スニーカー文庫の新人さんの作品。煽り文句で衝動買い余裕でした。この煽りはずるい!!3日前に時間を戻すことができるけど、リセットした分の記憶を持つことができない少女・春埼とリセットされた間の記憶を含めた記憶を保持できる少年・ケイのコンビが、猫探しをきっかけに大きな事件に巻き込まれていく…というお話。
物語も面白かったけど、それ以上に透き通るような爽やかな透明感と、独特なテンポで語られる綺麗な文章がとても良かった!椎名優さんのイラストがまた物語の持つ透明感を引き立てていて、作者・絵師・この組み合わせを選んだ編集併せての良いお仕事だなあという印象。個人的には、序盤はこのちょっと独特な物語のテンポと主人公&ヒロイン双方の視点から語られる地文に戸惑ってなかなか読み進められなかったのですが、文章に慣れてからはむしろこの感覚が心地よかったりも。
「3日前までで“セーブ”を取った任意の時間に時を巻き戻す」という、春埼の能力・『リセット』。使い方によっては死者すら生き返らせてしまう可能性を持つ万能能力なのですが、これには様々な制約があって、そこをうまく使いながら事件を紐解いていく。リセット前の世界で起きた事との些細な違いが徐々に大きな波紋となって、「前回」とは全く違った思わぬ展開に発展していくというのがなかなか面白かったです。ちょっと不思議な能力と心の傷を抱えた少年少女たちが思い悩みながら自分の思いを遂げる為に動いていく姿も印象的。
上手く言葉に表現できないのがもどかしいけど、ちょっと綺麗で爽やかで、残酷だけど優しい物語でした。無理やり例えるなら「ベネズエラ・ビター・マイ・スウィート」を読んだ時の感覚に近いかも。そして「中二系異能要素と暗黒成分抜いて硝子と晶が人助けするレジンキャストミルク」みたいな(意味不明)。
とりあえず、表紙やアオリにキュンとなれる人は、買って損はしないとおもうよ!!
2巻の刊行がすでに決まっているようなので、続きが読めるのがとても楽しみです。お勧め!
「うらら」一覧
真・恋姫†無双 蜀書・外史 〜荒野の決戦!
| [著]小林 正親 [絵]片桐 雛太、かんたか 他 [原作]BaseSon 現代から「三国志」の時代にタイムスリップしてしまった本郷一刀。何故か史実とは違って美少女ぞろいの猛将達と出会い、流星とともにあらわれた“天の御使い”として蜀軍に力を貸すことになるが、赤壁の戦いで魏軍をあと一歩のところまで追いつめた際に魏軍に人質として誘拐されてしまって… | ![]() |
ストーリー以前に表現的な部分で引っかかる部分が多くて、その辺がちょっと残念。説明の多い序盤ではやたらとカッコ表記が多かったり(しかも何故か“”や『』ではなく[]で記述されていて、見慣れないせいかなんとなく落ち着かなかった…)、何よりしょっぱなで突然一刀の一人称を間違えていて、「!?」となってしまったり……いや、大体の誤字はあまり気にしない私ですが、一人称はキャラクター付けにおいて大事だと思うのは私だけですか?特に「俺」と「僕」では受けるイメージに天と地ほどの差があるよ!?いや、私が「僕」キャラフェチであることは否定しませんけどね!!!…正直、「僕」「ぼく」「ボク」の3種類から受けるイメージの違いについて語らせたら、20分くらいは語り続けられる自信があります。
あと、魏メンバーがオチるの早すぎる印象がなー……華琳様が徐々にデレていく姿にはニヤリとしたけど、春蘭はもうちょっとデレないでほしかったというか。楽進なんか序盤で速攻デレ入ったようなもんだし。華琳様も若干デレ度高めの印象。いえ、私まだ原作ゲームの方で華琳様落としてないんで、どのくらいの速度でデレが入るのか知らないのですが(私の「恋姫」知識はPS2版の途中まで及びなごみ文庫のノベライズのみという…)。
ただ、若干の気になる部分は多かったものの、ストーリーそのものはかなりハチャメチャで結構面白かったです。特に終盤での貂蝉の活躍っぷりには一本取られた。二人で1500人もの軍勢に挑む星と恋とか、名乗りを上げる愛紗と春蘭の腹心コンビとか、いがみ合う蜀魏両軍が共闘する場面とか、この作品らしい熱さも健在。偵察隊を出す場面で蜀軍メンバー全員に何故か居る袁紹までが加わってしっちゃかめっちゃかする場面では、原作ゲームを思い出してニヤリとしたなあ。
……せめて、しょっぱなの一人称間違いさえなければ、もっと素直な気持ちで楽しめた気がするんですけど……。
今月のまとめと読了記録[2009年5月分]
5月に読んだ本は再読モノと某同人含め31冊でした。1日1冊ペース!!
ただし、再読モノが14冊という巨大な罠……というか、再読のセイバーマリオネットJの12冊はある意味ズルいといわざるをえない気がしなくもない(他のラノベ1冊読む時間で2冊読めるのがあかほりクォリティ)
というか今月は元々富士見・電撃で買う予定の本が1冊も無いという、未だかつて無い新刊枯渇期間だったのですが、その少ない何冊かすらも何冊か積読に行っている罠。点「彩雲国物語」の新刊は、次の新刊が出る前でいいかな……うん。
2009年5月のページアクセストップ4
![]() バカとテストと召喚獣6 (⇒感想) | ![]() 女帝・龍凰院麟音の初恋3 (⇒感想) | ![]() これはゾンビですか?1 はい、魔装少女です (⇒感想) | ![]() 生徒会の五彩 碧陽学園生徒会議事録5 (⇒感想) |
「麟音」以外今月の新刊が1冊も入ってない不思議!
っていうかアクセス数確認してゾンビ人気に噴いた。そうか、5月に2巻発売だったのか……ドラマガでやたらプッシュされてるのが印象的だったけど、2巻面白かったのかしら。
2009年5月に読んで面白かった本
![]() 鉄球王エミリー 鉄球姫エミリー第五幕 (⇒感想) | ![]() 死神姫の再婚 鏡の檻に棲む王 (⇒感想) | セイバーマリオネットJ 5.機械じかけの乙女たち (⇒感想) | ![]() ギャルゲヱの世界よ、ようこそ! disc2 (⇒感想) |
全力で「鉄球王エミリー」が今月の私の脳内お勧めぶっちぎり。もう展開から何から全部好きな作品なのですが、最終巻は特に挿絵との相乗効果が凄かった。とりあえず、何はともあれ皆読めばいいよ!!
そしてエミリーと双璧状態だったのが、現在ラブコメ方向で私がぶっちぎりにお気に入りな「死神姫の再婚」。もうカシュヴァーン&アリシアとかティル&ノーラとかやばいやばすぎる。純粋にゴロゴロ転がれるラノベ筆頭。
3冊目は再読組から1冊、「セイバーマリオネットJ5」。最終巻の終わり方も嫌いじゃないけど、やはりシリーズ通してのお気に入りを1冊選べといわれたら5巻だなあ。色々考えさせられる哀しい結末ですが、ものすごく好きだったりします。
最後の1冊は「文学少女見習い」とどっちにするか悩んだけど続きを読みたいという一心で「ギャルゲヱの世界よ、ようこそ!」で。別のゲームが投影されたことで物語が難解になった、という意見が多く見られたけど、個人的にはこれはこれで好きだなあ。まだまだ物語に広がりの余地がありそうですし、なんとしても3巻が見たいラノベです。まだ読んでないけど、FBオンラインに掲載されているという短編を読むのも楽しみだ。……つか、ファミ通は毎度毎度新人切り早すぎると思うんだよ……。
2009年5月の読了記録
続きを読む運命のタロット10 《皇帝》はうなずかない
| [著]皆川 ゆか [絵]乱魔 猫吉 《月》が起こそうとしている“改変”から河内さんを護ろうとするライコと《魔法使い》。しかし、河内さんにはすっかり誤解されて楽屋に入るのを拒否され、更に片桐先輩と一緒に居るところを追いかけてきた《太陽》から攻撃されてしまう。ライコ、絶体絶命の大ピンチ——!? | ![]() |
2つのフェーデだけではなく、遂に《皇帝》が現れたりあの人が《愚者》の協力者になったり……と、序盤巻でのもどかしさのトリを一気に取るかのような盛りだくさん感!!最後まで悪役を貫いた坂崎の最後にも、哀しい想いを抱えた《月》の協力者の真実にも物凄い惹きこまれた。二人とも脇役ながらいいキャラしてる。ただ、《太陽》と坂崎の関係はちょっと見た目通りのものではない力関係を感じたので、ここでご退場されてしまうのは惜しいなあと感じてしまったり…。
《太陽》との戦いの後に起こったジュリエットの事件を巡る攻防は、本当に瀬戸際での戦いになって物凄い緊迫感。むしろ《太陽》と戦ってる間もずっと「本当に大丈夫なのか」「実は今の間に寝首をかかれてるんじゃ…」とヒヤヒヤしっぱなし。誰もが笑って迎えられる結末ではなかったけど、とりあえず“改変”を防げた事にホっとせざるをえません。
そして遂におまちかねの《皇帝》登場!!演劇中のライコとのやりとりにニヤニヤしつつ、「いやでもやっぱりあの人に似てるなあ…」なんて思ってたら、ラストに巨大爆弾投下されて脳内で叫びまくってました。っていうか自分の9巻感想がいろいろな意味で預言者過ぎる。
ところで、後書き読むと次は《女帝》で一部完結、って書いてあるけど実際には次は《神の家》で残り3冊ですよね。おもいっきり延びてる延びてるよ!ああそういえば、真タロのほうは22冊で終われなくて「8上」とか「9下」とかどこかの終わクロみたいな表記になってたなあ…規定冊数で終われなかったんだろうなあ…
運命のタロット9 《太陽》は人々を照らす
| [著]皆川 ゆか [絵]乱魔 猫吉 《戦車》と大河兄の助けを借りて《太陽》達から逃れる事が出来たライコと《魔法使い》はその足で「コミックスクエア」という同人誌即売会にやってきていた。唯と伊東さんに売り子とコスプレをする約束になっていたのだ。《魔法使い》も姿を現し、なんだかんだ言いながらも賑やかで楽しい一日を過ごしていたが… | ![]() |
同人誌即売会のシーンから時代の流れを感じすぎて困る。「そのうち何日にもわたって開催されたりして」はリアルタイムにそうなったからのネタなのかそれとも単純な予想なのか。っていうかコミケがたった800サークルしかなかった時代があるということそのものに驚いたわ?。ちょっと気になって現在の参加サークル数を調べてみたらこのような記事を発見したのですが、これによると去年の冬コミで私がスペース取ったジャンル800の「FC(小説)」が単体で1178サークルだそうな。夏まで取ってたジャンル300「ゲーム(その他)」がかなりマイナーなジャンルばかりで825。総サークル数34,927……ううむ、やはり800サークルしかないコミケって想像できないです…。
しかしイベント中の喧騒とか参加者全員から漲る活気とか、現在と規模は違えど同人誌即売会の空気がリアルに伝わってきて、一人ニヤニヤしながら読んでました。《魔法使い》の言葉がまた的確すぎて、にやにやする。ほんと、イベントは楽しいよね!!感想からは盛大に脱線しました感がしてしょうがありませんが。
そんな和気藹々としたイベントシーンから一転、《太陽》と彼らの協力者である坂崎が登場してからの展開が凄すぎる。坂崎は典型的なワルというか、周囲の目や被害を考えずに行動している分、もう場所的な意味でも坂崎が圧倒的に優位か。人の目を気にするあまり反撃に転じる事すら出来ないライコ達の姿がとてももどかしい!!
しかし、同人誌即売会→《太陽》襲来、のコンボで「これで《月》とのフェーデどうなるの?!」と思っていたらラストで急展開!!《太陽》カルテットとの決着も付かないままだし、更に謎のタロットが出てきたり…と、これほんとどうなっちゃうの次回。
例の謎の声は、読書メーターとかのバレによると《皇帝》らしい。喋り方から勝手に、未来の《魔法使い》かなんかだとおもってたよ……なんとなく、喋り方似てないですか?
ギャルゲヱの世界よ、ようこそ! disc2
奇跡的に再び「エターナルイノセンス」の世界を投影し、今では掛け替えのない存在となったヒロイン達との生活を送り始めた武紀。そんな彼の周囲では最近、「その下で告白すると両想いになれる不思議な木」の噂が流れていた。明らかにどこかのギャルゲーにありそうな設定に首をかしげるが、今度は街で偶然「リアル幼馴染」と再会して!?自分の好きなギャルゲーの世界とそのヒロイン達が投影されちゃったよラブコメ、シリーズ第二弾。
かなり綺麗に落ちていたのでどう繋げていくのかと思ったのですが、物語面では「主人公以外の人間が“設定者”となり投影された別のゲームのシナリオが現実に影響を与えていく」、恋愛面では「本来リアルの人間ではないヒロイン(というか理恵、咲)の苦悩」という方向に話を転換させていて、1巻とは違った方向で楽しむ事が出来ました。特に主人公以外が投影したギャルゲの内容が終盤まで判明しなくて、ちょっとした謎解き的な方向になっているのが面白い。中盤はひそかに投影されたゲームの内容と配役を妄想しながら読み進めてました。
また、投影されるゲームによってかなり物語の色が変わってくるのが興味深い。「エターナルイノセンス」は典型的な泣きゲーという印象を受けましたが、今回投影された「メモリーロンド」は伝奇っぽい雰囲気のゲームで、同じヒロインがピンチになるにしても現代異能的な展開になってたり。というか、今回の話により1巻の「異能的な要素は投影できない」という仮説が覆されたので、もっとバリバリ超能力とか異能な展開も期待できるのかな?と思ったり。ある意味今後の展開によっては「なんでもあり」な物語になりそうな予感がしてにやにや。終盤で主人公が熱いキャラになるのにも、ニヤニヤが止まりません。
それにしても、ヒロイン達も可愛いけど高橋愛子可愛いよ高橋愛子。1巻での虐めっ子キャラからヒロインの親友ポジションに一気にランクアップした彼女にニヤニヤ。というか、咲が悲しんでるのを見て彼女の分まで武紀に怒ったり、素直に態度には出さないけどこっそり理恵を心配してたり……と、素直になれないけど親友想いな姿に惚れました。というか、エピローグのアレはやはりサブヒロイン昇格フラグなのか!?それはそれで楽しみすぎる。
エピローグがちょっとわかりづらかったのが個人的には気になりましたが、物語を一度読み終えてから改めてプロローグのデバッグシーンを読み返すとエピローグで武紀の立てた仮説の裏づけが取れてなかなか面白かったり。次巻も期待してます!!
運命のタロット8 《戦車》が兄とやってくる
| [著]皆川 ゆか [絵]乱魔 猫吉 《月》とのフェーデで狙われたのは河内さんだった。河内さんにその未来の一端を打ち明けてその改変を阻止しようとするライコだが、山根くんとの仲を疑われて逆に拒絶されてしまう。一方、新聞部では例の覆面少女の一件で“ヘルハウス”を再度調べる事になり… | ![]() |
河内さんに“改変”の事を打ち明けるシーンは、さすがにその説得法は無茶だろう?と思ったり。せめて新聞1冊全部持っていけば良かったんじゃ…いやそれでも信じて貰える確率半分以下だと思うけど、労力的に捏造の可能性は低くなりそうな気はするような。しかし、やっぱりあのライコの行動は山根との仲を嫉妬されてた事を差し引いても浅はかだった気がするなあ。
会話の中でも更に新しいタロットの名前が出てきたり、意外な人と意外なタロットとの関係が明らかになったり…と物語は結構急展開。っていうかあの人が《愚者》の協力者とは……うーむ。《月》とのフェーデも、ここからどうやって展開するんだろう。とりあえず次が楽しみ。
むしろ次の巻、同人誌即売会ネタに期待せざるを得ない。
運命のタロット7 ≪死神≫の十字路
| [著]皆川 ゆか [絵]乱魔 猫吉 頑なに次のフェーデを拒むライコの前に現れた≪女帝≫。同じプロメテウスのタロットである≪節制≫を倒した彼女によると、フェーデに負ければ≪魔法使い≫と一緒にライコも封印されてしまうらしい!?しぶしぶ、≪月≫とのフェーデに協力することにしたライコだが… | ![]() |
色々ヒミツがありそうな姐御肌の≪女帝≫可愛いよ≪女帝≫。近い未来フェーデをするってことだけど、12巻のタイトルに名前が入っているのでこのシリーズでのラスボス的立ち位置なのかな。彼女とラブラブらしい旦那様も早く見てみたいものです。
全然本筋と関係ないけど、同人誌の修羅場を手伝うシーンすごかった。修羅場テンションで話がどんどんおかしい方向に転がってくのあるあるすぎる。うちはデジタル仕上げのせいであまりこういう修羅場は経験したことないですが…気がつくと売り子やらコスプレやらゲストやらを否応なしに引き受けさせられてるってよくあるよねww
そしてついに≪月≫とのフェーデ開始。また露骨に犯人(というか協力者)っぽい人出てきたけど、きっとひっかけなんだろうなーとか斜に構えつつ。早くも次で決着がつくらしいので楽しみです。
死神姫の再婚 鏡の檻に棲む王
お腹痛い????っっっ!!!!!(ゴロゴロゴロゴロゴロ)
(只今転がっております、しばらく略)
うわああああもう開始30P程でしょっぱなから転がりまくってしまいました。もどかしいながらも一歩一歩着実に距離を縮めてくる感じがもどかしカップル萌えとしてはたまらない。どんどん妻バカ化してきた旦那様がほんと素晴らしいなあ。
そして前回から引き続きラブラブモードのカシュヴァーン・アリシア夫妻だけならとにかく、なんだかんだと両想いモードに突入したティルナード&ノーラがたまらん!!!カシュヴァーンの時の押せ押せモードとは打って変わってしおらしく、さりげなくティルのことを気遣ったり、そばにいられなくてしょんぼりするノーラがもう可愛いのなんの。更にレネだけには妙に生真面目なバルロイさんとか、野望多きジスカルドへ真摯な想いを抱くエルティーナ様とか、段々見ててニヤニヤできるカップルが増えていくのがもうたまりません。
物語は苛めっ子なゼオ王子一行をはじめとした王室周辺の方々が登場し、「翼の祈り」教団の動きも激しくなってきてますます急展開な印象。各カップルににやにやするだけじゃなく、ライセン夫妻の思惑とは違うところで動き始める物語の行方も気になるところです。
それにしても、ほんと、今回入った「登場人物相関図」はもっと他のラノベも採用すべき。特にキャラ数が鬼多いラノベと刊行間隔が長いラノベ。具体的には禁書とムシウタ。
セイバーマリオネットJ 12.愛・乙女
| [著]あかほりさとる [絵]ことぶきつかさ 遂にメソポタミア号にたどり着いた一行。小樽は、ライム達を外に待たせて一人ローレライと対峙する。小さなころから肖像画で見つめてきた彼女の顔には、肖像画とは打って変わった冷たい表情が浮かんでいた…。一方、小樽の帰りを待つライム達の前にはファウストが現れて… | ![]() |
セクサドールズvsセイバーマリオネット組再びとか最凶のセイバー・クーリガァIIIとか彼らを見捨てた「母なる地球」の結末とか、小樽の選択とか色々見所はあるけど、今読みなおすとやはりファウスト(=ヘス)とローレライの過去が印象に残る。ただ、ヘスの方に話を取られて結局最終的にはヘスの操り人形状態だった「ファウスト」が不憫に思えなくもない。実際、セクサドールズをどうしてあのファウストが起動させることができたのかとか、凄い気になる(アニメ版みたいな展開があったとも思えないし…)
そして物語のラストシーンはやはり何度見ても、何とも言えない寂寥感と哀しさと小さな満足感が沸き起こる名場面だと思うのですが、それと同じくらいにどこかこの場面を額面通りに受け入れられないものを感じてしまいます。小樽が死んだ後のライムはどうなる?他のセイバーマリオネット達は?……と、どうしても考えてしまう。
原作は特に、ライム達が小樽以外に執着するものがあまりないようにみえて、それが凄く怖い。アニメ版みたいに「小樽だけじゃなくてジャポネスの皆を護るんだ!」って自然になるほど、原作では周囲の人々が描かれていないし、どうも「小樽が好きな皆を守る」という感じで間に一枚フィルターが掛かっているように感じてしまうのです。本物の女性が復活して、「女性の代わり」という意味でのライム達は小樽以外には不要になって、その小樽も寿命で死んでいってしまう。その時、彼女達はどうするのだろう。
小樽ではなくてライム達にこそ、聞きたかった。「あなた達は今、幸せなのか?」と。
…うーん、アニメ版(JtoX)はライム達が人間になる方に話が落ちるらしいので、そちらも見てみたいなあ。















