うららの記事一覧 | ページ 123 | 今日もだらだら、読書日記。

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なんて素敵にジャパネスク

 

名門貴族の娘である瑠璃姫は幼少のころ吉野で出会った初恋の相手・吉野君の事が忘れられず、生涯結婚しないことを胸に誓っていた。ところが口うるさい父親が次から次へとお見合い話を持ってきて、閉口する毎日。そんなある日、権少将が吉野君と親しかったと聞いて話を聞こうと出向いたら、それは彼女を無理やりにでも結婚させようとする罠で…!?

中学生時代に図書室で読んだ本なのですが、急に読みたくなって買いそろえて再読。読み返したら見事なまでに内容忘れてて愕然としました…。お転婆姫の瑠璃姫が破天荒な行動で周囲を振り回したり、いつのまにやら宮中を揺るがす陰謀に巻き込まれたりするお話です。

とりあえず高彬かこいいよ高彬。
絵に描いたような生真面目なヘタレ男子なのですが、破天荒で(この時代的には)変人な瑠璃姫のことを一途に思い続ける姿が可愛らしいです。そして、ただのヘタレかと思わせておいて意外にキレモノなところがたまらない。後半のエピソードでは鷹男においしい所をかっ浚われた感が否めませんが…。

吉野君一筋だった瑠璃姫をようやく振り向かせ、いざ結婚!と思ったら、様々なアクシデントが発生してタイミングよく事を成し遂げられない…という経緯には思わずニヤニヤする。二人ともしっかりと両想いで何度も何度も良い雰囲気になってるのに、毎回何かしらの理由で邪魔されて関係を先に勧められないもどかしさがとても素敵。気の利かない高彬に憤慨して、本人が帰った後で「ひょっとしてやりすぎちゃったかしら…」なんて悶々とする瑠璃姫の姿がまた愛らしいのです。

ラストでは二人の間に更に爆弾が投下され、暫くは「この二人結局いつ結婚できるの!」でニヤニヤしまくれそう。次巻を読むのがとても楽しみです。


アクセル・ワールド1 黒雪姫の帰還

 
HIMA

デブで虐められっ子の中学生・ハルユキは昼休みのたびに学内ローカルネットに潜り込み、人気の無いスカッシュゲームで鬱憤を解消する日々を送っていた。ところがある日、いつもの場所に向った彼を待っていたのは生徒会副会長にして校内一の美少女・通称“黒雪姫”と呼ばれる少女だった…!

電撃文庫の新人さん。校内一の美少女から「ブレインバースト」という、意識だけを“加速”させた世界でプレイヤー同士が戦うと言うちょっと不思議なオンライン対戦格闘ゲームを受け取った冴えない主人公が、彼女を護るために奮闘するというお話です。

幼馴染も美人な先輩もわかりやすいくらいに好意丸出しなのに、それを「僕のことを哀れんでいる」「こんな僕が彼女と対等の位置に立つなんて…」と解釈してしまう序盤の態度には正直かなりもどかしいものを感じましたが、デブの虐められっ子で、勉強もスポーツも出来なくて、唯一の友人とも言える幼馴染2人には劣等感丸出しで、自らを助け出してくれた“黒雪姫”に対してはひたすら卑屈で……というハルユキが“黒雪姫”との出会いによって本当に少しずつ良い方向に変わっていく姿がとてもよかったです。そして主人公の(リアルでの)容姿が、かなり絶妙なんだよな。「醜い」というまでではないんだけどちゃんと「デブで」「ちっさくて」「かっこ悪い」という点を備えた容姿になっていて、確かにこれで美人な幼馴染なんかと並んだら劣等感むき出しにもなるだろうなーという感じ。解説ページでの川上稔デザインな主人公も正直かなりツボだったのですが、正直あれは可愛すぎると思うんだ。私ならお持ち帰りしてしまいたい、あのちまいの!!!

オンラインの「“体感”対戦格闘ゲーム」とも言うべき「ブレインバースト」のゲームシステムや、2秒程度の時間を30分にも引き延ばす『加速世界』の設定も非常に面白かったのですが、実は個人的にツボに入ったのはヒロイン・黒雪姫だったりします。古風な言い回しや様々な場面での行動力、「かっこいい女性」としての黒雪姫と、主人公に自分の気持ちを解ってもらえなくて年相応に憤ったり幼馴染と良い雰囲気になったハルユキに嫉妬して、その自分の気持ちに狼狽する、という少女らしい一面とのギャップが正直たまりません。主人公を振り回すポジションでありながらしっかりと王道なヒロインやってるとこが最高!

まだ今後の敵となっていくであろうキャラクター達とはまだ邂逅してないし、「1」と銘打たれている時点でとりあえず続編は確定っぽい?ので、続きがとても楽しみです。

あと、「終わりのクロニクル」「境界線上のホライゾン」の川上さんが繰り出す「解説」はファン的にはとても必見だと思います。ていうかもうこれ短編だし!「解説」じゃないし!!

そしてカワカミデザインのハルユキが激しく可愛い件について。
大事なことなので二度ry
いや、作品の雰囲気としてはHIMAさんのデザインの方が正解だとは思うんですけどね。


ロスト・ユニバース5 闇 終わるとき

[著]神坂 一 [絵]義仲 翔子

銀河に滅びを撒くため、動き出したスターゲイザーと『闇を撒くもの』は瞬く間に6つの惑星を滅ぼした。その殺戮の為の殺戮行為には、ナイトメア内部からも疑問を持つ者が現れ始める。一方、星間警察のレイルは家族がナイトメアの殺戮に巻き込まれたことを知り、とある奇策を思いつく…
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「ヴォルフィード」と「ダークスター」の因縁をはじめ、すべてが明かされるシリーズ完結編。

なんかもう色々な意味でレイル警部のターン!!!
単身ナイトメアの基地に乗り込み、最終決戦でのキーキャラクターと化して……マジで活躍しすぎです。ていうかこれだけサブキャラ死亡率高い作品で最後まで生き残っただけでも凄い気がしてきました。後書きで「アニメがなかったらあっさり死んでたかも」と言われてましたが実際こうやって読み直すと3巻までは出てきてもかなり空気キャラなのですよね…アニメ化前後の4巻あたりから急に扱いが変わったように思えるのですが、そう考えるとアニメの恩恵を受けた最大の人物はこの人と言えるのではないだろうか。事情わかってない分、終盤では何気にギャグキャラとしても活躍してくれましたね。ヘカトンケイルに乗り込んだときの彼の「奇策」にはうっかり噴出しました。

これまでずっとソードブレイカーVSナイトメアの遺失宇宙船、という実質的なタイマン状態だったのに対し(3巻のゴルンノヴァ戦でも艦隊戦になるけどあの時の宇宙軍はマジ空気なので除外)最終的には様々な人達がナイトメアを倒すため、力を合わせる形になるのがとても熱いです。彼らの命をかけた思いが「第六の遺失宇宙船」まで建造し、絶望的に見えた戦いに小さな穴を開けて行き、それが勝利につながっていく。基本的に主人公と敵のタイマンでの戦いになることが多い神坂作品では珍しい燃え展開だったような…4巻には及びませんが、この作品屈指の好きな場面でした。

個人的には「その後」の彼らの姿を見てみたかったなあ。
リアルタイムで読んだ時はかなり残念に思った記憶が。
今読み返すと、これはこれで余韻があって良い終わり方だと思います。


ロスト・ユニバース4 悪夢 生まれる

[著]神坂 一 [絵]義仲 翔子

犯罪組織「ナイトメア」との対立が避けられないと悟ったケインはナイトメアの隠れ蓑である大企業「ゲイザーコンツェルン」が募集している依頼を引き受けることに。危険は覚悟の上…ではあったが、思いもよらない敵の攻撃を受け、大打撃を受けてしまう。命からがら相転移航法で逃げ延びた「ソードブレイカー」は農業惑星・ジュノーへと不時着して…
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シリーズ第4弾。義仲翔子さんのイラストが急に漫画版の絵柄に近づいたなあ…とおもったら、3巻から4巻の発行までに約4年の月日が流れていたんですね。

ああ、やっぱり4巻が一番面白いなあ。良い子だけどしっかり者なマリエルに修理費用をしっかり請求されて涙目なケインや、町のならず者達と繰り広げるチキンレースの様子がたまらなく好き。自称「悪役(ヒール)」なリッチィさんも良い味出してます。何よりジャンクに埋まっていたソードブレイカーが、ジャンク吹き飛ばして再び宇宙に舞い戻るシーンはインパクトあって、文字を読むだけで情景が浮かんでワクワクしてくる。大気圏戦闘も面白かったし、ラストで吹き飛ばしたジャンクパーツに関してちゃんとオチがつくところも好きwこのラグド・メゼギス戦ははぜひともアニメで映像として見たかったなあ…(確か映像化されてないよね?)

しかし、これだけ良いキャラ出して、楽しいドタバタ騒ぎをやらせておいて、珍しく最後まで明るいノリで……と思わせておいて、ラストでそのキャラクター達を惜しげもなく犠牲にすることでラストで一気に落としてくる所が、神坂作品の悪趣味な所。この人の作品の最大の魅力って破天荒なキャラクターとかコミカルな物語より、これだけ明るい話やっておきながらも突然あっさりと暗黒展開持ってくる所だと思うんだ…。挿絵である程度示唆されているとはいえ、というか展開を知っていてもエピローグの衝撃は未だに大きかったです。ていうか後味悪すぎ!(まあ、最終巻が後味悪い「スレイヤーズ」本編や「闇の運命を背負うもの」よりは良心的だけど…)


ロスト・ユニバース3 凶夢 ざわめく

[著]神坂 一 [絵]義仲 翔子

前回の依頼でシャトルが大破し、一気に貧乏になってしまったケインの元に、レイルの同僚を名乗る女性から依頼が入る。それは犯罪組織『ウィスプ』の隠れ蓑となっている企業への潜入調査だった。あまりにも怪しいが依頼料は破格というその依頼をうっかり受けてしまって…
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シリーズ第三弾。遺失宇宙船の技術を使った戦艦を製造している犯罪組織の本拠地に、ケイン達が潜入するお話。2巻でモヤモヤした気持ちを抑えきれなかった某ラグルド社がしょっぱなから壊滅していてとてもスッキリした私です。敵ながらあっぱれ、よくやった!

物語のメインは「ウィスプ」の本拠地である「ケルビム」への潜入調査。ケインとミリィが協力しながら(お互いの足を引っ張り合いながら?)どこか緊張感のないやりとりを繰り広げる姿が面白かった。2巻までと比べていくらかノリが軽くなったような印象?珍しく味方側に死者が出てないからかもしれませんが……24時間眠らない「街」としても機能しているケルビムの描写が、初読時にはかなり印象的だった記憶があります。

1巻、2巻で微妙に思えていた宇宙艦バトルも今回は結構面白かった。2巻までは結構あっさり倒してた所、今回は使用武器に制限が入ったりと頭脳戦の様相を呈していたからかもしれない。しかし「ゴルンノヴァ」というとどうしても別の方向で反応してしまうスレイヤーズ脳な私なのでした。


ロスト・ユニバース2 妖夢 蠢く

[著]神坂 一 [絵]義仲 翔子

今度の仕事はウィナラーン星最大企業・ラグルド社の貨物船の護衛。依頼料は安い上、おそらく宇宙海賊がらみではあるが条件はそれなりに良いし、『ソードブレイカー』を現代の宇宙艦が出し抜けるはずが無い…というわけで仕事を引き受けたケイン達だったが、またもやキナ臭くなってきて…
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続けて再読、シリーズ第二段。宇宙海賊から貨物船の護衛の仕事を引き受けたら、宇宙海賊達が“遺失宇宙船”を持っていて、しかもラグルド社自体もかなりうさんくさい感じで……というお話。

なんとなく誰が死んじゃうとか大まかな内容は覚えていたんだけど、改めて読み返すと物凄い後味の悪い話だなあ……一応戦闘には勝ったけど、トンビにあぶらげ持ってかれたというか、漁夫の利で美味しいところ全部持ってかれてる感じ。一番美味しい思いをしたであろう人達の犠牲になった人々のことを考えるとなんともやりきれない気持ちに。しかも、彼らは本来の敵ではないんだよな?…ここでフェードアウトしていく人々なんだよな?…勝ち逃げだよ、くそう。

うむむ、色々面白い部分はあるんだけど、2巻は1巻以上に微妙な部分が多かったかも。後味悪かった事もあるけど、地上でのやりとりが面白い分宇宙戦のシーンが微妙に感じられたかなぁ。この後どんどん面白くなってくるのを覚えている分「面白い!」って思えなくなってるのかもしれないけど。

しかし、全体的に重い話の中、ケインのマントネタとかミリィのボンバークッキング(笑)なネタとか出てくると思わずにやりとする。ていうかケインはマント好きすぎです。予備18枚…w


ロスト・ユニバース1 幻夢 目覚める

 

“やっかい事下請け人”のケイン=ブルーリバーは星間警察の警部・レイルから金にならない依頼を押し付けられてしまう。それは人類発祥の地でありながら現在は宇宙の辺境となってしまった太陽系で家出人を探すだけという簡単な仕事だったはずなのだが、どうも様子がおかしくて…!?

「スレイヤーズ!」の神坂一が手掛ける、スペオペもの。何年かぶりに再読しました。実はラノベジャンルで萌えキャラ遍歴をたどると、源流としてこの作品にぶち当たります。ケインかこいいよケイン。ケインは愛すべきバカ!!

主人公の性別を変更してジャンルをスペオペにしたスレイヤーズみたいなお話。「スレイヤーズ」のリナほどではないけどかなり破天荒で、大きな力を持った主人公達が世界を牛耳る犯罪組織『ナイトメア』と、彼らが所有する“遺失宇宙船(ロストシップ)”と闘っていくというお話です。

いろいろコミカルな展開はあるものの基本の展開は結構シリアスで、「アビスゲート」と「スレイヤーズ」本編の中間くらいの重さ。結構主人公達に近い位置にあるキャラが割合身も蓋もなく死んでしまうので、初期スレイヤーズあたりから入った当初はけっこう衝撃でした。特にクレイブの最後については展開以上に、至極あっさりと凄惨な場面を描いてしまう作者の方に驚いた記憶があります。

あと「スレイヤーズ!」好きには色々と世界観に繋がりがあるっぽい設定を示唆されているのも面白いところ。「闇を撒く者(ダークスター)」とか後に出てくる「烈光の剣(ゴルンノヴァ)」など、スレイヤーズを知っていれば思わずにやりとしてしまう単語が出てくるので、あちらとどういうつながりがあるのか想像するのが物凄い楽しかった。アニメ版では声優被りも顕著なのでそっちの妄想もなかなか面白かったです(声優的にはリナvsガウリィなんだよね!とかそんな感じ)

しかし、今読み返すとかなりあっさり味でちょっと物足りないなあと思ってしまう部分も。特に“ガルヴェイラ”との戦いはミリィに対してキャナルの正体バレが行われる前なので本当に兵器を撃ち合うだけで終了みたいな感じになってしまっているのが残念だったかも。


コードギアス 反逆のルルーシュ 生徒会事件簿 R2

[著]朝香 祥 [絵]AKIRA [カバーイラスト]A’sまりあ

期末試験を控えたある日、突然ミレイが「お花見」をしようと言い出した。同級生の家に大きな桜があり、そこを一晩使わせてくれるというのだ。早速下見に向かったルルーシュ達だが…
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「コードギアス」の、アッシュフォード学園での平和でドタバタな日々を描く外伝ノベライズ。R2キャラが登場するようなのでどういう形で物語を続けるのかと思ったら、一言でいえばブラックレベリオンが起きなかったパラレル世界での物語と解釈していいのかな。詳しくは出てこないけどユフィも死んでないっぽいし、生徒会もカレンやナナリーやニーナが欠けず、ロロがミレイの遠縁の親戚(?)という設定でミレイ会長の卒業までを描きます。

というわけでよもやのロロナナ←ルル。
原作の展開からは絶対に考えられないミラクルカップリング発生。同じ学年ということで甲斐甲斐しくナナリーの世話を焼くロロにシスコン兄貴のルルーシュが小舅の如く嫉妬の炎をまき散らします。ルルーシュがロロのことを内心嫌っているという設定はアニメと一緒なんだけど、半分ナナリーと仲の良いロロへの嫉妬だと考えると途端に微笑ましくなる不思議。

しかし、ロロがルルーシュに対して意味深な発言をしたり、アニメでルルーシュからもらったという設定になっていた携帯電話のロケットの中身を大事そうにしていたり…と何か色々と浦設定がありそうな動きをしていたのが気になりました。うーん、実際原作の世界とはどういうつながりになっていて、こっちのロロはどういう設定になっていたんだろう?せめてロケットの中身だけでも明らかにしてほしかったです。

お話としては、ミレイの卒業話である「卒業大作戦」がお気に入り。いつも生徒会役員を振り回すミレイがちょっとだけ覗かせる素の一面と、普段はなんだかんだといいながらやはり会長が居なくなることに寂しさを感じてしまうルルーシュの姿が印象的でした。そしてすっかり存在忘れてたあの人達がまさかの再登場!あとR2で活躍したあの人達もまさかの(チョイ役で)登場!!そして個人的にはラストのC.C.とルルーシュのやりとりが素晴らしいと思う。

やたらと腐女子展開満載だった前巻と比べてはっちゃけ度は低めではありますが、R2本編では絶対に見られない顔ぶれであるとか考えると感慨深く、とても面白かったです。特にシャーリーとルルーシュが仲良くしているシーンでは思わず胸が詰まってしまう。たとえ並行世界のお話であってもこの物語の後の彼らが後書きで語られたように一人も欠けず、幸せになってくれることを願ってやみません。


ギャルゲヱの世界よ、ようこそ!

 

ある日突然に世界改変の機会を得た俺は、躊躇なく願望を具現化した。そう、全ての選択肢・イベント・キャラの台詞まで記憶するほど愛したゲーム『エターナルイノセンス』の現実化である。目指せメインヒロインルート―と思いきや、まさかの複数同時攻略ルート突入!しかもゲームにはないイベント発生!はたして俺と愛するヒロイン達はトゥルーエンドを迎えることができるのか!?選択肢無限の真世界を奔走する第10回えんため大賞優秀賞受賞作。 (「BOOK」データベースより)

ひょんなことからギャルゲーの世界が現実に反映され、その“主人公”となってしまった主人公がヒロインたちと仲良くするため、そして彼女たちを救うために奮闘するというお話。

正直「ギャルゲー生活1日目」のご都合すぎる痛々しいハーレム展開についていけなくて挫折しそうになったのですが、シナリオが動き始める中盤以降からの展開が凄かった。元々反映されたギャルゲというのが各ヒロインのルートに入ると彼女たちに様々な苦難が襲い掛かるという設定になっていて、まず真っ先にフラグを立てないと死んでしまうヒロインの“ルート”を“攻略”しようとしたら放置していた他のヒロイン達の物語も次々と進んでしまう。攻略しなかったヒロインがどうなってしまうのか、都合の良い部分だけ描いても成立してしまうゲームの物語と“設定”の矛盾が許されない“現実”との差異がどんどん反映されていくのが面白かったです。最初読み始めたとき、ただ安易に「現実の世界がギャルゲー化して今日から俺は主人公だぜ!」みたいなノリで終わるのかと思ってたので嬉しい誤算でした。

八方ふさがりになって落ち込む主人公が(設定上の)幼馴染・理恵の言葉に励まされて再起し、勇気を振り絞って苦境に陥った3人のヒロインを救っていき、それ以降は再び物語が好転して平和な毎日が再開するんだけど、最後に登場していなかった最後のヒロインと唯一シナリオが進んでなかった理恵のシナリオが動き出して…と最後まで気が抜けない。物語が動き出してからはもう息をつく暇もないほど一気に楽しませてもらいました。

続編が出るとしたら主人公たちに新しい苦難が待ち受けてることになるのか、むしろ同じソフトの力で他のギャルゲーの主人公になってしまった新しい主人公のお話を書いても面白いのかも。「ギャルゲーの世界を展開する」という設定を使えば色々な方向で広げられそうな設定の物語だったし、ぜひこれは続きを読んでみたいなあ。異能系要素の現実反映は出来ないっぽいけど、反映されるゲームの元によって色々な展開が見れそうで………あ、BLゲーとかうっかり読み込んじゃったらどうなるんだろうね?きちめがとか読み込んだら面白そうだよね、とか思った。

しかし正直、ギャルゲーから抜け出したテンプレートの設定目白押しなヒロインたちより、苛めっ子のツンデレ娘・高橋愛子が一番可愛いと思ってしまったのはきのせいか?高橋愛子可愛いよ高橋愛子。


ガーゴイルおるたなてぃぶ ZERO

[著]田口 仙年堂 [絵]日向 悠二

実家を出て一人暮らしをしながら「鳥屋」というなんでも屋を営む駆け出し錬金術師・東宮ひかる。錬金術の研究にはお金がかかるし、なかなか依頼は来ないわで貧乏と戦う毎日を送っていたが、同じマンションで花屋を営む板垣から「ひかるちゃんにぴったりな仕事」という依頼を受けて…
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ひかるとガー助が古科学者達と戦う発端となった事件を描いた短編に、高原喜一郎を主人公にしたおるたなてぃぶで語られなかった事件を描く短編3つと、「吉永さん家」「おるたなてぃぶ」のキャラが競演する書き下ろし短編を収録した短編集です。

良くも悪くも「おるたなてぃぶの短編集」なんだよなー…タイトルに「おるたなてぃぶ」の名前を冠している以上当たり前のことなんですが、これが「ガーゴイルシリーズ最後の1冊」といわれるとちょっと寂しいものが…。おるたシリーズも戦いの無い、ほのぼのとした短編が読みたかったな?。特に喜一郎をメインに描く短編は「おるた」シリーズ本編よりも重くて、ちょっとキツい部分も多かったです。戦時中の話は結構好きだったんだけどな。特に「戦時中の」ガーゴイルが喜一郎との会話から「現在の」ガーゴイルへと変化を遂げていくやりとりは面白かった。

個人的には書き下ろしの「高原さん家の小さな変化」と「吉永さん家と東宮さん家と高原さん家の晩餐」が面白かった。前者は喜一郎を主人公としたシリーズのうちの1つでバトルメインのお話ではあるのですが、様々な立ち位置でひかる&ガー助と知り合った他人同士がそれぞれの立場から二人を護るため共闘するという展開が凄く良かった。そしてヒッシャムさんの大活躍を思わず絶賛せざるをえない。

後者はやっぱり双葉&イヨ&ひかる、ガーゴイル&ガー助という本編では出会わなかったキャラクターたちが競演、というだけで物凄い盛り上がる!特に本当に短い部分なのですが、ガーゴイルとガー助の共闘が熱すぎました。口調から性格からぜんぜん似てない二人(二体?)なのですが、根っこを流れる熱いものは同じ二人に胸を熱くさせられます。

しかし、やっぱり「これで最後」といわれると寂しいものが…ガーゴイル&ガー助のコンビももうちょっと見てみたかった気がするし、冒頭漫画で絡みのあった梨々&カンジとか、「おるた」終了後のガー助&狛の話とかも読んでみたかった。読み始めたのがつい最近というのもありますが、もう1?2冊何か番外編的な何かが出て欲しいなあと思わずにはいられません。