まれた頃からその戦いのために訓練を受けてきたという経緯はあるもののあくまでどこにでもいるような普通の高校生たちで、そんな彼らがなすすべもなく志半ばで倒れていくのが凄惨さを掻き立てます。死んでも生前と同じ記憶を持ったクローン達が彼らに取って代わるので「事実上誰も死なない」という設定になっているのが逆に悪趣味に感じる。クローニングで“生き返った”としても、当人にとってはやはりその自分が自分自身であるとはいえないわけで……。

そもそも対抗するための武器からしても異星人が用意したもので、彼らに逆らった人間たちの末路も明確に提示されており、とにかく最初から最後まで異星人の手の上で踊らされているような閉塞感が息苦しい。一応この巻で行われる楯岡市での戦闘自体は「勝利」という形になっているのですが、それすらも彼らによって掴まされた勝利という印象が否めず、とにかくすっきりしない。ラストの終わり方も消してハッピーエンドとは言えず、「名目上死者0人」の戦闘が残した傷跡がどれだけ大きかったかをはっきり胸に残していきます。

異星人達の“攻撃”がまた、酷く悪趣味で……人間の生理的嫌悪感に働きかけるような気色悪さがあります。一方で、敵の生み出す“蒼”が奇妙な美しさをかもしだしていたり。序盤でルールを破って滅ぼされた街の描写や、少しずつ楯岡市の日常を彼らの“蒼”が侵食していく描写は、何年も忘れられない程のインパクトがありました。

物語は一応3巻まで出てますが、結局イマイチ異星人側の思惑が判らなかったのは残念…というか、覚えてる限り、結構いろいろと微妙な終わり方をしたような記憶が。第二部完、という形で締めくくられているけどさすがに続編は無理かなあ。1巻と2巻の刊行にかなりの間があいたので、よもや…とか思わなくもないのですが。

生与剥奪権を謎の存在に握られて、限定条件で戦闘という名の「ゲーム」をやらされるというコンセプト自体は最近のラノベだと「扉の外」に近いものがあるかも。あちらは極限状況に追い込まれた人間同士の醜い感情をまざまざと見せ付けられるような気味の悪さがウリでしたが、こちらはとにかく人間が感じる生理的嫌悪感を限界まで追求したような印象が。「落ちてない、落ちてないよ!」な3巻ラストも共通点といえば共通点か(いえ、「扉の外」のほうがまだ落ちてましたが…)

「扉の外」が好きだった人にはオススメかも?


4840237174扉の外 (電撃文庫)
土橋真二郎、白身魚
メディアワークス 2007-02

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“文学少女”見習いの、初戀。

[著]野村 美月 [絵]竹岡 美穂

中学を卒業し4月から通う聖条学園にふらりと足を運んだ日坂菜乃。彼女は校庭で一人、誰も居ない正門に向かって寂しそうな声を上げる一人の少年の姿を偶然目にし、恋に落ちる。高校に入学した菜乃はその先輩を追いかけて文芸部に入部するが、その先輩?井上心葉先輩には忘れられない女性が居て…
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自称“文学少女見習い”の文芸部一年・日坂菜乃を中心に、新たなキャラクターと3年生に進級した心葉達が織り成す、もうひとりの“文学少女”の物語。

遠子先輩の文学薀蓄のない“文学少女”シリーズなんて…!!と思ったのですが、巧みに各キャラクター達の立ち位置を入れ替えて、これまでの良い部分を殆ど引き継いだ上で新しい物語が展開されていくのが嬉しかった。ちょっとだけ新しい文芸部の雰囲気や、なんだかんだと変わらないレギュラーメンバーの姿にニヤニヤしました。つたないながらも破天荒な三題話を作ったり、遠子先輩とは一味違う、彼女自身の感覚で読んだ本の“味”を表現しようとする菜乃に対して、すっかりつれない態度の心葉が可愛らしい。最初の短編ではやたらと笑顔が爽やかな先輩になってしまっていてびっくりしましたが、すぐにいつも通りのツンデレコノハちゃんになってくれて安心した!!!

初代“文学少女”から物語の探偵役を引き継いだもののまだまだ未熟な部分も多い心葉の推理を、そこを直感型な菜乃の“想像”が補っていくという構図が、これまでの“文学少女”にはない部分で面白かったです。遠子先輩とはまるで違うのに、どこか彼女と同じ雰囲気を持つ菜乃の姿を見ていると、「頑張れ!」と素直に応援してあげたくなってきます。まあ心葉くんは遠子先輩の嫁だけど!(※違います)

「もうちょっとだけ続きます」という言葉通り、そんなに長く続くことなく終わるのかもしれませんが、新しい立ち位置や新しいキャラクターたちがおりなす物語の数々がとても楽しみ。次巻では今回出てこなかったヤンデレ女王千愛ちゃんや流人くんも出てくれるといいなぁ。

しかし、物語本編も間違いなく、文句なしに面白かったのですが正直、最後の最後で美羽様に全て持っていかれた気がしてならない。いつのまにかななせとメル友になってる美羽様!心葉君の所有欲と嫉妬心丸出しな美羽様!!遠子先輩をめっちゃライバル視してる美羽様!!!芥川君に不意打ちくらう美羽様!!!!(※超重要ポイント)